試算表の見方|経営者が毎月チェックする5つの数字(粗利・固定費・営業利益・現預金・借入残高)

試算表の見方|経営者が毎月チェックする5つの数字(粗利・固定費・営業利益・現預金・借入残高)

横浜市で中小企業の経営者コーチングと税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「税理士から毎月試算表をもらっているが、どこを見ればいいのか分からない」「数字は眺めているが、次の行動につながらない」――経営者コーチングの初回セッションで、最も多く出てくる悩みです。試算表は、全部の行を読む必要はありません。毎月決まった5つの数字を、決まった見方で確認するだけで、会社の状態と打つべき手が見えてきます。

この記事では、試算表の構造(貸借対照表・損益計算書)を経営者目線で読む方法、毎月見る5つの数字(売上総利益と粗利率・固定費・営業利益・現預金残高・借入残高)と見るポイント、前年同月・予算との比較の仕方、「数字が悪いとき」に最初に確認する項目、月次面談で税理士に聞くべき質問リストを解説します。経営者コーチングの初回セッションの予習としてもお使いください。本記事は2026年11月6日時点の内容です。

試算表の構造を経営者目線で読む

試算表は、月末時点の「財産の状態」を示す貸借対照表と、月初から月末まで(または期首から当月まで)の「もうけ」を示す損益計算書の2つでできています。

試算表を構成する2つの表

試算表は、財産の状態を示す表と、もうけを示す表の2つでできています。

貸借対照表(財産の状態)月末時点で会社に何があり、それを誰のお金で賄っているかを示します。見るのは現預金・売掛金・在庫・借入金です。
損益計算書(もうけ)一定期間に本業でいくら稼ぎ、何にいくら使い、いくら残ったかを示します。粗利・固定費・営業利益を見ます。
月次の試算表には、減価償却費や在庫の反映状況によって仮の数字が混ざることがあります。
本文の説明を図にまとめたものです。
  • 貸借対照表:左側に資産(現預金・売掛金・在庫・設備など)、右側に負債(買掛金・未払金・借入金)と純資産(資本金・これまでの利益の蓄積)が並びます。「会社に何があり、それを誰のお金で賄っているか」を示します。経営者が見るのは、現預金・売掛金・在庫・借入金の4つで十分です。
  • 損益計算書:売上高から売上原価を引いた売上総利益(粗利)、そこから販売費及び一般管理費(人件費・家賃など、おおむね固定費)を引いた営業利益、支払利息などを加減した経常利益、税引前利益、当期純利益の順に並びます。「本業でいくら稼ぎ、何にいくら使い、いくら残ったか」を示します。
  • 月次と累計:試算表には「当月」と「期首からの累計」の両方が載っていることが多く、月ごとの波を見るなら当月、年間の着地を見るなら累計を使います。

注意したいのは、月次の試算表は決算と違って「仮の数字」が混ざることです。減価償却費や賞与が月割りで計上されていない、在庫(棚卸)が期首のままで更新されていない、といった場合、月次の利益は実態より良く(または悪く)見えます。税理士に「減価償却と在庫は月次で反映されていますか」と確認しておくと、数字の読み違いを防げます。

毎月見る5つの数字

  • ① 売上総利益(粗利)と粗利率:売上高から売上原価(仕入・材料費・外注費など)を引いた金額と、売上高に対する割合です。粗利は「会社が自由に使えるお金の源泉」で、売上高より重要です。粗利率が前年や前月より下がっていれば、原価の上昇・値引き・商品構成の変化・在庫の計上漏れのどれかが起きています。
  • ② 固定費(販売費及び一般管理費):人件費・家賃・水道光熱費・減価償却費・保険料・通信費など、売上の増減にかかわらず毎月かかる費用の合計です。固定費を粗利率で割ると「損益分岐点売上高」(これ以上売れば黒字になる売上)が分かります。たとえば固定費が月300万円、粗利率が40%なら、損益分岐点売上は750万円です。
  • ③ 営業利益:粗利から固定費を引いた「本業の利益」です。営業利益がプラスなら本業は成り立っており、マイナスなら粗利を増やすか固定費を減らす必要があります。売上高に対する営業利益率を前年と比べると、収益力の変化が分かります。
  • ④ 現預金残高:貸借対照表の現金と預金の合計です。月商(月の売上高)の何か月分あるかで見ます。目安は1.5〜3か月分で、1か月を切ると資金繰りに余裕がありません。利益が出ているのに現預金が減っている場合は、売掛金・在庫・借入返済・納税・設備投資のどれかにお金が向かっています(「売上は伸びているのにお金が残らない理由」)。
  • ⑤ 借入残高:借入金の合計と、年間の返済額を確認します。返済の原資は「税引後利益+減価償却費」で、これが年間返済額を下回っていると、返済のたびに現預金が減っていきます。借入残高を返済原資で割った「債務償還年数」が10年以内かどうかは、金融機関が見る基本的な目安です。

この5つを、毎月同じ順番で、前月・前年同月と並べて見るだけで、「粗利率が落ちている」「固定費が増えている」「現預金が減っている」といった変化に、決算を待たずに気づけます。

前年同月・予算との比較の仕方

  • 前年同月との比較:季節による波(繁忙期・閑散期)を除いて変化を見るために使います。売上・粗利率・固定費・営業利益の4つを前年同月と比べ、増減の理由を一言で説明できるかを確認します。
  • 予算との比較(予実管理):期首に立てた月ごとの売上・粗利・固定費の予算と実績を比べます。差が大きい項目が「今月考えるべきこと」です。予算は精密である必要はなく、前年実績に目標の増減を加えたもので十分です。当事務所の税務顧問では、予実管理をオプションでお受けしています。
  • 率で見る:金額だけでなく、粗利率・営業利益率・固定費比率(固定費÷粗利)で見ると、規模が変わっても比較できます。固定費比率が100%を超えると営業赤字です。
  • 累計で着地を見る:期首からの累計に、残りの月の見込みを足して年間の着地(利益と納税額)を予測します。決算の3か月前には着地の見込みを持っておくと、設備投資や役員報酬の見直し、納税資金の準備に間に合います。

「数字が悪いとき」に最初に確認する項目

  • 売上が落ちた:客数(件数)と単価のどちらが落ちたかに分けます。客数なら集客や失注、単価なら値引きや商品構成の問題です。
  • 粗利率が下がった:仕入・材料・外注の単価が上がっていないか、値引きが増えていないか、利益率の低い商品の比率が上がっていないか、在庫の計上が漏れていないか(在庫が反映されていないと原価が過大になり粗利率が下がって見えます)。
  • 固定費が増えた:人件費(採用・残業・社会保険料)、新しい契約(システム・広告・リース)、一時的な支出(修繕・採用費)のどれかを特定します。
  • 利益は出ているのに現預金が減った:売掛金の残高が増えていないか(回収の遅れ)、在庫が増えていないか、借入の返済額が返済原資を上回っていないか、納税や設備投資があったか、役員貸付金が増えていないかを順に確認します。
  • 月次の数字が信用できない:減価償却・在庫・未払費用の計上漏れ、売上の計上時期のずれ(入金ベースになっていないか)を税理士に確認します。

月次面談で税理士に聞くべき質問リスト

  • 今期の着地見込み(利益・納税額)はいくらか。納税資金はいつまでにいくら必要か。
  • 粗利率が前年と比べてどう変わったか。その要因は何か。
  • 固定費の中で、前年より増えた項目は何か。見直せるものはあるか。
  • 現預金は月商の何か月分か。来月・再来月の資金繰りで注意する点はあるか。
  • 借入の年間返済額と返済原資のバランスは取れているか。追加借入や借換えを検討すべき時期か。
  • 役員報酬は利益と社会保険料のバランスから見て適正か。次に見直せるのはいつか。
  • 検討中の設備投資・採用・値上げは、利益と資金繰りにどう影響するか。
  • 月次の数字に仮の部分(減価償却・在庫・引当)はあるか。決算でどう変わるか。

これらの質問に答えられる状態で毎月の面談をすると、試算表は「報告を受けるもの」から「次の行動を決める材料」に変わります。当事務所の経営者コーチングでは、この5つの数字をもとに、目標と行動を一緒に決めていきます(「経営者コーチングとは?税理士が数字をもとに伴走する意味」)。サービスの内容は経営者コーチングのページ、月次の税務顧問は税務顧問+確定申告のページをご覧ください。

まとめ:粗利率・固定費・営業利益・現預金・借入の5つを、前年と並べて毎月同じ順番で見る

試算表は、損益計算書の売上総利益(粗利)と粗利率、固定費、営業利益、貸借対照表の現預金残高と借入残高の5つに絞って読めば十分です。固定費÷粗利率で損益分岐点売上、現預金÷月商で資金の余裕、借入残高÷(税引後利益+減価償却費)で債務償還年数が分かります。前年同月と予算に並べて率で見て、数字が悪いときは売上なら客数と単価、粗利率なら原価と在庫、現預金なら売掛・在庫・返済の順に確認します。月次面談では着地見込みと納税額、粗利率の要因、資金繰りの注意点を税理士に聞いてください。

「試算表の見方|毎月チェックする5つの数字」まとめ

  • 試算表=貸借対照表(現預金・売掛金・在庫・借入金を見る)+損益計算書(粗利→営業利益→経常利益の流れ)。月次は減価償却・在庫が仮の場合あり
  • ①粗利と粗利率:会社が使えるお金の源泉。低下は原価・値引き・商品構成・在庫未計上
  • ②固定費:固定費÷粗利率=損益分岐点売上
  • ③営業利益:本業の利益。営業利益率を前年と比較
  • ④現預金残高:月商の1.5〜3か月分が目安。利益が出ても減るなら売掛・在庫・返済・納税・投資・役員貸付
  • ⑤借入残高:返済原資(税引後利益+減価償却)と年間返済額を比較、債務償還年数10年以内が目安
  • 前年同月・予算と率で比較し、累計で着地を予測。面談では着地見込み・納税額・粗利要因・資金繰り・役員報酬を質問

「試算表の見方」に関するよくある質問

A.月次の試算表は、翌月の10〜15日頃までに見られる状態が理想です。遅れる原因の多くは、領収書や請求書の受け渡しが遅い、現金取引の記録が月末にまとまって出てくる、銀行やカードのデータが会計ソフトに連携されていない、といった経理側の仕組みにあります。クラウド会計で口座・カードを連携し、請求書の発行と受取をデータで行い、月初の1週間で資料を渡す運用にすれば、多くの会社で翌月15日頃には試算表が出せます。まず税理士に「何があれば早く出せるか」を聞いてみてください。

A.業種によって大きく異なります。卸売業は10〜20%、小売業は20〜40%、飲食業は60〜70%(食材原価30〜40%)、建設業は20〜30%、サービス業やIT業は50%以上など、おおまかな目安はありますが、重要なのは他社との比較より「自社の粗利率が前年・前月からどう変わったか」と「粗利が固定費を賄えているか」です。粗利率が業界平均より低くても固定費が小さければ利益は出ますし、逆も同じです。自社の過去3年の粗利率の推移を把握し、下がったときにその要因を説明できる状態を目指してください。

A.必要です。個人事業主の場合も、クラウド会計を使っていれば月次の損益と残高はいつでも出せます。見る数字は法人と同じで、粗利率・固定費・営業利益(事業所得の見込み)・現預金・借入残高です。個人事業主は特に、事業のお金と生活費が混ざりやすいため、「事業で稼いだ利益のうち、生活費と納税にいくら必要で、いくら残るか」を月次で確認することが大切です。納税の時期と目安は「個人事業主の1年の納税スケジュール」をご覧ください。

試算表を「次の行動」に変える経営者コーチングは、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「試算表の見方を一緒に確認したい」「数字をもとに目標と行動を決めたい」「月次の予実管理を始めたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の中小企業の経営者・個人事業主を中心に、代表税理士が直接対応します。顧問契約の有無にかかわらずご利用いただけます。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。

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