仮想通貨の無申告に気づいたら|課税タイミングと期限後申告の進め方

更新日:2026年11月6日

「暗号資産で利益が出たけれど、確定申告をしていない」「海外取引所の取引も申告が必要?」。仮想通貨(暗号資産)の無申告に気づいたら、まず確認したいのは、取引した年、利益が生じた取引、これまでの申告状況です。

日本円に換えていなくても、別の暗号資産との交換や買い物への使用で所得が生じることがあります。銀行口座への出金額だけで判断せず、取引履歴から年ごとの所得を計算しましょう。

この記事は、日本の居住者である個人の暗号資産取引について、2026年分までの所得税の取扱いを中心に、申告漏れを確認する手順を説明します。非永住者・非居住者、法人の取引は別途検討が必要です。令和8年度税制改正による新しい課税方式は、後半で適用時期と分けて説明します。

暗号資産の無申告は税務署に把握される?

暗号資産取引も税務調査の対象となります。税務調査では、納税者に帳簿や取引資料の提示・提出を求めるほか、必要に応じて取引先などへの確認が行われることがあります。取引所の履歴、ウォレットの記録、銀行の入出金と申告内容を対応づけて説明できることが大切です。国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」

ただし、「99%発覚する」「密告が最も多い」「すべての銀行口座が常時監視されている」といった説明は、ここで確認した公的資料からは裏づけられません。発覚する確率を考えるより、申告が必要な所得があるかを確認することが先です。

海外取引所なら申告しなくてよい、とは限らない

非永住者以外の日本の居住者は、原則として国内・国外で生じた所得が課税対象です。海外取引所を利用していることだけで、日本の申告義務がなくなるわけではありません。非永住者には国外源泉所得の課税範囲に特則があり、非居住者は国内源泉所得の有無などを確認します。海外転居をした年も、居住者区分や取引の時期に応じた判断が必要です。国税庁「納税義務者となる個人」、暗号資産FAQ・1-8

国際的な情報交換については、CARF(暗号資産等報告枠組み)に基づく日本の報告制度が2026年から施行され、2026年分の情報について2027年から税務当局間の情報交換を開始する予定とされています。ただし、対象となる国・地域、事業者、取引や制度の開始時期には違いがあります。「海外の全取引所が日本の税務署に常時すべての情報を渡している」という意味ではありません。国税庁「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度」

日本円への換金以外にも、所得が生じる取引がある

暗号資産の所得は、口座から出金したときだけに生じるものではありません。主な取引は、次のように分けて確認します。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-1~1-7、2-1

  • 日本円などで購入し、そのまま保有:通常、購入しただけ、または保有中に値上がりしただけでは、個人の売却益は生じません。購入価格や手数料は将来の計算のために保存します。
  • 日本円・外貨に売却:売却代金から、売却分の取得価額と必要経費を差し引いて損益を計算します。
  • 別の暗号資産に交換:渡した暗号資産を譲渡したものとして損益を計算します。受け取る暗号資産の交換時の時価を円換算する必要があります。
  • 商品やサービスの購入に使用:支払いに使った暗号資産の取得価額と、購入した商品等の価額との差額などを確認します。
  • マイニング・ステーキング・レンディングの報酬を取得:取得時の時価が総収入金額となり、取得のための必要経費を差し引いて所得を計算します。後日その暗号資産を売却するときは、取得時の時価が取得価額になります。
  • 自分の取引所口座と自分のウォレットの間で移動:同じ暗号資産を自己名義で移すだけなら、通常、その移動自体は売却ではありません。ただし、手数料の支払いや別の資産への交換を伴う場合は、それぞれの取引内容を確認します。

売却・交換などの収入を計上する年は、原則として暗号資産を引き渡した日の属する年です。国税庁FAQでは、選択により契約した日の属する年とする取扱いも示されています。年末年始をまたぐ取引は、取引履歴の日時や採用している処理方法を確認してください。

交換後に値下がりしても、前年の所得は消えない

暗号資産同士を交換した場合は、受け取る暗号資産の交換時の時価と、渡した暗号資産の取得価額などを基に損益を計算します。受け取った暗号資産についても、交換時の時価を基に取得価額を記録しておきます。

交換で受け取った暗号資産が翌年に値下がりしても、それだけで前年の交換による利益がなくなるわけではありません。取引した年ごとに損益を区切ることが必要です。NFTの購入・売却を含む場合は、NFT自体の所得区分も確認してください。NFT・暗号資産の課税タイミングの解説

(仮定例)暗号資産を交換した翌年に値下がりした場合

(仮定例)1BTC当たりの取得価額が100万円のビットコイン1BTCを支払い、交換時の価額が1XRP=3万円のリップル40XRPを取得したとします。国税庁FAQの計算方法では、この交換をした年の所得金額は、3万円×40XRP-100万円=20万円です(手数料などは考慮していません)。

翌年にリップルが値下がりしても、交換した年の20万円の所得はそのままです。受け取ったリップルの取得価額は交換時の価額(この例では120万円)となり、翌年に売却などをしたときの損益は翌年分として計算します。実際の事例ではありません。

出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」1-3・1-5

所得区分・取得価額・必要経費を確認する

2026年分までの基本は雑所得。事業所得になる場合もある

暗号資産取引による利益は、原則として雑所得(その他雑所得)です。給与などと合算する総合課税の対象となり、所得税の税率は課税所得に応じて5%から45%です。所得税のほか、復興特別所得税や住民税も考慮します。「暗号資産の利益に一律の税率を掛ければ税額が出る」とは限りません。国税庁「所得税の税率」

国税庁の令和7年12月改訂FAQでは、暗号資産取引の年間収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得と整理されています。ただし、帳簿を保存していても営利性が認められない場合などは個別に判断します。300万円は利益ではなく収入金額であり、単に取引回数が多い、開業届を出したという理由だけで事業所得に決まるわけではありません。

また、暗号資産取引が事業所得等を生じさせる行為に付随する場合は、その事業等の所得として区分されます。過去年分を申告するときは、その年に適用される法令・通達と取引の実態を確認します。国税庁・暗号資産FAQ 2-2

雑所得の損失は、給与所得などとの損益通算はできません。また、2026年分までの通常の暗号資産取引について、株式と同じように損失を翌年へ繰り越せるわけではありません。改正後の制度と混同しないようにしましょう。同FAQ・2-11

売却分の取得価額は、総平均法または移動平均法で計算

所得の基本的な計算は、総収入金額 − 譲渡原価(売却等をした分の取得価額)− その他の必要経費です。購入した暗号資産が年末に残っている場合、その購入代金のすべてを、その年に売却した分の費用にすることはできません。

個人の暗号資産の評価方法には総平均法と移動平均法があり、暗号資産の種類ごとに選定します。評価方法の届出をしていない場合は総平均法です。申告のたびに有利な方法へ自由に切り替えることはできず、変更には所定の手続が必要です。複数の取引所やウォレットに同じ種類の暗号資産がある場合も、取引履歴をまとめて確認します。同FAQ・2-4~2-6

経費は取引との関係を説明できる範囲に限る

売却時の手数料など、収入を得るために必要な費用を確認します。購入時の手数料は取得価額に含めるなど、計上する場所にも注意が必要です。通信費やパソコン代は、取引に直接必要と認められる部分に限られ、私用分を含めて全額を経費にすることはできません。パソコンなどは減価償却が必要になる場合もあります。

事業所得・業務に係る雑所得では、業務に係る販売費や一般管理費なども検討対象となります。所得区分によって経費の範囲が異なるため、「投資関連の本やセミナーなら何でも経費」とは判断しないでください。領収書や利用目的、私用分と分けた根拠を残します。同FAQ・1-5、2-3

利益が20万円以下でも、申告の確認は必要

給与を1か所から受け取り、その給与が源泉徴収の対象で、給与収入が2,000万円以下であるなど一定の要件を満たす人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要となる場合があります。暗号資産だけで20万円を判断するのではなく、ほかの副業などの所得も含めます。売却代金ではなく、必要経費を差し引いた所得で判断する点にも注意してください。国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」

これはすべての人に当てはまる非課税制度ではありません。医療費控除などで所得税の確定申告をする場合は、この20万円ルールの対象となる所得も、20万円以下であっても併せて申告します。また、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要となる場合があるため、お住まいの自治体の案内を確認してください。

申告していなかった場合の加算税・延滞税

無申告加算税は、申告の時期と税額によって異なる

申告義務があるのに期限内に申告しなかった場合、本来の税額に加え、無申告加算税や延滞税がかかることがあります。次は、2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(所得税は原則2023年分以降)の無申告加算税の基本的な割合です。加重措置などがない場合を示しています。

  • 調査の事前通知前で、調査による決定を予知せず自主的に期限後申告:原則5%。
  • 事前通知後で、調査による決定を予知する前に期限後申告:納付税額の50万円までの部分は10%、50万円超300万円までの部分は15%、300万円を超える部分は25%。
  • 調査による決定を予知した後の期限後申告や税務署による決定:納付税額の50万円までの部分は15%、50万円超300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%。

これらは利益に掛ける割合ではなく、納付すべき税額を基にする割合です。税額に応じて割合が変わる場合は、各区分に該当する部分ごとに計算して合計します。税額全体に最も高い割合を掛ける計算ではありません。

過去の処分歴や連年の無申告、一定の帳簿の不提示・不記載などによる加重措置があります。一方、法定申告期限から1か月以内の自主申告で期限内納付などの要件を満たす場合や正当な理由がある場合には、不適用となることもあります。古い年分や個別の事情は、対象年に応じて確認が必要です。国税庁「確定申告を忘れたとき」

重加算税は「無申告なら必ず40%」ではない

課税の基礎となる事実を隠蔽・仮装した場合など、要件を満たすと、通常の加算税に代えて重加算税が課されます。基本の割合は、過少申告の場合35%、無申告の場合40%ですが、一定の加重措置もあり、40%が常に上限というわけではありません。単純な計算ミスや申告の失念と、隠蔽・仮装は区別して検討します。財務省「加算税制度の概要」

加算税と刑事罰も別の制度です。自主申告をすれば必ず重加算税や刑事責任がなくなる、あるいは一定額を超えると必ず刑事告発される、という説明はできません。資料の改変や虚偽の説明はせず、事実に沿って整理してください。

延滞税は年と期間を分けて計算する

延滞税は、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの期間に応じて計算されます。2026年中の割合は、納期限までの期間および納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間が年2.8%、それ以後が年9.1%です。2022年から2025年中の割合は、それぞれ年2.4%、年8.7%です。

期限後申告では申告書の提出日が納期限となるため、「本来の申告期限から2か月後は、すべて高い割合になる」と単純に計算するものではありません。複数年にまたがる場合は各期間の割合を使い、計算から除かれる期間の特例なども確認します。具体的な金額は、申告・納付の日付をそろえて計算してください。国税庁「延滞税について」、「延滞税の割合」

無申告・申告漏れに気づいたら進める4つの手順

申告準備の流れを整理する

まず、年ごとの申告状況を確認。そのうえで、次の流れで準備します。

  1. STEP 1 記録を集める

    取引所・ウォレットの履歴、入出金や経費の資料、過去の申告書をそろえる。

  2. STEP 2 所得を計算する

    年ごとに取引を整理。所得区分・取得価額・必要経費を確認し、不足資料や二重計上を点検する。

  3. STEP 3 申告内容と納付を
    確認する

    申告状況に合う手続を確認。申告内容を点検し、納期限と納付資金も確認する。

申告状況に応じた手続が必要です。申告義務があるのに未提出なら期限後申告、申告済みで税額が不足する場合は修正申告などを検討します。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

この図は準備の流れを示すもので、税額の自動計算や申告の完了を保証するものではありません。損益計算ツールの結果も、入力内容や取引履歴と照合してください。

1.申告済みかどうかを年ごとに確認する

申告義務があるのに申告書を出していない年は「期限後申告」を検討します。すでに確定申告をしていて、暗号資産の所得を入れ忘れた結果、税額が不足している場合は「修正申告」です。給与の年末調整だけを受けたことは、本人が確定申告したこととは異なります。過大に申告していた場合には、更正の請求など別の手続を検討します。国税庁「確定申告を間違えたとき」

2.取引所・ウォレットの履歴を集める

  • 国内・海外のすべての取引所の年間取引報告書、売買・入出金・交換のCSV
  • ウォレットのアドレス、取引日時・数量・取引ID、送受信先と移動目的の記録
  • マイニング・ステーキング・レンディング等の報酬履歴と取得時の円換算資料
  • 購入代金・売却代金の根拠、銀行の入出金、手数料やその他経費の資料
  • 過去の確定申告書、採用している評価方法、前年末の保有数量・取得価額

銀行の入金額だけでは、取引所内での交換や報酬の取得を把握できません。自分の口座間の移動を収入として二重計上していないか、期末残高が実際の保有数量と合っているかも確認します。

3.不足資料を補い、年別の損益を計算する

取引履歴が一部見つからない場合は、まず取引所の再発行・ダウンロード機能や取引メール、ウォレット履歴、銀行記録などを確認します。国税庁FAQには取得価額や売却価額が分からない場合の取扱いもありますが、資料を探さずに都合のよい取得価額を入れることは避けてください。推計や代替資料を使った箇所は、その理由と計算過程を残します。国税庁・暗号資産FAQ 2-7~2-9

損益計算ツールは集計を助けますが、未対応の取引や入力漏れがあると計算結果が変わります。交換、自己口座間の移動、報酬、手数料を確認し、ツールの数字をそのまま申告書に転記する前に内容を点検します。

4.申告と納付を進める

税務署から連絡が来ている場合は、連絡の内容と日時、調査の事前通知の有無を確認します。すでに連絡があることを隠して「自主申告だから一律5%」と判断してはいけません。修正申告の場合も、調査通知の前後などによって過少申告加算税の取扱いが異なります。なお、当初の申告が期限後申告だった場合は、修正申告でも無申告加算税がかかることがあります。

期限後申告で納める税金は提出日、修正申告で増える税金も修正申告書の提出日が納期限です。納付資金の確保を並行して進め、すぐに納付が難しい場合は税務署に相談します。猶予等には要件があり、申告を先送りすれば解決するわけではありません。国税庁「確定申告を忘れたとき」、「確定申告を間違えたとき」

税務署の計算や処分に疑問がある場合

提示された金額については、本税・加算税・延滞税を分け、取得価額の反映漏れや取引の二重計上がないかを資料と照合します。更正・決定などの処分に不服がある場合には、再調査の請求や審査請求の制度があります。原則として処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内という期限があるため、通知書と計算資料を持って早めに専門家へ相談してください。修正申告書の提出と、税務署による処分への不服申立ては別の手続です。「交渉すれば税額が半分になる」といった結果は保証されません。国税庁「税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続」

令和8年度税制改正と、過去年分の申告を分けて考える

2026年3月31日公布の所得税法等の一部を改正する法律等により、一定の特定暗号資産の譲渡について、所得税15%・個人住民税5%の申告分離課税と、一定の要件による譲渡損失の3年間の繰越控除が設けられました。この20%は、特別所得税まで含めた最終的な負担率を示すものではありません。

ただし、改正法が公布された日と、新しい課税方式が取引に適用される日は別です。国税庁の改正あらましでは、適用開始日は「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律の施行の日の属する年の翌年1月1日」とされています。関連する金融商品取引法等の改正法は2026年7月15日に成立していますが、一部規定の施行と、税制の適用開始の基準となる施行を混同しないことが必要です。

また、新制度の分離課税には対象資産や取引方法の要件があります。すべての暗号資産・海外取引・報酬に一律20%が適用されるわけではなく、株式との損益通算が一律に認められるという意味でもありません。分離課税の対象外となる取引には、譲渡所得等の課税関係の見直しもあるため、適用開始後は取引ごとの確認が必要です。

2026年分までの申告を、改正後の税率で計算し直したり、制度の開始を待って過去の申告を省略したりすることはできません。実際に申告する年分の取扱いと、今後の施行政令・国税庁の案内を確認してください。国税庁「令和8年度 税制改正のあらまし」6・7、金融庁「国会提出法案等」

法人化しても、過去の個人の無申告はなくならない

法人を設立しても、それ以前に個人として得た所得の申告義務が消えるわけではありません。「利益800万円を超えたら法人化」といった一律の基準で、過去の無申告を解決することもできません。法人化は、個人の所得、役員報酬、社会保険、維持費、法人が保有する暗号資産の評価などを含めて別途検討する問題です。まずは個人の過去年分を整理しましょう。

まとめ:申告漏れは、取引履歴と申告状況の確認から

暗号資産の無申告・申告漏れは、「日本円に換えていない」「海外取引所だから」という理由だけでは判断できません。売却・交換・使用・報酬の取得を年ごとに整理し、取得価額と必要経費を確認することが出発点です。

すでに申告している年と、申告していない年を分け、期限後申告または修正申告などの手続を進めます。資料不足や所得区分の判断で迷う場合は、取引一覧、過去の申告書、税務署からの連絡内容をそろえて、税務署や税理士に相談してください。

数年分の申告がまだの方、資料がそろっていない方は、無申告サポートのページで対応内容と流れをご確認ください。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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