*この情報は2023/10/12時点の情報に基づき記載しています。
・全ての事業主
・請求書発行業務を行う従業員
こんにちは、税理士の岩本隆一です。
今回は、
返還インボイス
についてのお話です。
そもそもインボイスとは
インボイスとは、2023年10月1日から導入された一定の項目が記載された請求書や領収書のことです。
☆インボイスに記載しないといけない項目
・インボイス発行事業者の氏名や登録番号
・取引年月日
・取引内容
・軽減税率の対象品目である旨
・税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率
・消費税額
・インボイスをもらう事業者の氏名
事業者が仕入税額控除を行うためにはインボイスが必要となります。
仕入税額控除とは、事業者が消費税の納税額を計算する際に、売上の消費税から仕入や経費の消費税を差し引いて計算することができる制度です。
仕入税額控除について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
返還インボイスとは
返還インボイスとは、既に発行したインボイスについて、値引きなどを行った場合に発行しなければならないインボイスです。
値引きの他、返還インボイスを発行しないといけない場合の取引は下記通りです。
(1)返品
(2)値引き
(3)事業者がその直接の取引先に支払う割戻し。この他、間接の取引先(商品等の卸売業者、製造業者等)に支払う飛越しリベート等とされるもの
(4)海上運送事業を営む事業者が支払う船舶の早出料
(5)販売奨励金等のうち、事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先に対して金銭で支払うもの
(6)協同組合等が組合員等に支払う事業分量配当金のうち、課税資産の譲渡等の分量等に応じた部分
(7)課税資産の譲渡等に係る対価をその支払期日より前に支払を受けたこと等を基因として支払われる売上割引
国税庁
つまり、返品、値引き、リベート、販売奨励金、売上割引などが返還インボイスの対象となります。
返還インボイスの記載方法は、下記をご参照ください。(出所:国税庁)
この例は、販売奨励金の支払いを行った場合です。
販売奨励金という名称でなくとも、(実質的に)値引きする場合には上記にように記載します。
返還インボイスが免除される場合
返還インボイスは、値引きなどを行った場合には必ず発行しないといけません。
しかし、少額のものまで対応することは大変………ということで
値引きの金額が
1万円未満
の場合には返還インボイスの発行は免除されることになりました。(参考:国税庁)
これは後から決まった(令和5年度の改正項目)のですが、非常にいい制度です。
代金回収の際に銀行振込の場合、振込手数料を差し引いて入金する取引先っていますよね。
振込手数料を差し引く行為は消費税法的に値引きとされるため、返還インボイスの対象となります。
しかし、振込手数料が1万円未満であれば、返還インボイスの発行対象から外れるので、わざわざ発行する必要はなくなるということです。
かなり手間が省ける事業者が多いのではないかと思います。
事例
返還インボイスを発行しないといけない場合と、値引き等は行ったけれども返還インボイスを発行しないでいい場合について事例を紹介します。
返還インボイスを発行する場合
木材を店頭販売するS社は、1ヶ月間の販売数量に応じて、キャッシュバックを行うシステムを導入しています。
顧客からすると、1ヶ月間の購入数量が多ければ値引きをしてもらえるので、特定の月にまとめて購入することにより、値引きの恩恵を受けられます。S社が好評の一因となっています。
S社はインボイスを販売する都度に発行しています。
そして販売月の翌月に一ヶ月分の販売量に応じて、来店時にキャッシュバックを行っています。
このキャッシュバックを行うタイミングで返還インボイスを発行します。
返還インボイスを発行しないでいい場合
木材を店頭販売するS社。毎月100万円を超える取引先には銀行振込による代金の収集を行っています。
この高額取引を行う先の1社であるZ社は、いつも振込手数料735円を差し引いて入金を行ってきます。
振込手数料を差し引かれて入金があった場合には、消費税法では値引きに該当します。
値引きは返還インボイスの発行対象です。
しかし値引きは735円であり、1万円未満であるため返還インボイスを発行しないでいいということになります。
まとめ
今回は返還インボイスについてお話しました。
ポイントは下記の通りです。
・値引きや返品、販売奨励金を支払うなどの場合には、返還インボイスが必要
・返還インボイスは1万円未満の値引きの場合には不要
最後までお読みいただきましてありがとうございました。