NFT取引の税金と無申告の注意点|所得区分・課税タイミングを解説

内容確認日:2026年11月5日。この記事は、日本に居住する個人のNFT・暗号資産取引について、所得税を中心に説明しています。NFTが表す権利や取引の実態によって取扱いが変わるため、以下の計算例は前提を限定した説明用の例です。

「NFTを売ったけれど、日本円に換えていない」「無料でもらったNFTにも税金はかかる?」。NFTの税金は、円を銀行口座へ出金したかどうかだけでは決まりません。何を、どのような対価で取得・譲渡したかを整理することが出発点です。

NFT取引は無申告でも把握される?

NFTや暗号資産の取引も、申告が必要な所得を生じさせることがあります。税務調査では帳簿や取引資料の提示・提出を求められることがあり、取引所・マーケットプレイスの履歴、ウォレットの取引記録、銀行の入出金などを説明できるようにしておく必要があります。「海外サービスだから申告しなくてよい」とは考えないでください。

一方、税務署がすべてのウォレットの持ち主を自動的に特定している、あるいは大手NFTマーケットプレイスが一律に税務署と情報を共有している、とまではいえません。情報の入手方法や確認できる範囲は個別の事情で異なります。申告の要否は、発見される可能性ではなく取引内容に基づいて判断しましょう。税務調査の基本的な手続は、国税庁「税務調査手続に関するFAQ」に掲載されています。

NFTの所得区分と課税タイミング

NFTという名称だけで、すべての取引が雑所得になるわけではありません。国税庁は、財産的価値のある資産と交換できるNFT等を用いた取引について、取得の理由や譲渡する資産の性質に応じて所得区分を示しています。国税庁「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」

NFT取引の所得区分(4つの場面)

国税庁FAQは、取得の理由や譲渡する資産の性質に応じて所得区分を示しています。

1
自作NFTを販売利益は雑所得または事業所得です。販売収入から制作・販売のための費用を差し引いて計算します。
2
購入したNFTを転売原則として総合課税の譲渡所得です。棚卸資産等や営利目的の継続的な売買は事業所得・雑所得になります。
3
無料配布・エアドロップ取得の原因で判断します。臨時・偶発的なら一時所得、個人からの贈与は贈与税を確認します。
4
ゲームで得た報酬原則として雑所得です。ゲーム外の資産と交換できない場合は、所得税の課税対象になりません。
日本円に換金したかどうかだけで、課税の有無や時期は決まりません。
出典:国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1・問4・問8・問9。本文の説明を図にまとめたものです。

1.自作のデジタルアートをNFTとして販売する場合

デジタルアートを制作し、その閲覧に関する権利を設定してNFTを販売する場合、利益は雑所得または事業所得になります。継続して販売しているという理由だけで、自動的に事業所得になるわけではありません。活動の規模や実態などに応じて判断します。

販売収入から、制作・販売のために必要な費用を差し引いて所得を計算します。代金を暗号資産等で受け取った場合も、日本円への換金まで収入の計上を待てるとは限りません。売買契約や権利の移転、対価を受け取る権利が確定した時期を確認し、該当する年分の収入を円換算します。所得税法36条、国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」問1

2.購入したNFTを転売する場合

国税庁FAQで示されている、購入したデジタルアートの閲覧に関する権利を第三者へ移す取引では、利益は原則として総合課税の譲渡所得です。ただし、棚卸資産等の譲渡や、営利目的で継続的に行う売買に該当する場合は、事業所得または雑所得になります。NFTの内容によっては譲渡所得の対象資産に当たらない場合もあります。同FAQ・問4

例えば、10万円で取得したNFTを500万円で譲渡したとします。総合課税の短期譲渡所得に該当し、譲渡費用がなく、同じ年にほかの総合課税の譲渡所得がないという前提なら、計算は次のとおりです。

  • 譲渡益:500万円 − 10万円 = 490万円
  • 短期譲渡所得の金額:490万円 − 特別控除50万円 = 440万円
  • 他の所得と合算する金額:440万円

特別控除はNFT1件ごとに50万円ではなく、その年の総合課税の譲渡所得全体で最高50万円です。通常、所有期間が5年を超える長期譲渡所得の場合は、控除後の所得金額の2分の1を他の所得と合算します。実際の税額は給与などの他の所得や所得控除によって変わります。国税庁「譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」

3.無料配布・エアドロップで取得する場合

「無料でもらった」という事実だけでは所得区分は決まりません。臨時・偶発的な取得は一時所得、仕事などの対価なら事業所得・給与所得・雑所得など、取得の原因に応じて検討します。個人から経済的価値のあるNFTを贈与された場合は、所得税ではなく贈与税の確認が必要です。国税庁の所得区分の説明、NFTのFAQ・問9

例えば、法人から臨時に受け取ったNFTが一時所得に該当し、取得時の収入金額が100万円、収入を得るために直接要した費用がなく、ほかの一時所得もない場合、一時所得の金額は100万円 − 特別控除50万円 = 50万円です。他の所得と合算する金額は、その2分の1の25万円です。50万円をそのまま給与所得等に上乗せするわけではありません。国税庁「一時所得」

時価は、取得時点の取引価格などの資料で確認します。取引できないNFTや、財産的価値を有する資産との交換ができないトークンには別の検討が必要です。「無料なら非課税」「受け取れば必ず時価で課税」と一律に扱わないことが大切です。

4.ブロックチェーンゲームで報酬を得る場合

国税庁FAQ・問8は、ゲーム内通貨(トークン)として得る報酬を、原則として雑所得としています。ただし、ゲーム内でしか使えず、ゲーム外の資産と交換できない場合は、所得税の課税対象になりません。

また、暗号資産に直接交換できないなどの理由で時価の算定が困難なゲーム内通貨については、時価を0円とする取扱いと、その後に暗号資産と交換できる他のトークンへ交換した時の課税が示されています。こうした取扱いをすべてのNFTアイテムへそのまま当てはめず、報酬の種類、交換可能性、利用規約を確認してください。NFTのFAQ・問8

暗号資産でNFTを買うと、暗号資産側の損益も生じる

NFTの損益と、支払いや受取りに使った暗号資産の損益は分けて計算します。個人の暗号資産の売却・使用・他の暗号資産との交換で生じる利益は、原則として雑所得です。事業に付随する取引などは取扱いが異なります。NFTの転売益の所得区分と混同しないようにしましょう。

次は、ほかの暗号資産取引や保有残高がなく、手数料を考慮しない簡単な例です。

  1. 100万円でETHを購入する。
  2. そのETHの時価が150万円になった時に、全額をNFTの購入に使う。ETHの使用による利益は、150万円 − 100万円 = 50万円。
  3. 取得費150万円のNFTを、その後200万円相当で売却する。NFT側の譲渡益は、200万円 − 150万円 = 50万円。所得区分や控除を検討するのはこの後です。

売却代金をETHで受け取った場合、そのETHを後日売却・使用する際の損益も別途確認します。継続して暗号資産を購入している場合は、税法上の評価方法に従って譲渡原価を計算するため、個別の購入額だけでは計算できないことがあります。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」1-1〜1-3、2-2、2-4

申告のために整理しておきたい記録

  • 利用した取引所・マーケットプレイス・ウォレットごとの取引履歴
  • 取引日時、NFTの識別情報、売買・報酬・贈与などの取引内容
  • 支払った、または受け取った通貨の種類・数量と、その円換算額
  • 取得費、売買手数料、ガス代等の金額と用途
  • 円換算に使った価格の出典、時価を判断した資料、関連する契約・利用規約

ウォレット間の移動と売買を区別し、同じ取引を二重計上しないようにします。手数料はすべてを一括して経費にするのではなく、取得費・譲渡費用・必要経費のどれに含めるかを取引ごとに検討してください。コレクションの最低出品価格だけで時価を決めず、実際に成立した取引や対象NFTの条件も確認しましょう。

無申告のままだと、本税以外の負担もある

無申告加算税は段階的に計算する

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて、調査による決定を予知した後の期限後申告などに適用される通常の無申告加算税は、納付すべき税額の50万円までが15%、50万円超300万円までが20%、300万円超が30%です。自主申告の時期、繰り返しの無申告、帳簿の不提示などによって取扱いが変わります。国税庁「確定申告を忘れたとき」

例えば、上記の通常税率を適用し、加重・軽減などのないケースで、加算税の計算基礎となる納付税額を4,500万円と仮定すると、次の計算になります。本税額を仮定した加算税の計算例であり、所得金額から本税額を計算したものではありません。

  • 50万円 × 15% = 7万5,000円
  • 250万円 × 20% = 50万円
  • 4,200万円 × 30% = 1,260万円
  • 無申告加算税の合計:1,317万5,000円

重加算税は通常の加算税に代えて課される

課税の基礎となる事実を隠蔽・仮装した場合など、法律上の要件を満たすと、該当する部分に重加算税が課されます。基本の割合は、過少申告の場合35%、無申告の場合40%です。同じ部分について無申告加算税と重加算税を足し合わせるものではありません。

仮に、上の4,500万円全額が無申告に係る重加算税の対象となり、加重措置などがなければ、重加算税は4,500万円 × 40% = 1,800万円です。通常の無申告加算税1,317万5,000円に、さらに1,800万円を加える計算ではありません。財務省「加算税制度の概要」

延滞税は起算日と納期限を区別する

延滞税は、原則として法定納期限の翌日から実際に納める日までの期間について、本税を基に計算します。2026年1月1日から12月31日までの期間に適用される割合は、納期限までの期間およびその翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それを過ぎた期間が年9.1%です。

ここで税率の区切りに使う「納期限」は、期限後申告・修正申告の場合にはその申告書を提出した日です。延滞税の起算日である「法定納期限の翌日」とは異なります。前年以前にかかる日数には各年の割合を使い、計算から除かれる期間などの特例も確認するため、所得額だけで延滞税の総額は決められません。国税庁「延滞税について」、「延滞税の割合」

以上は国税の加算税・延滞税の説明です。住民税や、課税事業者に該当する場合の消費税なども別に確認する必要があり、ここに示した金額が税負担の総額になるわけではありません。

過去の取引と、確定申告の要否を確認する

所得税の更正・決定ができる期間は、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為により税額を免れた場合などには7年となる取扱いがあります。「調査は必ず直近5年だけ」と決めつけたり、単に古い取引だから申告不要と判断したりしないでください。個別の期限延長や特例を含めて確認が必要です。国税通則法70条

  • 会社員の方:給与収入が2,000万円以下で、1か所からの給与が源泉徴収の対象となっている場合など、一定の条件では給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告が不要です。20万円は売上ではなく所得の判定であり、一時所得や総合課税の長期譲渡所得は原則として2分の1にした金額を含めて判定します。所得税基本通達121-6
  • 個人事業主・フリーランス、学生などの方:NFT以外の所得、対象年分の所得控除や税額控除も含めて申告の要否を判断します。「利益が少額だから」「扶養に入っているから」という理由だけでは決まりません。

医療費控除などのために所得税の確定申告をする場合は、20万円以下の副所得も含めた申告が必要です。所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があります。横浜市「給与以外に副収入がある場合の住民税の申告は…」、国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」、「確定申告」、「確定申告を要しない場合の意義」

まとめ:換金の有無だけで判断せず、取引ごとに整理を

NFTは、自作販売、転売、無料取得、ゲーム報酬で取扱いが異なります。暗号資産で支払った場合には、その暗号資産側の損益も確認が必要です。まずは取引履歴を保存し、各年の所得区分と金額を整理しましょう。

申告漏れに気付いた場合は、必要な申告を早めに検討してください。所得区分や時価の判断が難しいときは、取引内容が分かる資料を用意して税理士にご相談ください。

数年分の申告がまだの方、資料がそろっていない方は、無申告サポートのページで対応内容と流れをご確認ください。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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