宗教法人の収入はすべて非課税?お布施・戒名料・拝観料・物品販売・御守の区分

横浜市で宗教法人の会計・税務相談を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「宗教法人は税金がかからないと聞いていたが、本当にすべて非課税なのか」「お布施と、御守や絵葉書の販売はどう違うのか」「拝観料には消費税がかかるのか」――寺院・神社・教会の代表役員や会計担当の方から、収入の種類ごとの扱いについてこうしたご質問を受けます。宗教法人の収入が「すべて非課税」というのは正確ではなく、宗教活動そのものから生じる収入(お布施・玉串料など)は法人税がかからない一方、収益事業に当たる活動の収入には法人税が、対価性のある取引には消費税がかかります。
この記事では、宗教法人の課税の基本(宗教活動と収益事業、消費税・源泉所得税は別の判定)、収入別の整理表(お布施・戒名料・玉串料・祈祷料/拝観料・御朱印・御守・おみくじ/物品販売・書籍/駐車場・不動産貸付/会館・墓地・宿坊・結婚式・葬儀)、「対価性」と「宗教活動との関係」で判断する考え方、区分経理の必要性と帳簿の付け方、判定に迷う収入の相談の仕方を解説します。本記事は2026年11月6日時点の法人税法・法人税法施行令・法人税基本通達・消費税法・国税庁「宗教法人の税務(令和8年版)」に基づいています。駐車場の収入については「宗教法人の駐車場収入に税金はかかる?」で詳しく解説しています。
宗教法人の課税の基本宗教活動は非課税・収益事業は課税・消費税と源泉は別
宗教法人は法人税法上の「公益法人等」で、法人税は収益事業から生じた所得にだけ課されます(法人税法4条1項・7条)。宗教活動(教義の普及、儀式行事、信者の教化育成)から生じる収入は、法人税の対象になりません。収益事業は法人税法施行令5条1項に列挙された34業種で、継続して事業場を設けて行われるものをいい、宗教法人で該当しやすいのは物品販売業、不動産貸付業、駐車場業、席貸業、旅館業、飲食店業、請負業、技芸教授業などです。収益事業がある場合の法人税率は、所得800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です(2026年11月6日時点)。
ここで押さえておきたいのは、税目ごとに判定が別だという点です。
「宗教法人だから非課税」ではなく、同じ収入でも税目ごとに扱いが分かれます。
- 法人税:「収益事業に当たるか」で判定します。宗教活動の収入は対象外です。
- 消費税:「対価を得て行う資産の譲渡・貸付・サービスの提供か」で判定します。収益事業でなくても、拝観料のように対価性のある収入は課税取引です。逆に、お布施のように対価性のない収入は不課税です。
- 源泉所得税:収益事業の有無とは無関係に、住職・神職・職員に給与を払う宗教法人は源泉徴収義務者です。給与と源泉徴収は「住職・宮司・職員の給与と源泉徴収」で解説します。
- 法人住民税・固定資産税:収益事業がなければ法人住民税は課されず、専ら宗教目的に使う境内建物・境内地は固定資産税が非課税です。収益事業を行うと法人住民税(均等割・法人税割)がかかり、収益事業に使う土地・建物は固定資産税の非課税対象から外れることがあります。
収入別の整理表お布施・拝観料・御守・物販・不動産・墓地・宿坊
寺院・神社・教会に多い収入を、法人税(収益事業の該当)と消費税の扱いで整理しました。表の判定は、法人税基本通達15-1-10(宗教法人の物品販売)や法人税法施行令の各業種の定義、国税庁の案内に基づく一般的な整理です。契約や販売の形が違えば結論も変わります。
| 収入 | 法人税(収益事業) | 消費税 | ポイント |
|---|---|---|---|
| お布施・読経料・戒名料・玉串料・初穂料・祈祷料・献金 | 該当しない(宗教活動) | 不課税(対価性なし) | 金額の目安を示していても、宗教行為に対する喜捨として受け取るものは対価ではありません。 |
| 御守・お札・おみくじ・御朱印 | 該当しない(売価と原価の差額が実質的に喜捨金と認められる場合。通達15-1-10) | 不課税(喜捨金と認められる場合) | 宗教法人だけが授与できる性質のもので、価格が喜捨の性質を持つことが前提です。 |
| 絵葉書・写真帳・暦・線香・ろうそく・供花・御朱印帳・数珠などの販売 | 物品販売業に該当(一般の業者と同じような価格で参詣人に販売する場合) | 課税 | 一般の小売店でも売れる物を同程度の価格で売る形は、宗教法人であっても物品販売です。 |
| 拝観料 | 該当しないと整理するのが一般的(宗教活動として境内・堂内を拝観させるもの) | 課税(施設への入場の対価) | 法人税と消費税で結論が分かれる典型例。宝物館など宗教活動から離れた展示施設の入館料は個別に確認します。 |
| 教義書・機関紙の頒布 | 信者への教義普及のため実費程度で頒布するものは該当しないと整理するのが一般的。一般書店で流通させる書籍は出版業に該当し得る | 課税(有償の頒布) | 頒布先・価格・流通経路で判断します。 |
| 駐車場(月極・時間貸し・業者への貸付) | 駐車場業に該当 | 課税(施設の貸付)。土地のみの1か月以上の貸付は非課税 | 詳細は「宗教法人の駐車場収入に税金はかかる?」をご覧ください。 |
| 境内地・建物の貸付(店舗・住宅・事務所など) | 不動産貸付業に該当 | 建物は課税、土地・住宅の貸付は非課税 | 借地権の設定対価や更新料も不動産貸付業の収入です。 |
| 墓地の永代使用料・管理料 | 該当しない(墳墓地の貸付は不動産貸付業から除外。法人税法施行令5条1項5号) | 永代使用料は非課税(土地の貸付)。管理料は課税となる場合がある | 墓石の販売は物品販売業に該当します。永代供養料のうち読経・供養に対するものは宗教活動です。 |
| 会館・ホールの貸付(信者以外への有料貸付) | 席貸業に該当 | 課税 | 信者の法要・行事に本堂や会館を使わせることは宗教活動です。外部への有料貸付が席貸業になります。 |
| 宿坊・研修施設の宿泊料 | 旅館業に該当(法人税法施行令5条1項15号)。ただし、利用が専ら宗教活動など主たる目的の事業の遂行に関連し、多人数で共用する構造・設備を主とし、全ての利用者の宿泊料が1泊1,000円(2食付きは1,500円)以下の施設は除外(法人税基本通達15-1-42) | 課税 | 一般の宿泊客を受け入れ、相応の料金を受け取る形は旅館業です。 |
| 結婚式 | 神前式・仏前式の儀式(初穂料・挙式料)は宗教活動。披露宴会場の貸付・飲食の提供は席貸業・飲食店業に該当 | 儀式に対する初穂料は不課税、会場・飲食は課税 | 式場運営を一括して請け負う形は収益事業部分が大きくなります。 |
| 葬儀 | 読経・戒名・法要は宗教活動。祭壇・会場・飲食・返礼品を提供して対価を受ける葬儀社と同様の業務は請負業・席貸業・物品販売業などに該当 | 読経料等は不課税、祭壇・会場等は課税 | 葬儀社から受ける紹介料・手数料は収益事業の収入になり得ます。 |
| 幼稚園の保育料 | 該当しない(宗教法人が設置する幼稚園の教育事業は収益事業に当たらない) | 非課税(学校教育) | 幼稚園の中で行う物品販売(制服・教材)は別に判定します。 |
| 茶道・華道・書道などの教室 | 技芸教授業に該当(施行令に列挙された技芸) | 課税 | 教義の講座・写経会で実費程度の参加費を受けるものは宗教活動の範囲です。 |
| 預金利息・寄附金・補助金 | 該当しない(宗教法人の利子は所得税も非課税) | 不課税 | 収益事業の預金から生じた利息は収益事業の収入に含めます。 |
「対価性」と「宗教活動との関係」で判断する考え方
表を一つひとつ覚える必要はありません。収入を次の二つの軸に当てはめると、ほとんどの判定ができます。
- 軸1:対価性があるか:決まった物やサービスの提供と引き換えに、相応の金額を受け取っているか。あれば消費税の課税対象になり、法人税の収益事業の検討に進みます。なければ(喜捨・寄附)、消費税は不課税で、法人税の収益事業にも当たりません。
- 軸2:宗教活動そのものか、宗教法人でなくてもできる事業か:読経・祈祷・授与品・拝観・信者への教化は宗教法人の本来の活動です。駐車場・不動産賃貸・一般的な物品販売・宿泊・会場貸し・教室は、一般の事業者でも行える事業で、宗教法人が行っても収益事業になります。
判断は名目ではなく実態で行います。たとえば、絵葉書を「志納金」と呼んで一般の価格で売っていれば物品販売業です。逆に、御守の「価格」が決まっていても、宗教法人だけが授与できる性質で喜捨の性格が認められれば収益事業ではありません。駐車場使用料を「協力金」としても駐車場業の収入です。会館を信者の法要に使わせる場合と、地域の団体に有料で貸す場合では、同じ建物でも扱いが変わります。
複数の性質が混ざる収入は、分けて考えます。葬儀で読経料と祭壇・会場費をまとめて受け取っている場合、読経料は宗教活動、祭壇・会場費は収益事業の収入です。請求書や受領書で内訳を分けておくと、申告時に区分しやすくなります。
国税庁の質疑応答事例:神社が境内で販売するテレホンカード
国税庁の質疑応答事例では、神社が1,000円のテレホンカードに「合格祈願」などの文字と神社名を印刷し、御守・お札と同じ境内で1,500円で販売する場合が取り上げられています。回答は、収益事業の物品販売業に該当するというものです。
理由として、テレホンカードは物品販売業の対象となる「通常物品といわないもの」に含まれること、売価と原価(約1,250円)の差額は通常の物品販売業者の売上利潤と認められ、差額が実質的に喜捨金と認められる御守・お札とは事情が異なることが挙げられています。同じ授与所で扱う物でも、物の性質と価格の実態で判断されることが分かります。
出典:国税庁 質疑応答事例「宗教法人が行うテレホンカードの販売」
区分経理の必要性と帳簿の付け方
収益事業に当たる活動があれば、宗教活動の会計と収益事業の会計を区分して経理する必要があります(法人税法施行令6条)。区分するのは収入・費用だけでなく、資産・負債も含みます。帳簿の付け方の基本は次のとおりです。
- 収益事業会計を別に設ける:宗教法人会計の一般会計(宗教活動)とは別に、収益事業ごとの特別会計(駐車場会計、物販会計など)を設け、収入・費用・資産・負債を記録します。
- 収入は発生の都度、種類ごとに記録する:授与所の売上は、御守・お札(宗教活動)と絵葉書・線香(物品販売業)を分けて集計できるよう、レジや売上日報の区分を設計します。
- 費用は直接費と共通費に分ける:収益事業のためだけの費用(仕入、駐車場の舗装・精算機)は直接費。宗教活動と共通する費用(境内の清掃・照明・保険料・職員の人件費)は、面積・利用割合・従事割合・収入比など費用の性質に合う合理的な基準で配分し、基準を継続して使います(法人税基本通達15-2-5)。
- 資産を区分する:収益事業に使う資産(貸付用の建物、駐車場の設備、販売用の在庫)は収益事業会計の資産として記録し、減価償却も収益事業会計で行います。
- 収益事業から宗教活動への資金の移動:収益事業の利益を宗教活動(本堂の修繕など)に使った場合、その支出は「みなし寄附金」として扱われ、収益事業の所得の20%を限度に損金に算入できます(法人税法37条5項、法人税法施行令73条1項3号)。帳簿上は「他会計への振替」として記録し、修繕費を収益事業の費用に計上しないよう注意します。
収益事業を始めたときは、開始の日以後2か月以内に「収益事業開始届出書」を所轄税務署へ提出し、あわせて青色申告の承認申請(開始日以後3か月と事業年度末の早い日の前日まで)を検討します。申告は事業年度終了後2か月以内です。収益事業34業種の詳しい一覧と該当しやすい事業の判定は「宗教法人の収益事業34業種」で解説します。
判定に迷う収入の相談の仕方と用意する資料
「この収入はどちらか」と迷ったときは、収入の内容が分かる資料を用意して相談すると、判定が早く正確になります。
- 規則(宗教法人規則)と事業報告書:法人の目的、境内建物・境内地の範囲、所轄庁へ提出した事業報告の内容。
- 収支計算書・財産目録(直近3年分):収入の科目名と金額。「雑収入」にまとめられている内訳も確認します。
- 授与品・販売品の一覧と価格表:仕入先・仕入価格が分かる資料があれば、喜捨金性の判定に使います。
- 契約書:駐車場・不動産の賃貸借契約、業者への委託契約、結婚式・葬儀に関する葬儀社・式場との契約。
- 料金表・案内・ウェブサイト:拝観料、宿坊の宿泊料、会館の利用料、教室の月謝など、対外的に示している金額。
- 入金の記録:通帳、授与所の売上日報、賽銭・お布施の記録簿。
相談では、「この収入はいつから・誰から・いくら・何と引き換えに受け取っているか」を一つずつ確認していきます。収益事業に当たる収入が見つかった場合も、過去に遡る年分の整理と今後の区分経理を同時に設計すれば、落ち着いて対応できます。法人の会計と住職個人の生活費が混ざっている場合は「宗教法人の会計と住職個人の生活費の分け方」もあわせてご覧ください。当事務所の宗教法人の会計・税務相談では、収入の判定から区分経理の設計、届出・申告まで、顧問契約なしのスポットでも対応しています。
「宗教法人の収入の区分」に関するよくある質問
価格の表示だけで物品販売業になるわけではありません。法人税基本通達15-1-10は、御守・お札・おみくじなどの販売について、売価と仕入原価の差額が通常の販売利潤ではなく実質的に喜捨金と認められる場合は物品販売業に該当しないとしています。宗教法人だけが授与できる性質のもので、金額が喜捨の性格を持つことが判断の中心です。一方、絵葉書や線香のように一般の店でも売れる物を同程度の価格で売る場合は、表示の言葉が「初穂料」でも物品販売業です。
そのとおりです。法人税は「収益事業に当たるか」、消費税は「対価を得て行う取引か」という別の基準で判定します。拝観料は境内・堂内への入場の対価なので消費税の課税取引ですが、宗教活動の一環として拝観させるものは法人税の収益事業には当たらないと整理するのが一般的です。消費税の納税義務が実際に生じるかは、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります。
申告は必要です。収益事業の利益を宗教活動に使った支出は、収益事業の費用ではなく「みなし寄附金」として扱われ、所得の20%を限度に損金に算入できます。限度を超える部分には法人税がかかります。収益事業がある以上、所得がゼロや赤字でも申告書の提出義務があり、法人住民税の均等割もかかります。
信者以外の人に有料で使わせる形は席貸業の範囲に入り得ます。収益事業は「継続して事業場を設けて行うもの」が前提なので、年に数回でも毎年繰り返していれば継続性があると見られる可能性があります。使用料の性質(実費程度か、相場の料金か)、募集の有無、年間の回数と金額を整理して判断します。宗教法人の行事や信者の法要のための利用は宗教活動です。
「宗教法人の収入はすべて非課税?」まとめ
- 宗教活動の収入(お布施・玉串料・祈祷料など)は法人税がかからないが、収益事業(34業種)の所得には法人税(800万円以下15%・超19%)がかかる。消費税・源泉所得税は別の基準で判定する
- 御守・お札・おみくじ・御朱印は喜捨金性があれば非該当・不課税。絵葉書・線香・ろうそく・数珠などの一般的な物品の販売は物品販売業・課税(通達15-1-10)
- 拝観料は法人税の収益事業に当たらないのが一般的だが消費税は課税。墓地の永代使用料は非該当・非課税、駐車場・不動産貸付・会館貸付・宿坊・教室は収益事業
- 判断は「対価性があるか」「宗教法人でなくてもできる事業か」の二軸で、名目ではなく実態で行う。混在する収入は内訳を分けて記録する
- 収益事業があれば区分経理(収益事業会計・直接費と共通費の配分・資産の区分・みなし寄附金の記録)と開始届・申告が必要。規則・収支計算書・価格表・契約書・入金記録をそろえて相談する
宗教法人の収入の区分と区分経理は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「うちの収入のどれが収益事業に当たるのか確認したい」「授与所の売上の分け方と帳簿の付け方を整えたい」「過去分も含めて相談したい」など、お気軽にご相談ください。寺院・神社・教会の実情に合わせて、宗教活動と収益事業の区分、消費税、源泉徴収を税目ごとに整理します。顧問契約は不要で、判定の相談だけのスポット対応も可能です。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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