【相談事例】1,000万円で購入した不動産小口化商品は、相続税対策になりますか?
ご相談内容
子どもが1人いるAさんは、今年、相続対策のつもりで不動産小口化商品を10口、合計1,000万円で購入しました。
「相続が起きたときには、買った金額よりも低く評価されると聞きました。本当に相続税対策になるのでしょうか?」
結論:評価が下がる可能性はありますが、大きな節税になるとは限りません。
国税庁が公表した通達案では、対象となる不動産小口化商品の目的となっている貸付用不動産の価額を、原則として相続時などの時価で評価することが予定されています。購入した時期による一律の除外はありません。まずは、持っている商品が対象になるか確認することが大切です。
なぜ相続対策といわれていたのでしょうか
不動産小口化商品は、大きな不動産への投資を小さな口数に分け、少額から購入できる商品です。契約の形にはいくつか種類があります。
これまで、商品によっては、相続税を計算するときの評価額が購入額より低くなる場合がありました。そのため、現金のまま保有するより、相続税の負担を抑えられる方法として紹介されることがありました。
ただし、商品の収益性や換金のしやすさには違いがあり、必ず節税できるわけではありません。
通達案では何が変わりますか
国税庁は2026年9月18日、「貸付用不動産の評価について」の通達案を公表しました。意見募集は10月18日に終了していますが、現時点では確定版は公表されていません。2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与からの適用が予定されています。
対象は、不動産特定共同事業法第2条第3項第1号・第3号等に係る一定の権利や、所定の分割された不動産信託受益権です。同項第2号型の匿名組合契約は、通達案2項(1)の列挙には含まれていません。ただし、匿名組合であればあらゆる形態が案の全規定から対象外になる、と一律には判断できません。通達案では、対象となる権利の目的である貸付用不動産の価額を、購入からの年数に関係なく、相続などの時点における「通常の取引価額」、つまり時価で評価することが原則です。
一方、一般の貸付用不動産については、課税時期前5年以内の有償取得・新築等が対象となる基本的な枠組みです。相続・遺贈・贈与で取得された不動産も、取得の経緯によっては含まれます。取得時期・取得経緯と所定の除外要件を確認する必要があり、「相続で取得した物件は対象外」と一律にはいえません。一定の条件を満たせば、取得価額を地価の変動や建物の減価償却などで補正した額の80%で評価する方法も示されています。特定小口化商品に係る貸付用不動産には、この5年の取得期間の限定がない点で扱いが異なります。
Aさんの評価額の目安は?
通達案には、元本等相当額が適正な価格情報に基づくと認められる場合、次のP1で評価し、P2・P3のいずれか又は両方が明らかなときは、P1と明らかな価格のうち最も低い額を選ぶこともできる方法が示されています。比較して最低額を採用することが義務になるわけではありません。
- P1:元本等相当額の90%(事業開始時期等に応じた補正の定めがあります)
- P2:課税時期の貸付用不動産の精通者意見価格。事業者が有する適正な価格情報を含みます。
- P3:課税時期前1年以内に、事業者の依頼で不動産鑑定士が鑑定評価した貸付用不動産の価額のうち、課税時期に最も近い日の評価額の95%
なお、事業開始から5年以内の商品では、1つ目は地価の変動などを補正した額の95%です。この5年は、Aさんが買ってからではなく、事業が始まってからの期間で判断します。
ここで、Aさんは既に事業開始から5年を超えた商品を今年途中購入したものと仮定します。「元本等相当額」は、事業開始時に設定された商品の価格のうち、元本を構成する貸付用不動産の価格に相当する部分です。途中購入した価格や出資額と同じとは限りません。Aさんの対象不動産部分の持分に対応する元本等相当額が1,000万円で、価格変動による修正を要せず、上記の方法を使える条件を満たすとすると、P1の目安は次のようになります。
1,000万円 × 90% = 約900万円
約900万円は、通達案に基づいて条件を置いた、対象貸付用不動産部分の持分相当の評価額の目安です。商品全体の評価額や相続税額が900万円になるという意味ではありません。商品に含まれる他の資産・負債の評価は別に確認します。途中購入額1,000万円をそのまま計算の基礎にできるとは限らず、P2・P3の明らかな価格があれば、P1とそれらのうち最も低い額で評価することもできます。また、評価額が100万円下がっても、相続税そのものが100万円減るわけではありません。実際の税額は、ほかの財産や相続人の状況などによって変わります。
今後どうすればよいでしょうか
まず、通達案が出たからといって、あわてて売る必要はありません。売却には条件や手数料があり、希望する時期や価格で売れないこともあるためです。
契約書や商品資料で、契約の種類、対象不動産の価格にあたる部分、事業開始日、売却条件などを確認しましょう。そのうえで、確定版の内容を待ち、ほかの財産や将来の生活資金も含めて、ほかの対策とあわせて検討することが大切です。
また、適用予定日より前であっても、取引の目的や経緯などによっては、財産評価基本通達の総則6項という例外的な取り扱いが問題になる可能性があります。節税目的なら必ず否認されるという意味ではありませんが、時期だけで安全とは判断できません。
まとめ
不動産小口化商品は、相続税だけでなく、収益や管理、売却のしやすさも含めて判断したい商品です。Aさんのようにすでに購入している場合は、まず契約内容を整理し、確定版を確認してから落ち着いて対応しましょう。
※この記事は、2026年11月3日時点の通達案に基づく架空の相談事例です。確定版で内容が変わる可能性があります。個別の評価や税額は契約内容などによって異なりますので、税理士にご相談ください。
出典:国税庁「貸付用不動産の評価について」通達案(e-Gov・案件番号410080055)
通達案本文:「貸付用不動産の評価について(案)」1項・2項
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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