介護事業所の経理でつまずく5つのポイント|訪問介護・デイサービスの経営者向け

横浜市で介護事業者・社会福祉法人のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
訪問介護やデイサービス(通所介護)を運営されている経営者の方から、「現場は回っているのに、お金の管理がどうもうまくいかない」というご相談をよくいただきます。介護事業は、売上の9割が国保連(国民健康保険団体連合会)からの入金で、しかもサービス提供から約2か月遅れて入ってくるという、他の業種にはない特徴があります。
この特徴を理解せずに一般の会社と同じ感覚で経理をしていると、資金繰りの見通しを誤ったり、消費税の申告を間違えたり、処遇改善加算の実績報告で困ったりします。
今回は、介護事業所の経理で特につまずきやすい5つのポイントを、対処法とあわせて解説します。開業して間もない事業所の方はもちろん、「何年もやっているけれど自己流で不安」という方にも読んでいただきたい内容です。
ポイント1:国保連請求と入金の「2か月のズレ」を前提に売上を計上する
介護保険サービスの報酬は、サービス提供月の翌月10日までに国保連へ請求し、その翌月(サービス提供月からみると翌々月)に入金されます。たとえば4月に提供したサービスは、5月10日までに請求し、6月に入金されるという流れです。
経理でつまずきやすいのは、この入金を「入金された月の売上」として処理してしまうことです。正しくは、4月に提供したサービスは4月の売上(介護保険収入)として計上し、入金までは「未収金」として管理します。決算期をまたぐ場合は特に重要で、3月分のサービスは5月に入金されても、3月の売上として決算に含めなければなりません。
また、国保連から「返戻(へんれい)」や「過誤」の通知が来た場合は、該当する請求が一度差し戻されます。返戻分を再請求するまでの間、未収金が残り続けますので、月ごとに「請求額」「入金額」「返戻額」を照合する仕組みを作っておきましょう。
ポイント2:消費税の「非課税」と「課税」を正しく分ける
介護保険の給付対象となるサービスは、消費税が非課税です。利用者から受け取る1割〜3割の自己負担分も同様に非課税です。このため「うちは消費税とは無縁」と思っている事業所が多いのですが、実際には課税売上が混ざっているケースがほとんどです。
- 保険外の自費サービス:介護保険の限度額を超えた部分の自費利用、保険外の外出支援、家事代行などは課税です。
- 日常生活費・特別なサービス:デイサービスの食費やおむつ代、特別な行事費用などは、内容によって課税・非課税の判断が分かれます。
- 物品販売・その他:福祉用具の販売や貸与、自動販売機の手数料、研修の受託などは課税です。
課税売上が年間1,000万円を超えると消費税の課税事業者となり、申告と納税が必要になります。また、取引先が事業者(たとえば施設や企業からの受託)の場合は、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を求められることもあります。会計ソフトに入力する際、売上の科目を「介護保険収入(非課税)」「自費収入(課税)」のように最初から分けておくことが、一番簡単な対策です。
ポイント3:処遇改善加算は「もらって終わり」ではない
介護職員等処遇改善加算は、介護報酬に上乗せして支給される一方で、その加算額以上を職員の賃金改善に充てることが要件です。毎年度、年度初めに「処遇改善計画書」を提出し、年度終了後には「実績報告書」で実際の賃金改善額を報告します。
経理の実務でつまずくのは、「加算でいくら受け取ったか」と「賃金改善にいくら使ったか」を、年度の途中で把握できていないことです。加算額は国保連の支払決定通知書に記載されていますので、毎月の給与計算とあわせて、処遇改善手当・ベースアップ分・賞与への上乗せ分を集計しておく必要があります。年度末にまとめて計算しようとすると、賃金改善額が加算額に足りず、差額の返還が必要になることもあります。
なお処遇改善加算は、令和8年6月から加算率の引上げや対象サービスの拡大といった大きな見直しが行われています。詳しくは別の記事「介護職員等処遇改善加算の仕組みと会計処理」で解説しています。
ポイント4:人件費率と資金繰りを月次で確認する
介護事業は典型的な労働集約型のビジネスで、売上に占める人件費の割合(人件費率)は6〜7割に達することが珍しくありません。利用者数が少し減っただけで赤字に転落することもあるため、月次で「利用者数(延べ利用回数)」「売上」「人件費率」の3つを確認する習慣が欠かせません。
資金繰りの面では、次の3つに注意が必要です。
- 開業当初の運転資金:入金が2か月遅れるため、開業から2〜3か月は売上がゼロのまま給与や家賃を支払う必要があります。最低でも3か月分の運転資金を用意しておきましょう。
- 賞与月と社会保険料:賞与の支払月は社会保険料の負担も増えます。年間の資金繰り表で、あらかじめ山を把握しておきます。
- 利用者の減少や返戻:入院や施設入所による利用者の減少、返戻による入金遅れは、2か月後の資金繰りに直撃します。利用者の動きは早めに数字に反映させましょう。
クラウド会計を使って月次の試算表を翌月半ばまでに締めることができれば、こうした変化に早く気づけます。当事務所でも、freeeやマネーフォワードを使った月次の体制づくりからお手伝いしています。
ポイント5:事業所ごとの「会計の区分」を守る
介護保険の指定基準(運営基準)では、指定を受けた事業所ごとに経理を区分し、介護保険の事業と他の事業の会計を区分することが求められています。訪問介護と居宅介護支援を同じ法人で運営している場合や、介護保険事業と保険外事業を併せて行っている場合は、売上も経費も事業所ごとに分けて集計できる状態にしておく必要があります。
この区分は、運営指導(旧・実地指導)で確認される項目のひとつです。会計ソフトの「部門」機能を使って、事業所ごとに部門を設定し、家賃や管理者の人件費など共通の経費は、利用者数や面積などの合理的な基準で按分するのが一般的な方法です。按分基準は書面で残しておくと、指導の際に説明がしやすくなります。
社会福祉法人が運営する介護事業所の場合は、さらに社会福祉法人会計基準に基づく「拠点区分」「サービス区分」での管理が必要になります。こちらは「社会福祉法人の決算・会計の基本」で解説しています。
まとめ:介護事業の経理は「売上の計上時期」と「区分」で9割決まる
介護事業所の経理で起きるトラブルの多くは、「入金ベースで売上を見てしまう」「課税・非課税や事業所ごとの区分が曖昧」という2点に原因があります。この2つを最初に整えておけば、処遇改善加算の管理も、資金繰りの見通しも、運営指導への対応も、ぐっと楽になります。
「介護事業所の経理でつまずく5つのポイント」まとめ
- 売上はサービス提供月に計上し、国保連からの入金(約2か月後)までは未収金で管理する
- 介護保険サービスは消費税非課税でも、自費サービスや物品販売は課税。科目を最初から分ける
- 処遇改善加算は、加算額と賃金改善額を年度の途中から集計しておく
- 人件費率と資金繰りは月次で確認。開業時は3か月分の運転資金を確保する
- 事業所ごとに会計を区分し、共通経費の按分基準を書面で残す
当事務所では、横浜市内の訪問介護・デイサービス・居宅介護支援事業所をはじめ、介護・福祉事業者の方の記帳代行、月次決算、処遇改善加算の実績報告の確認、運営指導前の経理チェックまでサポートしています。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。
「介護事業所の経理」に関するよくある質問
デイサービスの食費や日用品の販売、保険外の自費サービス、福祉用具の貸与など、介護保険の給付対象外の収入は課税売上です。これらの合計が年間1,000万円を超えていると、翌々年度から課税事業者になります。心当たりがない場合は、売上の内訳を一度確認してみてください。
返戻は請求内容の不備による「差し戻し」であり、サービス自体が無効になるわけではないので、修正して再請求するのが基本です。再請求するまでは未収金として残しておきます。再請求できない(取り下げる)ことが確定した場合に、初めて売上を取り消します。
まずは「通帳と国保連の支払決定通知書を毎月そろえる」「売上を介護保険収入と自費収入に分けて記録する」の2つから始めてください。この2つが整っていれば、記帳代行をお願いする場合でもスムーズに引き継げます。開業時の運転資金や資金繰り表の作り方についても、無料相談で一緒に整理できます。
介護事業の経理・資金繰りは、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「月次の数字が翌月に見える体制を作りたい」「処遇改善加算の管理に不安がある」「運営指導の前に経理を見てほしい」など、介護事業の会計・税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の事業所を中心に、代表税理士が直接対応します。初回相談は無料です。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、無資格スタッフに丸投げせず代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用したスピード対応が持ち味で、土日夜間も柔軟に対応します。税務顧問・税務調査対応・相続税申告のほか、経営者向けのコーチングも行っています。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です。
不安を安心に変える、横浜で最も信頼される経営者の味方へ。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、あなたの「一番の理解者」として全力でサポートします。
初回相談は無料、LINEでのご相談や土日夜間の対応も可能です。
お電話でのご相談
045-900-6098
受付時間: 平日9:00~17:00(土日祝・夜間は事前予約で対応可)
横浜市地域密着・
スピード対応
横浜市全域対応
横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区
※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。








