無申告のあと青色申告は続けられる?個人事業主の承認確認と再申請の注意点

申告期限を過ぎたとき、「青色申告はもう使えない」「翌年に申請すれば必ず再開できる」と考えていませんか。個人事業主の場合、まず確認したいのは、現在も青色申告の承認が有効かどうかです。承認の有無と、その年の青色申告特別控除を受けられるかは、分けて整理する必要があります。この記事は個人の所得税についての説明であり、法人の取消基準とは区別します。

無申告後の青色申告の確認手順

承認の状態、その年の控除、再申請の期限を分けて確認します。

承認が有効か確認取消通知を受けていないか、取りやめ届出書を出していないかを確認します。無申告だけで直ちに取り消されるとは限りません。
その年分の控除を確認2026年分までの55万円・65万円控除は期限内申告が必要です。期限後申告では、要件を満たせば最高10万円です。
再申請の期限を確認取消通知や取りやめ届出の日以後1年以内の申請は却下事由の一つです。通常の申請期限はその年の3月15日です。
記帳と期限管理を整える日々の記帳、証拠資料の保存、申告期限の管理を整えます。申請書を出しても過去年分の控除はさかのぼりません。
承認の有無と、その年の青色申告特別控除を受けられるかは別に確認します。
出典:所得税法第144条・第145条・第150条、国税庁「No.2072 青色申告特別控除」「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」。本文の説明を図にまとめたものです。

1.無申告なら必ず承認が取り消されるわけではない

個人の青色申告の取消しは、帳簿書類の備付け・記録・保存の不備、税務署長の指示に従わないこと、隠ぺい・仮装等に関する所得税法150条の事由に基づき判断されます。申告が一度遅れたという理由だけで、必ず取消通知が届くと説明することはできません。

具体例として、税務調査で帳簿書類の提示を繰り返し求められても正当な理由なく拒否する場合や、帳簿の備付け・記録・保存についての税務署長の指示に従わない場合が挙げられます。また、二重帳簿によって計画的に取引の一部を正規の帳簿へ記載しない場合等にも、事案に応じた取消しの取扱いが示されています。個人について、法人の「2期連続の期限後申告」という基準をそのまま当てはめることはできません。

国税庁の事務運営指針も、事実の程度、記帳状況、改善可能性等を総合的に考慮するとしています。自己判断で承認がなくなったと扱わず、過去の承認・取りやめ・取消通知の有無を確認しましょう。

出典:国税庁「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm

出典:所得税法 第150条

https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033

2.期限後申告と青色申告特別控除は別に確認する

令和8年分(2026年分)までの55万円・65万円の青色申告特別控除には、期限内申告が必要です。期限後申告の場合でも、青色申告の承認が有効で、必要な記帳・帳簿書類の保存等の要件を満たしていれば、最高10万円の青色申告特別控除を適用できます。控除額には対象となる所得金額による限度があり、必ず10万円を差し引けるわけではありません。白色申告に青色申告特別控除があるわけでもありません。

令和9年分(2027年分)以後の最高65万円控除は、事業所得または事業的規模の不動産所得があり、正規の簿記の原則(一般には複式簿記)による記帳等を行い、確定申告書と貸借対照表を含む青色申告決算書のデータを、確定申告期限までにe-Taxで送信することが必要です。還付申告でも期限内の送信が必要で、現金主義の特例では65万円・75万円控除は受けられません。

最高75万円控除は、この65万円控除の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件と届出が必要です。優良な電子帳簿による場合は、その年分の仕訳帳・総勘定元帳を課税期間の最初から要件に従って備え付け・保存し、所定の届出書を確定申告期限までに提出します。既に優良な電子帳簿による65万円控除を受けている方の届出は、改めて提出する必要がないとされています。

デジタルシームレス保存による場合は、国税庁長官の基準に適合するシステムを使用し、所定の電子取引データの送受信・保存、改ざん防止、記帳の適正性や帳簿との関連性等の要件を満たした上で、確定申告期限までに所定の届出書を提出します。会計ソフトを使うだけで75万円控除になるわけではありません。

書面申告や期限後申告では65万円・75万円控除を受けられず、10万円控除の対象となるかを別に確認します。令和9年分以後、簡易簿記で事業所得または事業的規模の不動産所得を有する方は、そのいずれかの前々年分の収入金額が1,000万円を超える場合、10万円控除の対象外となります。事業的規模でない不動産所得はこの除外とは別で、最高10万円の区分です。65万円・75万円の要件を満たさなければ誰でも10万円控除を受けられる、とは説明できません。

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm

出典:国税庁「記帳のしかた(青色申告編)」YouTube「国税庁動画チャンネル」掲載資料(令和8年5月1日現在)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0023005-091_01.pdf

出典:国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026007-003_02.pdf

出典:国税庁「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ/令和9年分以後の所得税について、事業所得又は不動産所得に係る、10万円控除要件が変わります!」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf

3.再申請が必要な場合は通知日と申請期限を確認する

承認が取り消されている場合や、青色申告を取りやめた場合は、再び承認を受けるための申請を検討します。取消しの対象となった年の「翌年から必ず再開」とは限りません。

所得税法145条では、取消通知を受けた日や取りやめ届出書を提出した日以後1年以内に申請したことが、申請の却下事由の一つとされています。取消しがどの年までさかのぼるかと、通知を受けた日は別です。通知書と申請を希望する年を対応させて、所轄税務署へ確認しましょう。

通常の申請期限は、青色申告をしようとする年の3月15日です。その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合などは、開始日から2か月以内となります。相続による事業承継には別の提出期限があります。土日祝日等に当たる期限の扱いも、国税庁の手続案内で確認してください。

出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm

出典:所得税法 第144条・第145条

https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033

4.過去年分と今後の準備を分けて進める

未申告の年分については、申告義務、承認の有効性、帳簿・資料の状況を年ごとに整理します。すでに申告した内容を直す手続と、初めて申告する期限後申告は異なります。

今後のためには、日々の記帳、証拠資料の保存、申告期限の管理を整えましょう。申請書を出すだけで、過去年分の控除がさかのぼって認められたり、記帳の不備が解消されたりするわけではありません。

(仮定例)青色申告の個人事業主が、2025年分を期限後に申告する場合

青色申告の承認を受けている個人事業主が、2025年分の確定申告を期限までに提出できず、期限後申告をする場合を考えます。

まず、取消通知を受けていないか、取りやめ届出書を出していないかを確認し、承認が有効かを確かめます。期限内申告が要件の55万円・65万円の青色申告特別控除は受けられませんが、承認が有効で、必要な記帳・帳簿書類の保存をしていれば、最高10万円の控除を検討できます。あわせて、2026年分以後の記帳と申告期限の管理を見直しましょう。実際の事例ではありません。

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

まとめ

無申告後の青色申告は、現在の承認状態、取消通知等の日付、再申請の期限、対象年分の控除要件を分けて確認することが大切です。申告書や通知書をそろえ、必要な手続を税務署や税理士に確認してください。

※2026年11月4日時点の一般的な解説です。個人の所得税を対象としており、法人の取扱いを説明するものではありません。

数年分の申告がまだの方、資料がそろっていない方は、無申告サポートのページで対応内容と流れをご確認ください。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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