AIで作った確定申告書が不安な方へ|提出前の7つの確認ポイント

「ChatGPTに聞きながら確定申告書を作ったけれど、このまま出して大丈夫だろうか」
「AIには問題ないと言われた。でも、経費や控除が合っているのか自信がない」

そんなときは、AIに同じ質問を繰り返すより、作成した申告書と元の資料を照らし合わせることから始めましょう。

AIを使ったかどうかだけで、申告の正しさは決まりません。大切なのは、収入や経費の数字が資料と合っていることと、申告する年分の制度を自分の状況に正しく当てはめていることです。

AIは、資料の整理や確認事項の洗い出しに役立ちます。ただし、出てきた答えをそのまま申告の根拠にするのは避けたいところです。

横浜市の岩本隆一税理士事務所が、AIを使って確定申告を進めた方に向けて、提出前の確認ポイント、提出後に間違いが見つかったときの手続き、税理士に相談する際の準備を解説します。

※この記事は、主に個人事業主・フリーランス・副業をしている方の所得税及び復興特別所得税の確定申告を対象としています。消費税については、別途確認が必要な点を紹介します。

AIで作った確定申告書は、まず元の資料と照合する

最初に、申告書の下書き、帳簿、領収書・請求書、源泉徴収票、各種控除証明書を手元に用意してください。

確認するときは、「AIの説明がもっともらしいか」ではなく、次の点を見ます。

  • 申告書の数字を、どの資料から持ってきたか説明できるか
  • 経費や控除の条件を、自分が満たしているか
  • 分からない部分を、AIの推測だけで埋めていないか

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、入力内容に応じて税額などが自動計算されます。AIが計算した税額だけで判断せず、申告する年分に対応した作成コーナーや申告ソフトで確認する方法が有効です。

ただし、自動計算が正しくても、売上の入力漏れや経費の判断まで正しいとは限りません。 合計金額を合わせる作業と、その金額を申告してよいか確認する作業は、分けて考えましょう。

参考:国税庁「確定申告書等の作成」

提出前に確認したい7つのポイント

1.申告する年分と、AIが参照した制度は合っているか

確定申告で使うのは、提出する年ではなく、申告対象となる年分の制度です。たとえば、2026年分の所得を2027年に申告する場合は、2026年分に適用される取扱いを確認します。

AIが示した控除額や条件が、前年の制度や別の年分の解説になっていないか見直してください。たとえば基礎控除は、対象年分や本人の合計所得金額などによって金額が異なります。「誰でも一律に同じ金額」とする回答には注意が必要です。扶養に関する制度なども、対象年分の条件を確認します。

AIが国税庁のURLを示した場合も、実際にページを開き、「何年分の話か」「自分に当てはまる条件か」を確認しましょう。リンクがあるだけで、答えの正しさが保証されるわけではありません。

参考:国税庁「所得控除のあらまし」、国税庁「基礎控除」

2.売上や副業収入に、漏れや計上時期の誤りはないか

AIに渡した資料に収入が含まれていなければ、その収入が申告書から抜ける可能性があります。

  • 現金で受け取った売上
  • 複数の銀行口座や決済サービスに入った売上
  • 給与以外の副業収入
  • 年末に取引が完了し、翌年に入金された売上

こうしたものが漏れていないか、帳簿と請求書、入金明細などを確認します。

所得税の収入は、原則として入金日だけで決まるものではありません。年末までに収入すべき権利が確定していれば、未入金でもその年の収入となる場合があります。現金主義の特例を適用している場合などは、取扱いが異なります。

また、「副業だから必ず雑所得」「開業届を出したから必ず事業所得」と機械的に決めず、所得の区分に迷う場合は個別に確認しましょう。

参考:国税庁「収入金額とその計算」、国税庁「所得税基本通達35-2の解説」

3.経費に私生活の支出や二重計上が混ざっていないか

会計ソフトの自動取込と、領収書からの入力を併用すると、同じ支出を二度登録してしまうことがあります。クレジットカードの利用時と銀行口座からの引落時に、両方を経費にしていないかも確認してください。

自宅の家賃、通信費、自家用車の費用など、仕事と私生活の両方に関わる支出にも注意が必要です。

たとえば、AIが「家賃の50%を経費にできます」と答えても、その割合が自分の使用実態に合っているとは限りません。使用面積や使用時間など、費用の性質に合った根拠で、事業に必要な部分を区分することが大切です。

領収書があることだけで経費になるわけではありません。「何のための支出か」「仕事との関係は何か」を説明できるようにしておきましょう。

参考:国税庁「必要経費の知識」

4.パソコン・車などの購入や、年末の在庫を確認したか

事業用のパソコン、車、設備などは、買った年に全額を経費にするとは限りません。原則として、減価償却により各年分の経費に配分する資産があります。

少額の資産に関する特例もありますが、取得時期、取得価額、青色申告の有無などで条件が変わります。2026年中でも、取得時期によって金額基準が異なる特例があります。AIが示した金額だけで判断せず、対象者・対象資産・年間の限度額・事業に使い始めた時期なども確認しましょう。

商品を扱う事業では、年末に残っている在庫の確認も必要です。「仕入れに使ったお金をすべてその年の経費にした」という処理になっていないか、棚卸表と帳簿を見直してください。

参考:国税庁「減価償却のあらまし」、国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」の棚卸表の説明

5.所得控除や青色申告特別控除の条件を満たしているか

社会保険料、生命保険料、医療費、寄附金などは、証明書や明細をもとに確認します。配偶者や扶養親族に関する控除は、本人や家族の所得などの条件にも注意してください。

ふるさと納税では、ワンストップ特例を申請していても、確定申告をするとその申請は無効になります。控除を受けるには、ワンストップ特例を申請した分も含めて、確定申告に反映する必要があります。

2026(令和8)年分の最高65万円の青色申告特別控除は、青色申告を選ぶだけで受けられるものではありません。55万円控除に必要な記帳方法、貸借対照表・損益計算書等の添付、期限内申告などの要件に加え、期限内のe-Tax送信、または優良な電子帳簿の保存・届出などの要件を確認します。

2027(令和9)年分以後は、65万円控除の要件の見直しや、e-Tax送信に加えて一定の電子帳簿保存等の要件を満たした場合の最高75万円控除などの改正があります。2026年分の条件をそのまま翌年以後の申告に当てはめず、国税庁の令和9年分以後の改正案内と電子帳簿保存の案内で確認してください。

参考:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」、国税庁「青色申告特別控除」

6.消費税の申告が別に必要ではないか

所得税の申告書ができても、消費税の申告が済んだことにはなりません。

インボイス登録をしている方や、消費税の課税事業者に当たる方は、別途、消費税の申告が必要か確認してください。所得税の計算が合っていても、消費税の課税区分や計算方法に誤りが残っていることがあります。

納税義務の判定は、その年の売上だけでは決まりません。過去の売上、届出の状況、インボイス登録なども関係するため、判断に迷う場合は税理士への相談をおすすめします。

また、通常の1月から12月を課税期間とする個人事業者では、2割特例の対象期間は2026(令和8)年分までです。3割特例は2027(令和9)年分・2028(令和10)年分の対象となる個人事業者向けで、法人には適用されません。

いずれも、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった方などを対象とする制度で、基準期間の課税売上高や適用除外などの確認が必要です。インボイス登録をしているだけで、自動的に使えるものではありません。

参考:国税庁「納税義務の免除」、国税庁「納付税額の計算のしかた」、国税庁「令和8年度税制改正特集」

7.申告書の数字と、提出・納付の手順を最終確認したか

最後に、帳簿から申告書へ転記された数字や、源泉徴収税額、予定納税額などを確認します。還付先口座、氏名、住所、申告年分にも誤りがないか見直しましょう。

申告書のPDFを保存しただけでは、提出したことにはなりません。e-Taxを利用する場合は、送信後の受信通知まで確認してください。

なお、受信通知は、申告データを受け付けたことなどを確認するためのものです。経費や控除の判断について、税務署がすべて正しいと認めたという意味ではありません。

納税が必要な場合は、提出とは別に納付方法と期限を確認し、申告書の控えや帳簿、根拠資料を保存しておきましょう。

参考:e-Tax「申告等データが正常に送信されたかどうかの確認方法」、国税庁「納税に関する総合案内」

AIにもう一度チェックしてもらえば安心なのか

AIに申告内容を再確認してもらうことは、見落としを探す補助にはなります。ただし、同じ前提や不足した資料を使えば、再度同じ誤りが出る可能性があります。

「間違いありませんか」と聞くだけでなく、次のように確認事項を整理すると、根拠を調べやすくなります。

  • この判断に必要なのに、まだ伝えていない情報は何か
  • どの年分の制度を前提にしているか
  • 適用できない条件や例外はあるか
  • 確認すべき国税庁の資料はどれか

そのうえで、示された資料を自分で読み、実際の取引や家族の状況と照合してください。個人情報保護委員会も、生成AIの回答には不正確な内容が含まれることがあると注意を促しています。

参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」

AIで作った確定申告書を提出した後に、間違いが見つかったら

提出後でも、訂正のための手続きがあります。まずは、申告期限内かどうか、正しく計算すると税額が増えるのか減るのかを整理しましょう。

申告期限内なら、正しい申告書を作成して再提出する

原則として、申告期限内であれば、誤った箇所を直して申告書を再提出できます。e-Taxで提出した場合も、正しい内容に直した申告データを再送信します。

ただし、先に提出した申告書について、すでに還付処理が行われている場合などは取扱いに注意が必要です。該当する場合は税務署に確認してください。

参考:国税庁「提出した確定申告書の間違いを法定申告期限の前に発見した場合」

期限後に税額が少なかったと分かったら、修正申告をする

納める税金を少なく申告していた場合や、還付金を多く申告していた場合は、修正申告で訂正します。誤りを把握したら、早めに対応しましょう。

新たに納める税金は、原則として修正申告書を提出する日が納期限です。延滞税が生じる場合もあります。

期限内申告について、税務調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合には、原則として過少申告加算税はかかりません。ただし、延滞税は別の問題であり、当初の申告が期限後申告だった場合などは取扱いが異なります。「自主的に直せば追加負担は一切ない」とは考えないようにしてください。

期限後に税額が多かったと分かったら、更正の請求を検討する

納める税金を多く申告していた場合や、還付金を少なく申告していた場合は、更正の請求ができることがあります。請求できる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

請求すれば自動的に還付されるわけではなく、税務署が内容を確認します。また、所得控除を追加しても、最終的な税額や純損失の金額に変動がない場合は、更正の請求はできません。

申告期限後は、通常の申告書を単に出し直すのではなく、状況に合った手続きを選ぶことが必要です。

参考:国税庁「確定申告を間違えたとき」

申告書や領収書をAIに読み込ませる前に、情報の扱いを確認する

申告書や源泉徴収票、領収書には、住所、マイナンバー、口座情報、取引先の情報、家族や医療に関する情報などが含まれることがあります。

AIサービスによって、入力内容の保存、学習への利用、管理者による閲覧などの扱いは異なります。「有料だから安全」「学習をオフにしたから何でも入力してよい」と決めつけず、利用規約やプライバシーポリシー、利用中のプラン・設定を確認しましょう。

相談に不要な氏名や住所、番号などは削除し、取引先を「A社」に置き換えるなど、入力情報を必要最小限にすることをおすすめします。ただし、名前を消しても、取引内容などから本人が分かる場合があります。

特に、従業員や取引先など他の人の個人データを扱う事業者は、利用目的の範囲や、サービス提供者による学習への利用の有無などの確認が必要です。資料を丸ごと読み込ませる前に、一度立ち止まって確認してください。

参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスに個人データを入力する際の留意点」

こんな場合は、申告前に税理士へ相談を

次のような場合は、AIの回答だけで結論を出さず、資料をもとに個別の確認を受けることをおすすめします。

  • 事業所得と雑所得の区分が分からない
  • 家賃や車の費用を、どこまで経費にしてよいか迷っている
  • 高額な資産を買った、不動産を売却した、海外取引がある
  • 青色申告の要件や、消費税の計算方法に自信がない
  • 前年と比べて税額が大きく変わった理由を説明できない
  • すでに提出していて、訂正が必要か判断できない

申告書の数字が正しいか確かめるには、申告書そのものだけでなく、元になった帳簿や請求書などとの照合が必要です。どの資料をどこまで確認するか、帳簿の修正や申告書の作成が必要かは、ご相談内容を伺って整理します。

相談するときは、以下の資料があると状況を整理しやすくなります。

  1. 作成した申告書と、青色申告決算書または収支内訳書
  2. 帳簿や試算表、売上・経費の集計表
  3. 請求書、領収書、通帳・カード明細、源泉徴収票、控除証明書
  4. 判断に迷ったAIへの質問と回答、AIが示した根拠資料
  5. 申告済みかどうか、提出日、e-Taxの受信通知、納付・還付の状況

すべてを完璧に整理してからでなくても構いません。最初の問い合わせでは、対象年分、収入の種類、提出済みかどうか、不安な点を伝えるところから始めましょう。マイナンバーなどを含む資料は、受渡し方法を確認してから共有してください。

期限が近い方は、確定申告お急ぎサポートもご覧ください。対応できる内容や日程は、資料の状況などを確認したうえでご案内します。

AIを使った確定申告について、よくある質問

ChatGPTで作った申告書は、そのまま提出できますか

AIが表示した文章や表だけでは、所定の申告手続きを終えたことにはなりません。申告内容を確認し、対象年分の申告書に反映したうえで、e-Taxや書面などの方法で提出します。AIが作成したファイルについても、所定の様式や必要な項目を満たしているか確認が必要です。

AIの回答どおりに申告して間違えた場合は、訂正が必要ですか

必要です。AIの回答を参考にした場合も、申告内容に誤りがあれば、その内容と時期に応じた訂正を行います。所得税は、納税者が所得金額と税額を正しく計算して申告する制度です。

参考:国税庁「青色申告制度」

AIの回答と会計ソフトの税額が違う場合、どちらを信じればよいですか

どちらかを無条件に正しいと決めず、入力した収入・経費・控除、対象年分、所得の区分などの違いを確認してください。同じ条件にそろえても差がある場合は、国税庁の資料や作成コーナーで確かめ、判断がつかない点を税理士に相談しましょう。

税理士にチェックだけを頼むことはできますか

確認を依頼する場合も、数字の根拠となる帳簿や請求書などを照合することが大切です。必要な確認作業や、帳簿の修正・申告書の作成まで必要かは、相談内容と資料の状況によって変わります。「どの部分が不安か」「どこまでの確認を希望するか」を伝え、依頼前に対応範囲と費用をご相談ください。

AIで進めた確定申告も、不安な部分からご相談ください

AIを活用して確定申告を進めることは、資料整理や作業時間の短縮につながります。そのうえで、数字の根拠と税務上の条件を確認することが、申告への不安を減らす近道です。

岩本隆一税理士事務所では、代表税理士が直接対応し、顧問契約のほか、確定申告のスポット依頼にも対応しています。AIやクラウド会計で途中まで進めた方も、まずは現在の状況とお困りの点をお聞かせください。

ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

※本記事は2026年11月5日時点で確認した情報に基づく一般的な解説です。適用される制度や必要な手続きは、申告する年分や個別の事情によって異なります。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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