名義預金と判断されるのはどんなとき?子・孫名義の口座、へそくり、贈与の証拠の残し方

名義預金と判断されるのはどんなとき?子・孫名義の口座、へそくり、贈与の証拠の残し方

横浜市で相続税申告のサポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「子どもや孫の名義で毎年貯金をしてきた。これは相続財産に入るのか」「夫の給与から貯めた妻名義のへそくりはどうなるのか」「贈与したつもりだったが、通帳も印鑑も自分が持っている」――相続税の申告と税務調査で、最も多く問題になるのが「名義預金」です。預金の名義が家族であっても、実質的に亡くなった方の財産と判断されれば相続財産として申告が必要で、申告から漏れると税務調査で指摘され、加算税の対象になります。

この記事では、名義預金とは何か、誰の財産かを判断する要素、よくあるパターン(子・孫名義の積立、専業主婦のへそくり、生活費の余りを貯めた口座)、贈与として認められるための記録、相続税申告での扱いと税務調査で見られる点、今から整理する方法を解説します。本記事は2026年11月6日時点の相続税法・贈与税の取り扱いと実務に基づいています。

名義預金とは|誰の財産かを判断する要素

名義預金とは、預金の名義人と、実際にそのお金を出し、管理している人が異なる預金のことです。相続税は「亡くなった方が実質的に所有していた財産」にかかるため、名義が妻や子・孫であっても、実質的に亡くなった方のものであれば相続財産に含めて申告します。誰の財産かは、名義ではなく次の要素を総合して判断されます。

名義預金かを判断する4つの要素

名義ではなく、次の4つの要素を総合して、誰の財産かが判断されます。

1
資金の出し手(原資)その預金のお金は誰の収入から出たのか。名義人の収入では説明できない金額なら、出し手の財産と見られます。
2
管理・運用していた人通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管し、入出金や定期の書き換えを誰が行っていたかを見ます。
3
贈与の合意があったか渡す側と受け取る側の双方が贈与を認識し、合意していたか。名義人が口座を知らなければ贈与は成立していません。
4
名義人が使っていたか名義人がその預金を自由に引き出して使っていたか。一度も使われていない口座は、名義人の財産と見られにくくなります。
「名義を変えただけ」では、財産は移ったことになりません。
本文の説明を図にまとめたものです。相続税がかかる財産の考え方は国税庁 No.4105「相続税がかかる財産」をご参照ください。
  • 資金の出し手(原資):その預金のお金は誰の収入から出たのか。名義人に収入がない、または名義人の収入では説明できない金額が貯まっていれば、出し手の財産と見られます。
  • 管理・運用していた人:通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が保管し、入出金や定期の書き換えを誰が行っていたか。届出印が亡くなった方の印鑑であれば、亡くなった方の管理と見られやすくなります。
  • 贈与の事実:お金を渡す側と受け取る側の双方が贈与を認識し、合意していたか。名義人が口座の存在を知らなければ贈与は成立していません。
  • 使用状況:名義人がその預金を自由に引き出して使っていたか。一度も使われていない口座は、名義人が自由にできる財産とは見られにくくなります。

国税不服審判所の裁決例や裁判例でも、名義ではなく「資金の出所」「管理の実態」「贈与の成立」で判断されており、「名義を変えただけ」では財産は移らないというのが一貫した考え方です。

よくあるパターン

  • 子・孫名義の積立:親や祖父母が、子や孫の名義で口座を作り、毎年110万円以下を入金してきたケースです。通帳と印鑑を親が持ち、子や孫が口座の存在を知らない、または知っていても一度も使っていない場合は、贈与が成立しておらず、親の名義預金と判断されます。「毎年110万円以内だから贈与税はかからない」と考えていても、そもそも贈与になっていないため、全額が相続財産になります。
  • 専業主婦のへそくり:夫の給与から生活費を受け取り、その余りを妻名義の口座に貯めてきたケースです。妻に収入がなく、原資が夫の給与であれば、夫から妻への贈与があったと認められない限り、夫の財産と判断されやすくなります(実際には、資金の出所・管理や運用の状況・贈与の事実の有無などを総合して判断されます)。長年かけて数百万円〜数千万円になっていることも珍しくなく、夫の相続で申告漏れになりやすい典型例です。
  • 生活費の余りを貯めた口座:夫から妻へ、親から子へ生活費として渡したお金のうち、通常の生活に必要な範囲で使われた分は贈与税の対象になりませんが、使わずに貯めた分は「生活費」ではなく、原資を出した人の財産または贈与として扱われます。
  • 家族名義の証券口座・保険:預金だけでなく、親が資金を出して子名義で買った株式や投資信託、親が保険料を払っている子名義の保険も同じ考え方で判断されます。

贈与として認められるための記録

家族名義の預金を「贈与された財産」として扱うには、贈与が実際に成立していたことを示す記録が必要です。次の点をそろえておけば、名義預金と判断されるリスクは大きく下がります。

  • 贈与契約書を作る:贈与のたびに、日付・金額・贈与者と受贈者の署名(押印)のある契約書を作ります。毎年同じ金額でも、その都度作ります。
  • 振込で渡す:現金の手渡しではなく、贈与者の口座から受贈者の口座へ振り込み、記録を残します。
  • 受贈者が口座を管理する:通帳・印鑑・キャッシュカードは受贈者が保管し、届出印は受贈者自身の印鑑にします。未成年の子の場合は親権者が管理しますが、子が成人したら本人に引き渡します。
  • 受贈者が使った実績を残す:生活費や学費、買い物など、受贈者が自分の判断で引き出して使った記録があると、自由に処分できる財産であったことの証拠になります。
  • 110万円を超える贈与は申告する:贈与税の申告書の控えは、贈与の事実を示す強い証拠になります。あえて110万円を少し超える贈与をして申告する方法もありますが、申告したこと自体で贈与が成立するわけではなく、上の実態がそろっていることが前提です。

なお、2024年1月以降の贈与は、相続開始前7年以内の分が相続財産に加算される(延長された4年分は合計100万円を控除)制度に段階的に移行しています。贈与として成立していても、亡くなる直前の分は加算の対象になる点に注意してください(詳しくは「生前贈与加算は7年へ|2024年以降の贈与と相続時精算課税の選び方」)。

相続税申告での扱いと税務調査で見られる点

相続税の申告では、亡くなった方の名義の財産だけでなく、家族名義の預金・証券・保険のうち、実質的に亡くなった方の財産と判断されるものを相続財産に含めます。当事務所では、申告前に亡くなった方の過去5〜10年の取引履歴と、配偶者・子・孫の口座の状況を確認し、名義預金に当たる可能性のあるものを整理したうえで申告しています。

税務調査では、調査官は金融機関から亡くなった方と家族の口座の履歴を入手したうえで、「家族名義の口座の資金の出所」「通帳・印鑑の保管場所」「名義人が口座を知っていたか」「引き出して使っていたか」を質問します。家族名義の預金が申告から漏れていた場合、相続財産として修正申告となり、過少申告加算税(意図的な隠蔽と判断されれば重加算税)と延滞税がかかります。また、配偶者の税額軽減は仮装・隠蔽された財産には使えません。相続税の調査の流れは「相続税の税務調査とは?」、贈与の調査は「贈与税の税務調査で確認されること」をご覧ください。

「贈与税の時効(原則6年)が過ぎているから大丈夫」という考え方も誤りです。贈与が成立していなければ、そもそも贈与税の問題ではなく相続財産であり、時効は関係ありません(「贈与税を申告し忘れた場合の時効」)。

国税庁が公表した事例:家族名義の口座へ預金を移し、申告していなかった例

亡くなった方の口座から、相続人やその家族名義の口座へ多額の預金が移っていたことから調査に着手した事例です。相続人は預金の使い道や家族の預金の原資について曖昧な回答を続けましたが、現況調査で、家族の取引金融機関や残高が書かれたノートが見つかりました。

相続人は、相続税を免れる目的で、亡くなった方の財産が基礎控除以下になるよう預金を移し、税務署からの照会文書にも基礎控除以下と事実と異なる回答をして、申告していなかったことを認めました。増差課税価格は約7億2千万円、追徴税額は約4億3千万円(重加算税あり)です。家族名義に移しても、亡くなった方の財産として申告が必要になった例です。

出典:国税庁「令和6事務年度 相続税の調査等の状況」(調査事例 事例②)

今から整理する方法

親世代がご存命のうちに整理しておけば、相続の際の申告漏れと調査のリスクを避けられます。

  • 家族名義の口座を棚卸しする:誰の名義で、どこに、いくらあり、資金の出し手は誰か、通帳と印鑑は誰が持っているかを一覧にします。
  • 資金移動の履歴を確認する:親の口座から家族名義の口座への移動を、通帳や取引履歴で時系列に整理します。
  • 「贈与にする」か「親の財産として扱う」かを決める:これから贈与として確定させるなら、契約書・振込・管理の移転・必要な申告をそろえます。そうでなければ、親の財産として認識し、相続の際に申告対象に含める前提で管理します。過去に貯めた分をまとめて今から贈与にする場合、その年の贈与として110万円を超えれば贈与税がかかります。
  • 今後の貯め方を変える:子や孫のために貯めるなら、本人名義の口座を本人が管理する形にし、毎年の贈与契約書と振込の記録を残します。教育資金・結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度を使う方法もあります。

当事務所では、相続税申告の際に家族名義の口座を含めた財産の整理を行うほか、生前の段階で名義預金の有無を確認し、贈与への切り替えや今後の対策をご提案しています。サービスと料金は相続税申告サポートのページをご覧ください。

まとめ:名義ではなく「出し手・管理・贈与の合意・使用」で決まる

家族名義の預金でも、資金の出し手が亡くなった方で、通帳・印鑑を亡くなった方が管理し、名義人が贈与を認識せず使ってもいなければ、名義預金として相続財産になります。子・孫名義の積立や専業主婦のへそくりが典型です。贈与として成立させるには、贈与契約書・振込・受贈者による管理・使用の実績・必要な申告をそろえることが必要で、「毎年110万円以内」だけでは足りません。申告前に家族名義の口座を含めて財産を整理し、生前のうちに贈与にするか親の財産として扱うかを決めておくことが、申告漏れと調査リスクを避ける最も確実な方法です。

「名義預金」まとめ

  • 名義預金=名義は家族でも実質は亡くなった方の財産。相続財産として申告が必要
  • 判断要素:資金の出し手、通帳・印鑑の管理者、贈与の合意(名義人が知っていたか)、名義人が使っていたか
  • 典型例:子・孫名義の積立(親が通帳管理)、専業主婦のへそくり(原資は夫の給与)、生活費の余りの貯蓄、親が資金を出した子名義の証券・保険
  • 贈与と認められる記録:贈与契約書(毎回)、振込、受贈者の管理(届出印も本人)、使用実績、110万円超は申告
  • 調査では金融機関の履歴をもとに出所・管理・認識・使用を質問。漏れは修正申告+加算税、配偶者軽減も使えない。贈与の時効は関係ない
  • 今から:家族名義口座の棚卸、資金移動の整理、贈与にするか親の財産として扱うかを決め、今後は本人管理+契約書+振込で

「名義預金」に関するよくある質問

A.過去にさかのぼって贈与があったことにはできませんが、今の時点で贈与として確定させることはできます。その場合、今年の贈与として扱われるため、その口座の残高(または渡す金額)が110万円を超えれば、超えた部分に贈与税がかかります。残高が大きい場合は、数年に分けて贈与する、相続時精算課税(年110万円の基礎控除、累計2,500万円まで贈与税なし)を使うなどの方法を比較して決めます。いずれの場合も、通帳・印鑑・カードを子に引き渡し、子が管理・使用する状態にすることが前提です。残高をそのままに「贈与した」と言うだけでは、名義預金の状態は変わりません。

A.母に収入がなく、その預金の原資が父の給与や年金であれば、父の財産(名義預金)として申告に含めるのが原則です。母がパートなどで収入を得ていた場合は、母自身の収入で貯められた範囲は母の財産、それを超える部分は父の財産、という整理になります。申告に含める場合、母が取得する財産として配偶者の税額軽減の対象にできますので、含めたからといって必ず税額が増えるわけではありません。逆に申告から漏れて調査で指摘されると、軽減が使えず加算税もかかります。母名義の口座の履歴を確認し、原資を整理したうえで判断しましょう。

A.「毎年110万円を10年間贈与する」という約束を最初にしていた場合、1,100万円の贈与を分割して受け取っているとみなされ、初年度に全額が課税されるおそれがあります(定期贈与)。これを避けるには、毎年その年に贈与するかどうかを決めて、その都度贈与契約書を作り、金額や時期を機械的に同じにしないことが有効です。ただし、名義預金の観点では、定期贈与かどうか以前に、受贈者が口座を管理し使っていることのほうが重要です。贈与契約書・振込・本人管理の3点がそろっていれば、毎年同じ金額を贈与していても、通常は問題になりません。

名義預金の整理・相続税申告のご相談は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「家族名義の口座が相続財産になるか知りたい」「生前のうちに整理しておきたい」「申告に含めるべきか迷っている」など、相続税・贈与のことなら、お気軽にご相談ください。横浜市内の方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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