会社を作ろうと思ったときに、まず最初に浮かぶのが
「手続きめんどくさそう…」とか「いくらかかるんだろう?」ですよね。
でも実際は、登記そのものよりも前にやる
「何を決めるか」「どう準備するか」のほうが大事です。
たとえるなら、登記は“家を建てる工事”、
そして今話しているのは“設計図を描く段階”。
この設計をミスると、あとで直せない部分が出てきます。
この記事では、税理士の視点から
会社設立前に決めるべきこと・かかる費用・やっておくといい準備をぜんぶまとめました。
1. 会社の目的(事業内容)を決める
まずは「この会社で何をやるか」。
登記のときに“事業目的”という項目に書きます。
ここは後から変更もできるんですが、
融資・補助金・契約時にめちゃくちゃ見られる部分なんです。
「今はデザイン業だけど、将来ECもやるかも」
と思ったら、最初から“デザイン業・通信販売業”と書いておきましょう。
少し広めに書いておくのがコツです。
2. 会社の名前(商号)を決める
会社名は「名刺よりも先に見られるあなたの顔」です。
読みやすくて、覚えやすくて、検索しやすい名前が理想。
同じ住所に同名会社は登記できません。
でも地域が違えばOK。
とはいえ商標登録があるとトラブルのもとになるので、
Google検索+特許情報プラットフォームで事前チェックを。
あと、ドメイン(〇〇.co.jp)が取れるかも超重要。
会社名を決める前に一度検索しておくと後悔しません。
3. 会社の住所(本店所在地)を決める
登記する住所。ここは「会社の本拠地」として扱われます。
自宅でもOKですが、賃貸契約に「事務所利用禁止」があると使えません。
最近はバーチャルオフィスやコワーキングスペースを
本店住所にする人も増えています。
月数千円〜で郵便物も受け取れるので便利。
引っ越すと登記変更に数万円かかるので、
できれば長く動かさない住所がベストです。
4. 会社の形態を決める(株式会社 or 合同会社)
これ、すごくよく聞かれます。
ざっくりいうと👇
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
設立費用 | 約25〜35万円 | 約11〜15万円 |
知名度 | 高い | やや低い |
経営の仕組み | 所有と経営が分かれる | オーナー経営(シンプル) |
向いている人 | 投資・採用を考える人 | 小規模・低コストで始めたい人 |
「将来的に人を雇う」「信用を重視したい」なら株式会社、
「少人数でサクッと始めたい」なら合同会社で十分です。
5. 資本金の金額を決める
「資本金は1円でも設立できる」
……って聞いたことありますよね。
たしかにできます。
でも、現実的には1円では銀行口座も融資も通りにくいです。
目安は100〜300万円。
信用・資金繰り・税金のバランスがちょうどいいラインです。
出資比率も要注意。
2人で出す場合は、
「60:40」と「51:49」で意思決定の力関係が変わります。
最初にきっちり決めましょう。
6. 役員構成を決める
1人でも設立OKですが、複数でやるなら「ルール」が命。
・代表は誰か
・報酬はどうするか
・辞めたら株はどうなるか
このあたり、最初に曖昧にすると
“会社よりも人間関係”が壊れます。
契約書を1枚用意しておくだけで、後のトラブルはかなり減ります。
7. 事業年度(決算月)を決める
決算月は自分で決められます。
おすすめは繁忙期を避けた月。
飲食業なら12月は避けて3月とか。
また、最初の決算を短く設定すると、税金を少し先送りできます。
たとえば10月設立→3月決算にすると、半年後に初の納税です。
税理士と相談して、資金繰りに合う月を選びましょう。
8. 会社設立にかかる諸費用まとめ
設立費用は「会社の種類」と「代行を頼むかどうか」で変わります👇
株式会社の場合
項目 | 金額目安 | 備考 |
---|---|---|
定款認証手数料 | 約5万円 | 公証役場で支払い |
登録免許税 | 資本金×0.7%(最低15万円) | 法務局で支払い |
定款印紙代 | 0円(電子定款)/4万円(紙定款) | 電子化で節約 |
設立代行手数料(司法書士) | 約5〜10万円 | 書類作成・電子定款代行 |
合計 | 約25〜35万円前後 | 代行ありの現実的な金額 |
合同会社の場合
項目 | 金額目安 | 備考 |
---|---|---|
登録免許税 | 資本金×0.7%(最低6万円) | 法務局で支払い |
定款認証手数料 | 0円 | 公証役場で不要 |
定款印紙代 | 0円(電子定款)/4万円(紙定款) | 電子化で節約 |
設立代行手数料(司法書士・税理士) | 約5〜8万円 | 登記・電子定款・届出代行 |
合計 | 約11〜15万円前後 | 自分でやれば約6万円でも可 |
💡ポイント:
顧問契約を前提にすると、税理士事務所で「設立代行無料」になるケースもあります。
(うちでもそういうパターン、けっこうあります。)
その他にかかる初期費用
項目 | 金額目安 | 備考 |
---|---|---|
会社印3点セット | 約1〜2万円 | 実印・銀行印・角印 |
登記簿謄本・印鑑証明書 | 数百円〜 | 法務局で取得 |
9. 設立時にやっておくといいこと
「登記が終わった!」で安心するのはまだ早いです。
設立直後こそ、やっておくべきことが山ほどあります。
🏦 法人口座を開く
開設無料。審査1〜2週間。
資本金は100〜300万円が現実的ライン。
ネット銀行(GMOあおぞら・住信SBIなど)も人気ですが、HPやSNSの実態を見られます。
💻 ドメイン・メール・HPを作る
- ドメイン:年間1,000円前後
- メールサーバー:月1,000円前後
- ホームページ:自作3〜10万円、外注30万円〜
💡補助金(小規模事業者持続化補助金)を使えばHP制作費の3/4が戻ることも。
🧾 税務・社会保険の届出
税務
- 法人設立届出書(2ヶ月以内)
- 青色申告申請(3ヶ月以内)
- 給与支払事務所開設届(1ヶ月以内)
💡税理士に依頼すると5〜10万円でまとめて代行してもらえます。
社会保険
- 社会保険新規適用届(即)
参考:1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき(日本年金機構)
💰 融資・補助金をチェック
名称 | 上限額 | 備考 |
---|---|---|
日本政策金融公庫 創業融資 | 最大3,000万円 | 設立2年未満対象 |
横浜市創業支援融資 | 最大2,000万円 | 条件で金利優遇あり |
小規模事業者持続化補助金 | 上限50〜200万円 | HP・広告費に使える |
💡申請は設立後すぐがチャンス!書類が整っている今が最も通りやすいです。
✍️ 名刺・ロゴ・契約書
- 名刺印刷:3,000〜5,000円
- ロゴ制作:0〜5万円(AIやCanvaでもOK)
- 契約書テンプレ:無料〜3万円
特にNDA(秘密保持契約)と業務委託契約書は最初に準備しておきましょう。
🧮 会計・経理体制
- 会計ソフト:月1,000〜3,000円
- 領収書スキャンアプリ:無料〜1,000円
- 顧問税理士:月2〜5万円
💡「個人と法人の財布を分ける」が鉄則。
経理は最初に仕組み化すれば、後で地獄を見なくて済みます。
🎯 まとめ|会社設立は“設計8割・手続き2割”
登記はたしかに面倒。
でも本当に大事なのは、
「どんな会社にするか」を考えて準備する部分です。
✅ 資本金・役員・決算月をしっかり設計
✅ 費用を把握してムリのない立ち上げ
✅ 融資・補助金・会計まで見据えて動く
ここまで整えてから登記すると、
その後の経営が驚くほどスムーズになります。
もし不安があるなら、
「ちょっと相談してみる」くらいの気持ちで税理士に話してみてください。
10分の相談で、後の10年が変わることもあります。
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