国税を一度に払えないときは?納税の猶予・換価の猶予と相談前の準備

納期限までに国税を一度に納めることが難しい場合、事情に応じて猶予制度を利用できることがあります。ただし、分割払いを相談しただけで納期限や延滞税が自動的に変わるわけではありません。申請の要件と期限を確認し、所轄税務署の徴収担当へ早めに相談しましょう。この記事は国税の制度を扱います。地方税や保険料は、それぞれの窓口へ確認が必要です。

換価の猶予と納税の猶予の違い

国税を一度に納めることが難しいときに、申請により認められることがある制度です。

申請による換価の猶予一度に納めると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合など。納期限から6か月以内の申請などが要件で、原則1年以内です。
災害・病気などの納税の猶予災害・盗難、病気・負傷、事業の休廃業や著しい損失などで一時に納付できない場合。原則1年以内、延長を含め2年以内です。
どちらも原則として担保が必要で、猶予期間中は原則として各月に分割して納付します。
出典:国税庁 No.9206「国税を期限内に納付できないとき」。本文の説明を図にまとめたものです。

1.申請による換価の猶予

国税を一度に納めると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合などに、申請により、原則1年以内の換価の猶予が認められることがあります。

国税庁は、誠実な納税意思、猶予を受ける国税以外に滞納がないこと、納期限から6か月以内の申請、原則として担保を提供すること等を要件として案内しています。「資金がない」という一言だけで認められる制度ではありません。

申請による換価の猶予とは別に、税務署長の職権による換価の猶予もあります。6か月を過ぎた場合も、相談自体ができなくなると決めつけず、利用できる制度や対応を確認してください。

出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」換価の猶予

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9206.htm

2.災害・病気などによる納税の猶予

災害や盗難、本人や生計を一にする親族の病気・負傷、事業の休廃業、事業の著しい損失等の事情により、一時に納付することが困難な場合には、申請による納税の猶予を受けられることがあります。

本来の法定納期限から1年以上経過した後に、修正申告等により納付税額が確定した場合も、制度上の対象となることがあります。この場合の申請は、その国税の納期限までに行う必要があります。「納税の猶予には申請期限がない」と一律に考えないでください。

猶予は原則1年以内で、一定の事情による延長を含めても、当初の猶予期間と合わせて2年を超えない範囲です。認められる期間は個別に判断されます。

出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」納税の猶予・猶予期間

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9206.htm

3.担保・分割納付・延滞税はどうなるか

原則として担保が必要ですが、猶予税額が100万円以下、猶予期間が3か月以内、提供できる担保がない等の場合には、担保が不要となる場合があります。具体的な事情と必要資料を確認してください。

猶予期間中は、原則として各月に分割して納付します。計画を作る際は、収入の一定割合を機械的に充てるのではなく、財産・収支・生活費や事業継続に必要な資金を整理しましょう。

猶予が認められると、猶予期間中の延滞税の免除・軽減が受けられます。制度や理由により扱いが異なるため、自己判断で延滞税を差し引かず、許可内容と計算を確認します。計画どおりの納付が難しくなった場合も、放置せず早めに担当者へ相談してください。

出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」概要・担保・猶予期間

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9206.htm

4.延滞税を複利と考えない

延滞税は本税を対象に日数に応じて計算され、加算税等に対して課されるものではありません。「延滞税に延滞税が付く複利」と説明するのは適切ではありません。

2026年中の通常の割合は、納期限までと納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その後が年9.1%です。2022~2025年中の割合は年2.4%・年8.7%でした。年をまたぐ場合や猶予・計算期間の特例がある場合は、適用する割合と日数を分けて確認します。

期限後申告や修正申告の納期限は、原則として申告書を提出した日です。法定納期限と同じ日とは限らないため、単純に「本来の申告期限から2か月で高い割合」とは判断しないでください。

出典:国税庁「No.9205 延滞税について」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm

5.相談前に整理しておく資料

税目、対象年分・事業年度、税額、納期限、督促状等の通知、既に納めた額を一覧にします。加えて、手元の資金、今後の入出金、財産や借入金、生活費・事業経費、納付が難しくなった理由を確認できる資料を用意しましょう。

申請書や添付書類は事情・金額によって異なります。税務署の徴収担当へ必要な書式と提出方法を確認し、事実に沿った申請を行ってください。相談だけで差押えや延滞税が必ず止まるとは考えず、現在の手続と期限を確認することが大切です。

出典:国税庁「納期限までに納付することが困難な方へ」

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm

(仮定例)修正申告で追加の納税が生じ、一度に納めると事業の継続が難しい場合

個人事業主が修正申告をして所得税を追加で納めることになったものの、一度に納めると仕入れや従業員への給与の支払いが難しくなるおそれがある場合を考えます。

誠実な納税の意思があり、ほかに滞納がないなどの要件を満たせば、納期限から6か月以内に申請することで、原則1年以内の換価の猶予が認められることがあります。認められた場合は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付します。申請前に、資金繰りの見通しや財産・借入金の資料をそろえ、税務署の徴収担当へ相談しましょう。実際の事例ではありません。

出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」

まとめ

納付が難しいときは、換価の猶予と納税の猶予の条件を区別し、納期限と申請期限を確認しましょう。借入れを急いだり、無理な分割計画を作ったりする前に、資金状況を整理して担当窓口へ相談してください。

※2026年11月4日時点の国税についての一般的な解説です。個別の適用・期間・延滞税の扱いは、理由、納期限、財産や収支等によって異なります。

税務署から連絡が来てお困りの方は、税務調査サポートのページで対応内容と流れをご確認ください。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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