会社設立前に決める7つのこと|資本金・決算月・設立費用と届出
会社を設立するときは、登記の手続だけでなく、事業内容、出資の仕方、資金繰りを先に整理することが大切です。設立後に変更できる項目もありますが、手続や費用、関係者との調整が必要になります。
この記事では、株式会社・合同会社を設立する前に決めたい7項目と、主な法定費用、設立後の届出をまとめます。
1. 事業内容と、定款に記載する目的を決める
まず、どのような商品やサービスを提供する会社なのかを整理します。現在行う事業に加え、具体的に計画している事業があれば、定款の目的に盛り込むことを検討します。
ただし、予定のない事業をむやみに並べる必要はありません。取引先に事業内容が伝わるよう、実際の計画に沿って記載しましょう。
許認可が必要な業種では、目的の表現、事務所の設備、資格者の配置など、別の要件がある場合があります。会社の登記ができても、その事業の許認可が取れるとは限りません。設立前に、担当する行政機関へ確認しておくことが重要です。
参考:中小機構・定款の作り方、法務局・定款作成支援ツールの手引き
2. 会社名(商号)を決める
会社名は、読みやすさや覚えやすさに加え、既存の会社やブランドと混同されないかも確認します。
商号と本店の所在場所が、既存の会社と両方同じ場合は登記できません。一方、同じ市区町村に同名の会社があるという理由だけで、登記できなくなるわけではありません。
ただし、登記できることと、商標などの問題がないことは別です。会社名の検索に加え、J-PlatPatで同一・類似の商標を調べ、使用する商品・サービスの分野も確認しましょう。希望するドメインを取得できるかも、併せて確認すると準備が進めやすくなります。
参考:法務省・商業・法人登記Q&A、INPIT・商標の事前調査
3. 本店所在地を決める
自宅、賃貸事務所、コワーキングスペースなど、事業の実態に合う場所を選びます。住所を借りられるサービスでも、法人登記や事業利用、郵便物の受取りに対応しているかは契約ごとに確認が必要です。
特に、自宅や賃貸物件では次の点を確認します。
- 賃貸借契約や管理規約で、事業利用・法人登記が認められるか。
- 許認可が必要な事業の場合、設備や独立した区画などの要件を満たすか。
- 郵便物や取引先からの連絡を確実に受け取れるか。
- 本店所在地が登記事項として公開されることに支障がないか。
移転時には登記や税務の変更手続が必要です。初期費用だけでなく、継続して利用できるかを考えて選びましょう。
参考:法務省・株式会社の設立手続と登記事項、登記事項証明書の交付
4. 株式会社か合同会社かを決める
株式会社と合同会社は、どちらも法人であり、従業員を雇うこともできます。設立費用だけでなく、出資者との関係や将来の資金調達を考えて選びます。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者 | 株主 | 社員。ここでいう社員は従業員ではなく出資者です。 |
| 経営の基本 | 株主と取締役を分けた設計ができます。両者が同じ人の場合もあります。 | 原則として社員が業務を執行します。定款で業務執行社員を定めることもできます。 |
| 株式による資金調達 | 株式を発行します。 | 株式を発行する仕組みではありません。 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 毎年の決算公告 | 義務あり | 義務なし |
「採用するなら必ず株式会社」「合同会社は信用が低い」と、一律に決めるものではありません。取引先との関係、外部出資を受ける計画、運営方法に合う形態を検討しましょう。
5. 資本金と出資の割合を決める
株式会社は資本金1円でも設立できますが、設立できる金額と、事業を続けるために必要な資金は別です。
事務所の初期費用、仕入れ、設備、人件費、売上入金までの運転資金を見積もり、自己資金と借入れなどの調達方法を整理します。「100万~300万円なら必ず適切」という共通の基準はありません。法人口座や融資の審査も、資本金だけで決まるものではありません。
税務上は、基準期間がない設立1期目・2期目について、それぞれの期首の資本金等が1,000万円以上だと、原則として消費税の納税義務は免除されません。1,000万円未満でも、インボイス登録、特定期間の判定、特定新規設立法人などの例外があります。資本金だけを見て「2年間は免税」と判断しないようにしましょう。
複数人が出資する場合は、出資額だけでなく、議決権や意思決定のルールを確認します。株式会社と合同会社では仕組みが異なり、定款の内容も関係します。単純な出資割合の比較だけで、誰がどの事項を決められるかを判断しないことが大切です。
参考:法務省・最低資本金規制に関するQ&A、日本政策金融公庫・創業計画書セルフチェック、国税庁・新設法人の消費税
6. 経営を担う人と報酬・役割を決める
誰が代表者になるか、日々の業務を誰が担うか、報酬をどうするかを整理します。共同で始める場合は、意見が分かれたときの決め方や、退任・退社時の株式や持分の扱いも話し合っておきましょう。
株式会社では取締役などの役員構成、合同会社では業務執行社員・代表社員などを、会社形態に合わせて検討します。取り決めは定款や契約書等に適切に反映する必要があり、ひな型を1枚作れば十分とは限りません。
役員報酬には、法人税の計算上、損金に算入するための要件があります。事業年度の途中で自由に増減してよいとは限らないため、支給額・時期・決議方法を設立時から確認しましょう。
参考:国税庁・役員に対する給与
7. 事業年度と決算月を決める
決算月は、事業の繁忙期だけでなく、決算作業を行う時期や納税資金を準備する時期も考えて決めます。業種だけで一律に適した月が決まるわけではありません。
法人税の確定申告・納付期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。例えば10月に設立して3月末決算にした場合、最初の決算は翌年3月末、法人税の確定申告・納付期限は原則として翌年5月末になります。期限が休日等に当たる場合は、翌開庁日となります。
最初の事業年度を短くすれば、その分早く決算が来ます。短くするだけで納税を先送りできるわけではありません。また、給与に係る源泉所得税など、決算より前に納付時期が来るものもあります。
決算月は、初年度の長さ、売上・仕入れの季節変動、申告作業、納税資金を合わせて検討しましょう。
8. 設立費用は「法定費用」と「依頼する業務の報酬」を分ける
次の表は、登録免許税の軽減措置を適用しない場合の主な法定費用です。資本金そのものや、専門家への報酬、証明書等の交付費用は別に考えます。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金×0.7%。最低15万円 | 資本金×0.7%。最低6万円 |
| 定款認証手数料 | 資本金の額等に応じて原則3万・4万・5万円。一定の場合は1万5,000円 | 不要 |
| 紙の原始定款の印紙税 | 4万円 | 4万円 |
| 電子定款の印紙税 | 不要 | 不要 |
株式会社の定款認証手数料は、資本金の額等が100万円未満なら原則3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、その他は5万円です。100万円未満で、次の条件をすべて満たす場合には1万5,000円になります。
- 発起人が全員個人で、3人以下。
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款に記載・記録されている。
- 取締役会を置く旨が定款に記載・記録されていない。
例えば、この1万5,000円の条件を満たす株式会社を電子定款で設立し、登録免許税が最低額の15万円となる場合、この2項目の合計は16万5,000円です。設立総額ではなく、証明書等の費用や依頼報酬は別途かかります。
参考:法務省・株式会社の設立手続、合同会社の設立手続、日本公証人連合会・定款認証手数料、国税庁・登録免許税の税額表、印紙税額一覧表
専門家へ依頼する場合の確認点
設立登記の申請代理は、司法書士など登記を扱う専門家に依頼します。税理士は、設立前後の税務相談、税務届出、会計・申告などを支援します。
報酬は依頼範囲によって異なります。見積りでは、登記、定款作成・認証、税務届出、顧問契約がそれぞれ含まれるか、法定費用が別途かを確認しましょう。「設立代行無料」という表示も、無料になる業務の範囲や顧問契約等の条件を確認する必要があります。
会社印、事務所、Webサイト、会計ソフトなどの費用も、必要な機能と実際の見積りで予算化します。定額の相場だけで設立後の資金を使い切らないよう、運転資金を残すことが大切です。
参考:法務局・商業法人登記申請手続、国税庁・税理士制度Q&A
9. 設立後の届出と資金調達を準備する
税務・社会保険の主な届出
| 手続 | 原則の期限・確認点 |
|---|---|
| 税務署への法人設立届出書 | 設立登記の日以後2か月以内 |
| 初年度から青色申告をするための承認申請 | 設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了日の、いずれか早い日の前日まで |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払事務所等を開設した日から1か月以内 |
| 都道府県・市区町村への設立等の届出 | 提出先の案内で期限・添付書類を確認 |
| 健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 適用の事実発生から5日以内 |
このほか、消費税の届出やインボイス登録、源泉所得税の納期の特例、従業員を雇う場合の労働保険・雇用保険なども確認します。すべての会社が同じ届出を同じ期限で提出するわけではありません。
社会保険は、社長1人の法人でも、報酬を受けて勤務し被保険者に該当する場合には加入手続が必要です。無報酬の役員しかおらず被保険者となる人がいない場合などは、扱いが異なります。加入の要否が不明な場合は、管轄の年金事務所に確認してください。
参考:国税庁・新設法人の届出書類、給与支払事務所等の届出、日本年金機構・新規適用の手続き、新規加入に必要な書類一覧
法人口座と経理の準備
法人口座の必要書類、審査期間、利用料は金融機関やサービスによって異なります。申込みから利用開始までの期間を見込み、会社の事業内容や取引予定を説明できる資料を用意しましょう。
会社と個人の入出金を分け、領収書・請求書の保管、記帳、支払いの承認方法を決めます。Webサイトや名刺、業務に必要な契約書も、事業の開始時期に合わせて準備します。
融資・補助金は、制度の条件を確認する
創業時の資金調達には、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」、横浜市の「創業おうえん資金」などがあります。いずれも対象要件と審査があり、希望額を必ず借りられるわけではありません。
「小規模事業者持続化補助金」も、一般型通常枠と創業型などで要件が異なります。ホームページ制作が補助対象になる場合でも、経費区分ごとの上限や、Web関連費だけでは申請できない制限があります。「制作費の一定割合が必ず戻る」と考えず、申請する回の公募要領を確認してください。
ここで紹介した持続化補助金は後払いであり、採択と交付決定も別です。利用を予定している契約・発注は、最新の公募要領と交付決定の条件を確認してから進めましょう。設立直後という理由だけで、審査に通りやすくなるものではありません。
参考:日本政策金融公庫・新規開業・スタートアップ支援資金、横浜市・創業おうえん資金、持続化補助金・一般型通常枠、持続化補助金・創業型
まとめ
会社設立前には、事業目的、商号、本店所在地、会社形態、資本金・出資割合、経営体制、決算月を整理しましょう。
そのうえで、法定費用と依頼報酬、設立後の運転資金を分けて予算を作り、届出期限を確認します。税務は税理士、登記は司法書士など、内容に合う専門家へ確認すると、手戻りを減らしやすくなります。
※2026年11月4日確認の公表資料に基づく一般的な解説です。個別の取扱いは、会社形態、事業内容、定款、届出状況等によって異なります。融資・補助金の条件は改定されるため、申込み前に最新の公式案内をご確認ください。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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