小規模宅地等の特例の基本|自宅の土地が80%減額になる条件・同居と「家なき子」・申告の注意点

横浜市で相続税申告のサポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「親の自宅の土地は、相続税の計算で8割引きになると聞いたが本当か」「同居していないと使えないのか」「申告しないと使えないと言われた」――小規模宅地等の特例は、相続税の負担を最も大きく変える制度で、横浜市内に自宅を持つご家庭では、この特例が使えるかどうかで申告の要否や税額が大きく変わります。一方で、要件が細かく、「使えると思っていたら使えなかった」「分け方を間違えて使えなくなった」という相談も少なくありません。
この記事では、特定居住用宅地等(自宅の土地)を中心に、特例の概要と効果の計算例、適用できる人(配偶者・同居親族・いわゆる家なき子)の要件と落とし穴、老人ホームに入所していた場合、事業用・貸付用宅地との併用・選択、申告要件と遺産分割が必要な理由、二世帯住宅など判断が分かれるケースを解説します。本記事は2026年11月6日時点の租税特別措置法69条の4に基づいています。
特例の概要と効果の計算例
小規模宅地等の特例は、亡くなった方(または生計を一にする親族)が居住や事業に使っていた宅地を一定の親族が相続した場合に、相続税の計算上、その宅地の評価額を一定の面積まで減額する制度です。区分ごとの限度面積と減額割合は次のとおりです。
- 特定居住用宅地等(自宅の土地):330㎡まで80%減額。
- 特定事業用宅地等(亡くなった方の事業に使っていた土地):400㎡まで80%減額。
- 特定同族会社事業用宅地等(同族会社に貸していた土地):400㎡まで80%減額。
- 貸付事業用宅地等(アパート・駐車場など貸付用の土地):200㎡まで50%減額。
計算例を2つ示します(土地の評価額は路線価などで計算した減額前の金額です)。自宅の土地が150㎡で評価額6,000万円の場合、全体が330㎡以内なので80%減額され、相続税の計算に使う評価額は1,200万円になります。自宅の土地が400㎡で評価額1億円の場合、330㎡までが減額の対象なので、1億円×330㎡÷400㎡×80%=6,600万円が減額され、評価額は3,400万円になります。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比べると、この特例が使えるかどうかで申告の要否そのものが変わることが分かります。
自宅の土地(特定居住用宅地等)は、330㎡まで評価額が80%減額されます。
適用できる人の要件と落とし穴
自宅の土地(亡くなった方が住んでいた家の敷地)について特例を使えるのは、次の3つのいずれかに当たる人がその土地を相続した場合です。
- 配偶者:要件はありません。相続後に住まなくても、売却しても、特例を使えます。
- 同居していた親族:亡くなった方と同じ家に住んでいた子などで、相続税の申告期限(10か月)まで、その家に住み続け、かつ土地を所有し続けることが要件です。申告期限前に売却したり転居したりすると使えません。
- いわゆる「家なき子」(別居の親族):亡くなった方に配偶者がおらず、同居していた相続人もいない場合に、別居の親族(主に子)が相続するケースです。要件は、①相続開始前3年以内に、自分・自分の配偶者・3親等内の親族・特別な関係の法人が所有する家に住んだことがないこと(つまり3年以上賃貸などに住んでいること)、②相続開始時に住んでいる家を過去に所有したことがないこと、③申告期限まで土地を所有し続けること、です。2018年4月の改正で、「自分の持ち家を親族に売ってから賃貸として住む」「自分の子(孫)名義の家に住む」といった方法では要件を満たさなくなりました。
落とし穴として多いのは、「同居」の判断です。住民票を親の家に置いていても、実際には別の場所で生活していた場合は同居とは認められません。逆に、単身赴任で住民票を移していても、家族が親と同居しており生活の本拠が親の家にあれば、同居と認められる余地があります。実態で判断されるため、光熱費の支払い、郵便物、通勤経路など生活の実態が分かる資料が重要です。
老人ホームに入所していた場合
亡くなった方が老人ホームなどに入所していて、自宅が空き家だった場合でも、①亡くなった時点で要介護認定・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受けていたこと、②入所先が法律に定める施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなど)であること、③入所後に自宅を事業に使ったり、新たに他の人の居住用にしたりしていないこと、の要件を満たせば、自宅の土地は居住用として特例の対象になります。亡くなる直前に要介護認定等を受けていなかった場合は対象外になるため(入所後に認定を受けた場合や、認定の申請中に亡くなり後日認定された場合は対象)、入所中の方がいるご家庭は、認定の有無を確認しておいてください。
事業用・貸付用の宅地との併用と選択
自宅の土地(330㎡)と事業用の土地(400㎡)は、それぞれの限度面積まで併用できます(合計730㎡)。一方、貸付用の土地が含まれる場合は、限度面積を調整する計算が必要で、全部を限度いっぱいまでは使えません。複数の宅地がある場合、どの宅地に特例を使うかは相続人が選択でき、1㎡あたりの減額が大きい宅地から優先するのが基本ですが、誰が取得するか(配偶者の税額軽減との関係)によって有利・不利が変わります。
なお、貸付用の土地は、相続開始前3年以内に貸付を始めたものは原則として対象外です(事業的規模で3年を超えて貸付事業を行っている場合を除く)。事業用の土地も、相続開始前3年以内に事業を始めたものは、一定の場合を除いて対象外です。相続の直前に駐車場やアパートにしても、原則として特例は使えない、ということです。
申告要件と、遺産分割が必要な理由
この特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算明細書と必要書類を添付して提出することが要件です。特例を使った結果、税額がゼロになる場合でも申告は必要です。「特例を使えば税金がかからないから申告しなくていい」というのは誤りで、申告しなければ特例が使えず、本来の税額に無申告加算税が加わります。
もう一つの重要な要件が、特例を使う宅地について遺産分割が決まっていることです。未分割のまま申告する場合は特例を使えませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割が決まった時点で更正の請求をして特例を適用できます(詳しくは「相続税申告の流れと10か月のスケジュール」)。必要書類は、戸籍(または法定相続情報一覧図)、遺言書または遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書、家なき子の場合は3年間の住所が分かる戸籍の附票と居住している家の登記事項証明書など、老人ホーム入所の場合は要介護認定が分かる書類と施設の契約書などです(取得先は「相続税申告に必要な書類一覧」)。
二世帯住宅・区分登記など判断が分かれるケース
- 二世帯住宅:玄関が別で内部で行き来できない構造でも、建物が区分所有登記されていなければ、親世帯と子世帯の全体を同居として扱い、取得するのが配偶者か要件を満たす同居親族であれば、土地全体(330㎡まで)が特例の対象になります。建物が区分所有登記されている場合は、親が住んでいた部分に対応する土地が対象で、子の部分は同居とは扱われません(子が親と生計を一にしていた場合は、子の居住部分が別に対象になることがあります)。これから二世帯住宅を建てる方は、登記の方法を決める前に確認してください。
- 親の土地に子が家を建てている:子が自分の家に住んでいる場合、その敷地は親の「居住用」ではないため、原則として特定居住用には当たりません(親と生計を一にしている場合は要件を満たすことがあります)。
- 自宅の一部を店舗や貸室にしている:居住部分と事業・貸付部分を面積で分け、それぞれの区分で判定します。
- 配偶者が取得するか子が取得するか:配偶者は配偶者の税額軽減で1億6,000万円まで税額がかからないため、配偶者が自宅を取得して特例を使っても、一次相続の税額はほとんど変わらず、二次相続で特例を使えないことがあります。同居の子がいる場合は、子が自宅を取得して特例を使い、配偶者は預貯金を取得する、といった分け方で一次・二次を通じた税額が下がることがあります(詳しくは「配偶者の税額軽減の使い方と二次相続の考え方」)。
これらは実態や登記の状況によって結論が変わるため、「使えるつもり」で分け方を決める前に、必ず個別に確認してください。当事務所では、無料相談の段階で、自宅の土地に特例が使えるか、誰が取得するのが有利かをお伝えしています。サービスと料金は相続税申告サポートのページをご覧ください。
まとめ:自宅の土地は330㎡まで80%減。「誰が取得するか」と「申告・分割」が条件
小規模宅地等の特例は、自宅の土地を330㎡まで80%減額できる制度で、配偶者は無条件、同居親族は申告期限までの居住・保有継続、別居の親族(家なき子)は3年以上持ち家に住んでいないことなどが要件です。老人ホーム入所中でも要介護認定と施設の要件を満たせば対象になります。特例は申告書の提出と遺産分割の成立が条件で、税額ゼロでも申告が必要です。二世帯住宅の区分登記、配偶者と子のどちらが取得するかで結果が変わるため、分け方を決める前に専門家に確認してください。
「小規模宅地等の特例の基本」まとめ
- 自宅の土地は330㎡まで80%減額。事業用は400㎡80%、貸付用は200㎡50%。居住用と事業用は併用可(730㎡)、貸付用があると調整計算
- 使える人:配偶者(無条件)、同居親族(申告期限まで居住・保有)、家なき子(配偶者・同居相続人なし、3年以内に自分や親族等の持ち家に居住なし、過去に所有した家に居住していない、保有継続)
- 同居は実態で判断。老人ホーム入所中は要介護等の認定+法定施設+自宅を貸していないことが条件
- 相続開始前3年以内に始めた貸付・事業の土地は原則対象外
- 申告書の提出と添付書類が要件(税額ゼロでも申告必要)。未分割では使えず、分割見込書+3年以内の更正の請求で対応
- 二世帯住宅は区分所有登記の有無で結果が変わる。配偶者と子のどちらが取得するかで一次・二次の総額が変わる
「小規模宅地等の特例」に関するよくある質問
取得した人によって異なります。配偶者が取得した場合は保有継続の要件がないため、申告期限前に売却しても特例を使えます。同居親族や家なき子が取得した場合は、申告期限(亡くなった日の翌日から10か月)まで土地を所有し続けることが要件のため、期限前に売却すると特例は使えません。売却の契約は申告期限後にし、それまでは所有を続けるのが安全です。なお、相続した自宅を売却するときには、相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例など、譲渡所得税の側でも検討すべき制度があります。
同居親族の要件は、申告期限まで「その家に居住し」「土地を所有し続ける」ことです。転勤で一時的に家を空けても、家族が住み続けている、家財を置いたままで生活の本拠が変わっていない、といった事情があれば居住継続と判断される余地はありますが、完全に引き払って他人に貸したり空き家にしたりすると要件を満たさなくなる可能性が高くなります。転勤の時期と住まいの状況によって判断が分かれるため、辞令が出た段階で早めにご相談ください。
税額がゼロでも申告書の提出が特例の要件なので、申告自体は必要です。ご自身で申告することもできますが、特例の要件の判定(同居の実態、家なき子の3年要件、老人ホームの要件)、土地の評価(路線価・補正率・不整形地などの減額要素)、添付書類の準備、遺産分割協議書の作成は専門的な部分が多く、要件を誤ると特例が否認されて多額の税額が生じるリスクがあります。当事務所の無料相談で、特例が使えるかどうかと税額の見込みを確認したうえで、ご自身で申告するか依頼するかを決めていただいて構いません。
小規模宅地等の特例が使えるか、横浜の岩本隆一税理士事務所が無料相談で判定します。
「自宅の土地に特例が使えるか知りたい」「誰が相続するのが有利か相談したい」「老人ホーム入所中の親の自宅はどうなるか」など、相続税のことなら、お気軽にご相談ください。横浜市内の方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
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