社会福祉法人の指導監査とは?一般監査・特別監査の流れ、事前準備チェックリストと会計で指摘されやすい項目

社会福祉法人の指導監査とは?一般監査・特別監査の流れ、事前準備チェックリストと会計で指摘されやすい項目

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「所轄庁から指導監査の実施通知が届いた。何を見られるのか、何を準備すればいいのか分からない」――指導監査の通知を受けた社会福祉法人の理事長や施設長、事務長の方が、まず抱きやすい不安です。前回の監査から3年たって担当者が替わっていたり、前回の指摘事項への対応がうやむやになっていたりすると、不安は余計に大きくなります。

この記事では、社会福祉法人の指導監査について、一般監査と特別監査の違い、監査の周期、通知から改善報告までの流れ、監査で確認される項目、そして会計面で指摘されやすいポイントと事前準備のチェックリストを、横浜市の運用を例にまとめました。なお、本記事は2026年11月6日時点の厚生労働省の指導監査実施要綱・横浜市の実施要綱および令和8年度実施計画に基づいています。周期や手続きの細部は所轄庁によって異なりますので、通知文と所轄庁の案内を必ずご確認ください。

指導監査とは?一般監査と特別監査の違い

社会福祉法人の指導監査は、社会福祉法第56条第1項に基づいて所轄庁(横浜市内に主たる事務所がある法人の多くは横浜市)が行う検査です。法人の自主性・自律性を尊重しながら、法令や通知で定められた遵守事項が実際に守られているかを確認し、必要な助言・指導を行うものです。厚生労働省の「社会福祉法人指導監査実施要綱」と、その別紙「指導監査ガイドライン」に沿って全国の所轄庁が実施しています。

指導監査には2つの種類があります。

  • 一般指導監査(一般監査):所轄庁が年度当初に策定する実施計画に基づき、一定の周期で定期的に行う監査です。問題の発生やそのおそれがある場合は、計画によらず随時行われることもあります。
  • 特別指導監査(特別監査):運営等に重大な問題がある法人や、正当な理由なく一般監査を拒否した法人などを対象に、随時行われる監査です。ガイドラインの項目に加えて、問題の原因を把握するための詳細な確認が行われます。

混同しやすいのが「法人監査」と「施設監査」の違いです。法人監査は法人本体の運営(理事会・評議員会・定款・会計など)を見るもので、施設監査は特別養護老人ホームや障害者支援施設などの施設ごとの運営基準を見るものです。横浜市では両方を同日に受けるケースもあり、それぞれ事前提出資料が異なります。また、介護保険法や障害者総合支援法に基づく「運営指導(旧・実地指導)」は、これらとはさらに別の制度で、事業所の指定基準や報酬請求の適正さを確認するものです。通知文に「法人指導監査」「施設指導監査」「運営指導」のどれが書かれているかを最初に確認しましょう。

監査の周期は原則3年に1回、条件を満たせば4〜5年に1回

法人に対する一般監査は、毎年度の現況報告書や計算書類で運営状況を確認したうえで、特に大きな問題がなければ原則3年に1回、実地で行われます。横浜市の令和8年度実施計画でも、社会福祉法人は「運営に特に大きな問題がない法人は3年に1回」が基本とされています。

一定の条件を満たすと周期が延びます。横浜市の計画では次のように示されています。

  • 会計監査人の監査等の結果から、財務の透明性・適正性が確保されていると判断される法人は、4年または5年に1回
  • 苦情解決への取組が適切で、良質な福祉サービスの提供に努めていると判断される法人は、4年に1回
  • 前回の監査結果等から必要と判断される法人は、周期にかかわらず翌年度も実施

国の要綱では、会計監査人設置法人や会計監査に準ずる監査を受けている法人について、監査報告に「無限定適正意見」(または改善が確認できる「除外事項を付した限定付適正意見」)が記載された場合に5年に1回へ延長できるとされ、その場合は「会計管理」に関する監査事項の一部を省略できるとされています。つまり、会計の体制をきちんと整えることは、監査の負担そのものを軽くすることにつながります。会計監査人の設置義務がない規模の法人でも、公認会計士や税理士による財務会計の支援を受けているかどうかが、所轄庁の判断材料になります。

指導監査の流れ|通知から改善報告まで

横浜市の実施計画では、指導監査は原則として次の流れで行われます。

通知から改善報告までの流れ

横浜市の実施計画に示された、原則的な流れです。

実施通知の受け取り事前に、日時や提出資料などを記載した文書が法人の代表者宛てに届きます。
事前提出資料の提出横浜市では「事前調査票等」を電子申請・届出システムで提出します。
当日の監査と講評施設見学、帳簿・書類の確認、理事長や事務担当者へのヒアリングを行い、最後に講評があります。
結果通知書の送付文書指摘事項・口頭指摘事項・助言事項の3つに区分された指導監査結果通知書が届きます。
改善報告書の提出文書指摘事項については、期限までに改善状況を文書で報告します。
文書指摘を受けたまま放置することが、最も避けるべき状態です。
出典:横浜市「社会福祉法人等の指導監査(健康福祉局所管)」、令和8年度年間指導監査等実施計画。本文の説明を図にまとめたものです。
  • 実施通知の送付:事前に、日時・場所・監査担当者などを記載した文書が法人の代表者宛てに届きます(横浜市の実施要綱第9条)。通知から実施日までの期間は通知文で確認します。
  • 事前提出資料の提出:横浜市では「事前調査票等」を電子申請・届出システムで提出します。法人監査と施設監査を同日に受ける場合は、それぞれの様式があります。
  • 当日の監査:複数の監査担当職員が法人事務所(または施設)を訪れ、施設見学、帳簿・書類の確認、理事長や事務担当者へのヒアリングを行い、最後に講評があります。
  • 結果通知書の送付:後日、「指導監査結果通知書」が届きます。内容は、法令や通知に違反する「文書指摘事項」、違反の程度が軽微な「口頭指摘事項」、違反ではないが運営に資する「助言事項」の3つに区分されます。
  • 改善報告書の提出:文書指摘事項については、期限までに改善状況を文書で報告します。横浜市では文書指摘の内容と改善措置がホームページに掲載されます。

改善が確認できない場合は、社会福祉法第56条に基づく改善勧告、勧告に従わない場合の公表、改善命令、業務停止命令や役員の解職勧告へと進む仕組みになっています。実際にそこまで進む例は多くありませんが、「文書指摘を受けたまま放置する」ことが最も避けるべき状態だと覚えておいてください。

監査で見られる項目|法人運営・事業・管理の3本柱

指導監査ガイドラインと横浜市の実施要綱(別表第2)に沿って、監査事項は大きく3つに分かれます。

  • 法人運営:定款(必要的記載事項・変更手続)、内部管理体制、評議員・評議員会、理事・理事会、監事、会計監査人、役員等の報酬、情報公開。議事録や就任承諾書、決議の省略(書面決議)の同意書など、手続きの「証拠」がそろっているかが問われます。
  • 事業:定款に記載された社会福祉事業・公益事業・収益事業が、所轄庁への届出どおりに運営されているか。公益事業や収益事業の剰余金が社会福祉事業に充てられているか。
  • 管理:人事管理(就業規則・給与規程・労働法令の遵守)、資産管理(基本財産の処分・担保提供の手続、不動産登記)、会計管理(経理規程、会計処理、計算書類、予算、契約、現金管理、寄附金)、そして社会福祉充実財産(社会福祉充実残額の算定と計画)です。

このうち、税理士の業務と特に関わりが深いのが「管理」のうちの会計管理です。次の章で、横浜市が公表している指摘事項をもとに、会計面の項目を具体的に見ていきます。

会計で指摘されやすい7つの項目

横浜市健康福祉局監査課が公表している指導監査等結果概要(令和4〜6年度)と、こども青少年局監査課の説明資料「令和8年度に向けた社会福祉法人の運営について」に載っている指摘事項、そして指導監査ガイドラインの確認項目をもとに、会計面で指摘されやすい項目を7つに整理します。

  • 経理規程が現行の法令・会計基準に合っていない:法令改正前の文言が残っていたり、必要な定めが抜けていたりするケースです。横浜市こども青少年局監査課の説明資料では、計算書類の確定が理事会の承認だけになっている、「財務諸表」という古い文言や様式名が残っている、といった例が挙げられています。モデル経理規程との差分を一度確認しましょう。
  • 計算書類・注記の様式と承認手続:古い様式の使用、拠点区分ごとの注記の欠落、省略できない注記項目の省略、そして計算関係書類について理事会の承認を受けていないケースです。計算書類は理事会の承認を経て、毎年6月末までに評議員会で承認し、所轄庁へ届け出る必要があります。
  • 積立金と積立資産の不一致:「その他の積立金」のように目的が分からない名称になっている、積立金と同額の積立資産が計上されていない、理事会の決議を経ていない、といった指摘です。積立金は目的ごとに名称を付け、同額の積立資産(預金等)を対応させるのが原則です。
  • 引当金・減価償却・固定資産台帳:賞与引当金や退職給付引当金の計上漏れ、減価償却の計算誤り、固定資産台帳と現物(備品のラベル・保管場所)の不一致などです。現物確認は監査当日に行われることがあります。
  • 区分経理と資金の移動:拠点区分・サービス区分の設定が会計基準に沿っていない、共通経費の配分基準が書面で残っていない、介護保険事業や障害福祉サービス事業の資金使途制限に反する繰入や貸付が年度内に解消されていない、といった指摘です。区分の考え方は「社会福祉法人の決算・会計の基本」でも解説しています。
  • 契約手続:自動更新の契約で稟議書が作成されていない、随意契約の理由が記録されていない、相見積りを取っていない、といった指摘です。横浜市こども青少年局監査課の説明資料では、継続的な取引を随意契約で行う場合も、契約更新時に内容や金額が適切かを見直し、理由を稟議書等に記録するよう求めています。
  • 現金管理と相互牽制:小口現金の残高確認が行われていない、出納と承認を同じ職員が行っている、通帳と印鑑を同じ人が管理している、といった指摘です。複数職員による出納と相互牽制の体制が求められます。

このほか、横浜市健康福祉局監査課の結果概要では、寄附金の受入手続きが適切に行われていなかったという指摘も挙げられています。現況報告書・財務諸表等電子開示システムの入力内容が計算書類と一致しているかも、あわせて確認しておきましょう。

事前準備チェックリスト|通知が届いたらこの順番で

監査の通知が届いたら、まず実施日と事前提出資料の案内を通知文で確認しましょう。次の順番で準備すると、漏れなく、かつ短期間で整えられます。

  • 前回の指摘事項と改善報告書を読み返す:前回の文書指摘・口頭指摘が改善されたままになっているかを最初に確認します。同じ指摘を繰り返すと、評価は厳しくなります。
  • 事前提出資料(事前調査票)を作る:所轄庁の様式に沿って記入します。ここで「分からない」「見つからない」が出た項目が、そのまま当日の弱点になります。
  • 法人運営の書類をそろえる:定款(現行版・変更認可書)、登記事項証明書、評議員・理事・監事の名簿と選任手続書類(就任承諾書・選任委員会の記録)、理事会・評議員会の議事録と決議省略の同意書、役員報酬規程、各種規程(経理規程・就業規則・給与規程・文書管理規程など)。
  • 会計の書類をそろえる:計算書類一式(資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表・附属明細書・注記)、財産目録、監事監査報告書、予算書と補正予算、月次試算表、固定資産台帳、通帳の写しと残高証明、小口現金出納帳、契約書と稟議書・見積書、寄附金台帳、社会福祉充実残額算定シート。
  • 規程と実態の食い違いを洗い出す:経理規程に定めた決裁区分や契約の方法どおりに運用されているか、規程と実際の書類を突き合わせます。
  • 計算書類と電子開示システムの数字を突き合わせる:財務諸表等電子開示システムに入力した内容と、評議員会で承認した計算書類が一致しているかを確認します。
  • 当日の体制を決める:説明担当者(理事長・事務長・会計担当)を決め、書類の保管場所を一覧にしておきます。顧問税理士に立会いを依頼する場合は、この段階で日程を押さえます。

横浜市は自己点検表も公表しています。チェックリストと自己点検表の両方を使って、「書類が存在するか」だけでなく「手続きの順番と日付が正しいか」まで確認するのがコツです。

改善報告書の書き方と、当事務所のサポート

文書指摘を受けた場合の改善報告書は、指摘事項ごとに「指摘の内容」「原因」「改善の内容」「実施した日(または実施予定日)」「再発防止策」を書き、理事会で報告した議事録の写しを添付するのが基本です。「今後は注意します」という記載だけでは、改善とは認められません。経理規程の改正、決裁ルールの変更、月次の残高確認の手順化など、仕組みとして何を変えたかを具体的に書きます。

当事務所では、横浜市内の社会福祉法人を中心に、指導監査の事前準備(経理規程・計算書類・区分経理の点検、模擬監査)、当日の立会い、文書指摘を受けた場合の改善報告書の作成支援、そして指摘を再発させないための月次の経理体制づくりまでサポートしています。社会福祉法人会計基準に沿った決算書類の作成や、収益事業がある場合の法人税・消費税の申告もあわせてお任せいただけます。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。

まとめ:指導監査は「手続きの証拠」と「会計の整合」で決まる

指導監査で見られるのは、法人運営の手続きが法令どおりに行われたことを示す「証拠」と、計算書類・規程・実態の「整合」です。どちらも、監査の直前に慌てて作るものではなく、日々の理事会運営と月次の経理の中で積み上げるものです。通知が届いたら前回の指摘から確認を始め、会計面では経理規程・積立金・区分経理・契約・現金管理の5点を重点的に点検してください。

「社会福祉法人の指導監査」まとめ

  • 一般監査は原則3年に1回。会計監査人の監査や財務の支援を受け、苦情解決に取り組む法人は4〜5年に1回に延びることがある
  • 流れは、実施通知→事前提出資料→当日(見学・書類確認・ヒアリング・講評)→結果通知(文書指摘・口頭指摘・助言)→改善報告
  • 監査事項は「法人運営」「事業」「管理」の3本柱。会計管理は管理の中心
  • 会計の指摘で多いのは、経理規程の未改正、計算書類・注記の様式と承認手続、積立金と積立資産の不一致、引当金・固定資産、区分経理と資金移動、契約手続、現金管理
  • 準備は、前回の指摘事項の確認→事前調査票→法人運営の書類→会計の書類→規程と実態の照合→電子開示システムとの突合→当日の体制、の順に
  • 文書指摘を受けたら、原因と仕組みの変更を具体的に書いた改善報告書を期限内に提出する

「社会福祉法人の指導監査」に関するよくある質問

A.通知から当日までの期間は通知文で確認できます。書類をそろえることは通知後でも進められますが、「理事会の承認を受けていなかった」「積立資産が積まれていなかった」といった手続きの不備は、さかのぼって直すことができません。その場合は、不備を隠さず、監査当日までに理事会で是正の決議を行い、経緯を説明できるようにしておくのが現実的な対応です。日頃から月次で経理を締め、理事会・評議員会の議事録をその都度整えておくことが、いちばんの事前準備になります。

A.横浜市の実施要綱では、文書指摘の内容と改善措置の状況が健康福祉局のホームページに掲載されることになっています。ただし、横浜市自身が「指摘事項がないこと又は少ないことが、提供されている福祉サービスの内容の評価に直ちに結びつくものではない」と明記しているとおり、文書指摘そのものよりも、期限内に改善報告を行い、翌年度以降に同じ指摘を繰り返さないことが重要です。改善勧告・公表・改善命令といった重い手続きに進むのは、指摘を放置した場合です。

A.顧問税理士が監査当日に同席し、会計処理や計算書類について説明することは可能です(所轄庁によっては事前に同席者を伝えておくとスムーズです)。一方、会計監査人は社会福祉法に基づき、一定規模以上の法人に設置が義務付けられる公認会計士・監査法人で、計算書類の監査報告書を作成する立場です。税理士の立会いは監査の受け方や会計面の説明を支援するもので、会計監査人の監査に代わるものではありません。会計監査人の設置義務がない法人でも、税理士が月次で経理を点検していれば、所轄庁が周期延長を判断する際の材料になり得ます。

社会福祉法人の指導監査の準備・立会いは、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「監査の通知が届いたので経理を一度見てほしい」「前回の指摘が直っているか不安」「改善報告書の書き方が分からない」など、社会福祉法人の会計・税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の法人を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
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