管理会社任せで大丈夫?理事会が決算報告で確認すべきポイント(管理費・修繕積立金・外部収入の区分)

管理会社任せで大丈夫?理事会が決算報告で確認すべきポイント(管理費・修繕積立金・外部収入の区分)

横浜市でマンション管理組合の税務サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「理事になったが、管理会社から渡される決算報告の見方が分からない」「数字が合っているのか確認する方法がない」「監事として何を見れば監査したことになるのか」――輪番で理事・監事になった組合員の方からのご相談です。管理組合の会計は、管理会社が記帳・出納を行うのが一般的ですが、決算を承認し、組合員に説明する責任は理事会にあります。専門知識がなくても、見る順番と確認する項目を決めておけば、理事会の役目は果たせます。

この記事では、管理組合会計の2つの区分(管理費会計・修繕積立金会計)と外部収入の見方、決算報告で確認する項目(通帳との一致・未収金・取り崩し・保険)、長期修繕計画と積立金の妥当性を簡単に確認する方法、税務上の確認(収益事業・申告・消費税・源泉徴収)、理事会で使うチェックリストと税理士に相談するタイミングを解説します。本記事は2026年11月6日時点の国土交通省「マンション標準管理規約」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改訂)と法人税法・消費税法に基づいています。

管理組合会計の2区分と外部収入の見方

管理組合の会計は、国土交通省の標準管理規約(単棟型)で「管理費」と「修繕積立金」を区分して経理することとされています(第28条)。決算報告が2つの会計に分かれているのは、このためです。

管理組合会計の2区分と見るポイント

決算報告が2つの会計に分かれているのは、標準管理規約で区分経理とされているためです。

管理費会計(一般会計)管理費や預金利息などで、管理委託費・共用部分の光熱費・保守・清掃・保険料などを賄います。毎年の収支が黒字かを見ます。
修繕積立金会計(特別会計)修繕積立金を積み立てて大規模修繕・計画修繕に使います。残高が次回の工事費に足りるか、取り崩しが総会決議に基づくかを見ます。
外部収入(組合員以外への貸付け・設置料)は、どちらの会計に入っていても別に集計し、税務の判定に使います。
出典:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第28条。本文の説明を図にまとめたものです。
区分収入支出見るポイント
管理費会計(一般会計)管理費、組合員の駐車場・駐輪場使用料(規約の定めによる)、預金利息、雑収入管理委託費、共用部分の電気・水道、エレベーター等の保守、清掃、小修繕、保険料、理事会・総会の運営費、租税公課毎年の収支が黒字か。黒字が続いて剰余金が積み上がっているなら管理費の水準、赤字なら支出の見直しか管理費の改定を検討
修繕積立金会計(特別会計)修繕積立金、駐車場使用料のうち修繕積立金に充てる分(標準管理規約第29条は、使用料は管理に要する費用に充てるほか修繕積立金として積み立てるとしている)、専用使用料、預金利息大規模修繕工事、計画修繕(屋上防水・外壁・給排水管など)、長期修繕計画の見直し費用、建物診断積立金の残高が長期修繕計画の次回工事費に足りるか。取り崩しは総会の決議に基づいているか
外部収入(両会計のどちらかに含まれる)組合員以外への駐車場貸付け、携帯電話基地局の設置料、自動販売機の設置料、看板料、コインランドリーなど(これらに対応する費用:電気代・管理手数料・法人税等)どの会計に入っているかを確認し、科目の中に埋もれていれば別に集計する。税務の判定(後述)に使う

決算報告は「収支報告書(収支計算書)」と「貸借対照表(財産目録)」の2枚が基本です。収支報告書は1年間の収入と支出、貸借対照表は年度末時点の資産(預金・未収金)と負債(未払金・前受金)、そして剰余金(繰越金)を示します。収支報告書の「次期繰越収支差額」と貸借対照表の「正味財産(剰余金)」が一致していることが、2枚の整合の確認です。管理費会計と修繕積立金会計の間で資金を融通している場合(管理費会計の赤字を積立金で穴埋めなど)は、「他会計への貸付・借入」として表示されているかを見ます。

決算報告で確認する項目通帳との一致・未収金・取り崩し・保険

理事会・監事が決算報告を受け取ったら、次の項目を順番に確認します。管理会社に質問して回答をもらう形で進めれば十分です。

確認項目確認方法見つかりやすい問題
① 預金残高と通帳・残高証明の一致貸借対照表の預金残高を、年度末日の通帳の残高(または金融機関の残高証明書)と突き合わせる。管理会社が「保管口座」「収納口座」を使っている場合は口座ごとに確認残高証明が添付されていない。管理会社名義の口座に組合の資金が混在している(適正化法で分別管理が義務)
② 未収金(滞納)の内訳貸借対照表の未収金の内訳表(部屋番号別・月数別)をもらう。前年と比べて増えているか、長期滞納(6か月以上)があるか滞納が放置されている。督促の記録がない。時効(管理費は5年)が近い滞納がある
③ 修繕積立金の取り崩し修繕積立金会計の支出が、総会で承認された工事・予算に対応しているか。議事録と工事契約書・請求書を照合総会決議のない取り崩し。管理費会計の不足を積立金で補っている(借入処理されていない)
④ 未払金・前受金年度末に発生していて支払いが翌期になった費用(3月の電気代など)が未払金として計上されているか。翌年度分の管理費を先に受け取った分が前受金になっているか発生主義と現金主義が混在して、年度の収支が実態と違う
⑤ 管理委託費の内訳管理委託契約書の金額と決算の管理委託費が一致するか。契約外の追加費用(臨時清掃・修繕)が何に使われたか契約更新時の値上げが総会で説明されていない。追加発注の承認手続きがない
⑥ 保険マンション総合保険(火災・施設賠償・個人賠償特約)の保険料と契約期間、更新時期。保険金を受け取った年度は、その収入と対応する修繕費が計上されているか保険の更新漏れ。保険金が修繕積立金会計ではなく管理費会計に入り使途が不明
⑦ 外部収入の有無と金額駐車場使用料のうち組合員以外の分、基地局・自販機・看板などの収入を抽出し、年額を記録する科目に埋もれて税務の判定ができていない(後述)
⑧ 予算との比較予算と決算の差が大きい科目(±20%以上など)について理由を確認予算が前年コピーで実態と乖離している

監事は、標準管理規約で「管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する」役割です(第41条)。決算は監事の会計監査を経て総会に報告します(第59条)。上の①〜③を実際に書類で確認し、「監査報告書」に確認した書類(通帳写し・残高証明・未収金内訳・議事録)を記載しておけば、形だけの監査にはなりません。

長期修繕計画と積立金の妥当性を簡単に確認する方法

修繕積立金が足りているかは、長期修繕計画と比べて確認します。計画書を読み込む前に、次の3点で概観できます。

  • 計画期間と作成時期:国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画は30年以上で、大規模修繕工事が2回含まれる期間とし、5年程度ごとに見直すこととされています。計画が5年以上見直されていない、工事費が最近の物価を反映していない場合は、見直しを理事会の議題にします。
  • 積立金の水準を㎡単価で比べる:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改訂)は、専有面積1㎡あたりの月額の目安(機械式駐車場を除く)を、20階未満・延床面積5,000㎡未満で平均335円(幅235〜430円)、5,000〜10,000㎡で252円(170〜320円)、10,000〜20,000㎡で271円(200〜330円)、20,000㎡以上で255円(190〜325円)、20階以上で338円(240〜410円)としています。自分のマンションの月額積立金を専有面積で割って比べます。仮定例:専有面積70㎡で月額の積立金が1万円なら約143円/㎡で、目安の幅の下限(20階未満・5,000㎡未満なら235円)を下回ります。目安はあくまで平均的な水準で、建物の仕様・立地・機械式駐車場の有無で変わりますが、幅を下回る場合は計画との整合を確認する目安になります。
  • 段階増額方式か均等積立方式か:新築時に低く設定し段階的に値上げする「段階増額積立方式」の管理組合は、値上げの合意が得られず不足するリスクがあります。ガイドラインは均等積立方式を望ましいとし、段階増額の場合も「初期額は均等積立額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内」を目安としています。現在の積立額が計画上の値上げスケジュールに追いついているかを見ます。

積立金の残高と次回の大規模修繕の予定額を比べ、不足するなら「値上げ」「一時金」「借入れ(住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資など)」「工事内容の見直し」のどれで埋めるかを、工事の数年前から総会で議論します。この判断は建築の専門家(マンション管理士・一級建築士)の領域で、税理士は積立金の会計処理と資金計画の整理で関わります。

税務上の確認収益事業・申告・消費税・源泉徴収

管理会社の決算報告には、税務の判定は通常含まれていません。理事会が毎年確認すべき税務の項目は4つです。

確認項目内容詳しい解説
① 収益事業の有無組合員以外への駐車場貸付け、携帯基地局の設置料、自動販売機の設置料、看板料、コインランドリーなどがあれば、法人税の収益事業に該当する可能性がある。組合員への貸付けだけなら該当しない「管理組合に法人税の申告が必要になる収入」「駐車場外部貸しの税務」
② 法人税の申告状況収益事業があるなら、収益事業開始届出書を提出し、毎年、事業年度終了後2か月以内に法人税・地方税の申告をしているか。赤字でも申告は必要で、法人住民税の均等割がかかる「収益事業開始の届出と申告期限」「収益事業の所得計算」
③ 消費税・インボイス組合員以外からの課税売上が年1,000万円を超えるか(前々年度で判定)。取引先からインボイス登録を求められていないか。登録している場合は申告をしているか「管理組合の消費税とインボイス」
④ 源泉徴収管理組合が個人に直接支払う報酬(管理員・清掃員を直接雇用する給与、個人の税理士・弁護士・マンション管理士への報酬、講師料)は源泉徴収が必要。管理会社経由の支払いや法人への支払いは不要「管理組合の税金ガイド」の源泉徴収の章

①で収益事業に当たる収入が過去からあり、申告していなかった場合は、気づいた時点で期限後申告をします。放置した期間が長いほど加算税・延滞税が増え、理事会の説明も難しくなります(「管理組合の過去の無申告」参照)。

国税不服審判所の裁決事例:基地局の賃料を申告していなかった団地管理組合

国税不服審判所の平成25年10月15日裁決は、管理組合法人の登記をしていない団地の管理組合が、各棟の塔屋の一部を携帯電話会社に賃貸してアンテナ基地局を設置させ、その賃料を修繕積立金会計に入れて共用部分の修繕に使っていた事案です。法人税の申告をしていなかったため、5事業年度分の法人税の決定処分と無申告加算税の賦課決定処分を受けました。

審判所は、管理組合は人格のない社団等に当たり、賃料は各区分所有者ではなく管理組合に帰属し、共用部分の賃貸は収益事業(不動産貸付業)に当たると判断しました。人格のない社団等に当たるとの認識がなかったという主張や、基地局と関係のない共用部分の修繕費を経費にすべきという主張も認められていません。外部収入がどちらの会計に入っていても、税務の判定は別に必要になることを示す例です。

出典:国税不服審判所 平成25年10月15日裁決(裁決事例集No.93)

理事会で使うチェックリストと税理士に相談するタイミング

毎年の決算承認(総会の1〜2か月前)に、理事会で次のチェックリストを使います。管理会社に事前に送り、回答と資料をそろえて理事会に出してもらうと、1回の会議で確認が終わります。

  • 書類:収支報告書・貸借対照表(会計区分ごと)、年度末の通帳写しまたは残高証明書、未収金内訳表、予算対比表、工事・保険の契約書、総会・理事会議事録(取り崩しの決議)
  • 数字の一致:預金残高=通帳、収支報告書の繰越額=貸借対照表の剰余金、管理委託費=契約書
  • 滞納:件数・金額・最長月数、督促の状況、法的手続きの要否
  • 修繕積立金:残高、取り崩しの決議の有無、長期修繕計画の見直し時期、㎡単価と目安の比較
  • 税務:外部収入の有無と年額、法人税・消費税の申告状況、インボイス登録の問い合わせの有無、個人への直接支払いの有無
  • 次年度:予算案が決算の実績を反映しているか、管理費・積立金の改定の必要性

税理士に相談するタイミングは次の3つです。①外部収入(組合員以外への貸付け・設置料)が初めて発生したとき、または過去からあるのに申告をしていないことに気づいたとき。②外部収入が年1,000万円に近づいたとき、またはインボイス登録を求められたとき。③理事会が交代しても税務の判定と申告が続く体制(管理会社・税理士・理事会の役割分担)を作りたいとき。管理会社の中には提携税理士が申告を行うところもありますが、理事会として「誰が、いつ、何を申告しているか」を把握しておくことが大切です。

当事務所のマンション管理組合の税務サポートは、顧問契約なしのスポットで、収益事業の判定、法人税・消費税の申告、理事会・総会向けの説明資料の作成を行っています。管理会社の決算報告を税務の目で確認してほしい、という年1回のご依頼にも対応します。

「理事会の決算報告の確認」に関するよくある質問

A.記帳と出納を管理会社に委託すること自体は一般的で問題ありません。ただし、決算を承認し組合員に説明する責任は理事会にあり、税務の申告義務も管理組合自身にあります。「通帳との一致」「未収金の内訳」「取り崩しの決議」「外部収入の税務判定」の4点だけでも、理事会が書類で確認して議事録に残しておけば、管理会社の処理に問題があった場合や、理事会が交代した後の引き継ぎで役立ちます。

A.㎡単価の目安は平均的な水準で、建物の仕様や立地によって必要額は変わります。まず長期修繕計画を直近の工事費で見直し、次回の大規模修繕までに必要な額と現在の残高・積立ペースを比べます。不足が見込まれるなら、値上げ・一時金・借入れ・工事内容の見直しの組み合わせを、工事の数年前から総会で議論します。値上げは総会の決議事項で、組合員の合意形成に時間がかかるため、早めに情報を共有することが現実的です。

A.選択肢の一つですが、先に確認することがあります。黒字の原因(予算の見積りが過大、計画していた小修繕を先送りしているなど)と、剰余金を修繕積立金会計へ振り替える(総会決議)ほうが長期的に有利でないかを検討します。管理費を下げた後に不足して再値上げするのは合意が難しいため、剰余金の使い方を決めてから管理費の水準を判断します。

A.最低限、①年度末の預金残高が通帳・残高証明と一致していること、②未収金の内訳と督促状況、③修繕積立金の取り崩しが総会決議に基づいていること、④管理委託費が契約書と一致していること、の4点を実際の書類で確認し、監査報告書に「確認した書類」を書いておけば、監事の役割(業務執行と財産状況の監査)を果たしたと説明できます。判断に迷う項目は、管理会社に質問して書面で回答をもらい、必要なら税理士・マンション管理士に確認します。

「理事会が決算報告で確認すべきポイント」まとめ

  • 管理組合会計は管理費会計と修繕積立金会計の2区分(標準管理規約第28条)。外部収入(組合員以外への貸付け・設置料)がどの会計に入っているかを把握し、別に集計する
  • 決算報告の確認は、預金残高と通帳・残高証明の一致、未収金の内訳、修繕積立金の取り崩しと総会決議、未払金・前受金、管理委託費と契約書、保険、外部収入、予算との比較の順
  • 長期修繕計画は30年以上・大規模修繕2回を含み5年ごとに見直す。積立金はガイドラインの㎡単価の目安(20階未満・5,000㎡未満で平均335円など、2024年改訂)と比べ、段階増額方式は値上げの進捗を確認
  • 税務は、収益事業の有無、法人税の申告状況、消費税1,000万円の判定とインボイス、個人への直接支払いの源泉徴収の4点を毎年確認。管理会社の決算報告には通常含まれない
  • チェックリストを管理会社に事前に送り、資料をそろえて理事会で確認。外部収入の発生・1,000万円接近・インボイス要請・体制づくりのタイミングで税理士に相談。当事務所はスポットで判定・申告・説明資料に対応

管理組合の決算報告の税務チェックは、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「管理会社の決算報告を税務の目で確認してほしい」「外部収入があるが申告が必要か判定してほしい」「理事会・総会で説明できる資料がほしい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内・神奈川県内の管理組合を中心に、顧問契約なしのスポットでも対応し、理事会向けの説明資料も作成します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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