不動産(土地・建物)の相続税評価の基本|路線価・倍率方式・貸家建付地・評価が下がるケース

不動産(土地・建物)の相続税評価の基本|路線価・倍率方式・貸家建付地・評価が下がるケース

横浜市で相続税申告サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「相続税の土地の評価はどう計算するのか」「固定資産税の通知に書いてある評価額とは違うのか」「貸しているアパートは評価が安くなると聞いたが本当か」――土地・建物を相続することになった方から、評価額の見当をつけたいというご相談を多く受けます。相続財産の中で不動産は金額が最も大きくなりやすく、評価の方法を知っているかどうかで申告の要否や税額の見込みが大きく変わります。

この記事では、土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)と調べ方、建物の評価(固定資産税評価額)、評価が下がる主なケース(貸家建付地・貸宅地・不整形地・間口狭小・地積規模の大きな宅地)、小規模宅地等の特例との関係、評価が専門性の高い作業で現地確認・役所調査によって変わる理由と相談の目安を解説します。本記事は2026年11月6日時点の財産評価基本通達と国税庁の財産評価基準書に基づいています。小規模宅地等の特例の要件は「小規模宅地等の特例の基本」、必要書類は「相続税申告の必要書類一覧」をご覧ください。

土地の評価方法路線価方式と倍率方式・調べ方

相続税の土地の評価は、売買の時価ではなく、国税庁が定める財産評価基本通達に基づいて計算します。評価方法は土地の所在地によって「路線価方式」と「倍率方式」のどちらかに決まり、どちらを使うかは国税庁の「財産評価基準書」(路線価図・評価倍率表)で確認します。路線価は毎年7月1日に、その年1月1日時点の価格として公表され、相続が発生した年分の路線価を使います(年の前半に相続が発生した場合は、7月の公表を待って評価します)。

方式対象計算の基本調べ方
路線価方式市街地の宅地(横浜市内のほとんどの住宅地・商業地)路線価(道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額、千円単位)× 各種補正率 × 地積(㎡)国税庁「財産評価基準書」の路線価図で、土地が面する道路の数字を確認。「300D」なら1㎡30万円、Dは借地権割合60%
倍率方式路線価が定められていない地域(郊外・農地・山林など)固定資産税評価額 × 評価倍率表に定められた倍率(宅地は1.1倍など)同じ財産評価基準書の評価倍率表で、市区町村・地域ごとの倍率を確認。固定資産税評価額は納税通知書の課税明細書か、市の固定資産評価証明書で確認

路線価は、公示価格(国土交通省が公表する標準地の価格)のおおむね8割の水準に設定されています。固定資産税評価額は公示価格の7割程度の水準で3年ごとに評価替えされるため、同じ土地でも「相続税評価額(路線価ベース)>固定資産税評価額」になるのが通常です。固定資産税の通知書の金額をそのまま相続税の土地評価と考えると、低く見積もることになります。

路線価方式の計算例(仮定例):路線価30万円、奥行価格補正率1.00、地積150㎡の整形地なら、30万円×1.00×150㎡=4,500万円が自用地としての評価額です。ここから、土地の形状や利用状況に応じた補正や減額を行います。

建物の評価固定資産税評価額を使う

建物(家屋)の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じ金額です(倍率1.0)。市区町村の納税通知書に添付される課税明細書の「価格(評価額)」欄、または固定資産評価証明書で確認します。新築直後の評価額と建築費との関係は建物ごとに異なり、評価額は築年数とともに下がりますが、一定の下限で止まります。

  • 貸している建物(貸家):固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)で評価します。全室賃貸中のアパートなら評価額は固定資産税評価額の70%になります。賃貸割合は相続開始時に実際に貸している部分の床面積の割合で、空室は原則として含めません(一時的な空室で募集中など、賃貸の継続性が認められる場合は含められることがあります)。
  • 建築中の建物:費用現価(相続開始時までにかかった建築費)の70%で評価します。
  • 附属設備・構築物:門・塀・庭園設備などは別に評価しますが、家屋と一体の設備(電気・給排水など)は家屋の評価に含まれます。
  • 区分所有マンション:2024年1月1日以後の相続から、居住用の区分所有マンション(一室)の評価方法が見直され、建物の築年数・総階数・所在階・敷地持分の狭さから計算する「評価乖離率」を用いて、市場価格との差が大きい物件は評価額が引き上げられます(従来の評価額が市場価格の理論値の60%未満の場合に、60%になるよう補正)。タワーマンションの高層階などで影響が大きい見直しです。

評価が下がる主なケース貸家建付地・貸宅地・不整形地・間口狭小・地積規模の大きな宅地

自用地としての評価額から、土地の利用状況と形状に応じて減額する項目があります。相続税の土地評価で専門家が最も時間をかける部分です。

ケース内容評価の考え方(横浜市内の住宅地で借地権割合60%の例)
貸家建付地自分の土地に自分の建物(アパート・貸家)を建てて他人に貸している土地自用地評価額 × (1 − 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合)。全室賃貸なら18%の減額(評価額は82%)
貸宅地(底地)他人に土地を貸し、借主が建物を建てている土地自用地評価額 × (1 − 借地権割合60%)=40%で評価。借地権割合は路線価図のA〜Gの記号で地域ごとに決まる
借地権他人の土地を借りて建物を建てている権利(借りている側)自用地評価額 × 借地権割合60%。借地権も相続財産
不整形地三角形・L字型・旗竿地など形の悪い土地想定整形地に対するかげ地の割合に応じた不整形地補正率(最大約40%減)を乗じる
間口狭小・奥行長大道路に接する幅が狭い、奥行きが間口に比べて長い土地間口狭小補正率・奥行長大補正率を乗じる(それぞれ最大10%減程度)
地積規模の大きな宅地三大都市圏(横浜市を含む)で500㎡以上の宅地(容積率や用途地域の要件あり)規模格差補正率(面積に応じて約0.6〜0.8)を乗じる。広い土地は戸建て分譲時に道路などの潰れ地が出ることを反映
無道路地・がけ地・高圧線下地道路に接していない、斜面がある、送電線の下にある土地それぞれ所定の補正・減額。無道路地は、最小限の通路に相当する部分の価額(路線価×通路部分の地積)を控除(無道路地の価額の40%が限度)
セットバックが必要な土地幅4m未満の道路に面し、建替え時に後退が必要な部分後退部分は評価額の30%で評価(70%減)
都市計画道路予定地都市計画道路の区域内にある部分地区区分・容積率・予定地の割合に応じた補正率を乗じる
私道不特定多数が通行する通り抜け私道は評価しない(ゼロ)。行き止まりの私道は自用地評価の30%私道の持分を見落として評価しすぎる例が多い
土壌汚染・埋蔵文化財包蔵地など利用に制約がある土地浄化費用・調査費用相当額を考慮して評価できる場合がある

これらの減額要因は重複して適用できるものが多く、たとえば「不整形で間口が狭い貸家建付地」であれば、不整形地補正・間口狭小補正を行ったうえで貸家建付地の減額を適用します。一方で、角地(側方路線影響加算)や二つの道路に面する土地(二方路線影響加算)は評価が上がります。

小規模宅地等の特例との関係

上で説明した評価は、土地そのものの「評価額」を決める計算です。これとは別に、相続税の計算では「小規模宅地等の特例」により、要件を満たす土地の評価額を課税価格に算入する際に、一定面積まで50〜80%減額できます。順序は、①財産評価基本通達で土地の評価額を計算 → ②小規模宅地等の特例の要件を満たすか判定 → ③評価額に減額割合を適用して課税価格に算入、です。

土地の評価から課税価格まで

土地の評価額を出してから、小規模宅地等の特例を適用する順番です。

評価方式を確認する財産評価基準書で、路線価方式か倍率方式かを確認します。相続が発生した年分の路線価を使います。
自用地の評価額を出す路線価×補正率×地積で計算します。倍率方式なら固定資産税評価額×倍率です。
形状・利用状況で減額不整形地・間口狭小などの補正や、貸家建付地・貸宅地の減額を適用します。角地などは評価が上がります。
小規模宅地等の特例要件を満たせば、評価額を一定面積まで50〜80%減額して課税価格に算入します。
仮定例:自用地4,500万円のアパートの敷地は、貸家建付地で3,690万円、貸付事業用の特例(50%)で1,845万円になります。
出典:財産評価基本通達、租税特別措置法69条の4。本文の説明と仮定例を図にまとめたものです。
特例の区分限度面積減額割合評価との関係
特定居住用宅地等(自宅)330㎡80%自用地の評価額に対して適用
特定事業用宅地等(事業用)400㎡80%自用地の評価額に対して適用。居住用と併用で最大730㎡
貸付事業用宅地等(アパート・貸駐車場など)200㎡50%貸家建付地として減額した後の評価額に対して適用(評価の減額と特例の減額が重なる)

仮定例:路線価方式で自用地評価4,500万円の土地(150㎡)に全室賃貸のアパートが建っている場合、貸家建付地の評価は4,500万円×(1−0.6×0.3×1.0)=3,690万円。この土地が貸付事業用宅地等の要件を満たせば、150㎡は200㎡以内なので全体に50%減額が適用され、課税価格に算入される金額は1,845万円になります。評価の減額と特例の減額を合わせると、自用地評価の約41%まで下がる計算です。どの土地に特例を使うかは「小規模宅地等の特例の基本」で解説しているとおり、1㎡あたりの減額額が大きい土地から選ぶのが基本です。

評価は現地確認・役所調査で変わる理由と相談の目安

土地の評価は、机上で路線価と地積を掛けるだけでは終わりません。評価額を左右する次の情報は、現地と役所で確認しなければ分からないためです。

  • 現地で確認すること:実際の間口・奥行・形状(公図と現況のずれ)、道路との高低差、がけ・傾斜、セットバックの有無、私道の状況、隣地との境界、建物の利用状況(空室・用途)、高圧線や騒音などの利用阻害要因。
  • 役所で確認すること:用途地域・容積率(地積規模の大きな宅地の判定、都市計画道路予定地の補正に必要)、道路の種別と幅員(建築基準法上の道路か、セットバックの要否)、都市計画道路の計画線、土地区画整理事業の予定、埋蔵文化財包蔵地の指定、土砂災害警戒区域など。
  • 法務局で確認すること:登記事項証明書、公図、地積測量図(実測面積と登記地積の差)、私道の持分。

同じ土地でも、これらの確認をしたかどうかで評価額が大きく変わることがあります。評価額が高すぎれば相続税を払いすぎ、低すぎれば申告後に税務署から指摘を受けます。相続税の調査では土地の評価が主要な確認項目の一つで、評価の根拠(補正の適用理由、現地の写真、役所の調査結果)を申告書に添えて説明できる状態にしておくことが重要です。

相談の目安としては、①相続財産に土地が含まれていて基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える可能性がある、②貸している土地・建物がある、③形の悪い土地・広い土地・私道・借地がある、④マンションの高層階を所有している、⑤申告の要否を自分で判定しきれない、のいずれかに当たる場合は、早めに税理士に評価を依頼することをおすすめします。評価額を把握してから、分け方(「配偶者の税額軽減と二次相続を見据えた分け方」)や売却の検討(「相続した不動産を売却するときの税金」)に進むのが順序です。不動産小口化商品や非上場株式など、不動産以外の財産の評価については「不動産小口化商品と相続税」「非上場株式の評価の見直し」をご覧ください。当事務所の相続税申告サポートでは、現地確認と役所調査を含めた土地評価を申告業務の中で行っています。

「不動産の相続税評価」に関するよくある質問

A.土地については、固定資産税評価額ではなく路線価方式(または倍率方式)で評価し直す必要があります。路線価ベースの評価額は固定資産税評価額の1.1〜1.2倍程度になることが多く、固定資産税評価額の合計が基礎控除をわずかに下回る場合は、相続税評価では超える可能性があります。建物は固定資産税評価額のままで構いません。預貯金・有価証券・生命保険金なども含めて再計算してください。

A.貸家建付地と貸家の減額は、相続開始時に実際に賃貸している部分の割合(賃貸割合)に応じて計算するのが原則で、空室部分は減額の対象から外れます。ただし、相続開始前から継続して募集を行っていて空室期間が一時的(おおむね1か月程度など)といった事情があれば、賃貸中として扱える場合があります。募集の記録(広告・管理会社の報告)や空室期間を確認して判断します。

A.原則は財産評価基本通達による評価ですが、通達による評価額が時価を明らかに上回る特別な事情がある場合には、不動産鑑定士の鑑定評価額などで申告することが認められる余地があります。ただし、税務署に認められるためには鑑定の内容と事情の説明が必要で、争いになることもあります。まず通達上の補正・減額(不整形・無道路・セットバック・地積規模など)を漏れなく適用した評価額を出し、それでも時価と大きく乖離する場合に鑑定評価を検討する、という順序が実務的です。

A.当事務所では、土地の評価は相続税申告の報酬に含めて対応しており、物件の数や評価の難易度(不整形地・広大な土地・借地など)によって見積もりが変わります。評価だけのご依頼(申告の要否判定のため)も可能です。料金の考え方は相続税申告サポートのページをご覧ください。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。

「不動産の相続税評価の基本」まとめ

  • 土地は路線価方式(路線価×補正率×地積)か倍率方式(固定資産税評価額×倍率)。路線価は毎年7月公表で公示価格の約8割、固定資産税評価額(約7割)より高くなるのが通常
  • 建物は固定資産税評価額そのまま。貸家は×(1−30%×賃貸割合)。区分所有マンションは2024年以降、評価乖離率による補正で高層階などの評価が上がる
  • 貸家建付地(約18%減)、貸宅地(借地権割合分減)、不整形地・間口狭小・奥行長大、地積規模の大きな宅地(500㎡以上)、セットバック・私道・無道路地などで評価が下がる。角地は上がる
  • 小規模宅地等の特例は評価額を出した後に適用する別の制度。貸付用は貸家建付地の減額と50%減額が重なる
  • 現地確認(形状・道路・高低差・利用状況)と役所調査(用途地域・容積率・道路種別・都市計画道路)で評価は大きく変わる。土地があって基礎控除を超えそうなら早めに評価を依頼する

相続した土地・建物の評価と相続税申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「土地の評価額の見当をつけて、申告が必要か知りたい」「貸しているアパート・形の悪い土地・私道がある」「評価額を見てから分け方や売却を考えたい」など、お気軽にご相談ください。現地確認と役所調査を含めた土地評価を、代表税理士が直接行います。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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