無申告

1か月以内なら加算税ゼロ?“自主申告”成功事例

みなさんこんにちは、税理士の岩本隆一です。無申告や税務調査を多く取り扱っている税理士事務所を営んでいます。

「やべっ、確定申告の期限過ぎてた……」

このフレーズ、心当たりある人いませんか?

毎年3月15日に設定されている確定申告の期限。この日を過ぎると多くの人が「もうダメだ」と思ってしまいます。でも、ちょっと待って。そこで諦めるのはまだ早い。

「1か月以内なら加算税ゼロ」みたいな話、聞いたことないですか?

この記事では「期限後申告」という、確定申告の救済措置について解説します。実は「加算税ゼロ」という幻のような話には、条件があって……。

税務署は優しくない。でも手続きはある

税務署という組織は、基本的に「優しい」存在ではありません(すみません、税務署の方々)。期限を守らないことに対しては、厳格にペナルティを課します。それが「加算税」と「延滞税」というシステム。

  • 無申告加算税:申告が遅れた罰金(税率:状況により5%〜30%)
  • 延滞税:納税が遅れた利息(年率:約2.4%〜8.7%*)

これらは容赦なく本来の税金に上乗せされます。でも、制度をよく知っていれば、このペナルティを最小限に抑えることができます。そのカギが「自主申告」です。

*毎年見直しがあります。

「幻の加算税ゼロ」は実在する……が、条件がエグい

「1か月以内なら加算税ゼロ」という話、これは実は完全なデマではありません。国税通則法第66条第8項には確かにそんな規定があります。

でも、その条件がエグすぎる。以下の全ての条件を満たさなければなりません。

  1. 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告
  2. 申告する税金の全額法定納期限(3月15日)までに納付済み
  3. 過去5年以内に無申告加算税等を課されたことがない

おい、待てよ。2番目の条件。「申告は遅れたけど、納税は期限内に済ませていた」って、矛盾してない?

そう、ここがポイント。この条件に当てはまるのは極めて稀なケース。例えば「納税は振替納税で済ませたけど、申告書の提出を忘れていた」とか「源泉徴収でほぼ納税済みだったのに、申告を忘れていた」みたいな特殊なパターンだけです。

つまり、普通の人には「加算税ゼロ」の夢はほぼ見られないのです。残念。

現実的な勝利とは?5%の壁を突破せよ

「加算税ゼロ」が難しいなら、諦めるしか……いや、待て。

実は、多くの人が目指すべきは「無申告加算税5%」という数字です。これは「税務署からの指摘の前に、自分から申告する」という行動で達成できます。

これが「自主申告」の本当の価値。税務署から「おたくの申告できていないので税務調査しますね?」と連絡が来てからでは、無申告加算税は15%〜30%と跳ね上がります。

ぶっちゃけた話をしましょう。

Aさんの例:所得税の納税額が200万円のケース

  • 自分から申告:無申告加算税10万円(5%)
  • 税務署からの指摘後:無申告加算税30万円〜60万円(15〜30%)

この差額20万円〜50万円で、家族旅行に行けるじゃないですか!

*税務署からの指摘後:無申告加算税の税率

ケース〜50 万円50 万円超
初回(調査通知後など)15 %20 %
再犯・5年以内に加算税歴あり25 %30 %

リアルな「期限後申告」あるある

僕が相談を受けてきた中で、よくあるケースを紹介します。

その1:「すっかり忘れてた」系

一番多いのがこのパターン。「確定申告が必要だと知らなかった」「期限を勘違いしていた」と、シンプルに忘れているケース。

20代の若手エンジニアBくんは、副業所得が50万円あり、確定申告が必要でした。でも「会社員だから確定申告はいらない」と思い込んでいたところ、税金の勉強会で「あれ?俺、申告必要だったんじゃ…」と気づいたのです。

すぐに自主申告を行いました。所得税は約15万円(課税される所得が3,300,000円 から 6,949,000円までと仮定した場合)。無申告加算税はたったの7,500円(5%)。安くない?この7,500円で精神的平穏を買えるなら、安すぎる買い物です。

その2:「お金がなかった」系

期限までに納税資金が準備できなくて、申告も先延ばしにしてしまうケース。

飲食店を経営するCさんは、コロナ禍で売上激減。納税資金が工面できませんでした。申告も「お金がないし無理」と諦めていましたが、ある勉強会で「申告と納税は別問題」と聞き、税理士に相談。

結果:すぐに申告だけ行い、納税は分割納付を申請。無申告加算税は5%で済みました。「申告と納税は別」と理解しておくのは重要なことです。

その3:「数年溜まってる」系

一番ヤバいパターン。数年にわたって申告していないケース。

フリーランスのWebデザイナーDさんは、「確定申告めんどくさすぎる問題」により3年間申告せず放置。税務署から何も連絡が来なかったので「バレてないかも」と思っていましたが(甘い!)、クレジットカードの審査で収入証明が必要になってアウト。

税理士に駆け込み、3年分まとめて申告。税務署の調査前だったため、無申告加算税は各年5%。税務署の調査が入っていたら、少なくとも15%以上になっていたでしょう。

期限後申告の具体的手順

期限後申告の手順は、普通の確定申告とほぼ同じです。でも、いくつか注意点があります。

  1. 必要書類の収集
    • 基本は通常の確定申告と同じ(源泉徴収票、領収書など)
    • できるだけ正確な資料を揃える(推測や概算は危険)
  2. 申告書の作成
    • 国税庁の確定申告書等作成コーナー(ウェブ)が便利
    • 「期限後申告」である旨の記載は特に不要
  3. 申告書の提出
    • 窓口・郵送・e-Taxのどれでも可
    • 受付印や受信通知は必ず保管(証拠として重要)
  4. 納税
    • 本税だけでなく延滞税も忘れずに
    • 延滞税の計算は複雑→国税庁のシミュレーターを使うか税理士に相談

ポイントは「証拠を残す」こと。後から「申告していない」と言われないように、提出の証拠はしっかり保管しましょう。

税務のプロが教える「期限後申告」のウラ技Q&A

税務のプロとして、よく聞かれる質問にお答えします。

Q1: 青色申告の特典はどうなるの?

A1: 残念ながら、青色申告特別控除(最大65万円)は期限内申告が条件なので、10万円に減額されます。これは痛い。でも、赤字の繰越などのメリットは残るので、青色申告自体は維持した方がいいです。

Q2: マジで税務署に自主的に行く?じゃあ「バレなければOK」じゃないの?

A2: そのリスク、取る価値あります?

無申告を続けると、いつか必ず「バレ」ます。特に今はマイナンバー制度で所得情報が紐づいているので、以前より発覚率は上がっています。バレた時のダメージは、自主申告の比ではありません。

  • 無申告加算税15%〜30%(通常の3〜6倍)
  • 税務調査による精神的・時間的負担
  • 最悪の場合、重加算税40%や刑事罰も

自主申告は「お得な保険」だと思ってください。

Q3: 還付金があるケースはどうなる?

A3: これは朗報です。還付申告(払いすぎた税金が戻ってくる場合)は、期限から5年以内なら、ペナルティなしで申告できます。例えば、医療費控除を忘れていた場合など。ただし5年を過ぎると還付を受ける権利自体が消滅するので、これは早めに行動した方がいいです。

Q4: 税理士に頼むメリットある?お金かかるよね?

A4: 税理士報酬は、状況によりますが数万円〜十数万円程度。でも、以下のメリットを考えると、費用対効果は高いです。

  • 無申告加算税の計算ミスがなくなる(間違えると追加ペナルティの可能性)
  • 適切な控除で節税できる(実質的に報酬の元が取れることも)
  • 税務署とのやり取りを代行(精神的ストレスの軽減は価値あり)
  • 特に複数年や高額納税の場合、プロの力で大きくコスト削減できる

実例:自営業者のEさんは4年分の申告を放置。自分で計算したら納税額約500万円、諦めかけていたところ税理士に相談。正確な経費計上と各種控除適用で納税額350万円に。税理士報酬15万円を差し引いても135万円得しました。

結論:知っておくべき3つのマインドセット

期限後申告で最も重要なのは、次の3つのマインドセットです。

  1. 気づいたら「即行動」
    • 明日やろうはバカやろう。延滞税は毎日増え続けます。
    • 税務署から連絡が来る前に申告すれば、無申告加算税は5%で済みます。
  2. 「申告」と「納税」は別物
    • お金がなくても、まずは申告だけでも行うべき。
    • 納税は分割納付などの相談が可能です。
  3. 過去は変えられないが、未来は変えられる
    • 期限を過ぎたことを後悔しても何も解決しません。
    • 今から行動して、ダメージを最小限に抑えましょう。

「加算税ゼロ」は幻かもしれませんが、「自主申告による5%」という現実的ゴールは、多くの人が達成できます。後悔の種を、今日から少しでも小さくしましょう。

この記事に関することはいつでもご相談ください。期限後申告でお悩みの方は、岩本隆一税理士事務所までお気軽にご連絡いただければと存じます。一人で悩まず、僕たちと一緒に解決していきましょう。