個人事業主の経費はどこまで?家事関連費の按分の決め方と記録の残し方(日常の記帳の視点)

個人事業主の経費はどこまで?家事関連費の按分の決め方と記録の残し方(日常の記帳の視点)

横浜市で個人事業主・フリーランスの記帳と確定申告をお手伝いしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「自宅で仕事をしているけれど、家賃はどこまで経費にできるのか」「車もスマホも仕事と私用の両方で使っている。割合はどう決めればいいのか」「飲み会や服代は経費になるのか」――個人事業主の方が日々の記帳で最も迷うのが、仕事と私生活にまたがる支出、いわゆる「家事関連費」の扱いです。この記事では、税務調査の場面ではなく、毎日の記帳の視点から、経費の基本的な考え方、家事関連費の按分の決め方と根拠の残し方、迷いやすい支出の整理、領収書がない支出の扱いを解説します。本記事は2026年11月6日時点の所得税法と通達に基づいています。

経費の基本的な考え方|「事業との関連性」と「説明できること」

所得税法では、事業所得の必要経費は「売上原価のほか、その年の収入を得るために直接要した費用と、販売費・一般管理費その他業務について生じた費用」とされています。言い換えると、「その支出が事業を行ううえで必要だったか」が判断の軸で、業種や仕事の内容によって、同じ支出でも経費になる場合とならない場合があります。たとえば書籍代は、ライターやコンサルタントが仕事の資料として買えば経費ですが、趣味で読む小説は経費になりません。

一方、所得税法45条は「家事上の経費」とそれに関連する経費を原則として必要経費に算入しないと定めています。生活費と事業の経費が混ざる個人事業主ならではのルールで、「仕事にも使っているから全額経費」とはならず、事業に使った部分だけを経費にする、というのが家事関連費の基本です。

家事関連費の按分|割合の決め方と根拠の残し方

所得税法施行令96条と基本通達では、家事関連費のうち必要経費にできるのは、「業務の遂行上必要であり、その必要な部分を明らかに区分できる場合のその部分」とされています。通達では、必要な部分が50%を超えるかどうかで「主たる部分」を判定するとしつつ、50%以下であっても必要な部分を明確に区分できれば、その部分を経費にして差し支えないとされています。つまり、割合が小さくても、根拠をもって区分できれば経費にできます。

家事関連費の按分の進め方

仕事と私生活にまたがる支出は、業務に必要な部分を区分できれば、その部分を経費にできます。

仕事との関連を確かめる事業との関連性で判断します。仕事と私生活にまたがる支出は、家事関連費として按分を検討します。
按分の基準を選ぶ支出が何に比例して発生するかで選びます。家賃は床面積、車は走行距離、通信費は使用時間などです。
割合を計算してメモする間取り図や走行距離の記録、使用時間の記録などから割合を計算し、計算メモを作ります。
根拠資料と一緒に保存計算メモと元になった資料を、割合を決めた年の帳簿と一緒に保管します。
変化があれば見直す生活や仕事の形が変わったら見直します。割合を変える場合は、その理由を記録しておきます。
割合が小さくても、根拠をもって区分できれば経費にできます。
出典:所得税法45条、所得税法施行令96条。本文の説明を図にまとめたものです。

按分の基準は、「その支出が何に比例して発生するか」で選びます。代表的なものは次のとおりです。

  • 家賃・住宅ローンの利息・固定資産税・火災保険料(自宅兼事務所):仕事に使う部屋の床面積÷全体の床面積。間取り図に仕事用のスペースを色分けして保存しておきます。リビングの一角で仕事をしている場合は、机や棚の占める面積で計算するか、使用時間で按分します。なお住宅ローンの元本返済は経費になりません(建物は減価償却で計上)。
  • 電気代:床面積比か、仕事に使う時間の割合(1日の使用時間÷24時間、週の勤務日数など)。
  • インターネット・スマホの通信費:仕事に使う時間や日数の割合。通話明細があれば、仕事の通話回数の割合でも構いません。
  • 車(ガソリン・保険・車検・駐車場・減価償却):走行距離の割合が最も説得力があります。一定期間(1〜3か月)だけ仕事と私用の走行距離を記録し、その割合を年間に当てはめる方法もありますが、季節や時期によって使い方が変わる場合は、記録した期間が1年の使い方を表していると説明できるようにしておきます。曜日(平日は仕事、休日は私用)で割る方法もあります。
  • パソコン・プリンター:使用時間の割合。仕事専用なら全額です。

根拠の残し方は、「割合の計算メモ」と「その元になった資料」を一緒に保存することです。間取り図、走行距離の記録、使用時間の記録、通話明細などを、割合を決めた年の帳簿と一緒に保管し、生活や仕事の形が変わったときに見直します。割合は「毎年同じ」でなくても構いませんが、変える場合は理由を記録しておきます。

国税不服審判所の公表裁決事例:業務に必要な部分を区分できず、経費にならなかった例

歯科医院を営む青色申告者が必要経費にしていた同窓会費、歯科医師会の共済負担金、英会話研修費などを、税務署が必要経費と認めなかった事案があります(平成13年3月30日裁決)。

国税不服審判所は、家事関連費は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合や、青色申告者が取引の記録等で業務に直接必要な部分を明らかにできる場合に、その部分を必要経費にできるとしました。そのうえで、共済負担金には診療所を対象とする火災共済の分が含まれ、英会話研修にも業務に役立つ内容がありましたが、いずれも業務に必要な部分を区分して示せないとして、全額を必要経費に算入できないと判断しています。

按分して経費にするときも、「どの部分が仕事のためか」を資料で示せることが前提になります。

出典:国税不服審判所 公表裁決事例(平成13年3月30日裁決、裁決事例集No.61)

迷いやすい支出の整理

  • 取引先との飲食・交際費:取引先や仕事関係者との打ち合わせ・接待は経費になります。個人事業主の場合、法人のような交際費の上限はありませんが、「誰と・何の目的で」が説明できることが条件です。領収書の裏や帳簿の摘要に相手の名前と目的を書いておきます。友人との食事や家族との外食は経費になりません。
  • 衣服:スーツや私服は、仕事でも着るものであっても、私生活でも着られるため原則として経費になりません。作業着、制服、仕事でしか使わない衣装(舞台衣装・ユニフォームなど)は経費です。
  • 書籍・新聞・セミナー・資格取得:仕事に直接関係する内容であれば経費です。業務に関係のない一般教養や、独立前の資格取得(開業前の支出)は扱いが変わるため、迷う場合は内容を記録して税理士に確認してください。
  • 家族への給与:生計を一にする家族への給与は原則として経費になりませんが、青色申告の方は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、その家族(その年12月31日現在で15歳以上)が原則として年に6か月を超えて専ら事業に従事していれば、届け出た金額の範囲内で、労務の対価として相当な額を経費にできます。白色申告の方は事業専従者控除(配偶者86万円、その他の親族は1人50万円と、控除前の事業所得等を専従者の数+1で割った額のいずれか低い額)になります。家族に支払う家賃や借入金の利息も経費にできませんが、その家族が負担した固定資産税などは経費にできます。
  • 自宅の家賃を家族名義で契約している場合:生計を一にする家族が契約者でも、事業に使う部分の家賃は経費にできます(家族への支払いではなく、第三者である大家への支払いのため)。
  • 健康診断・医療費・ジム:事業主本人の健康診断や医療費は経費になりません(医療費は医療費控除の対象になり得ますが、健康診断の費用は、診断で重大な疾病が見つかり引き続き治療を受けた場合に限り対象になります)。
  • 国民年金・国民健康保険料:経費ではなく社会保険料控除です。小規模企業共済の掛金も経費ではなく所得控除です。
  • 所得税・住民税:経費になりません。個人事業税は経費になります。

領収書がない支出の扱い

領収書やレシートがなくても、支払いの事実と内容が確認できれば所得税の経費にできます(消費税の課税事業者が一般課税で仕入税額控除を受けるには、一定の場合を除き、帳簿に加えてインボイス(適格請求書)などの保存が別に必要です)。次の資料を残してください。

  • クレジットカード・口座振替の明細:日付・金額・支払先が分かります。何に使ったかを帳簿の摘要に書いておきます。
  • ネット通販の注文履歴・電子マネーの利用履歴:画面を保存するか、PDFで出力します。
  • 出金伝票:電車代・バス代、自動販売機、慶弔費など領収書が出ない支出は、日付・金額・支払先・目的を記録した出金伝票を作ります。交通系ICカードの利用履歴を印刷して添えると確実です。
  • 慶弔費:案内状や会葬礼状を保存し、出金伝票に相手との関係を書いておきます。

なお、メールやWebサイトでPDFとして受け取った領収書・請求書は、電子帳簿保存法の電子取引データとして、データのまま保存する必要があります(「電子帳簿保存法の電子取引データ保存」参照)。

「経費にできる」より「説明できる」ことが大切

家事関連費の按分割合に、法律で決められた「正解」はありません。だからこそ、税務調査で確認されるのは「その割合をどう決めたか」「根拠は残っているか」です。按分の記録と領収書の摘要がそろっていれば、割合そのものが多少違っても大きな問題にはなりにくく、逆に「なんとなく50%」で根拠がない状態が最も説明に困ります。

日々の記帳では、迷った支出は「経費にしない」のではなく「内容を記録して入れておき、申告前に税理士と確認する」のが実務的です。税務調査で経費がどう見られるかは「税務調査で経費はどこまで認められる?」で調査官の視点から解説しています。白色申告の方も記帳と帳簿保存は義務ですので、「白色申告の記帳義務」も参考にしてください。確定申告の依頼時に用意する資料は「資料チェックリスト」にまとめています。

当事務所では、記帳代行の際に家事関連費の按分の基準を一緒に決め、根拠の残し方までご案内しています。詳しくは税務顧問+確定申告のページをご覧ください。

まとめ:按分は「何に比例するか」で基準を選び、根拠を帳簿と一緒に残す

個人事業主の経費は「事業に必要だったか」で判断し、仕事と私生活にまたがる家事関連費は、事業に使った部分を明らかに区分できればその部分を経費にできます。按分の基準は床面積・使用時間・走行距離など支出の性質に合わせて選び、計算メモと元資料を帳簿と一緒に保存します。交際費は相手と目的、衣服は仕事専用かどうか、家族への給与は届出と専従の要件がポイントです。領収書がない支出も、明細や出金伝票で記録すれば経費にできます。大切なのは「経費にできるか」より「説明できるか」です。

「個人事業主の経費と家事関連費」まとめ

  • 必要経費は「事業に必要だったか」で判断。家事上の経費は原則として経費にならない(所得税法45条)
  • 家事関連費は、業務に必要な部分を明らかに区分できればその部分を経費にできる。50%以下でも区分できればOK(施行令96条・基本通達45-2)
  • 按分基準:家賃=床面積、電気=面積か時間、通信費=使用時間、車=走行距離(一定期間の記録で割合を決める)
  • 根拠は計算メモ+元資料(間取り図・走行記録・明細)を帳簿と一緒に保存し、変えるときは理由を記録
  • 交際費は相手と目的を記録、衣服は仕事専用のみ、家族給与は青色事業専従者給与の届出(白色は専従者控除)
  • 領収書がない支出はカード・口座明細、注文履歴、出金伝票で記録。PDFの領収書はデータのまま保存

「個人事業主の経費」に関するよくある質問

A.持ち家の場合、住宅ローン控除は「居住用部分」にのみ適用されるため、事業用の割合が大きいと控除額が減ります。事業用割合が10%以下であれば全体を居住用として控除できる取り扱いがあるため、持ち家で住宅ローン控除を受けている方は、按分割合を決める前に影響を確認してください。また、将来自宅を売却するときの3,000万円特別控除も居住用部分が対象です。賃貸の場合はこうした影響はありません。持ち家の按分は、経費の増加と控除の減少を比べて判断する必要があるため、ご相談ください。

A.同じにする義務はありません。仕事部屋を増やした、車を仕事で使う頻度が変わった、といった実態の変化があれば割合を変えて構いません。ただし、変更した年に「なぜ変えたか」と「新しい割合の根拠」を記録しておくことが大切です。実態が変わっていないのに年によって割合が大きく違うと、根拠のない数字と見られやすくなります。年に1回、確定申告の準備の際に割合を見直す習慣をつけると、記録も自然に残ります。

A.取得価額が10万円以上で1年以上使うものは固定資産として、耐用年数に応じて減価償却します(パソコンは4年、普通車は6年が基本)。ただし青色申告の方は、30万円未満のものを年間合計300万円まで、購入した年に全額経費にできる特例(少額減価償却資産の特例)があります。また20万円未満のものは3年で均等に償却する方法も選べます。仕事と私用で兼用する場合は、減価償却費を按分割合で計算します。車やパソコンの購入資料(日付・金額・支払方法)は固定資産台帳の作成に必要なので、必ず保存してください。

経費の判断・記帳のご相談は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「按分の割合をどう決めればいいか」「この支出は経費になるか」「記帳をまとめて任せたい」など、個人事業主・フリーランスの記帳と確定申告のことなら、お気軽にご相談ください。横浜市内の方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。

お電話でのご相談

045-900-6098
電話受付:平日9〜17時、土日祝・夜間は事前予約

横浜市地域密着・
スピード対応

横浜市全域対応

横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区

※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。

無申告で重加算税が課される条件とは?正しい対処法

無申告で重加算税(40%)が課される3つの条件|失念と隠蔽の境界と対処法

無申告の解消サポートや税務調査の立会いを手掛ける、岩本隆一税理士事務所、代表の岩本隆一です。 「ずっと確定申告をしていないけれど、もし把握されたらどうなるのだろう」「テレビなどで聞く『重加算税』って、自分にも関係があるの・・・...

あわせて読みたい
税理士に確定申告を丸投げするとき、何を渡せばいい?個人事業主の資料チェックリスト(そろっていない場合の代わりも)

税理士に確定申告を丸投げするとき、何を渡せばいい?個人事業主の資料チェックリスト(そろっていない場合の代わりも)

横浜市で個人事業主・フリーランスの確定申告を数多くお手伝いしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 「確定申告を税理士に丸投げしたいけれど、何を渡せばいいのか分からない」「領収書が袋に入ったままで、整理できて・・・...

あわせて読みたい
領収書も帳簿もない数年分の無申告|通帳・取引先データ・売上台帳から申告の基礎を組み立てる方法

領収書も帳簿もない数年分の無申告|通帳・取引先データ・売上台帳から申告の基礎を組み立てる方法

横浜市で無申告の解消をサポートしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。 「領収書を全部捨ててしまったので申告できないと思っている」「売上がいくらだったか自分でもはっきり分からない」「税務署に勝手に税額を決めら・・・...

あわせて読みたい
お問い合わせ