無申告者の税務調査の確率|税務署の選定基準を税理士が解説

今日は「無申告だとどのくらいの確率で税務調査が来るの?」という、めちゃくちゃ気になる質問について解説していきます。
正直なところ、この話題って税理士界隈でもよく話題になるんですよね。同時に、無料相談をした方からも「先生、私バレますかね…?」みたいな相談をよく受けます。実際のところ、この質問は非常に現実的で切実な問題なんです。
無申告の税務調査の確率、実際のところは?
結論から言うと、無申告者の税務調査確率について、国税庁から具体的な数値は公表されていません。
ただし、参考データとして日本の個人事業主全体の調査確率は約0.5-1%程度とされています。しかしながら、無申告者はこれより高い確率で調査対象となる可能性があります。というのも、税務署にとって無申告者は「確実に税収が見込める対象」だからです。
一方で、国税庁の「令和3事務年度 所得税無申告者等の調査状況」によると、年間の個人所得税の実地調査件数は約3.1万件(特別調査・一般調査2.4万件、着眼調査0.7万件の合計)となっています。加えて、簡易接触は約56.8万件で、調査等合計は約60万件に達しています。したがって、この数字を見ても、税務署が無申告案件を重要視していることが分かりますね。
税務署はどうやって無申告者を見つけるの?
ここが一番気になるところですよね。そもそも、税務署って、どうやって「この人、申告してないな」って分かるんでしょうか?
1. 支払調書からの発見(最も主要な手法)
一番多いのがこれです。つまり、会社や取引先が税務署に提出する「支払調書」から、収入があるのに申告していない人を発見するパターンです。言い換えると、この仕組みが最も確実性の高い発見方法なんです。
特に以下の支払いは要注意です:
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書:年間5万円超で提出義務
- 不動産の使用料等の支払調書:年間15万円超で提出義務
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書:100万円超で提出義務
なお、これらの金額設定は国税庁のタックスアンサーで明確に定められているので、確実に税務署に情報が行きます。要するに、一定額以上の取引は必ず税務署に把握されてしまうということです。
2. KSK(国税総合管理)システムの威力
KSKシステムという、めちゃくちゃ優秀なデータベースがあります。そして、これが各種支払調書や申告書の情報を突き合わせて、「あれ?この人の収入、申告書に載ってないじゃん」って発見しちゃうんです。
このシステムでは申告内容を分析・スコア化して、調査先選定の判断材料として使っています。それに加えて、全国の税務署の情報が一元管理されているので、逃れるのはほぼ不可能です。結論として、現代の技術力を前にして無申告を続けるのは非常に困難なのが現状です。
3. 第三者情報(タレコミ)
これは俗に言う「タレコミ」です。例えば、元従業員、取引先、近所の人など、様々なルートから情報が入ってきます。
もちろん、「そんなの都市伝説でしょ?」って思うかもしれません。けれども、実際に結構な割合でこういう情報提供があるんです。特に人間関係がこじれた時は要注意ですね。それというのも、恨みを持った相手からの情報提供は、かなり具体的で正確な場合が多いからです。
税務調査の選定基準、税理士が教える実務的な話
税務署がどういう基準で調査対象を選んでいるのか、実務経験から感じることをお話しします。
高リスク要因(実務で感じること)
1位:収入金額が大きい 当たり前ですが、金額が大きいほど注目されます。なぜなら、税務署も人員に限りがあるので、効率的に税収を確保したいんです。言うまでもなく、税務署も組織として成果を求められているということです。
2位:業種・職種 現金商売(飲食店、美容院、建設業など)は特に注目されがちです。その理由は、現金取引の把握が困難だからです。さらに、最近はメルカリやヤフオクなどのフリマアプリでの取引も重点的に確認されています。
特に注意が必要なのは:
- 古物商許可が必要な取引を無許可で行っている場合
- 酒類の販売(酒税関係の手続きは特に厳しく取り締まられています)
3位:過去の申告状況 以前に申告漏れがあった人、申告書の提出が遅れがちな人は、マークされやすい印象があります。というのも、税務署は過去のデータを詳細に分析しているからです。
4位:生活水準と申告所得の乖離 SNSで豪華な生活をアップしているのに、申告所得がやけに少ない…みたいなケースは危険です。これ、本当にあるんですよ。現在では、SNSの投稿も調査の材料になり得るということです。
5位:関連者の申告状況 取引先や同業者が調査を受けた際に、あなたの名前が出てくるパターンです。芋づる式って言うやつですね。つまり、一度調査の網にかかると、関連する人物まで調査対象になってしまうリスクがあるのです。
最近の税務調査の変化、現場で感じること
税務調査の手法も時代と共に変わってきています。最近特に感じるのは、調査官が携帯電話やノートパソコンを持参して、その場でデータを確認したり情報を照会したりするケースが増えていることです。
昔は紙ベースの資料を持参していました。しかし今は、リアルタイムで本庁とやり取りしながら調査を進めることができるようになっています。これにより、調査の精度と効率が格段に上がっているんです。逆に言えば、調査を受ける側にとってはより厳しい状況になっているということです。
無申告者によくある「危険な思い込み」
実務でよく遭遇するのが、「レシートがあれば何でも経費にしていい」という思い込みです。これ、本当に多いんですよ。
確かにレシートは重要な証拠書類です。ところが、事業に関係のない支出は当然経費になりません。家族との食事代、プライベートな買い物、趣味の費用などを経費にしてしまうと、税務調査で痛い目に遭います。
実は、こういう「小さな勘違い」が積み重なって、結果的に大きな問題になってしまうケースを何度も見てきました。したがって、レシートがあっても、事業との関連性をしっかりと説明できることが重要なのです。
無申告がバレた時の恐ろしいペナルティ
「バレても大したことないでしょ?」って思っている人、甘いです。実際のペナルティは想像以上に厳しいものです。
金銭的ペナルティ(法定税率)
無申告加算税
- 税額50万円以下:15%
- 税額50万円超:20%
重加算税 意図的な隠蔽があった場合:40%(無申告加算税に代わって適用)
延滞税 年7.3%または特例基準割合+1%のいずれか低い割合
ペナルティの詳細はこちらの記事をご確認ください。
実例計算:年収2000万円を3年間無申告だった場合
- 本税:約600万円
- 無申告加算税:約120万円
- 延滞税:約50万円
- 合計:約770万円
元の税金の1.3倍近くになってしまいます。これ、シャレになりませんよね。要するに、無申告のリスクは金銭的にも非常に大きいということです。
無申告が家庭に与える深刻な影響
実務で特に印象的だったのは、無申告が原因でご夫婦が離婚に至ってしまったケースです。
夫婦で商売をされていたのですが、無申告による税務調査で多額の追徴税額が発生しました。その結果、それが家計を圧迫したんです。お互いを責め合うようになり、最終的に関係修復ができなくなってしまいました。
つまり、税金の問題って、単なるお金の問題じゃないんです。家族の信頼関係、将来への不安、精神的なストレスなど、人生そのものに深刻な影響を与えてしまうんです。言い換えれば、無申告は家庭の幸せも破綻させてしまう可能性があるということです。
今からでも間に合う!対処法
幸い、まだ対処法はあります。今からでも遅くありません。
1. 期限後申告(自主申告のメリット)
まずは素直に申告書を提出しましょう。実際、自主的に期限後申告を行うと、無申告加算税が5%に軽減されます。これは法律で定められた軽減措置なので、確実に適用されます。要するに、早めの対応が経済的負担を大幅に軽減する最良の方法ということです。
2. 複雑な計算や手続きへの対応
複雑な計算や、税務署との交渉が必要な場合は、専門家に相談するのも一つの手です。特に、重加算税を回避するための対策は重要です。なぜなら、重加算税が適用されると、ペナルティが大幅に増加してしまうからです。
3. 分割納付の相談
一括で支払えない場合は、税務署に分割納付の相談をしましょう。国税庁の「納税の猶予制度FAQ」でも、猶予期間中や特例猶予後に分割納付が認められるとされています。意外と柔軟に対応してくれます。そのため、支払いが困難でも諦める必要はないということです。
4. 日常的な帳簿管理で無申告を防ぐ
私がお客様によくお伝えするのは、日々会計ソフトに売上や経費を入力する習慣をつけることです。
これをやっていれば、確定申告の時期になっても慌てることがありません。また、「面倒だから無申告で済まそう」という気持ちにもならないんです。少しずつでも記録を残していくことで、税務申告への心理的ハードルがぐっと下がります。結果的に、日々の積み重ねが無申告を防ぐ最も効果的な方法なのです。
まとめ:無申告のリスクを正しく理解しよう
無申告の具体的な調査確率は公表されていません。しかし、発見される仕組みは確実に存在し、バレた時のダメージは計り知れません。
特に以下に当てはまる人は要注意:
- 支払調書が出される取引がある
- 年収が高い
- 現金商売をしている
- SNSで派手な生活をアピールしている
- 過去に申告漏れがある
つまり、「バレないかも」という淡い期待に賭けるより、きちんと申告して安心して眠れる生活を選ぶことをお勧めします。
最終的に、自主的な期限後申告なら加算税が5%に軽減されるので、早めの対応が結果的に一番コストを抑える方法です。そして、何よりも精神的な安心を得ることができます。
ちなみにこちらで国税庁が税務調査に対するQ&Aをまとめております。よかったら確認してみてください。
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