管理組合の収益事業の所得計算|収入・直接費・共通費の配分の計算例と帳簿の分け方

横浜市でマンション管理組合の税務サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「外部に貸している駐車場の収入に法人税がかかるのは分かったが、所得はどう計算するのか」「管理費会計で払っている管理委託費や保険料は、どこまで経費に入れてよいのか」「共通費の配分はどんな基準で決めればよいのか」――収益事業に当たる収入がある管理組合の会計担当の方から、申告の前段階でよく受けるご質問です。管理組合の所得計算は、収入から「直接費」と「共通費の配分額」を差し引くという単純な構造ですが、何を直接費とし、共通費をどの基準で配分するかを決めて記録に残しておかないと、毎年の申告で数字がぶれ、担当交代のたびに考え方が変わってしまいます。
この記事では、管理組合の収益事業の所得計算の基本(法人税基本通達15-2-5の区分経理)、直接費の例、共通費の配分基準と配分表の作り方、駐車場の外部収入120万円を前提にした仮定例での計算と税額、収益事業会計を別に設ける帳簿の作り方と決算書の表示を解説します。本記事は2026年11月6日時点の法人税法・法人税法施行令・法人税基本通達に基づいています。どの収入が収益事業に当たるかは「管理組合に法人税の申告が必要になる収入とは?」、駐車場の貸し方による課税範囲は「駐車場を外部に貸すときの税金」をご覧ください。
所得計算の基本収入−直接費−共通費の配分額
管理組合(人格のない社団等・管理組合法人)の法人税は、収益事業から生じた所得にだけ課されます。所得は、収益事業の収入から、収益事業に係る費用を差し引いて計算します。費用の扱いは法人税基本通達15-2-5で次のように整理されています。
- 直接費:収益事業について直接要した費用、直接生じた損失は、全額を収益事業の費用として経理します。
- 共通費:収益事業と収益事業以外(管理組合の本来の活動)に共通する費用は、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比など、費用の性質に応じた合理的な基準で、継続的に配賦します。
- 内部の賃借料は計上できない:収益事業以外の資産(共用部分)を収益事業に使っていても、収益事業から管理費会計に「家賃」や「利息」を払ったものとして費用にすることはできません(同通達の注)。
したがって所得計算の式は「収益事業の収入 − 直接費 − 共通費のうち合理的な基準で配分した額」になります。収入側は、外部からの使用料・設置料・手数料のうち収益事業に当たる部分(駐車場なら、貸し方に応じて外部分のみ、または全体)です。ここで大切なのは、配分基準を一度決めたら毎年同じ基準を使い、基準を変えるときは理由を記録することです。基準を毎年都合よく変えると、継続性の要件を満たさなくなります。
所得は「収益事業の収入-直接費-共通費の配分額」で計算します。
直接費の例その収入のためだけにかかった費用
直接費は、収益事業に当たる収入を得るためだけにかかった費用です。管理組合で典型的なものを挙げます。
| 収益事業 | 直接費の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 駐車場の外部貸付 | 外部募集の広告費・仲介手数料、外部契約者との契約書作成費、外部区画だけに設けた機器(精算機・看板)の費用、外部契約者からの入金に係る振込手数料 | 外部区画と組合員区画を区別せずに使う舗装・区画線・照明の補修は、全体に係る費用として共通費で配分します。 |
| 携帯電話基地局の設置場所の貸付 | 基地局部分の電気代(契約上管理組合負担の場合)、設置部分の点検・補修で管理組合が負担した費用、契約書の作成・更新に要した費用 | 屋上全体の防水工事は共通費として配分します。基地局のために追加で必要になった補強工事は直接費になり得ます。 |
| 自動販売機・看板・コインランドリーの場所貸し | 設置場所の電気代(管理組合負担分)、設置のために行った工事費、契約手続きの費用 | 電気代が共用部分全体の検針に含まれる場合は、メーターや契約上の負担額で切り分けます。 |
| 共通 | 収益事業の申告のための税理士報酬、申告書作成に係る印紙・郵送費 | 管理組合の会計全体に係る顧問料が含まれる場合は、収益事業部分を合理的に区分します。 |
直接費の判断は「その収入がなければ発生しなかった費用か」で考えると整理しやすくなります。外部に貸していなくても必要だった費用(共用部分の通常の維持管理)は共通費です。
共通費の配分基準と配分表の作り方
共通費は、費用の性質に合った基準で配分します。管理組合でよく使う基準と、向いている費用は次のとおりです。
| 配分基準 | 向いている費用 | 計算のしかた |
|---|---|---|
| 区画数・面積の比 | 駐車場の設備保守・清掃・照明・保険料、屋上や外壁の補修(基地局・看板の設置部分) | 外部区画数÷総区画数、設置面積÷屋上面積など。駐車場の外部貸付では最も使いやすい基準です。 |
| 収入金額の比 | 管理委託費のうち会計・出納業務、理事会・総会の運営費、通信費、事務用品など、特定の場所に結びつかない費用 | 収益事業の収入÷管理組合の総収入(管理費・修繕積立金・使用料など)。 |
| 利用割合(時間・回数) | 会議室・集会室の外部利用に係る光熱費・清掃費 | 外部利用の時間(回数)÷総利用時間(回数)。利用記録が必要です。 |
| 従事割合 | 管理員の人件費(管理会社への委託費のうち管理員業務) | 外部契約者対応・基地局立会いなどに要する時間の割合。実務上は見積りになるため、記録を残します。 |
配分は二段階で考えると整理できます。第一段階は「その収益事業に関係する施設に係る共通費」(駐車場なら駐車場の設備費・保険料・駐車場管理の委託費)を区画数などの物理的な基準で配分し、第二段階は「管理組合全体に係る共通費」(会計・運営に係る管理委託費や事務費)を収入比で配分します。配分表は、費用科目ごとに「年間の金額」「配分基準」「割合」「配分額」を並べた一枚の表にし、毎年の申告書の控えと一緒に保存します。
次の費用は、収益事業の所得計算に入れることができません。
- 建物・敷地の減価償却費:建物と敷地は区分所有者の共有財産で管理組合の資産ではないため、建物本体の減価償却費は計上できません。管理組合が自ら購入した設備(精算機・ゲート・看板枠・ランドリー機器など)は減価償却の対象になります。
- 修繕積立金への繰入れ・積立:収益事業の収入を修繕積立金会計に移しても、所得計算上の費用にはなりません。将来の修繕のための積立は費用ではなく資金の移動です。
- 管理費会計への資金の振替:法人化していない管理組合(人格のない社団等)では、収益事業会計から管理費会計へ資金を移しても費用になりません。管理組合法人は法人税法上の公益法人等とみなされるため、収益事業から本来の活動への支出が「みなし寄附金」として一定の限度(原則として所得の20%)で損金に算入できる余地がありますが、要件は個別に確認が必要です。
- 共用部分の使用料・内部利息:収益事業が共用部分を使うことの対価を管理費会計に払ったものとして計上することはできません。
仮定例での計算駐車場の外部収入120万円のケース
次の前提で所得と税額を計算します。数値はすべて仮定例で、2026年11月6日時点の税率(神奈川県・横浜市、最低区分の均等割)による概算です。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 駐車場 | 総区画50区画。組合員の優先利用を規約と契約で確保したうえで、空き10区画を外部に貸付(外部貸付部分のみが収益事業) |
| 収益事業の収入 | 外部使用料 月1万円×10区画×12か月=1,200,000円 |
| 管理組合の総収入 | 管理費2,400万円+組合員の駐車場使用料480万円+外部使用料120万円=3,000万円(収入比=120万円÷3,000万円=4%) |
| 直接費 | 外部募集の仲介手数料100,000円、契約書・振込手数料12,000円=112,000円 |
| 駐車場に係る共通費 | 設備保守・清掃300,000円、保険料50,000円、駐車場管理の委託費240,000円=590,000円 → 区画数の比(10÷50=20%)で配分=118,000円 |
| 管理組合全体の共通費 | 会計・運営に係る管理委託費・事務費など6,000,000円 → 収入比(4%)で配分=240,000円 |
| 所得計算 | 金額 |
|---|---|
| 収益事業の収入 | 1,200,000円 |
| 直接費 | ▲112,000円 |
| 共通費(駐車場に係るもの)の配分額 | ▲118,000円 |
| 共通費(全体に係るもの)の配分額 | ▲240,000円 |
| 収益事業の所得 | 730,000円 |
| 税目 | 概算額 |
|---|---|
| 法人税(所得800万円以下の部分15%) | 約109,500円 |
| 地方法人税(法人税額の10.3%) | 約11,300円 |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 約35,000円 |
| 法人県民税・市民税(法人税割) | 約7,700円 |
| 法人県民税・市民税(均等割) | 約74,500円 |
| 合計 | 約238,000円 |
この例では、外部収入120万円に対して税額は約24万円、収入の2割程度になります。配分額の合計(約36万円)が所得を大きく左右するため、配分基準の選び方と記録が実務の中心になります。なお、外部使用料は消費税の課税売上ですが、この例では基準期間の課税売上高が1,000万円以下なので消費税の納税義務はありません。消費税の考え方は「マンション管理組合の税金」で解説しています。
区分経理の帳簿の作り方と決算書の表示
法人税法施行令6条により、収益事業を行う管理組合は、収益事業と収益事業以外の事業に属する資産・負債・収益・費用を区分して経理する必要があります。この「所得に関する経理」には、収益・費用だけでなく資産・負債の経理も含まれます(法人税基本通達15-2-1)。管理組合の実務では、管理費会計・修繕積立金会計に加えて「収益事業会計」(駐車場外部貸付会計などの名称でも可)を特別会計として設けるのが最も分かりやすい方法です。
- 収益事業会計の収入:外部使用料・設置料・手数料のうち収益事業に当たるものを、管理会社の収支報告の「雑収入」から切り出して計上します。契約者別の入金台帳を付けます。
- 収益事業会計の費用:直接費はそのまま計上し、共通費は年度末に配分表に基づいて「管理費会計からの配分額」として振り替えます。
- 元入金:収益事業の開始時に収益事業に属させた資産(預金など)から負債を引いた額は「元入金」として経理します。元入金は資本金等の額にも利益積立金額にも当たりません(法人税基本通達15-2-3)。
- 資金の移動:収益事業会計の剰余金を管理費会計・修繕積立金会計に移すときは、費用ではなく「他会計への振替(繰出)」として処理し、所得計算には影響させません。
- 決算書の表示:総会資料の収支決算書に収益事業会計の区分を設け、収入・費用・剰余金と、配分の基準を注記します。申告書には収益事業に係る損益計算書と貸借対照表を添付するため、この区分がそのまま申告の基礎資料になります。
管理会社に会計業務を委託している場合は、収益事業会計の区分と配分表の作成を誰が担うかを、委託契約や理事会で決めておきます。管理会社の収支報告は管理組合の会計基準に沿って作られており、法人税の所得計算にそのまま使えるとは限らないため、申告の前に税務上の調整(配分、減価償却、計上時期)を行う工程を設けておくと、毎年の申告が安定します。届出と申告書の種類・期限は「管理組合が収益事業を始めるときの届出」で、過去に申告していなかった場合の対応は「過去に申告していなかった管理組合はどうする?」で解説します。当事務所のマンション管理組合の税務サポートでは、配分表の設計と申告書の作成をスポットでも承っています。
「管理組合の収益事業の所得計算」に関するよくある質問
全額はできません。管理委託費や保険料は、収益事業と管理組合の本来の活動に共通する費用なので、区画数・面積・収入比など費用の性質に合った合理的な基準で配分した部分だけが収益事業の費用になります。配分基準は毎年同じものを使い、配分表を申告書の控えと一緒に保存してください。
駐車場全体に係る補修であれば、外部貸付部分に対応する割合(区画数の比など)を配分して費用に計上するのが基本です。どの会計から支出したか(管理費会計か修繕積立金会計か)は所得計算上の区分とは別の問題です。ただし、工事の内容によって修繕費として一時に費用にするか、資産として減価償却するかの整理が必要になる場合があるため、金額が大きい工事は事前に確認してください。
法人化していない管理組合(人格のない社団等)では、収益事業会計から管理費会計への資金の移動は費用にならず、所得も税額も変わりません。管理組合法人の場合は、収益事業から本来の活動への支出がみなし寄附金として一定の限度で損金に算入できる余地がありますが、適用の可否と限度額は個別に確認が必要です。いずれの場合も、資金の移動は「他会計への振替」として記録し、所得計算と混ぜないようにします。
収支報告書は出発点になりますが、そのままでは足りないことが多いです。収益事業の収入の切り出し、直接費と共通費の区分、配分表に基づく配分、計上時期の調整(前受け・未収の整理)、管理組合が購入した設備の減価償却などの税務上の調整を加えて、収益事業の損益計算書と貸借対照表を作る必要があります。管理会社と税理士のどちらがどこまで担うかを、年度の初めに決めておくと手戻りが減ります。
「管理組合の収益事業の所得計算」まとめ
- 所得=収益事業の収入−直接費−共通費の配分額。配分基準は資産の使用割合・従事割合・帳簿価額の比・収入比など費用の性質に合うものを選び、継続して使う(法人税基本通達15-2-5)
- 直接費は「その収入がなければ発生しなかった費用」。共用部分の通常の維持管理費は共通費として配分する
- 配分は「施設に係る共通費を区画数・面積で」「全体に係る共通費を収入比で」の二段階で整理し、配分表を毎年保存する
- 建物本体の減価償却費、修繕積立金への繰入れ、管理費会計への振替、内部の賃借料は所得計算に入れられない
- 仮定例(外部収入120万円・所得73万円)では税額合計約24万円。収益事業会計を特別会計として設け、元入金・他会計振替を区分して記録する
管理組合の収益事業の所得計算と申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「共通費の配分基準を決めて配分表を作りたい」「管理会社の収支報告から申告書を作る工程を整えたい」「初年度の区分経理の設計を相談したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内のマンション管理組合を中心に、代表税理士が直接対応します。顧問契約は不要で、申告だけのスポット対応も可能です。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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