源泉所得税の税務調査に備えるには?給与・報酬と納付期限の確認ポイント

給与や報酬を支払う事業者は、源泉徴収が必要かを判断し、適切な額を差し引いて納付する必要があります。支払先や取引が増えたときには、従来の処理をそのまま続けてよいか見直してみましょう。

この記事は、給与・報酬を支払う側の事業者向けに、源泉所得税の点検と税務調査に備える資料の整理を解説します。報酬を受け取った方自身の確定申告の要否とは、分けて考える必要があります。

1.源泉徴収する側の義務を確認する

会社や個人が給与や一定の報酬を支払う場合、支払者が税金を差し引いて国に納める仕組みが源泉徴収です。支払者が源泉徴収義務者に当たるか、支払うものが徴収の対象かを確認します。

個人が支払う報酬については、給与の源泉徴収義務を有する個人であるかなどによる例外もあります。法人と個人、給与と報酬を一律に扱わないようにしましょう。

出典:国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2502.htm

2.給与・賞与は税額表と申告書を照合する

給与と賞与は、使う税額表や計算方法が異なります。給与については支給方法や扶養控除等申告書の提出状況により、使う表や欄を確認します。

毎月の給与台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書、振込記録を対応させ、支給額・社会保険料等の控除額・源泉徴収額を追えるように整理しましょう。過去の処理を点検するときは、その年の制度と税額表に基づいて確認します。

賞与は原則として「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。ただし、前月に給与の支払がない場合や、社会保険料等控除後の賞与が同控除後の前月給与の10倍を超える場合などは、月額表を使う別の計算方法によります。賞与額をそのまま月額表に当てはめるのではなく、賞与の計算期間等に応じた国税庁の計算手順を確認してください。

出典:国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2523.htm

退職手当等は給与・賞与とは別に計算します。「退職所得の受給に関する申告書」の提出の有無、勤続年数などを確認し、退職手当等の計算方法に従って源泉徴収します。

出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm

出典:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm

3.外注費・報酬は支払先と仕事の内容を確認する

フリーランスへ支払えば、すべて源泉徴収が必要になるわけではありません。報酬の種類と、受取人が居住者である個人か内国法人かなどにより、対象範囲が異なります。

居住者である個人への原稿料・講演料や一定の資格者への報酬などは、源泉徴収の対象になるものがあります。請求書の名目だけで判断せず、実際に何の仕事への支払なのかを確認してください。非居住者や外国法人への支払は、国内源泉所得への該当や租税条約等を別途確認します。

出典:国税庁「No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2885.htm

出典:国税庁「No.2884」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2884.htm

報酬に含まれる消費税等は、原則として源泉徴収の対象額に含みます。ただし、請求書等で報酬額と消費税等が明確に区分されていれば、報酬額だけを対象として差し支えない扱いがあります。

給与か事業所得かは、契約名や帳簿科目だけでなく、指揮監督や時間的拘束、自己の責任で代替者を手配できるかなど、実際の関係を総合して判断します。個別の事実関係に応じた判断が必要であり、下記の裁決事例をすべての取引に一律に当てはめるものではありません。

出典:国税不服審判所・公表裁決事例(裁決事例集第79集)

https://www.kfs.go.jp/service/JP/79/14/index.html

出典:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm

4.納付期限と納期の特例を区別する

源泉徴収した税金は、原則として実際に給与などを支払った月の翌月10日までに納付します。

源泉所得税の納付期限と納期の特例
原則:支払月の翌月10日源泉徴収した税金は、実際に給与などを支払った月の翌月10日までに納付します。
納期の特例を受けている場合給与の支給人員が常時10人未満などの要件を満たし、申請により適用を受けると、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日が納期限です。
特例の対象は給与・退職金と、税理士や弁護士などへの一定の報酬に限られ、すべての外注報酬が含まれるわけではありません。
出典:国税庁 No.2505。期限が土日祝日などに当たる場合は休日明けとなります。本文の説明を図にまとめたものです。

給与の支給人員が常時10人未満で一定の要件を満たす源泉徴収義務者は、申請により、対象となる税金を半年分まとめて納める納期の特例を利用できます。対象は給与・退職金と、税理士や弁護士などへの一定の報酬に限られ、すべての外注報酬が含まれるわけではありません。

適用を受けている場合、対象分の1月から6月までの徴収分は7月10日、7月から12月までの徴収分は翌年1月20日が納期限です。土日祝日などに当たる場合は休日明けとなります。申請直後の適用開始月や、人数が増えて要件を満たさなくなった場合の手続も確認してください。

出典:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

5.調査に備えて支払から納付までの資料をつなぐ

まず、給与・賞与・退職金・報酬の支払を区分し、対象期間の資料を整理します。支払先、支払日、金額、源泉徴収の判断、徴収額、納付記録を対応させると、処理の経緯を説明しやすくなります。

  • 給与台帳、源泉徴収簿、関連する申告書
  • 報酬の契約書、請求書、支払明細と振込記録
  • 納付書の控えや電子納税の記録
  • 納期の特例の申請内容と適用開始時期
  • 過去に訂正した内容と、その判断資料

税務調査の連絡が来たら、対象税目・期間と依頼された資料を確認しましょう。資料の提示・提出は調査に必要な範囲で行われます。不明な依頼は必要性や提出方法を確認し、用意できない事情があれば具体的に伝えて相談します。

出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」

https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm

実務上の対応として、すぐ確認できない事実は記録を調べてから回答する旨を伝えるとよいでしょう。

まとめ

源泉所得税の点検では、支払者・受取人・支払内容を確認し、給与計算や報酬の判定から納付までをつなげて確認します。納期の特例を利用していても、対象外の報酬まで半年納付にしないよう注意が必要です。

徴収漏れや納付漏れの可能性に気づいた場合は、支払記録や納付状況を整理して、税務署や税理士に対応を確認してください。事実と資料に基づいて処理を確認し、必要な訂正や納付の手続を進めることが大切です。

税務調査についてのご相談は、当事務所の税務調査サポートをご覧ください。

https://iwamototax.com/tax-audit/

※2026年11月4日時点の一般的な解説です。個別の支払の取扱いは、当事者や取引内容などによって異なります。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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