相続した不動産を売却するときの税金|取得費加算・空き家の3,000万円特例・申告の時期

相続した不動産を売却するときの税金|取得費加算・空き家の3,000万円特例・申告の時期

横浜市で相続税申告サポートと不動産売却の確定申告サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「相続した実家を売ることにしたが、税金はいくらかかるのか」「親が買ったときの金額が分からない」「空き家の3,000万円の特例というのは使えるのか」「相続税の申告の前と後、どちらで売るのが有利なのか」――相続した土地・建物を売却する予定の相続人の方からのご相談です。相続した不動産の売却には、通常の不動産売却の税金の計算に加えて、相続特有の二つの制度(相続税の取得費加算と、被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除)があり、どちらを使うか・いつ売るかで税額が大きく変わります。

この記事では、譲渡所得の計算(売却価格−取得費−譲渡費用)と取得費が不明な場合(5%概算)、相続税の取得費加算(申告期限から3年以内の売却)、被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除の要件(昭和56年5月31日以前の建物・耐震改修または取壊し・1億円以下・期限)、売却時期の選び方(相続税申告との前後・取得費加算と空き家特例の選択)、確定申告の必要書類と時期を解説します。本記事は2026年11月6日時点の所得税法・租税特別措置法39条・35条3項と国税庁タックスアンサーに基づいています。相続不動産に限らない売却全般の申告は「不動産を売却したときの確定申告」、売却前の評価は「不動産の相続税評価の基本」をご覧ください。

譲渡所得の計算と取得費が不明な場合(5%概算)

不動産を売却したときの税金(所得税・住民税)は、譲渡所得に対してかかります。計算式は次のとおりです。

譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用(− 特別控除)

  • 取得費:相続で取得した不動産の取得費は、被相続人(亡くなった方)が購入したときの金額を引き継ぎます。建物は購入後の減価償却相当額を差し引いた金額です。購入時の仲介手数料・登記費用・不動産取得税も取得費に含まれます。相続登記の登録免許税・司法書士報酬も取得費に加えられます。
  • 取得時期も引き継ぐ:所有期間の判定(5年超なら長期譲渡で税率20.315%、5年以下なら短期で39.63%)は、被相続人が購入した日から数えます。相続してすぐに売っても、被相続人が5年以上前に購入していれば長期譲渡です。
  • 譲渡費用:売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、売却のための建物の取壊し費用、立退料など。相続税や相続登記費用、固定資産税、修繕費は譲渡費用になりません。
  • 取得費が分からない場合(概算取得費):被相続人が何十年も前に購入し、契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。たとえば3,000万円で売却した土地の取得費が不明なら、取得費は150万円で、譲渡所得は約2,850万円−譲渡費用となり、税額は約570万円(長期)になります。実際の購入額が分かれば大きく下がることが多いため、契約書・領収書・登記簿の抵当権の記録(借入額から推定)・購入時のパンフレット・分譲価格表など、取得費を示せる資料を探すことが最初の作業です。

税率は、長期譲渡所得で所得税15.315%(復興特別所得税を含む)+住民税5%=20.315%、短期譲渡所得で所得税30.63%+住民税9%=39.63%です。給与や事業の所得とは分けて計算(分離課税)します。

相続税の取得費加算申告期限から3年以内の売却

相続税を納めた方が、相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から3年10か月以内)に売却した場合、納めた相続税のうちその不動産に対応する部分を取得費に加算できます(租税特別措置法39条)。相続税と所得税の二重の負担を調整する制度です。

  • 加算できる金額:その相続人が納めた相続税額 × (売却した不動産の相続税評価額 ÷ その相続人が相続した財産の合計額(債務控除前))。たとえば相続税を600万円納めた相続人が、相続財産6,000万円のうち評価額3,000万円の土地を売却した場合、600万円×3,000万円÷6,000万円=300万円を取得費に加算でき、譲渡所得が300万円減り、税額が約61万円(長期)減ります。
  • 要件:①相続または遺贈で財産を取得した人であること、②その人に相続税が課税されていること(相続税がゼロの人は使えない)、③相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すること。
  • 手続き:売却した年の確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と相続税申告書の写しを添付します。
  • 相続税の申告前に売却した場合:売却が相続税の申告期限前でも適用できます。相続税の申告書を提出した後に、所得税の確定申告(または更正の請求)で加算します。
  • 空き家特例との関係:同じ不動産について、取得費加算と次に説明する空き家の3,000万円特別控除は併用できず、どちらか一方を選びます。

被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除の要件

被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を相続した人が、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(租税特別措置法35条3項)。相続人が住んでいなくても使える点が、通常の居住用財産の3,000万円特別控除との違いです。

要件の区分内容注意点
家屋の要件①昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震基準)②区分所有建物(マンション)でないこと③相続開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象
譲渡の期限①相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで②2027年(令和9年)12月31日までの譲渡2026年11月時点では、2024年以降に相続が発生した方が主な対象。制度自体の期限は過去に延長されてきましたが、延長は確定ではないため期限内の売却を前提に計画します
売却代金1億円以下同じ家屋・敷地を複数の相続人が分けて売った場合や、分割して売った場合は、合計で1億円以下かを判定
耐震基準または取壊し次のいずれか:①相続から売却まで事業・貸付・居住に使わず、売却時に耐震基準を満たしている(耐震改修をして売る)②家屋を全部取り壊して敷地だけを売る③2024年1月1日以後の譲渡は、売却後、翌年2月15日までに耐震改修または取壊しが行われる場合も可③により、買主が購入後に取り壊す契約でも適用できるようになり、売主が取壊し費用を負担せずに特例を使える場面が増えた
控除額相続人1人あたり最高3,000万円。2024年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円相続人が2人で共有して売れば、それぞれ3,000万円まで控除できる
その他親子・夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外。同じ家屋・敷地等の売却について、取得費加算の特例とは併用不可相続開始から売却まで、貸したり事業に使ったりすると対象外になる(相続後に一時的に貸すのは避ける)

仮定例:被相続人が一人で住んでいた旧耐震の実家(取得費不明)を、相続した子2人が共有で4,000万円で売却し、取壊し費用200万円・仲介手数料130万円がかかった場合。譲渡所得は4,000万円−200万円(概算取得費5%)−330万円=3,470万円で、2人で均等に分けるとそれぞれ1,735万円。空き家特例で各3,000万円まで控除できるため、2人とも譲渡所得はゼロになり、所得税・住民税はかかりません(確定申告は必要です)。特例を使わなければ、約705万円(3,470万円×20.315%)の税額になる計算です。

売却時期の選び方相続税申告との前後・取得費加算と空き家特例の選択

相続した不動産をいつ売るかは、次の観点で決めます。

観点考え方
相続税申告(10か月)の前に売るか後に売るか相続税の計算では、売却の有無にかかわらず相続開始時の評価額で課税されます。申告前に売ることで相続税が変わることはありません(売却代金が評価額を大きく上回る場合に、時価で課税される可能性がまったくないわけではありませんが、通常の売却では評価額が基準です)。一方、申告前に売れば納税資金を売却代金から確保できます。売却には相続登記(名義変更)が必要で、分割協議が終わっていることが前提です。
取得費加算を使うなら3年10か月以内相続税を納めた人が、取得費加算を使うには申告期限の翌日から3年以内の売却が必要です。相続税額が大きく、売却する不動産の評価額の割合が高いほど、加算額が大きくなります。
空き家特例を使うなら3年目の年末まで、かつ2027年12月31日まで相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が期限です。耐震改修か取壊しの段取り(または買主が行う契約)を売却前に決めておきます。
取得費加算と空き家特例の選択同じ不動産には一方しか使えません。一般に、相続税額が小さい(またはゼロ)なら空き家特例、相続税額が大きく空き家特例の要件を満たさない(新耐震の建物・マンション・被相続人が同居者と住んでいた)なら取得費加算、両方使える場合は控除額の大きいほうを選びます。空き家特例の控除は最高3,000万円、取得費加算は納めた相続税のうち対応部分なので、多くの場合は空き家特例のほうが有利ですが、個別に計算して比べます。
売却する年の他の所得・翌年の負担譲渡所得は分離課税ですが、売却の翌年度の国民健康保険料・介護保険料・住民税は譲渡所得を含めて計算されるため上がります。特例で譲渡所得がゼロになれば住民税や国民健康保険料の所得割への影響はなくなりますが、横浜市の国民健康保険料の均等割の軽減判定のように特別控除前の金額を使う判定もあるため、個別に確認が必要です。
換価分割相続人全員で売却して代金を分ける場合は、遺産分割協議書に「換価分割」であることと分配割合を明記します。売却の便宜上、代表者一人の名義で登記して売却した場合でも、協議書に換価分割の記載があれば、代金の分配は贈与になりません。譲渡所得は各相続人が分配割合に応じて申告します。

実務では、①相続税の申告が必要か・いくらかを確定させ、②取得費の資料を探し、③空き家特例の要件(建築年・居住状況・耐震か取壊し)を確認し、④取得費加算との比較をしたうえで、売却時期と売り方(取壊しの有無・共有か単独か)を決める、という順序になります。遺産分割協議書の作り方は「遺産分割協議書の作り方」で解説しています。

取得費加算と空き家特例の違い

相続した不動産の売却で使える2つの特例は、要件と効果が異なります。

取得費加算(措置法39条)相続税を納めた人が申告期限の翌日から3年以内に売却した場合、納めた相続税のうち売却した不動産に対応する部分を取得費に加えます。
空き家特例(措置法35条)被相続人が一人で住んでいた旧耐震の家屋と敷地を、3年目の年末まで(2027年末まで)に売却すると、耐震改修や取壊しなどの要件のもと最高3,000万円を控除できます。
同じ不動産には一方しか使えません。多くは空き家特例が有利ですが、個別に計算して比べます。
出典:租税特別措置法39条・35条3項。本文の説明を図にまとめたものです。

確定申告の必要書類と時期

売却した年の翌年2月16日から3月15日までに、売却した相続人それぞれが所得税の確定申告をします。特例を使って税額がゼロになる場合も、申告が適用の条件です。

  • 共通:確定申告書(分離課税用)、譲渡所得の内訳書、売買契約書(売却時)の写し、仲介手数料・印紙・測量・取壊しなど譲渡費用の領収書、売却した不動産の登記事項証明書。
  • 取得費の資料:被相続人の購入時の売買契約書・領収書、建築請負契約書、購入時の仲介手数料・登記費用の領収書、相続登記の費用の領収書。見つからない場合は概算取得費(5%)か、合理的な推定の資料。
  • 取得費加算を使う場合:相続税申告書の写し、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」。
  • 空き家特例を使う場合:被相続人居住用家屋等確認書(家屋の所在地の市区町村に申請して交付を受ける。被相続人の住民票の除票、相続人の住民票、売買契約書、電気・ガスの閉栓証明や空き家であったことを示す資料、取壊しの場合は閉鎖事項証明書などを添えて申請)、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(耐震改修して売った場合)、譲渡所得の内訳書、登記事項証明書(建築年月日の確認)。
  • 横浜市の場合:被相続人居住用家屋等確認書は横浜市の担当課に申請します。交付まで日数がかかるため、売却後すみやかに申請してください。

売却の翌年度には住民税・国民健康保険料が変わる可能性があるため、売却代金を全額使う前に、税金と翌年の保険料の増加分を取り分けておくことをおすすめします(「不動産を売却したときの確定申告」参照)。当事務所の相続税申告サポートでは、相続税申告の段階で売却の予定を伺い、取得費加算と空き家特例の比較、売却時期の助言、売却後の確定申告までを一貫して対応しています。

「相続した不動産の売却」に関するよくある質問

A.相続税と売却の所得税は別の税金なので、相続税がゼロでも、売却で譲渡所得が出れば所得税・住民税がかかります。相続税を納めていないため取得費加算は使えませんが、空き家特例の要件(旧耐震・被相続人の単独居住・期限内・1億円以下・耐震改修か取壊し)を満たせば3,000万円の特別控除が使えます。実家の売却で税金がかからないケースの多くは、この特例によるものです。

A.相続の時から売却の時まで、居住・事業・貸付に使われていないことが要件の一つなので、相続後に弟さんが住んでいた場合は原則として空き家特例は使えません。また、相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいた場合も対象外です。この場合、相続税を納めていれば取得費加算を検討します。弟さんが住んでいた家を弟さんが売る場合は、弟さん自身の居住用財産の3,000万円特別控除(別の制度)の対象になる可能性があります。

A.契約書がなくても、購入額を合理的に示せる資料があれば実額を取得費にできる余地があります。購入時の住宅ローンの金銭消費貸借契約書や登記簿の抵当権設定の記録(借入額)、分譲時のパンフレット・価格表、購入当時の預金通帳の出金記録、不動産業者の売買記録などです。資料がまったくない場合は5%の概算取得費になります。40年前の土地は購入額より売却額が大きく上回ることが多いため、資料探しの労力は税額に見合うことが多いです。

A.相続税は相続開始時点の財産を財産評価基本通達で評価して計算するため、原則として売却価格ではなく路線価などによる評価額で課税されます。売却価格が評価額を上回っていても、通常はそのまま評価額で申告します。売却代金は納税資金に使えるため、申告期限前の売却自体に問題はありません。ただし、売却には相続登記と分割協議の確定が必要で、売却後の所得税には取得費加算(相続税申告後に適用)か空き家特例を検討します。

「相続した不動産を売却するときの税金」まとめ

  • 譲渡所得=売却価格−取得費(被相続人の購入額を引き継ぐ。不明なら5%概算)−譲渡費用。所有期間も引き継ぎ、多くは長期譲渡(20.315%)
  • 相続税を納めた人は、申告期限の翌日から3年以内(相続開始から3年10か月)の売却で、相続税のうち対応部分を取得費に加算できる
  • 空き家特例は、昭和56年5月31日以前・区分所有でない・被相続人の単独居住の家屋を、相続開始から3年目の年末までかつ2027年12月31日までに1億円以下で売り、耐震改修か取壊し(売却後翌年2月15日までの実施も可)をすれば最高3,000万円控除(相続人3人以上は2,000万円)
  • 取得費加算と空き家特例は同じ不動産に併用不可。相続税ゼロなら空き家特例、要件外なら取得費加算、両方可なら比較。相続後に貸す・住むと空き家特例は使えない
  • 売却の翌年2月16日〜3月15日に相続人ごとに確定申告(税額ゼロでも必要)。空き家特例は市区町村の被相続人居住用家屋等確認書が必要で、横浜市は交付に日数がかかる

相続した不動産の売却と確定申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「取得費加算と空き家特例のどちらが有利か計算してほしい」「売却の時期と売り方(取壊しの有無・共有)を相談したい」「相続税申告と売却後の確定申告をまとめて任せたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内で実家・土地を相続した方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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