*この情報は2023/11/14時点の情報に基づき記載しています。
・振込手数料が発生する事業者
こんにちは、税理士の岩本隆一です。
今回のお話は
振込手数料
のお話です。
振込手数料とは
(説明するまでもありませんが)振込手数料とは、金融機関にある口座へお金を送金するときに発生する手数料のことです。
同一銀行や同一支店の口座間での送金では振込手数料が発生しないこともありますが、ほとんどのケースで金融機関にお金を送金すると発生しますよね。
振込手数料について、今まで特に問題になったことはないかもしれませんが、
インボイス制度
や
電子帳簿保存法
により気をつけないといけないことが多々あります。
余談ですが、
振込手数料を削減
するのであれば、PAYPAY銀行やGMOあおぞらネット銀行などのネット専用の銀行がおすすめです。
振込手数料を支払った時の仕訳
振込手数料を支払った場合の仕訳は下記の通りです。
支払手数料 / 預金
ちなみに、支払手数料勘定の消費税区分は、
課税仕入
です。
課税仕入となるということはインボイスが必要になります。
振込手数料のインボイスについて
振込手数料のインボイスは下記の2パターンがあります。
- 郵送で送られてくる
- 金融機関のホームページからダウンロードする
どちらに該当するかは金融機関のホームページをご確認ください。
いずれにせよ、インボイスはしっかりと保管する必要があります。
下記に各金融機関が公表しているインボイス対応について説明しているページをリンク貼っておきます。
電子帳簿保存法の対応について
電子帳簿保存法の対応については、インボイスをネットバンキングで保存する場合には電子取引のルールに従ってデータのまま保存しないといけません。
・データの改ざんできないようにする措置をとる
・⽇付、取引⾦額、取引先名で検索できるようにする
・ディスプレイやプリンタなどを備え付ける
振込手数料が問題となる場合
振込手数料でしばしば問題となるのは、売手と買手の
どちらが振込手数料を負担
すべきなのかということです。
ほとんどのケースでは慣行的に買手が負担してますよね。
しかし、業界や地域によって、買手が負担したり、売手が負担したりするケースがあります。
振込手数料は買手と売手のどちらが負担すべき?
振込手数料は原則として
買手
が負担することが正しいです。
民法の第484条では持参債務の原則が定められているからです。(参考:民法)
持参債務の原則とは、買手が売手の住所で売手が指定する口座に弁済をしなければならないということです。
そして、第485条では、その弁済の費用は原則として買手が負担すると記載されています。(参考:民法)
ただし、契約書などで売手が負担することを明記している場合には、振込される側が振込手数料を負担することも可能です。
まぁ、実務的には、契約書を作成する際にわざわざ買手は振込手数料を記載するケースが多いように感じます。
売手が振込手数料を負担したときの仕訳
振込手数料を売手負担とした場合の仕訳は下記の通りです。
支払手数料 / 売掛金
預金 /
これだけなら簡単ですが、支払手数料勘定の消費税区分に気をつけないといけません。
支払手数料勘定の消費税区分は、
課税売上に係る対価の返還
です。
freeeでは課税売返と記載します。(参考:freee)
課税仕入ではありません。
返還インボイスの取り扱い
ややこしい話なので、先に結論をいいます。
振込手数料の売手負担の場合には
返還インボイスは
不要
です。
振込手数料は、課税売上に係る対価の返還に該当するため、原則的な取り扱いの通りであれば、返還インボイスを発行しないといけません。
返還インボイスとは、すでにインボイスを発行した取引について値引きなどがあった場合に発行するインボイスです。
しかし、1万円未満の少額な返還インボイスの交付義務免除されることから、返還インボイスは作成する必要はありません(参考:国税庁)
事例
取引先に対して100万円の売掛金がありますが、手数料735円を引いた金額を振り込んできました。
預金 999,265円 / 売掛金 1,000,000円
支払手数料*¹*² 735円 /
*¹ 消費税の区分は課税売上に係る対価の返還です。
*² この支払手数料は課税売上に係る対価の返還に該当しますが、1万円未満であるため返還インボイスは必要ありません。
まとめ
今回は振込手数料についてお話しました。
・振込手数料は、インボイスと電子帳簿保存法について注意しよう
・売り主負担の振込手数料の消費税区分は課税売上に係る対価の返還
・売り主負担の振込手数料は返還インボイスがいらない
最後までお読みいただきましてありがとうございました。