非上場株式の相続税評価はどう変わる?見直し案と最新動向

こんにちは。今回は、非上場株式の相続税評価の見直しについて取り上げます。

自社株を次の世代に引き継ぐ経営者にとって、株式の評価方法は、承継計画や納税資金の準備に関わる重要な問題です。「新ルールで税負担が増えるのか」「いつから変わるのか」と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まず、押さえておきたい点は次の3つです。

  • 国税庁は新たな評価方法の案を示していますが、決定した制度ではありません。
  • 2026年10月には、与党内から現行案を前提としない再検討を求める動きが出ています。
  • 自社への影響は一律ではなく、現在の株式評価や承継計画を確認することが大切です。

最新動向:新しい評価方法は、まだ決まっていません

国税庁は2026年8月、会社規模に応じた現行の評価体系を見直し、一般の評価会社について「残余利益方式」を原則とする案を示しました。ただし、国税庁の資料自体が、評価水準や税負担を含む最終的な判断は税制改正のプロセスで行うとしています。

出典:国税庁・見直し骨子(PDF)

その後、事業承継や企業の成長への影響について慎重な検討を求める意見が出ています。10月29日には、自民党日本成長戦略本部が、国税庁の現行案を前提とせず、期限や結論ありきではない議論を求める緊急決議をまとめました。

出典:決議全文・小林史明議員公式サイト

この決議は、政府が見直し案の撤回を正式に決定したことを意味するものではありません。一方で、この案のまま導入されるとも言えない状況です。本稿の確認日時点では、最終的な評価方法や適用時期を確定事項として扱わないことが重要です。

現行の非上場株式は、どのように評価する?

会社規模と、取得する株主の立場で方法が異なります

非上場株式は、市場で毎日売買される上場株式とは異なり、相続・贈与の際に一定のルールで評価します。同族株主等が取得する場合の原則的評価では、会社を総資産価額、従業員数、取引金額によって区分します。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は両者の併用が原則です。

類似業種比準方式は、類似する上場会社の株価を基に、配当・利益・簿価純資産を比較して評価する方法です。純資産価額方式では、会社の資産や負債を原則として相続税評価に置き換えて計算します。

なお、選択できる評価方法や、一定の資産を多く保有する会社等の特別な取扱いもあります。また、同族株主以外の株主等には配当還元方式が適用される場合があり、会社の規模だけでは判断できません。

出典:国税庁No.4638「取引相場のない株式の評価」

国税庁の見直し案は、何を変えようとしている?

残余利益方式は、純資産に利益をそのまま足す方法ではありません

案の中心は、会社の簿価純資産を基礎として、収益を生み出す力も評価に反映する考え方です。

ここでいう残余利益は、会社の利益そのものではありません。通常期待される利益を上回る部分を捉え、その将来分を現在の価値に換算して評価へ反映するものです。利益が通常期待される水準を下回る場合には、減額方向に働く考え方も示されています。

国税庁の8月資料では、過去数年間の平均利益を使うイメージが示されました。ただし、利用する数値や計算期間などは検討中であり、決算書の利益を単純に数年分加算すればよいわけではありません。

出典:国税庁第5回資料(PDF)

現行制度と案の違い

比較点現行制度の原則国税庁案
一般の会社の評価規模に応じた方法規模によらず残余利益方式を原則とする
評価の基礎上場会社との比較や相続税評価に置換した純資産など簿価純資産と収益獲得能力
特別な会社・株主特定の評価会社や少数株主等に別取扱い対象範囲や計算方法も見直す
制度の位置付け現在の評価ルール最終決定前の検討案

評価方式の一本化といっても、すべての非上場株式を同じ方法で評価する案ではありません。特定の評価会社に対する純資産価額方式や、少数株主に対する配当還元方式についても、対象や算式の見直しが示されています。

事業承継への影響は、会社ごとに異なります

小さい会社なら必ず負担が減るわけではありません

評価額が上がるか下がるかは、現在の評価方法、純資産、収益の状況などによって異なります。国税庁の第5回議事要旨でも、大会社等で評価額が上がる可能性がある一方、小会社・赤字低収益企業を中心に下がる場合もあると説明されています。

出典:第5回議事要旨(PDF)

経済産業省・中小企業庁等は、資産規模や収益性、子会社保有の状況によって評価額が大きく増え、承継計画に影響することを懸念しています。そのため、会社の実態に応じた分析と慎重な議論を求めています。

出典:意見書(PDF)

株式の評価額と、実際に納める相続税・贈与税は同じではありません。税額はほかの財産、控除、取得者の状況、適用可能な制度等によって変わります。評価額の増加率をそのまま税額の増加率と読み替えないようにしましょう。

試算の数字を確定ルールと混同しない

9月資料には加算期間5年、還元率8%とした試算等がありますが、検討のために置いた条件です。今後必ず5年・8%で計算すると決まったわけではありません。

出典:第6回資料(PDF)

よくあるご質問

A.本稿の確認日時点で、適用開始日を確定事項として案内できる公式決定は確認できていません。正式な公表を確認する必要があります。

A.報道だけを理由に急ぐことはおすすめしません。現行制度での評価と税負担に加え、後継者、経営権、資金繰りなどを含めて検討する必要があります。

A.直近の決算書、株主構成、現在の株式評価、承継予定時期を整理しましょう。株式を誰にどのように引き継ぐか、納税資金をどう確保するかの確認は、制度の結論に左右されにくい準備になります。

まとめ:決まったことと検討中のことを分けて確認しましょう

非上場株式の評価見直しは事業承継に大きく関わるテーマですが、現時点では新方式の内容も適用時期も確定した制度として説明できる段階ではありません。

今後の公表内容を確認しながら、自社の現状と承継計画を整理することが大切です。一律の増税・減税を前提とせず、個別の事情に応じて検討していきましょう。

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本記事は2026年11月1日時点で確認できた公表資料に基づく一般的解説です。個別の判断は会社や取得者の状況に応じて確認が必要です。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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