【相談事例】飲食料品の消費税が1%になったら? 簡易課税の寿司店で確認したいこと

店内飲食と持ち帰りの両方を行う寿司店の店主から、飲食料品の消費税率が1%になった場合、納税額はどう変わるのかというご相談を受けました。消費税は簡易課税で申告されています。

結論:店内と持ち帰りの売上げを分け、簡易課税の特例を踏まえて計算します

飲食料品にかかる消費税率を一時的に引き下げる法案が、国会で審議されています。案では2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、対象となる飲食料品の税率を8%から1%に引き下げる予定です。

この記事は2026年11月3日時点の法案と国税庁の案内に基づきます。法案はまだ成立しておらず、時期や内容が変わる可能性があります。

店内と持ち帰り、何が変わる?

店内飲食と持ち帰りを分ける必要があるのは、現在も同じです。今は店内飲食が10%、持ち帰りの飲食料品が8%。法案が成立すると、原則として次のようになります。

  • 店内で食べる寿司:10%のまま
  • 持ち帰りの寿司、単に届ける出前:8%から1%へ
  • 酒類:10%のまま

出張先で調理・配膳するケータリングなどは、単なる出前と異なり、原則10%です。2029年4月1日には、引下げ対象の飲食料品の税率が8%に戻る予定なので、レジや会計ソフトは開始時だけでなく、戻すときの設定も必要になります。

簡易課税の持ち帰り分には特例を予定

簡易課税は、売上げにかかる消費税をもとに、仕入れなどにかかった消費税を一定の割合で計算する方法です。

国税庁の案内では、1%対象の飲食料品の売上げについて、その売上税額と同額を仕入税額とみなす特例が予定されています。この対象部分の納付税額は実質ゼロになりますが、還付を受ける仕組みではありません。

店内飲食や酒類など、1%対象でない売上げは別に計算します。寿司店全体の納税額がゼロになるとは限らないため、売上げの区分が大切です。

レジや請求書で確認したいこと

  • 店内、持ち帰り、酒類の売上げを税率ごとに区分できるか
  • レジや会計ソフトが1%に対応する時期
  • レシートやインボイスに税率ごとの金額が正しく記載されるか
  • 2029年4月に8%へ戻す設定に対応できるか

8%と1%の取引が同じ請求期間に混在する場合は、税率ごとに区分して記載するなどの対応が必要です。システム会社に対応時期を早めに確認しておきましょう。

返品や価格表示はどうする?

制度開始前に8%で販売した飲食料品が、開始後に返品された場合は、元の8%で調整します。また、一定の定期供給や通信販売には、開始後も8%を適用する経過措置が予定されています。契約日や申込日などの条件を確認しましょう。

税込価格をすぐに変更することが困難な事情があり、誤認を防ぐ掲示などを行う場合には、2027年2月1日から5月31日まで、旧税率または新税率に基づく税込価格の表示が認められる特例も予定されています。税抜価格だけの表示が認められるという意味ではありません。

本則課税のほうが有利になる場合もあります

本則課税では、売上げにかかる消費税から、実際の仕入れや経費にかかった消費税を差し引いて計算します。差し引く税額が大きい場合、簡易課税より納税額が少なくなったり、還付が生じたりすることがあります。

例えば、法案が成立し、次の条件をすべて満たした場合を考えてみます。

  • 1%対象の持ち帰り売上げ:税抜1,000万円、消費税10万円
  • 控除できる10%対象の設備投資:税抜200万円、消費税20万円
  • ほかの課税取引はなく、全額について仕入税額控除の要件を満たす

この例では、簡易課税の特例なら、持ち帰り売上げに対応する納税額は実質0円です。一方、本則課税なら、売上税額10万円から設備投資の消費税20万円を差し引き、10万円の還付が生じる計算になります。

これは比較を分かりやすくするための単純な例です。実際は店内飲食・酒類の売上げ、食材や家賃などの経費、インボイスの保存状況なども含めて計算します。設備投資があっても、必ず本則課税が有利になるわけではありません。

また、法案には、飲食料品を販売する簡易課税事業者が、一定の届出により本則課税に移る特例が盛り込まれています。届出の期限や、その後の適用関係にも注意が必要です。変更する前に、少なくとも当期と翌期以降の影響を試算することが大切です。

※この比較は、実際に受けた相談に関連する一般的な説明であり、相談者から「本則課税に変えるべきか」と質問されたという意味ではありません。法案は2026年11月3日時点で未成立です。

本則課税に変更する特例の届出手順

今の法案が成立した場合、簡易課税を使っていて飲食料品を販売している事業者は、特例で次のように本則課税へ変更できる予定です。

  1. 「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を所轄の税務署へ提出します。
  2. 提出期限は、2027年4月1日を含む課税期間の末日までです。
  3. 届出書の適用開始課税期間にその期間を書き、参考事項に「飲食料品特例」と記入します。

この特例では、その期間について簡易課税の原則2年間の継続要件も適用されません。例えば個人事業主なら、2027年12月31日までに提出すれば、2027年1月〜12月の1年全体が本則課税になります。4月以降だけではありません。

法案成立後なら、4月1日より前の提出も予定されています。ただし今はまだ未成立なので、正式な成立・届出様式を確認してから手続きしましょう。国税庁Q&A・問3-5

まとめ

今回の寿司店では、まず店内・持ち帰り・酒類を区分し、簡易課税の特例を踏まえて計算することが大切です。制度は審議中ですので、成立後の正式な案内を確認しながら準備しましょう。

※税率の区分や届出の必要性は、取引や事業者の状況によって異なります。公開時点でも法案の審議状況をご確認ください。

出典:国税庁・飲食料品の税率引下げ案内、国税庁パンフレット、衆議院・法案審議経過

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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