不動産を売却した年の確定申告|譲渡所得の計算・必要書類・3,000万円特例・申告が必要かの判定

不動産を売却した年の確定申告|譲渡所得の計算・必要書類・3,000万円特例・申告が必要かの判定

横浜市で不動産を売却した方の確定申告をお手伝いしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「自宅を売ったが、確定申告は必要なのか」「税金はいくらかかるのか」「3,000万円の特例は使えるのか」「何を用意すればいいのか」――不動産を売却した翌年の1〜3月に多いご相談です。不動産の売却益(譲渡所得)は給与や事業の所得とは別に計算する「分離課税」で、特例を使うかどうかで税額が数百万円単位で変わります。一方で、売却後に「申告が必要だった」と気づく方や、特例の要件を満たしているのに申告せず使えなかった方も少なくありません。

この記事では、申告が必要かどうかの判定、譲渡所得の計算(取得費・譲渡費用・減価償却)と所有期間5年による税率の違い、居住用財産の3,000万円特別控除・軽減税率・買換え特例・損失の繰越控除の概要と選択、必要書類、取得費が分からないときの対応と申告の期限・納税資金を解説します。本記事は2026年11月6日時点の所得税法・租税特別措置法に基づき、2026年中の売却(2027年3月15日までに申告)を前提にしています。

申告が必要かどうかの判定

  • 売却益(譲渡所得)が出た場合:申告が必要です。給与所得者でも、譲渡所得は年末調整の対象外のため確定申告をします。
  • 特例を使って税額をゼロにする場合:3,000万円特別控除などの特例は、申告書に適用を記載し必要書類を添付することが要件です。「特例を使えば税金がかからないから申告しなくてよい」は誤りで、申告しなければ特例は使えません。
  • 売却損が出た場合:原則として申告義務はありませんが、居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除を使う場合は申告が必要です。投資用不動産の損失は、同じ年の他の不動産の譲渡益とは通算できますが、給与や事業の所得とは通算できません。

譲渡所得の計算と所有期間5年による税率の違い

譲渡所得は「売却価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算します。

譲渡所得の計算の流れ

譲渡所得は「売却価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で計算します。

1
取得費を計算する購入代金と購入時の諸費用の合計から、建物部分の減価償却費相当額を差し引きます。
2
譲渡費用を集計する仲介手数料・印紙代・測量費・取壊し費用など、売却のために直接かかった費用です。固定資産税は含みません。
3
特別控除を差し引く自宅の売却で要件を満たせば、3,000万円特別控除などの特例を使えます。特例の適用には申告が必要です。
4
所有期間で税率を確認売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。
1月1日時点の所有期間の判定を誤ると、税率が倍近く変わります。
出典:国税庁 No.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」、No.3208、No.3211。本文の説明を図にまとめたものです。
  • 取得費:購入代金と購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税、印紙代など)の合計から、建物部分の減価償却費相当額を差し引いた金額です。自宅など事業に使っていない建物は、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法により償却した額を差し引きます(木造なら33年・償却率0.031、鉄筋コンクリートなら70年・償却率0.015)。相続や贈与で取得した不動産は、亡くなった方(贈与者)の取得日と取得費を引き継ぎます。
  • 譲渡費用:売却時の仲介手数料、印紙代、測量費、建物の取壊し費用、借家人への立退料など、売却のために直接かかった費用です。固定資産税や修繕費は含みません。
  • 税率:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)、5年以下なら「短期譲渡所得」として39.63%(所得税30.63%+住民税9%)です。たとえば2021年4月に購入した不動産を2026年中に売ると、2026年1月1日時点では5年以下のため短期になります。取得日の判定は契約日でなく引渡しの日が原則(契約日も選択可)で、1月1日の基準を1日でも誤ると税率が倍近く変わります。

計算例(仮定例):15年前に土地3,000万円・建物(木造)2,000万円、諸費用200万円で購入した自宅を5,500万円で売却し、仲介手数料など譲渡費用が200万円の場合。建物の減価償却費相当額は2,000万円×0.9×0.031×15年=837万円なので、取得費は3,000万円+2,000万円+200万円-837万円=4,363万円。譲渡所得は5,500万円-4,363万円-200万円=937万円です。3,000万円特別控除を使えば譲渡所得はゼロになり税額はかかりませんが、使えなければ長期譲渡として約190万円の税金がかかります。

居住用財産の特例の概要と選択

  • 3,000万円特別控除:自分が住んでいた家屋とその敷地を売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。住まなくなった日から3年目の12月31日までの売却であること、配偶者や親族など特別な関係の人への売却でないこと、前年・前々年にこの特例や買換え特例を使っていないことなどが要件です。所有期間の長短は問いません。
  • 軽減税率の特例:売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える自宅の場合、3,000万円控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が14.21%(所得税10.21%+住民税4%)に下がります。3,000万円特別控除と併用できます。
  • 特定の居住用財産の買換え特例:所有期間10年超・居住期間10年以上の自宅を1億円以下で売り、一定の要件を満たす自宅に買い換えた場合、譲渡益への課税を買い換えた資産を将来売るときまで繰り延べられます。非課税ではなく「先送り」で、3,000万円控除とは選択適用です。2027年12月31日までの売却が対象です。
  • 居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除:所有期間5年超の自宅を売って損失が出た場合、買換えをした場合(買換え資産に住宅ローンがあること)や、売却した自宅に売却価額を上回る住宅ローンが残っていた場合に、損失を給与など他の所得と通算し、引ききれない分を翌年以降3年間繰り越せます。2027年12月31日までの売却が対象です。
  • 住宅ローン控除との関係:新しい自宅で住宅ローン控除を受ける場合、入居した年とその前2年・後3年の間に売った旧自宅について3,000万円特別控除や軽減税率・買換え特例を使うと、住宅ローン控除は受けられません。どちらが有利かは、譲渡益の大きさとローン残高・期間で比べる必要があります。

どの特例を使うかの選択は、譲渡益の額、所有期間、買換えの有無、新居の住宅ローン控除の見込みによって変わります。申告後に選び直すことは原則できないため、申告前に比較してください。

必要書類

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書):売却価額・取得費・譲渡費用を記載する様式です。
  • 売却時の資料:売買契約書、仲介手数料・印紙代・測量費・取壊し費用などの領収書、固定資産税の精算書。
  • 取得時の資料:購入時の売買契約書、建物の請負契約書、仲介手数料や登記費用の領収書、住宅ローンの契約書。
  • 売却した不動産の登記事項証明書:所有期間や面積の確認に使います。
  • 3,000万円特別控除を使う場合:売却時の住民票の住所と不動産の所在地が異なる場合は、戸籍の附票の写しなど、その家に住んでいたことを示す書類。
  • 買換え特例・損失の特例を使う場合:買い換えた資産の売買契約書・登記事項証明書、住宅ローンの残高証明書など。
  • 相続した不動産の場合:亡くなった方の取得時の資料、相続税の申告書(取得費加算の特例を使う場合)。

取得費が分からないときの対応と、申告の期限・納税資金

先代から受け継いだ土地や、古い購入で契約書が見当たらない場合、取得費は売却価額の5%(概算取得費)で計算するのが原則です。この場合、売却価額の95%が譲渡所得になり、税額が大きくなります。契約書がなくても、購入時の住宅ローンの抵当権設定の登記記録(債権額)、分譲時のパンフレットや価格表、当時の通帳の出金記録、不動産業者の記録などから実際の取得費を証明できることがあり、国税不服審判所の裁決例では合理的な推計が認められた例もあります。概算取得費で申告する前に、取得費の資料を探す価値は十分にあります。

申告は売却した年の翌年2月16日〜3月15日に行い、所得税は同じ期限までに納めます(振替納税なら4月)。住民税は翌年6月以降に通知され、国民健康保険や介護保険の保険料も翌年度に上がることがあります(譲渡所得は特別控除後の額で計算されます)。売却代金を全額使ってしまうと納税に困るため、譲渡益の約20%(短期なら約40%)と翌年の保険料の増加分は、売却時に別口座に取り分けておいてください。

相続した不動産を売却する場合の取得費加算の特例や空き家の3,000万円特例は「相続した不動産を売却するときの税金」で解説しています。当事務所では、特例の選択の比較、取得費の資料の探し方、譲渡所得の内訳書の作成から申告まで対応しています。売却後に申告の時期が迫っている方は確定申告 お急ぎサポートのページをご覧ください。

まとめ:譲渡益か特例適用なら申告必須。所有期間5年と特例の選択で税額が決まる

不動産を売却して譲渡益が出た場合、または特例を使う場合は確定申告が必要です。譲渡所得は売却価額から取得費(建物は減価償却後)と譲渡費用を引いて計算し、売却年の1月1日時点で所有5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%の税率がかかります。自宅の売却なら3,000万円特別控除(所有期間不問)、10年超なら軽減税率との併用、買換え特例や損失の繰越控除の選択があり、新居の住宅ローン控除との関係も含めて申告前に比較します。取得費が分からなくても概算5%で諦める前に資料を探し、売却代金から納税資金と翌年の保険料を取り分けておいてください。

「不動産を売却した年の確定申告」まとめ

  • 譲渡益が出た、または特例を使うなら申告必須(税額ゼロでも)。損失は損益通算・繰越の特例を使う場合のみ申告
  • 譲渡所得=売却価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除。建物の取得費は減価償却後、相続・贈与は前所有者の取得日・取得費を引継ぎ
  • 税率は売却年1月1日時点の所有期間で判定:5年超20.315%、5年以下39.63%
  • 自宅の特例:3,000万円特別控除、10年超は軽減税率14.21%(併用可)、買換え特例(繰延べ・2027年末まで)、譲渡損失の損益通算・繰越(2027年末まで)。住宅ローン控除とは併用制限
  • 必要書類:譲渡所得の内訳書、売却・取得時の契約書と領収書、登記事項証明書、特例ごとの添付書類
  • 取得費不明は概算5%が原則だが、登記の抵当権額・分譲資料・通帳などで実額を証明できることも
  • 申告は翌年3月15日まで。納税資金(譲渡益の約20〜40%)と翌年の住民税・国保の増加分を取り分ける

「不動産売却の確定申告」に関するよくある質問

A.売却損で特例を使わない場合、申告の義務はありません。ただし、自宅の売却で損失が出て、買換えをした場合や住宅ローンが売却価額を上回っていた場合は、損失を給与などの所得と通算して所得税の還付を受け、残りを3年間繰り越せる特例があり、これを使うには申告が必要です。また、税務署から「お尋ね」の文書が届くことがあり、売却損であってもその旨を回答しておくと安心です。取得費の計算を誤って「損失」と思い込んでいるケース(建物の減価償却を引いていない、概算取得費の5%で計算すべきところを購入価額で計算している)もあるため、計算は一度確認することをおすすめします。

A.通常の3,000万円特別控除は「自分が住んでいた家」が対象なので、自分が住んでいなかった実家には使えません。その代わり、相続した空き家について一定の要件(1981年5月31日以前に建築、亡くなった方が一人で住んでいた、相続から3年目の年末までの売却、売却価額1億円以下、耐震改修または取壊しなど)を満たせば「相続空き家の3,000万円特別控除」が使えます。また、相続税を納めた方は、売却が相続税の申告期限から3年以内であれば、納めた相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります(空き家特例とは選択適用)。詳しくは「相続した不動産を売却するときの税金」で解説しています。

A.自宅の買換えであれば、まず3,000万円特別控除で譲渡益がゼロになるかを確認します。譲渡益が3,000万円を超える場合は、所有・居住10年以上などの要件を満たせば買換え特例で課税を繰り延べる選択もありますが、新居で住宅ローン控除を使いたい場合はこれらの特例と併用できないため、どちらが有利かを試算します。それでも納税が必要な場合は、期限内に申告して振替納税を選べば納付は4月になり、さらに難しければ納税の猶予(分割)を税務署に申請できます。申告期限を過ぎると延滞税と加算税が加わるため、資金がなくても申告は期限内に行ってください。

不動産を売却した年の確定申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「申告が必要か判定してほしい」「3,000万円特例や買換え特例のどれが有利か知りたい」「取得費の資料がない」など、不動産売却の税金のことなら、お気軽にご相談ください。横浜市内の方を中心に、代表税理士が直接対応します。申告期限が迫っている場合も対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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