事業税の確認・税務調査に備えるには?個人・法人の違いと準備する資料
事業税について確認や資料提出の連絡が来たら、まず、どの税目・期間について、どの機関から連絡を受けたのかを確認しましょう。
事業税は、所得税や法人税とは異なる地方税です。また、個人事業税と法人事業税では、対象や計算・申告の仕組みも異なります。この記事では、神奈川県の公表資料を中心に、確認や税務調査に備える際の基本を整理します。
1.事業税は県が扱う地方税
神奈川県では、個人事業税と法人事業税は県税として扱われています。所得税・法人税を扱う税務署と、県税事務所を混同しないようにしてください。
「税務署へ申告した内容を基にする部分がある」ことと、「税務署だけに確認すればすべて終わる」ことは同じではありません。連絡を受けたときは、担当する県税事務所、対象税目、事業年度や年分、確認事項を記録しましょう。
事業税、法人県民税、法人市民税などは別の税目です。通知書や依頼書に書かれた名称を確認することが出発点です。
出典:神奈川県「個人事業税」「法人事業税」
https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b004/index.html
https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b006/index.html
2.個人事業税は業種と事業税の計算を確認する
個人事業税の対象となるのは、県内に事務所・事業所を設け、法律で定められた業種の事業を行う個人です。すべての事業収入が同じ条件で課税されるわけではありません。
点検では、実際の仕事の内容、売上・必要経費の計算、事業専従者の取扱い、損失の控除、事業主控除などを確認します。事業主控除は、年間を通じて事業を行う場合は290万円で、開業・廃業により期間が1年未満の場合は月割りとなります。
所得税の青色申告特別控除は、個人事業税には適用されません。所得税の申告書の金額だけで税額を判断しないようにしましょう。
所得税または住民税の申告書を提出した場合、原則として個人事業税の申告書を別に提出する必要はありません。ただし、神奈川県では、死亡による廃止を除き、事業を廃止した場合は廃止した日から1か月以内に個人事業税の申告が必要です。死亡により事業を廃止し、個人事業税の申告が必要となる場合の期限は4か月以内です。申告書の事業税に関する事項も確認してください。
出典:神奈川県「個人事業税」
https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b004/index.html
参考:兵庫県「個人事業税」(青色申告特別控除の一般的な取扱い)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk22/pa04_000000007.html
3.法人事業税は課税方式と適用年度を確認する
法人事業税は、法人の区分や事業内容などによって、所得、収入金額、付加価値額、資本金等の額を使う課税方式が異なります。法人税の申告書の数字を、そのまま一つの税率で計算すればよいとは限りません。
外形標準課税は、原則として資本金が1億円を超える所得課税法人が対象ですが、公益法人等などの除外があります。また、改正により、資本金が1億円以下でも一定の条件を満たす法人は対象になります。2025年4月1日以後開始事業年度からの減資への対応、2026年4月1日以後開始事業年度からの一定の100%子法人等への対応が設けられています。
判定には、前事業年度の適用状況、資本金・資本剰余金、完全支配関係などの条件や例外が関係します。現在の資本金だけを見ず、対象年度の制度と県の判定資料を確認してください。
外形標準課税の対象となる場合は、付加価値割・資本割などの集計根拠も整理します。給与や賃借料などの帳簿科目と税務上の集計範囲が一致するとは限らないため、計算資料と根拠資料を対応させることが大切です。
出典:神奈川県「法人事業税」
https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b006/index.html
出典:神奈川県「令和6年度税制改正に伴う外形標準課税の適用対象法人の見直しについて」
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/6482/r6gaikeiminaoshi.pdf
4.連絡を受けたら、確認事項と資料を整理する
確認や調査の連絡があった場合は、まず依頼内容を確認し、関係する資料をそろえます。次は準備する資料の例であり、すべての事業者が一律に提出するという意味ではありません。
- 対象年分・事業年度の申告書、決算書、計算明細
- 売上や経費の帳簿、契約書、請求書などの根拠資料
- 事業の種類や取引内容が分かる資料
- 法人の資本金等や組織変更、事務所の状況が分かる資料
- 外形標準課税の対象判定と、該当する計算項目の集計根拠
連絡内容が不明なときは、何を確認するための資料なのか、対象期間、提出方法と期限を担当窓口へ確認しましょう。税理士に依頼している場合は、受け取った書面や説明を共有します。
元の帳簿や資料を事実と異なる内容に作り替えるのではなく、誤りに気づいた経緯と正しい根拠を整理することが大切です。
5.調査対象となる売上規模や日数を一律に決めつけない
「年商が数千万円以上なら対象になりやすい」「特定業種なら必ず調査」「通常は1〜3日で終了」といった、確認できない基準や日数を前提にすることは避けましょう。
必要な対応は、連絡の内容や事業の状況によって異なります。個人事業税は課税・通知の仕組み、法人事業税は申告納付の仕組みが異なるため、結果への対応も、税目と手続に応じて確認する必要があります。
指摘の説明を受けた場合は、対象となる取引・金額・計算根拠を確認してください。不明な点を残したまま手続を進めず、担当窓口や税理士に確認し、必要な対応と納期限を整理しましょう。
(仮定例)個人事業税の税額が見込みより多かった場合
(仮定例)青色申告で所得税の確定申告をしている個人事業者が、所得税の申告書にある事業所得の金額を基に個人事業税を見込んでいたところ、県税事務所から届いた納税通知書の税額が見込みより多かったとします。所得税で差し引いた青色申告特別控除は個人事業税では認められていないため、その金額を所得に加えたうえで、事業主控除(年間を通じて事業を行う場合は290万円)などを差し引いて計算します。
このような場合は、県税事務所に計算の根拠を確認し、青色申告特別控除、事業主控除、事業専従者の扱いなど、所得税との違いを順に確かめるとよいでしょう。業種が法定業種に当たるかどうかも、あわせて確認します。実際の事例ではありません。
まとめ
事業税の確認では、県税としての窓口、個人・法人の違い、対象業種や課税方式、対象年度の制度を分けて確認します。特に外形標準課税は対象範囲の改正があるため、資本金1億円超かどうかだけで判断しないことが大切です。
帳簿や申告書と計算根拠を整理し、依頼された確認事項に沿って対応しましょう。
税務調査についてのご相談は、当事務所の税務調査サポートをご覧ください。
https://iwamototax.com/tax-audit/
※2026年11月4日時点の一般的な解説です。神奈川県の制度を中心に説明しており、業種や法人の区分、対象年度によって取扱いが異なります。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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