【税理士が解説】税務調査の「質問応答記録書」への対応と注意点

最終更新日:2026年11月4日

横浜市で税務調査の立会いや、確定申告のサポートを手掛ける、税理士の岩本隆一です。

税務調査の途中で、調査官から「お聞きした内容を書類にまとめましたので、確認してください」と、質問応答記録書を提示されることがあります。

「早く調査を終わらせたい」と思っても、内容を確認しないまま署名するのは避けたいところです。自分が説明した事実や、記憶が曖昧だと伝えた部分まで、正確に記録されているかを確かめましょう。

この記事では、質問応答記録書の役割と、提示されたときの確認点、写しの取扱いを説明します。

税務調査で作成される「質問応答記録書」とは?

質問と回答を記録する行政文書

質問応答記録書は、税務調査の過程で、調査担当者が質問し、納税者等が回答した事項を記録する行政文書です。回答内容の正確性を確認するために作成されます。

調査官の質問検査権は国税通則法に定められていますが、質問応答記録書を納税者が作成・提出する申告書と同じものとして考えないようにしましょう。また、当日の会話がすべて逐語的に収録されるとは限りません。どの質問に対する回答なのか、記載の前提や対象期間も確認する必要があります。

参考:衆議院・2026年5月29日財務金融委員会の国税庁答弁、国税庁・税務調査手続に関するFAQ

なぜ質問応答記録書の確認が大切なのか

後日の事実認定に使われる資料になる

質問応答記録書は、調査や、その後に争いとなった場合の事実認定に使われる資料になり得ます。署名は、記録内容を確認した事情として考慮されるため、内容をよく読むことが大切です。

ただし、記録書があれば、その内容が必ずそのまま採用されるわけではありません。ほかの資料との整合性や、回答の前後関係なども問題になります。

国税不服審判所の2025年9月24日裁決では、記録書中の申述と税理士の答述・メール等との不整合などを検討し、申述を採用しませんでした。個別事案の判断ですが、「署名した書面は絶対的な証拠になる」という説明は適切ではありません。

参考:国税不服審判所・2025年9月24日裁決

重加算税は、署名の有無だけでは決まらない

重加算税は、税額計算の基礎となる事実の隠蔽・仮装など、法定の要件に基づいて判断されます。質問応答記録書に署名しただけで重加算税になるわけでも、署名しなければ重加算税を防げるわけでもありません。

2026年3月4日裁決では、記録書以外の事実からも隠蔽・仮装が認められるとして、記録書の証拠能力の有無は重加算税の判断に影響しない旨が示されています。

重要なのは、有利・不利という印象だけで回答を変えることではなく、実際の取引や処理の経緯を資料に基づいて正確に説明することです。

参考:国税不服審判所・2026年3月4日裁決

調査当日に実践したい「対応」4つのポイント

1. 内容を隅々まで確認する

読み上げを聞くだけで判断せず、記載内容を確認しましょう。特に次の点は、前後の文脈と合わせて確かめます。

  • 日付、金額、相手方、取引内容が正しいか。
  • 誰が行った処理なのか、どの年分・期間の話なのか。
  • 自分で確認した事実と、人から聞いた話が区別されているか。
  • 「覚えていない」「資料を確認したい」と答えた部分が、断定した回答になっていないか。

分からない言葉や質問の意味があれば、その場で説明を求めましょう。

2. 事実と異なる場合は、具体的に訂正を申し出る

実際の説明と違う部分があれば、「この日付は違います」「この処理をしたのは私ではありません」など、該当箇所と訂正したい内容を具体的に伝えます。

資料で確認できる場合は、その資料も示して説明しましょう。訂正や補足を申し出た後は、どのように記録されたかまで確認することが大切です。希望した表現に必ず変更されると決めつけず、意見が一致しない点も整理します。

3. 背景や、まだ確認できていないことを補足する

「はい」「いいえ」だけでは事情が伝わらないときは、必要な背景を補足します。ただし、記憶にないことを推測で埋めたり、資料を見ずに日付や金額を断定したりしないようにしましょう。

確認が必要な事項は、その旨を伝え、どの資料を調べて、どのように追加説明するかを相談します。自分のメモにも、質問内容、回答した要点、訂正を申し出た箇所、後で確認する事項を残しておくと整理しやすくなります。

4. 署名は、内容を確認してから判断する

確認が終わっていない、説明と記載が違う、意味を理解できないなどの場合は、その理由を伝え、税理士等に相談してください。「早く終わらせるため」という理由だけで署名することは避けましょう。

なお、記録書への署名についての相談と、税務調査での質問や帳簿書類の提示・提出への対応は別です。調査に一切応じなくてよいという意味ではありません。国税通則法128条2号は、法令に基づく調査担当職員の質問に答弁しないことや、偽りの答弁をすることなどを罰則の対象としています。同条3号では、正当な理由なく帳簿書類等の提示・提出の要求に応じないことや、虚偽の資料を提示・提出することなども対象としています。これらには1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています。記憶が曖昧な場合は推測で答えず、その旨を伝え、確認の進め方を相談しましょう。

参考:e-Gov法令検索・国税通則法128条2号・3号

参考:国税庁・税務調査手続に関するFAQ、問3・問6

ご自身で対応する場合に知っておきたいこと

当時の事情を説明できる資料を整理する

取引をした本人だからこそ説明できる経緯があります。契約書、請求書、通帳、メール、会計データなどと照らし合わせ、自分が覚えていることと、資料で確認できることを区別して整理しましょう。

曖昧なままにせず、確認事項を具体化する

数年分の取引について質問されると、その場では思い出せないこともあります。分からないまま答えず、何が未確認なのかを明らかにし、追加確認の進め方を相談しましょう。

すでに署名した後で誤りに気づいた場合も、どの記載が、どの資料や事実と異なるのかを整理して、早めに税理士等に相談してください。署名をしたという理由だけで、検討を諦める必要はありません。

岩本隆一税理士事務所が力になれること

調査の現場で、説明と記録の確認を支援します

税務調査の立会いでは、質問の内容や取引資料を確認し、事実関係を正確に説明できるよう支援します。質問応答記録書についても、回答と記載の違い、補足が必要な点などを確認します。

税務署とのやり取りを整理します

適正な申告に必要な事実と資料を整理し、調査官とのやり取りを支援します。税額や処分の結果を保証するものではありませんが、一人で判断が難しい点を整理し、次に確認することを一緒に考えます。

「質問応答記録書への対応」まとめ

  • 記録書は事実認定に使われる資料です。内容を確認しないまま署名しないようにしましょう。
  • 事実と違う部分は、資料や具体的な事情を示して訂正・補足を申し出ます。
  • 記憶が曖昧な点を推測で答えず、確認が必要な事項として整理します。
  • 署名の有無だけで、重加算税などの結論が決まるわけではありません。
  • 調査時に写しが交付される扱いではないため、後日の確認方法も区別して考えます。

税務調査への対応や、質問応答記録書の内容に不安がある場合は、ご相談ください。

ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。電話受付は平日9〜17時です。土日祝・夜間のご相談は事前予約となります。

「質問応答記録書」に関するよくある質問

署名を強く求められたら、どう対応すればよいですか?

内容を確認できていない場合や、説明と違う記載がある場合は、その理由と該当箇所を具体的に伝えましょう。判断が難しければ、税理士等に相談してください。署名の問題だけに気を取られず、実際の取引や処理を裏付ける資料も整理することが大切です。

質問応答記録書の写しを持ち帰って検討できますか?

税務調査の際に、質問応答記録書の写しを納税者へ交付する運用ではありません。写しをその場で受け取って持ち帰れるとは考えず、確認に時間が必要な場合は、その理由と確認したい点を伝え、税理士への相談や追加説明の方法を調査官と相談しましょう。後日の開示請求や審査請求での閲覧等とは別の取扱いです。

署名した書類のコピーはもらえますか?

調査時には、写しを納税者に交付しない運用です。2026年5月29日の国会答弁でも、国税庁はこの取扱いを説明しています。

後日の確認方法として、ご自身の個人情報に該当する部分については、保有個人情報の開示請求等があります。ただし、請求できる対象や開示範囲を個別に確認する必要があり、申請すれば必ず全文の写しを入手できるとは限りません。

また、審査請求の段階では、審理手続が終わるまで、原処分庁が提出した証拠書類等の閲覧・写しの交付を求められる制度があります。対象書類や第三者情報のマスキングなど、調査時の取扱いとは区別して確認しましょう。

参考:衆議院・2026年5月29日国税庁答弁、国税庁・開示請求等の手続、国税不服審判所・証拠書類の閲覧と写しの交付

※2026年11月4日に確認した公表資料に基づく一般的な解説です。個別の対応は、調査の状況、記録の内容、関係資料等によって異なります。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

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