贈与税の税務調査で確認されること|契約・入出金・財産評価の準備

親や祖父母から受け取ったお金、不動産、株式について税務署から連絡を受けたら、まず「いつ、誰から、何を、どのような約束で受け取ったのか」を整理しましょう。

贈与税の確認では、振込金額だけでなく、贈与の合意や財産の管理状況、申告で使った評価額、適用した制度を確かめることが大切です。この記事では、贈与税の税務調査に備えて集めたい資料と、説明するときに注意したい点をまとめます。

贈与を資料でつなげて確認する流れ

契約、財産の移転、管理、評価、申告をつなげて確認します。

贈与の合意を確認贈与契約書や当時の手紙・メールなど、双方が何を約束したかを確認できる記録を整理します。
財産の移転を確認贈与者側の出金と受贈者側の入金が対応する取引明細や、不動産の登記、株式の移管の記録を確認します。
その後の管理・使用口座の開設や通帳の管理、運用を誰が行っていたかを確認します。名義だけで誰の財産かは決まりません。
贈与時の評価を確認不動産や株式は、贈与時の評価の根拠となる資料を確認します。現在の残高や購入額だけでは確認できない場合があります。
申告・届出の記録暦年課税・相続時精算課税などの適用制度や特例、申告書の提出と納付の記録を確認します。
振込みがあることだけで、贈与・貸付け・預り金のどれに当たるかが決まるわけではありません。
出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」、No.4402・No.4602・No.4638。本文の説明を図にまとめたものです。

1.連絡の対象を確かめ、贈与の経緯を時系列にする

税務署から申告内容の見直しや確認を求められたときは、税務調査なのか、行政指導なのかを確かめます。調査であれば、対象の税目・年分、確認する財産、必要な資料、日程や場所を確認してください。実地調査の事前通知は原則ですが、例外もあります。

贈与税の連絡なのか、相続税の調査に関連して生前の財産移転を確認しているのかによって、準備する資料も変わります。すべての案件で同じ年数の通帳を用意すれば足りるとは限りません。求められた資料の範囲が分からないときは、担当者に確認しましょう。

次の項目を年ごと、財産ごとに並べると、資料との対応を確かめやすくなります。

  • 贈与者と受贈者、両者の関係
  • 約束をした日、契約書の日付、実際に振り込んだ日や引き渡した日
  • 現金、不動産、株式などの財産の種類と数量・金額
  • どの口座や財産から出て、どこに移ったか
  • その後、誰が管理・使用していたか
  • 申告の有無、適用した課税方式・特例、納付の記録

契約日と振込日が異なる場合は、両方を残します。税務上の取得時期は、原則として書面による贈与なら契約の効力が生じた時、口頭による贈与なら履行があった時です。振込日だけで申告する年分を決めないようにしてください。

出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2・13・20
国税庁「相続税法基本通達」1の3・1の4共-8~10

2.契約・資金移動・評価の資料をそろえる

資料は、単に集めるだけでなく「何を確認するためのものか」が分かるようにまとめます。次は準備の例であり、すべてを一律に提出するという意味ではありません。

贈与の合意を確認する資料

贈与契約書がある場合は、その原本や控えを確認します。当時の手紙やメールなど、双方が何を約束したかを確認できる記録も整理してください。契約書がないことだけで贈与が成立しないわけではありませんが、後から経緯を説明する資料は重要です。

口座と資金の動きを確認する資料

対象となる振込について、贈与者側の出金と受贈者側の入金が対応する取引明細を確認します。通帳にない期間は、金融機関で取引履歴を取得できるか調べます。現金で受け渡した場合も、当時の出金記録、受取記録、その後の使途など、実際に残っている資料を整理しましょう。

振込記録は資金移動を説明する資料になりますが、振込みがあることだけで、その資金が贈与・貸付け・預り金のどれに当たるかが決まるわけではありません。

財産の内容と評価を確認する資料

  • 不動産:贈与契約書、登記事項証明書、持分、固定資産税評価額や路線価等を用いた計算資料
  • 上場株式等:移管・取引の記録、銘柄・数量、評価の根拠
  • 非上場株式:株主の状況、会社の決算資料、評価明細書など
  • 申告関係:贈与税申告書、添付書類、提出・受付と納付の記録

不動産は、贈与の内容によって評価方法が異なります。非上場株式も、取得者の立場や会社の状況に応じて評価方法を検討します。現在の残高や購入額だけでは、贈与時の評価を確認できない場合があります。

出典:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
参考:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」Q2

3.家族間の資金移動は、名称だけで判断しない

家族名義の預金

子や配偶者の名義の口座でも、その名義だけで誰の財産かは決まりません。資金を出した人、贈与の合意、口座の開設や管理・運用の状況などを確認します。

通帳や印鑑を誰が持っていたかは確認事項の一つですが、それだけで結論を出すものではありません。たとえば親が子のために管理していた事情と、親自身の財産として管理していた事情は分けて整理する必要があります。契約書や申告書があることだけでも、すべてが決まるわけではありません。

参考:国税不服審判所「預貯金」の公表裁決事例要旨
※個々の裁決はその事案の事実関係に基づく判断です。

国税不服審判所の公表裁決:子名義の口座への毎年の入金が、贈与と認められた事例

国税不服審判所が公表した令和3年9月17日の裁決では、被相続人が「贈与証」を作成し、平成13年から平成24年まで、当時未成年だった子の名義の普通預金口座へ、子の母を通じて毎年一定額を入金していた預金が争われました。原処分庁(税務署側)は、母が贈与証の内容を理解しておらず贈与は成立していないとして、相続財産に含まれると主張しました。

審判所は、子の唯一の親権者だった母が贈与証を預かり、口座開設時から通帳等を管理して毎年入金していたことから、法定代理人として贈与を受諾していたと認めました。口座には利息を除き毎年の入金以外の入金がないことも踏まえ、預金は子に帰属し、相続財産に含まれないと判断しています。

出典:国税不服審判所「令和3年9月17日裁決」(公表裁決事例)

生活費・教育費として受け取ったお金

扶養義務者から、通常必要な生活費や教育費として必要な都度受け取り、直接その費用に使ったものには、贈与税がかからない取扱いがあります。一方、同じ名目でも、使わず預金した分や投資・不動産の購入に充てた分まで当然に非課税になるわけではありません。送金記録と支払先の領収書などを対応させて確認します。

出典:国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」

親から借りたお金

借入れか贈与かは、借用書の名称だけでなく、返済能力や実際の返済状況などから確認します。返済計画と入出金の記録をそろえましょう。実質的には贈与なのに貸付けの形にしている場合や、ある時払いの催促なしといった場合には、借入金自体が贈与として扱われます。無利子の場合には、利息に相当する利益が贈与として扱われることもあります。

出典:国税庁「No.4420 親から金銭を借りた場合」

4.毎年の贈与と、申告・届出の条件を確かめる

毎年同じ金額だから、一括の贈与とは限らない

毎年それぞれ贈与の契約をしている場合と、最初から複数年にわたる給付を約束している場合は、区別します。国税庁は、後者について、約束をした年に定期金に関する権利の贈与として課税されると説明しています。

確認するのは実際の契約・約束の内容です。金額や振込日を毎年変えるだけで、課税関係が解決するわけではありません。過去の事実に合わせて記録を整理し、実態と違う契約書を後から作らないことが大切です。

出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」Q1

110万円の確認は、受け取った側で行う

暦年課税の基礎控除は、贈与者ごとに110万円ではなく、受贈者1人につき1年間で110万円です。父母など複数の人から受け取った場合は、その年の暦年課税の贈与を合計して確認します。

相続時精算課税は別の制度です。2024年1月1日以後の贈与には年110万円の基礎控除があり、暦年課税の110万円とは別枠です。相続時精算課税を選んだ贈与者が複数いる場合も、この基礎控除は合計で年110万円です。初めて選択するときの届出や、特別控除を使うための期限内申告は別に確認します。過去に選択した相手からの贈与を、後の年だけ暦年課税に戻すことはできません。

住宅取得等資金の非課税のように、税額が出なくても申告が要件となる特例もあります。「納税額がないから手続は不要」と判断せず、その年に使った制度と提出記録を確認してください。

出典:国税庁「No.4410 複数の人から贈与を受けたとき」
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

5.分かることと、確認が必要なことを分けて答える

調査で説明するときは、記録で確認できた事実、記憶している内容、まだ分からない点を分けます。資料を見なければ答えられないときは、その旨を伝え、確認方法と回答時期を相談しましょう。

  • 資料が足りないときは、不足している期間や内容を明らかにする
  • 家族の認識が違うときは、話を合わせず、それぞれの説明と記録を確認する
  • 説明や申告に誤りが見つかったときは、訂正すべき内容を速やかに確認する
  • 調査の指摘を受けたときは、対象年分、財産、評価方法、計算の根拠を確かめる

調査の結果を踏まえて申告が必要となる場合も、未申告なら期限後申告、提出済みの申告の増額訂正なら修正申告など、状況を分けて検討します。修正申告の勧奨に応じるかは任意です。自分で提出した修正申告自体は不服申立ての対象にならないため、説明と内容を理解したうえで判断してください。更正の請求は別途、要件や期限を確認します。

出典:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問25・26
国税庁「No.4429 贈与税の申告と納税」

6.贈与の資料は、将来の相続も見据えて残す

贈与契約書、資金移動の記録、申告書、評価資料は、年分と贈与者が分かる形でまとめておきましょう。資料整理のために、当時の原本や電子データを上書きしたり、作成日を遡らせたりしないでください。

贈与税の確認が済んでも、相続時精算課税の精算や、暦年贈与の相続税への加算で、贈与時の資料が必要になることがあります。保管の要否は一律の年数だけで決めず、適用制度、相続の状況、調査や手続が残っていないかを確認して判断してください。

暦年贈与の加算は、相続等で財産を取得した人が、その被相続人から加算対象期間内に贈与を受けていた場合に確認します。2024年1月1日以後の贈与から、加算対象期間は最長7年に延びますが、相続開始日に応じて次のように段階的に変わります。

  • 2026年12月31日までの相続開始:相続開始前3年以内
  • 2027年1月1日〜2030年12月31日の相続開始:2024年1月1日から死亡の日まで
  • 2031年1月1日以後の相続開始:相続開始前7年以内

延長された相続開始前3年を超える部分には、贈与財産の価額の合計から総額100万円まで加算しない取扱いもあります。こうした計算を確認できるよう、贈与時の資料を残してください。

出典:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

まとめ

贈与税の税務調査に備えるには、契約、実際の財産移転、財産の管理、評価、申告・届出をつなげて確認することが重要です。同じ金額の送金や家族名義の口座という一つの事情だけで、課税関係を決めつけないようにしましょう。

当時の記録を残し、分かることと確認が必要なことを整理すると、税務署や税理士へ状況を具体的に説明できます。

※2026年11月5日に確認した公表資料に基づく一般的な解説です。対象年分、契約内容、財産の種類、適用した制度などによって取扱いは異なります。

税務署から連絡が来てお困りの方は、税務調査サポートのページで対応内容と流れをご確認ください。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。

お電話でのご相談

045-900-6098
電話受付:平日9〜17時、土日祝・夜間は事前予約

横浜市地域密着・
スピード対応

横浜市全域対応

横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区

※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。

お問い合わせ