みなさんこんにちは、税理士の岩本隆一です。無申告や税務調査を多く取り扱っている税理士事務所を営んでいます。(いつでもお問い合わせください!!)
「無申告」という時限爆弾
皆さん、こんな経験ありませんか?
「確定申告、めんどくさいからとりあえず後回し…」 「副業の収入、少額だから申告不要でしょ…」 「事業が赤字だから、申告しなくても問題ないはず…」
甘い…甘すぎる…
こういう思考が「無申告という時限爆弾」のスイッチを入れてしまうんです。
で、この爆弾、何年後でも突然爆発する可能性があるんですよ。
「え?税金って時効じゃないの?」
この疑問、めちゃくちゃ多いです。結論から言うと「時効はあるけど、思ったより長い」です。じゃあ具体的に何年なのか?税務調査では何年まで遡れるのか?ペナルティはどうなるのか?
このブログでは「無申告の時効とペナルティ」について、私が実際に扱った数百件の事例から得た知見を余すことなく公開します。
無申告の時効は最大で”7年”
税金の時効、正確には「更正・決定の期間制限」と言いますが、ざっくり言うと「税務署がさかのぼって課税できる期間」です。
通常の申告漏れなら5年、悪質な脱税なら7年、と聞いたことがある人も多いでしょう。でも、無申告はそもそも別ルールなんです。
無申告の場合の更正期間
- 原則:法定申告期限から5年間
- 50%超の隠ぺい・仮装がある場合:法定申告期限から7年間
「ふーん、5年か7年か。まあどっちにしても長いね」
で終わりたいところですが、実はもっと怖い現実があります。
隠れた落とし穴:更正期間の”起算点”問題
無申告の場合、更正期間の起算点が特殊なんです。
- 通常申告:法定申告期限の翌日から時効カウント開始
- 無申告:法定申告期限の翌日から時効カウント開始
たった1日の違いに見えますが、以下のケースで重大な違いが出ます。
「令和元年分(2019年分)の確定申告期限は令和2年(2020年)3月16日。現在令和7年(2025年)。もう時効?」
答えはNOです!無申告の場合、令和2年3月16日から5年なので、令和7年3月16日までは課税可能です。
さらに悪質な無申告(隠ぺい・仮装あり)なら、令和2年3月16日から7年間、つまり令和9年(2027年)3月16日まで課税可能なんです。
ということは…今年が2025年だとして…
「平成31年・令和元年(2019年)分の無申告がまだバレるリスクがある」
という恐ろしい現実。
「バレるわけないでしょ?何年も前のことなんて」と思ってる方、現代のデジタル管理社会をナメてはいけません。
無申告はどうやってバレるのか?税務調査の実態
税務署は超効率的に無申告者を見つけ出す仕組みを持っています。その主な手段がこちら:
1. マイナンバーと銀行口座の紐づけ
2024年からマイナンバーと銀行口座の紐づけが本格化しました。「口座履歴=経済活動の証拠」として追跡可能なんです。
2. クレジットカード利用履歴
「収入に見合わない高額な支出」があれば、調査対象になります。ブランド品の大量購入、高額な旅行、外車の購入…これらが「収入源不明」として追求されます。
3. 支払調書システム
フリーランスへの報酬50万円以上は「支払調書」を税務署に提出します。顧問先の事業主が「岩本さん、うちの会社がXさんに支払った100万円、Xさんから支払調書の提出反対されたんですが…」と相談を受けたことがあります。そういう抵抗も無意味、現在は支払側が必ず提出するようになっています。
4. SNS監視
私の顧問先で実際にあった話:「税務調査官がInstagramの私の投稿プリントアウトを持ってきた」。豪華な旅行や高級車の写真をSNSにアップしておいて「収入少ないです」はもう通用しません。
5. 同業者の税務調査からの連鎖
ある業界で大規模な税務調査が入ると、そこから取引関係が洗いざらい調べられ、芋づる式に無申告者が発覚します。私が対応した美容関係の案件では、取引先の税務調査から「未申告の報酬1,000万円」が発覚したケースも。
「そこまでやるの?」と思われるかもしれませんが、税務署側からすれば「当然の情報収集」です。特に高額案件や悪質な無申告の発見に力を入れています。
無申告が発覚したらどうなる?具体的なペナルティ
無申告が発覚した時のペナルティ、実際どうなるか具体例で見てみましょう。
ケーススタディ:Aさんの場合
Aさんはフリーランスエンジニア。3年間無申告だったところ、取引先の税務調査から発覚。年収は平均600万円でした。
①本税(所得税・住民税): 約300万円(3年分) ②無申告加算税: 約60万円(本税の20%) ③延滞税: 約30万円(年間5%程度が3年分)
合計: 約390万円(!)
「本来払うべき300万円が、無申告によって390万円に膨れ上がった」
まさに「塵も積もれば山となる」状態です。
無申告加算税のアップデート
2024年より無申告加算税の税率が変わっています。
- 50万円以下の部分:15%(2023年までは15%)
- 50万円超300万円以下の部分:20%(2023年までは15%)
- 300万円超の部分:30%(2023年までは20%)
つまり高額な無申告ほどペナルティが重くなる仕組みになったんです。
ただし、税務署からの指摘前に自主的に申告すれば、無申告加算税は5%に軽減されます。これが「自主申告のメリット」です。
さらに怖い「重加算税」
単なる無申告より悪質と判断されると「重加算税」が課されます。税率は通常40%、再度同じ違反をすると**50%**に跳ね上がります。
例えば、売上を故意に隠していた、架空経費を計上していた、など「意図的」と判断される場合です。
「どうせバレないでしょ」と思っていた某YouTuberが税務調査で「SNSの収益隠し」を指摘され、重加算税50%を科された事例も知っています。追徴税額は本税込みで数千万円に達しました。
無申告の「救済措置」はある?
ここまで怖い話をしてきましたが、実は「救済措置」もあります。
1. 自主的な期限後申告
税務署から指摘される前に自主的に申告すると、無申告加算税が5%に軽減されます。さらに「期限から1ヶ月以内」の自主申告なら、加算税がゼロになる場合も。
2. 分割納付
一度に納付が困難な場合、税務署と「分割納付の誓約」を交わせば、最大で3年程度の分割が認められる場合があります。ただし延滞税は日々発生し続けます。
3. 「正当な理由」がある場合
長期入院、災害被害など「やむを得ない理由」があれば、ペナルティが軽減・免除される可能性があります。ただし「知らなかった」「忙しかった」は通用しません。
申告漏れと無申告の違い
「申告漏れ」と「無申告」は明確に違います。
- 申告漏れ:確定申告はしたが、一部の所得が漏れていた
- 無申告:そもそも確定申告をしていない
申告漏れの場合は「過少申告加算税」(原則10%)が課されますが、無申告の場合は「無申告加算税」(15%〜30%)と重くなります。
つまり「不完全でも申告する」方が、「全く申告しない」より有利なんです。
最悪のケース:刑事罰の可能性
極めて悪質なケースでは、刑事罰の対象になります。
- 単純無申告:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 脱税(隠ぺい・仮装あり):10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
実際に芸能人やYouTuberが逮捕されたニュースを見たことがある人も多いでしょう。彼らは「バレない」と思っていたわけです。
無申告を解消するための実践的ステップ
もし「自分、無申告かも…」と気づいたら、以下のステップで対応しましょう。
STEP 1:状況の確認
- いつからどの税金が無申告なのか
- おおよその収入と経費はいくらか
- 資料(請求書・領収書・通帳など)は揃っているか
STEP 2:資料の収集
- 銀行通帳(できれば無申告期間すべて)
- クレジットカード明細(経費の証明に重要)
- 請求書・領収書(あるだけ全部)
- 取引先との契約書など
STEP 3:自主申告の検討
- 税務署に「期限後申告」を行う
- 複雑なケースや高額なケースは税理士に依頼
自主申告のメリット、デメリットを考えると:
メリット
- 無申告加算税が5%に軽減される
- 税務調査を回避できる可能性が高まる
- 精神的な負担から解放される
デメリット
- 即時に納税義務が生じる
- 申告が不十分だと追加調査の可能性がある
STEP 4:専門家への相談
これ、超重要です。
私の事務所で扱った案件では、自力申告で「節税できるはずの経費を計上し忘れていた」ケースが多数あります。専門家なら節税ポイントを最大限活用できます。
例えば、青色申告特別控除(最大65万円)を知らずに白色申告していたり、本来使える医療費控除や住宅ローン控除を使っていなかったり…。
「節税したい」なら無申告解消が最大の節税なんです。無申告加算税や延滞税という「不要な出費」をゼロにできるからです。
最後に:税務署は「待ってくれない」
最近、ある方から「今から7年前の無申告を指摘された」という相談を受けました。本人は「もう時効でしょ?」と思っていましたが、実は先に説明した「隠ぺい・仮装があるケース」として7年遡及されたのです。
「え?隠ぺいなんてしてない!」と言っても、領収書の不保存や現金取引の記録不備も「隠ぺい・仮装」と判断されることがあります。
悪質でなくても「不備があるなら悪質と見なす」のが税務調査の怖さです。
税務署は「知らなかった」を許しません。法律上の義務を果たさないリスクを取るか、自主的に是正して前向きに歩み出すか—その選択は皆さん次第です。
当事務所では無申告でお悩みの方のご相談を随時承っております。初回相談は無料、秘密厳守でのご対応となりますので、少しでも不安を感じる方は、お気軽にお問い合わせください。一緒に問題解決に向けて進んでいきましょう。
「無申告という重荷」を下ろして、安心して本業や生活に集中できる日常を取り戻しましょう。いつでもサポートいたします!
※本記事で言及した税率や制度は2025年4月時点のものです。税制は改正されることがありますので、最新情報は必ず専門家にご確認ください。