社会福祉法人の決算・会計の基本|計算書類・区分・スケジュールと税務のポイント

社会福祉法人の決算・会計の基本

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「社会福祉法人の会計は、一般の会社と何が違うの?」「決算で毎年バタバタしてしまう」「所轄庁の指導監査で会計のことを指摘されたくない」。社会福祉法人の理事長や事務長の方から、こうしたご相談をよくいただきます。

社会福祉法人の会計は、株式会社の会計とは別の「社会福祉法人会計基準」というルールで動いています。計算書類の種類も、区分の考え方も、決算のスケジュールも独特です。一方で、押さえるべきポイントは決まっているので、全体像をつかんでしまえば決して難しいものではありません。

今回は、社会福祉法人の決算・会計の基本を、はじめて担当される事務職員の方や、経営者として全体を把握しておきたい理事長の方に向けて整理しました。

社会福祉法人の会計は「社会福祉法人会計基準」で決まっている

社会福祉法人の会計処理は、厚生労働省令である「社会福祉法人会計基準」と、その運用を示した通知(「運用上の取扱い」「運用上の留意事項」)に従って行います。どの事業を行っていても、法人の規模にかかわらず、すべての社会福祉法人が同じ基準で計算書類を作成します。

一般の会社の会計と大きく違うのは、次の3点です。

  • 「利益」ではなく「資金の動き」と「純資産の増減」を見る:もうけを出すことが目的ではないため、資金の流れを示す「資金収支計算書」が重要な役割を持ちます。
  • 事業・拠点ごとに区分して計算書類を作る:法人全体の数字だけでなく、施設や事業所ごとの数字を区分して開示します。
  • 基本金・国庫補助金等特別積立金など独自の科目がある:寄附や補助金で取得した施設の扱いが、会社の会計とは異なります。

決算で作る「計算書類」と「附属書類」

社会福祉法人が毎年度作成する書類は、大きく「計算書類」「附属明細書」「財産目録」の3つに分かれます。

右にスクロールしてご確認ください

書類内容会社の会計でいうと
資金収支計算書1年間の支払資金の収入と支出を、事業活動・施設整備等・その他の活動に分けて示すキャッシュ・フロー計算書に近い
事業活動計算書サービス活動・サービス活動外・特別の3区分で、収益と費用、純資産の増減を示す損益計算書に近い
貸借対照表年度末時点の資産・負債・純資産の状態を示す貸借対照表
附属明細書借入金、寄附金、補助金、固定資産、引当金などの内訳勘定科目内訳書に近い
財産目録年度末時点のすべての資産・負債を一覧にしたもの―

3つの計算書類は、それぞれ「法人全体」「事業区分別」「拠点区分別」の単位で作成します。このため、1法人で施設が複数あると、作成する様式の枚数はかなり多くなります。

会計の区分は「事業区分」「拠点区分」「サービス区分」の3階層

社会福祉法人会計基準で最初につまずきやすいのが、この「区分」の考え方です。次の3階層で整理します。

  • 事業区分:「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」の3つ。特別養護老人ホームや保育所、訪問介護などの本来事業は社会福祉事業、有料老人ホームや介護予防事業などは公益事業、駐車場賃貸などは収益事業に区分します。
  • 拠点区分:原則として施設・事業所の所在地(拠点)ごとに区分します。同じ拠点で複数のサービスを行っている場合は、1つの拠点区分にまとめることができます。
  • サービス区分:拠点区分の中で、介護保険サービスや補助金の単位など、サービスの種類ごとにさらに区分します。

拠点区分やサービス区分をまたいで資金を動かす「拠点区分間繰入金」「サービス区分間繰入金」には、所轄庁の通知でルールが定められています。「本部の経費を施設の収入で払ってよいのか」「黒字の施設から赤字の施設へ資金を回してよいのか」といった判断は、このルールを確認しながら進める必要があります。

決算から所轄庁への届出までの年間スケジュール

社会福祉法人の会計年度は4月1日から翌年3月31日までです。決算後の流れは、社会福祉法で期限が決まっています。

  • 4月〜5月:決算整理(未収金・未払金の計上、減価償却、引当金、国庫補助金等特別積立金の取崩しなど)と計算書類の作成
  • 5月:監事による監査。会計監査人を設置している法人は、会計監査人の監査もこの時期です。
  • 5月〜6月:理事会で計算書類・事業報告・財産目録を承認
  • 6月末まで:定時評議員会で計算書類等を承認(または報告)
  • 6月末まで:所轄庁(横浜市内の法人であれば横浜市)へ計算書類・財産目録・現況報告書などを届け出。あわせて「財務諸表等電子開示システム」への入力が必要です。

この流れを守るには、逆算すると5月の連休明けには数字がほぼ固まっている状態が理想です。毎月の月次処理をためずに行い、3月末時点の残高確認(預金・未収金・未払金・借入金)を4月中に終わらせることが、決算を楽にする一番の近道です。

税務で押さえておきたい社会福祉法人特有のポイント

「社会福祉法人は税金がかからない」と思われがちですが、正確には「税目ごとに非課税や軽減の仕組みがある」というのが実情です。

  • 法人税:社会福祉事業の所得には課税されませんが、法人税法上の「収益事業」(物品販売、不動産貸付、駐車場、請負など34業種)を行っている場合は、その部分について申告・納税が必要です。
  • 消費税:社会福祉事業や介護保険サービスは原則として非課税です。ただし、自費サービスや物品販売、職員向けの食事代などに課税売上があり、課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。インボイス(適格請求書発行事業者)の登録要否も、取引先の状況によって判断が必要です。
  • 固定資産税:社会福祉事業の用に供する固定資産は非課税ですが、非課税の適用を受けるための申告が必要な自治体があります。
  • 源泉所得税・住民税の特別徴収:職員の給与に関する手続きは、一般の会社とまったく同じです。

特に消費税は、「非課税だから関係ない」と思い込んで課税売上を集計していなかった、というケースが少なくありません。決算のタイミングで、課税・非課税・不課税の区分を一度確認しておきましょう。

決算で指摘されやすい5つのチェックポイント

所轄庁の指導監査や会計監査で、よく指摘されるのが次の項目です。

  • 国庫補助金等特別積立金の取崩し漏れ:補助金で取得した固定資産の減価償却にあわせて、特別積立金を取り崩す処理を忘れている。
  • 引当金の計上漏れ:賞与引当金や退職給付引当金を計上していない、または計算根拠が残っていない。
  • 固定資産の管理:固定資産管理台帳と計算書類の金額が一致していない、除却した資産が残っている。
  • 未収金・未払金の計上:3月分の介護報酬(5月入金)や3月分の経費(4月支払い)を計上せず、現金主義のままになっている。
  • 区分間繰入金のルール違反:繰入れが認められない区分間で資金を移動している、理事会の承認が残っていない。

また、平成29年の社会福祉法改正以降は、「社会福祉充実残額」の計算も毎年必要です。活用可能な財産が一定額を超える法人は、「社会福祉充実計画」を作成して所轄庁の承認を受けることになります。この計算も決算書の数字から行いますので、決算の精度がそのまま影響します。

まとめ:社会福祉法人の会計は「区分」と「スケジュール」を押さえれば回る

社会福祉法人の会計は、一見すると様式が多くて複雑に見えますが、「3つの計算書類」「3階層の区分」「6月末までの届出」という骨組みを理解すれば、全体がつながって見えてきます。あとは、月次処理をためないこと、決算整理の項目をチェックリスト化しておくことで、毎年の決算はぐっと楽になります。

「社会福祉法人の決算・会計の基本」まとめ

  • 会計は「社会福祉法人会計基準」(厚生労働省令)と運用通知に従う
  • 計算書類は資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の3つ。附属明細書と財産目録もあわせて作成
  • 区分は事業区分→拠点区分→サービス区分の3階層。区分間の資金移動にはルールがある
  • 決算は4〜5月で固め、6月末までに評議員会の承認と所轄庁への届出・電子開示
  • 法人税は収益事業のみ課税、消費税は課税売上の有無を必ず確認
  • 特別積立金の取崩し・引当金・未収未払の計上漏れが指摘されやすい

当事務所では、横浜市内の社会福祉法人・介護事業者の方を中心に、月次の経理サポートから決算・所轄庁への届出書類の作成、指導監査の事前チェックまでお手伝いしています。「今の経理のやり方で大丈夫か一度見てほしい」というご相談だけでも歓迎です。詳しくは社会福祉法人サポートのページをご覧ください。

「社会福祉法人の決算・会計」に関するよくある質問

A.会計監査人の設置が義務づけられているのは、前年度の収益が30億円を超える法人、または負債が60億円を超える法人(特定社会福祉法人)です。この基準に該当しない法人は、監事による監査のみで足ります。ただし基準は見直しが検討されてきた経緯があるため、所轄庁の最新の案内を確認してください。義務がなくても、専門家による決算前のチェックを受けておくと、指導監査での指摘を減らせます。

A.収益事業を行っていなければ、法人税の申告は不要です。ただし、駐車場の貸付や物品販売、職員以外への食事提供などが「収益事業」に該当する場合は、その部分について申告が必要になります。何が収益事業に当たるかの判断は迷いやすいので、新しい事業を始める前にご相談ください。

A.社会福祉法人会計基準に対応した専用ソフトを使うのが一般的です。一般の会計ソフトでも仕訳自体は可能ですが、拠点区分・サービス区分別の計算書類や附属明細書の様式を自動で出力できないため、決算時の手作業が増えます。法人の規模や拠点数に応じて、導入のご相談にも対応しています。

社会福祉法人の経理・決算は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「決算の進め方を一から整えたい」「指導監査の前に会計をチェックしてほしい」「消費税や収益事業の判断に迷っている」など、社会福祉法人の会計・税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の法人を中心に、代表税理士が直接対応します。初回相談は無料です。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、無資格スタッフに丸投げせず代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用したスピード対応が持ち味で、土日夜間も柔軟に対応します。税務顧問・税務調査対応・相続税申告のほか、経営者向けのコーチングも行っています。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です。

不安を安心に変える、横浜で最も信頼される経営者の味方へ。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、あなたの「一番の理解者」として全力でサポートします。
初回相談は無料、LINEでのご相談や土日夜間の対応も可能です。

お電話でのご相談

045-900-6098
受付時間: 平日9:00~17:00(土日祝・夜間は事前予約で対応可)

横浜市地域密着・
スピード対応

横浜市全域対応

横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区

※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。

【税理士が解説】税務調査の全体像と対策ロードマップ

横浜市で税務調査の立会いや、確定申告のサポートを手掛ける、税理士の岩本隆一です。 「税務調査」と聞くと、誰もが強いプレッシャーを感じるものです。私も税理士業界に入る前は、漠然とした恐怖を感じていた時期がありました。 しか・・・...

あわせて読みたい

過少申告加算税とは?税務調査で課される仕組みと対策を完全解説

横浜市で税務調査の対応サポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 今日は税務調査で多くの方が直面する「過少申告加算税」について、わかりやすく解説していきたいと思います。 正直、この話って聞いただけで「・・・...

あわせて読みたい

重加算税とは?税務調査で課される条件と計算方法を詳しく解説

税務調査における重加算税の判定基準の解説や、税務調査への適切な対応をサポートする、横浜市の岩本隆一税理士事務所、代表、岩本隆一です。 税務調査の話になると、個人事業主様や中小企業の経営者様の間で必ずと言っていいほど話題に・・・...

あわせて読みたい
お問い合わせ