Q&A無申告は最大何年さかのぼって課税される? 時効、ペナルティ、税務調査の全貌

こんにちは、税理士の岩本隆一です。新規のご依頼受付中です。
皆さん、こんな経験ありませんか?
「確定申告、めんどくさいからとりあえず後回し…」「副業の収入、少額だから申告不要でしょ…」「事業が赤字だから、申告しなくても問題ないはず…」
甘い…甘すぎる…
こういう思考が「無申告という時限爆弾」のスイッチを入れてしまうんです。で、この爆弾、何年後でも突然爆発する可能性があるんですよ。
「え?税金って時効じゃないの?」
この疑問、めちゃくちゃ多いです。結論から言うと「時効はあるけど、思ったより長い」です。じゃあ具体的に何年なのか?税務調査では何年まで遡れるのか?ペナルティはどうなるのか?
このブログでは「税金の時効とペナルティ」について、私が実際に扱った数百件の事例から得た知見を余すことなく公開します。
税金の時効とは何か?
税金の時効とは「税務署がさかのぼって課税できる期間」です。
基本的な考え方
- 税法上の権利には期間制限がある
- 一定期間経過後は課税権が消滅する
- ただし税目や状況によって期間が異なる
所得税の時効
基本的な時効期間
無申告・過少申告の場合:5年間
- 申告していない場合
- 申告額が不足している場合
- より長期間にわたって追徴される可能性
悪質な場合の延長
7年間に延長されるケース
- 偽りその他不正な行為による申告漏れ
- 意図的な隠蔽工作を行った場合
- 架空経費の計上、売上の隠蔽など
- 50%超の隠ぺい・仮装がある場合
所得税の実務での発覚パターン
マイナンバーと銀行口座の紐づけ 2024年からマイナンバーと銀行口座の紐づけが本格化しました。「口座履歴=経済活動の証拠」として追跡可能なんです。
支払調書システム 企業は取引の種類によっては一定金額以上の支払いをする時に「支払調書」を税務署に提出します。顧問先の事業主が「岩本さん、うちの会社がXさんに支払った100万円、Xさんから支払調書の提出反対されたんですが…」と相談を受けたことがあります。そういう抵抗も無意味、現在は支払側が必ず提出するようになっています。
SNS投稿で危険なパターン 私の顧問先で実際にあった話「税務調査官がInstagramの私の投稿プリントアウトを持ってきた」。
特に危険なのは以下のような投稿です:
- 「お金もらったよ」系の投稿
- 「こんなもの買ったよ」という高額商品の写真
- 「家買ったよ」「車買ったよ」みたいな大きな買い物の報告
豪華な旅行や高級車の写真をSNSにアップしておいて「収入少ないです」はもう通用しません。収入申告との整合性を疑われる材料になってしまいます。
所得税のペナルティ
ケーススタディ:Aさんの場合 Aさんはフリーランスエンジニア。3年間無申告だったところ、取引先の税務調査から発覚。年収は平均600万円でした。
- 本税(所得税): 約200万円(3年分)
- 無申告加算税: 約40万円(本税の20%)
- 延滞税: 約20万円(年間5%程度が3年分)
- 合計: 約260万円
「本来払うべき200万円が、無申告によって260万円に膨れ上がった」まさに「塵も積もれば山となる」状態です。
住民税の時効
基本的な時効期間
原則:5年間
- 所得税と異なり、正常申告でも5年間
- 法定納期限の翌日から起算
- 例:令和5年度分なら令和6年6月1日から5年間
住民税特有の問題
副業収入での20万円ルールの誤解 最近特に多いのが副業に関する申告漏れです。
- 所得税:雑所得20万円以下は申告不要
- 住民税:金額に関係なく申告が必要
この誤解による申告漏れが、コロナ禍以降急激に増加しています。
住民税の発覚パターン
市役所からの申告書送付 私の実務経験で最も多いのは「市役所から申告書のプレプリントが送られてきて発覚」するケースです。市役所から申告書が送られてくるっていうことは、実はサラリーマンの人は会社が給与支払報告書をちゃんと出していないことが原因なんです。
自治体による取締まりの厳しさの違い 都会とか田舎ということはないけど、本当に自治体によってそう取締まりの厳しさが違うみたいなのはありますね。ただ、田舎の方がそもそもの件数が少ないので、バレる確率も相対的に変わってくる面はあります。住んでいる場所によって対応が変わるという現実があります。
住民税のペナルティ
延滞税
- 年率最大14.6%(時期により変動)
- 無申告期間が長いほど高額になる
無申告加算税
- 原則として税額の20%
- 自主的に申告した場合は5%に軽減
法人税の時効
基本的な時効期間
無申告・過少申告の場合:5年間
- 申告書の提出がない場合
- 申告額に不足がある場合
仮装・隠蔽の場合:7年間
- 意図的な不正行為がある場合
- 架空取引、簿外売上、架空経費など
法人税特有の注意点
グループ企業の連鎖調査 関連会社への調査が連鎖的に行われることが多く、一社の問題が他社にも波及する可能性があります。ある業界で大規模な税務調査が入ると、そこから取引関係が洗いざらい調べられ、芋づる式に無申告者が発覚します。
同業者の税務調査からの連鎖 私が対応した美容関係の案件では、取引先の税務調査から「未申告の報酬1,000万円」が発覚したケースも。
今後の調査手法の変化
今後はAIを活用した調査が積極的に行われると思います。膨大なデータから異常値を検出し、より効率的に無申告者を特定する技術が導入されるでしょう。
法人税のペナルティ
無申告加算税の税率(2024年改正)
- 50万円以下の部分:15%
- 50万円超300万円以下の部分:20%
- 300万円超の部分:30%
つまり高額な無申告ほどペナルティが重くなる仕組みになったんです。
重加算税 単なる無申告より悪質と判断されると「重加算税」が課されます。税率は通常40%、再度同じ違反をすると50%に跳ね上がります。
相続税の時効
基本的な時効期間
無申告・過少申告の場合:5年間
- 申告義務があるのに申告していない場合
- 申告額が不足している場合
仮装・隠蔽の場合:7年間
- 意図的な財産隠し
- 虚偽の申告書提出
相続税特有の複雑さ
財産の発見困難性 相続財産は多岐にわたり、税務署が把握するのに時間がかかることがあります。そのため、他の税目と比べて時効直前での発覚も珍しくありません。
名義預金の発覚パターン 被相続人名義以外の預金でも、実質的に被相続人の財産とみなされるケースがあり、これらの発覚により時効間際に追徴されることもあります。
税務署は相続税調査の際に、家族全員の預金について名寄せを行うので、名義預金は必ずバレます。通帳の管理状況、印鑑の管理、資金の出所などから総合的に判断されるため、形式的に名義を変えただけでは通用しません。
相続税調査の特徴 相続税の調査は相続開始から2~3年後に行われることが多く、時効ギリギリのタイミングでの指摘が珍しくありません。
相続税のペナルティ
無申告加算税
- 基本税率:15%~30%(2024年改正後)
- 自主申告の場合:5%
重加算税
- 基本税率:40%
- 財産隠しなど悪質なケース
贈与税の時効
基本的な時効期間
無申告・過少申告の場合:6年間
- 他の税目の5年と異なり、贈与税は6年間
- 贈与税法第28条に規定
仮装・隠蔽の場合:7年間
- 意図的な贈与の隠蔽
- 虚偽申告による脱税
贈与税の特殊性
立証の困難さ 贈与の事実認定は複雑で、税務署側の立証に時間がかかることがあります。そのため、時効期間が6年と長く設定されています。
相続税調査時の連鎖発覚 相続税の調査過程で過去の贈与が発覚し、贈与税の時効直前に追徴されるケースが多く見られます。最近、ある方から「今から7年前の無申告を指摘された」という相談を受けました。本人は「もう時効でしょ?」と思っていましたが、実は「隠ぺい・仮装があるケース」として7年遡及されたのです。
名義預金との関連 家族名義の預金が贈与と認定されるケースが多く、これらは相続時に一括して課税されることもあります。
贈与税のペナルティ
無申告加算税
- 基本税率:15%~30%
- 自主申告の場合:5%
重加算税
- 基本税率:40%
- 贈与の隠蔽など悪質なケース
最悪のケース:刑事罰の可能性
極めて悪質なケースでは、刑事罰の対象になります。
- 単純無申告:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 脱税(隠ぺい・仮装あり):10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
実際に芸能人やYouTuberが逮捕されたニュースを見たことがある人も多いでしょう。彼らは「バレない」と思っていたわけです。
例えば、某YouTuberが税務調査で「SNSの収益隠し」を指摘され、重加算税を科された事例も知っています。追徴税額は本税込みで数千万円に達しました。
無申告発覚の現代的手法
1. クレジットカード利用履歴
「収入に見合わない高額な支出」があれば、調査対象になります。ブランド品の大量購入、高額な旅行、外車の購入…これらが「収入源不明」として追求されます。
2. デジタル取引の追跡
現金取引が多い建築関係や転売関係でも、振込記録やデジタル決済の履歴から収入が把握されるケースが増えています。
救済措置と対策
1. 自主的な期限後申告
税務署から指摘される前に自主的に申告すると、無申告加算税が5%に軽減されます。さらに「期限から1ヶ月以内」の自主申告なら、加算税がゼロになる場合も。
2. 分割納付
一度に納付が困難な場合、税務署で手続きをすれば、分割納付が認められる場合があります。ただし延滞税は日々発生し続けます。
3. 「正当な理由」がある場合
長期入院、災害被害など「やむを得ない理由」があれば、ペナルティが軽減・免除される可能性があります。ただし「知らなかった」「忙しかった」は通用しません。
申告漏れと無申告の違い
「申告漏れ」と「無申告」は明確に違います。
- 申告漏れ:確定申告はしたが、一部の所得が漏れていた
- 無申告:そもそも確定申告をしていない
申告漏れの場合は「過少申告加算税」(原則10%)が課されますが、無申告の場合は「無申告加算税」(15%〜30%)と重くなります。
つまり「不完全でも申告する」方が、「全く申告しない」より有利なんです。
無申告を解消するための実践的ステップ
もし「自分、無申告かも…」と気づいたら、以下のステップで対応しましょう。
STEP 1:状況の確認
- いつからどの税金が無申告なのか
- おおよその収入と経費はいくらか
- 資料(請求書・領収書・通帳など)は揃っているか
STEP 2:資料の収集
- 銀行通帳(できれば無申告期間すべて)
- クレジットカード明細(経費の証明に重要)
- 請求書・領収書(あるだけ全部)
- 取引先との契約書など
STEP 3:自主申告の検討
- 税務署に「期限後申告」を行う
- 複雑なケースや高額なケースは税理士に依頼
自主申告のメリット、デメリットを考えると:
メリット
- 無申告加算税が5%に軽減される
- 税務調査を回避できる可能性が高まる
- 精神的な負担から解放される
デメリット
- 即時に納税義務が生じる
- 申告が不十分だと追加調査の可能性がある
STEP 4:専門家への相談
これ、超重要です。
自主申告の判断基準 私が相談者にお伝えするポイントは、複雑であればやめた方がいいということです。調べて自分で完璧に確定申告書を作れるのであれば自分でもいいかなという風に思いますが、不安がある場合は専門家に依頼することをお勧めします。
税務署との対応で重要なこと 税務署との交渉では、とにかく誠実に対応してください。隠し事をしたり、嘘をついたりすると、後々より重いペナルティを受ける可能性があります。
私の事務所で扱った案件では、自力申告で「節税できるはずの経費を計上し忘れていた」ケースが多数あります。専門家なら節税ポイントを最大限活用できます。
例えば、青色申告特別控除(最大65万円)を知らずに白色申告していたり、本来使える医療費控除や住宅ローン控除を使っていなかったり…。
「節税したい」なら無申告解消が最大の節税なんです。無申告加算税や延滞税という「不要な出費」をゼロにできるからです。
最後に「税務署は待ってくれない」
「え?隠ぺいなんてしてない!」と言っても、領収書の不保存や現金取引の記録不備も「隠ぺい・仮装」と判断されることがあります。
悪質でなくても「不備があるなら悪質と見なす」可能性があるのが税務調査の怖さです。
税務署は「知らなかった」を許しません。法律上の義務を果たさないリスクを取るか、自主的に是正して前向きに歩み出すか—その選択は皆さん次第です。
当事務所では無申告でお悩みの方のご相談を随時承っております。初回相談は無料、秘密厳守でのご対応となりますので、少しでも不安を感じる方は、お気軽にお問い合わせください。一緒に問題解決に向けて進んでいきましょう。
「無申告という重荷」を下ろして、安心して本業や生活に集中できる日常を取り戻しましょう。いつでもサポートいたします!
※本記事で言及した税率や制度は2025年4月時点のものです。税制は改正されることがありますので、最新情報は必ず税理士にご確認ください。