税務調査のペナルティ完全解説|横浜の税理士が実例で語る本当に怖い話

横浜で開業して5年税理士の岩本隆一です。今日は横浜駅のオフィスから、税務調査のペナルティについて、現場の税理士目線でリアルに解説していきます。
まず押さえておくべき4つのペナルティ体系
税務調査のペナルティって、実は結構体系立ててるんですよね。クライアントにはよく「ゲームのダメージ計算みたいなもの」って説明してます。
1. 過少申告加算税(国税通則法65条)
過少申告加算税とは: 期限内に申告書を提出したものの、申告した税額が実際に納めるべき税額より少なかった場合に課される附帯税です。「申告はしたけど金額が足りなかった」というケースですね。
税率:10%~15%(期限内申告の場合)
- 追加本税50万円以下の部分:10%
- 追加本税50万円超の部分:15%
計算例: 申告漏れ300万円の場合
- 50万円 × 10% = 5万円
- 250万円 × 15% = 37.5万円
- 合計:42.5万円
横浜のクライアントでも「ちゃんと申告したのに追加で税金取られるの?」とよく驚かれますが、申告内容に誤りがあれば当然課税されます。比較的軽微とはいえ、本税に加えて1割以上の負担は痛いものです。
2. 無申告加算税(国税通則法66条)
無申告加算税とは: 法定申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される附帯税です。「申告すること自体を忘れていた」「申告義務があることを知らなかった」というケースで適用されます。
税率:15%~20%
- 納付すべき税額50万円以下の部分:15%
- 納付すべき税額50万円超の部分:20%
ただし、以下の場合は5%に軽減:
- 法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告
- 期限内申告をする意思があったと認められる場合
横浜市内でも、特に個人事業主の方や新設法人で無申告のケースをよく見かけます。「忙しくて忘れてた」「売上が少ないから申告不要だと思った」では済まされないのが現実です。
3. 重加算税(国税通則法68条)
重加算税とは: 納税者が「隠蔽」や「仮装」といった悪質な行為により税額を免れた、または免れようとした場合に課される最も重いペナルティです。単なるミスや計算違いではなく、意図的に税務署を欺こうとした行為が対象となります。
税率:35%~40%
- 過少申告の場合:35%
- 無申告の場合:40%
重加算税が適用される具体的行為:
- 二重帳簿の作成
- 売上除外の意図的・継続的実行
- 架空仕入・架空外注費の計上
- 帳簿書類の破棄・隠匿
- 虚偽の答弁
みなとみらいの企業でも「これくらいバレないだろう」という軽い気持ちで始めたことが、重加算税認定につながるケースがあります。税務署は「隠蔽・仮装の意図」を厳格に判定してきます。
過少申告加算税と重加算税の違いはこちらをご覧ください。
4. 延滞税(国税通則法60条)
延滞税とは: 税金の納期限を過ぎても納付しない場合に課される「利息」のような性質の附帯税です。民間でいえば「遅延損害金」に相当します。税務署からの督促を待つ必要はなく、納期限の翌日から自動的に発生します。
延滞税の税率は年によって変動するのがポイント。基準となる「特例基準割合」が毎年変わるからです。
延滞税の計算方法:
- 納期限から2ヶ月以内:年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
- 2ヶ月経過後:年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
過去5年間の延滞税率推移:
年度 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月経過後 |
---|---|---|
令和6年(2024年) | 2.4% | 8.7% |
令和5年(2023年) | 2.4% | 8.7% |
令和4年(2022年) | 2.4% | 8.7% |
令和3年(2021年) | 2.5% | 8.8% |
令和2年(2020年) | 2.6% | 8.9% |
延滞税計算の実例: 税額100万円を3年間放置した場合(令和4年〜6年)
- 1年目:2ヶ月分 2.4% + 10ヶ月分 8.7% = 約7.6万円
- 2年目:12ヶ月分 8.7% = 約8.7万円
- 3年目:12ヶ月分 8.7% = 約8.7万円
- 合計:約25万円(本税の25%)
意外と知られていないのが、延滞税にも延滞税がかかるということ。複利計算みたいになって、放置期間が長いほど雪だるま式に増えていきます。
横浜の税理士が見た生々しい実例
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実例1:みなとみらいのSaaS企業(売上2億円)
状況: ARR(年間経常収益)の計上時期を意図的に翌期にずらして節税を図った
税務署の指摘:
- 申告漏れ:4000万円
- 法人税等:1200万円
課税処分:
- 過少申告加算税:50万円×10% + 1150万円×15% = 177.5万円
- 延滞税(2年間、令和4〜5年):約180万円
- 総額:1557.5万円
社長のコメント:「VCから調達した資金の1割が飛んだ。CFOには申し訳ない」
税理士としての所感:SaaS企業特有の収益認識の複雑さを悪用したケース。申告書は提出していたため重加算税は免れたものの、過少申告加算税と延滞税だけで350万円超の負担。
実例2:横浜中華街の老舗中華料理店(年商8000万円)
状況: 現金売上の40%を除外、3年間継続
税務署の指摘:
- 除外した売上:年平均1000万円
- 3年分の申告漏れ:所得ベースで1800万円
課税処分:
- 重加算税認定(継続的売上除外):35%
- 追徴税額:600万円
- 重加算税:210万円
- 延滞税(令和2〜4年の混在):約150万円
- 総額:960万円
3代目店主のコメント:「おじいちゃんの代から続く店を潰すわけにはいかない」
税理士としての所感:飲食業での現金売上除外は「継続性」「意図性」が認定されやすく、重加算税のリスクが高い。同業他社比較や電力使用量から推定される手法も巧妙化している。
実例3:港北ニュータウンの美容サロン経営者(個人事業主)
状況: 売上1500万円を完全無申告、4年間放置
税務署の指摘:
- 推計所得:年平均400万円
- 4年分の所得税・住民税・国保料
延滞税の詳細計算:
- 令和2年分:所得税20万円 → 延滞税(4年間)約7万円
- 令和3年分:所得税22万円 → 延滞税(3年間)約5.5万円
- 令和4年分:所得税25万円 → 延滞税(2年間)約4万円
- 令和5年分:所得税28万円 → 延滞税(1年間)約2.5万円
課税処分:
- 無申告加算税:20%で80万円
- 延滞税:計約19万円
- 国保料追徴:約120万円
- 総額:約314万円(+住民税)
経営者のコメント:「美容師だから税金のことなんて分からない」
税理士としての所感:個人事業主の無申告は住民税、国保料にも影響し、トータルの負担は想像以上に重い。延滞税は年度別に税率が異なるため計算が複雑になる。
実例4:関内のIT企業(受託開発業)
状況: 架空の外注費1億円を3年間にわたって計上
税務署の指摘:
- 実在しない会社への外注費計上
- 印鑑、筆跡の偽造による証憑作成
課税処分:
- 重加算税認定(仮装行為):35%
- 追徴税額:3000万円
- 重加算税:1050万円
- 延滞税(令和3〜5年):約450万円
- 総額:4500万円
社長のコメント:「会社が潰れる。従業員に申し訳ない」
税理士としての所感:最も悪質なケースで、刑事告発の可能性もあった重大事案。架空取引の証拠隠滅を図った行為が「仮装」に該当し、重加算税40%が適用された。
次の記事で業種別に罰金をまとめましたのでよかったら確認ください
延滞税で知っておくべき実務ポイント
1. 延滞税は1年ごとに税率が変わる
みなとみらいのクライアントから「延滞税っていくらになるの?」とよく聞かれますが、放置期間によって税率が変わるので注意が必要。
計算が複雑になるケース:
- 令和2年分を4年放置:2.6%と8.9%で計算
- 令和4年分を2年放置:2.4%と8.7%で計算
2. 1,000円未満は切り捨て
延滞税は100円単位で計算し、1,000円未満は切り捨てられます。ただし、これで「少額だから大丈夫」と思うのは危険。
3. 納期限の翌日から発生
申告期限の翌日から延滞税は発生します。「税務署からの連絡があってから」ではありません。
税理士目線でのリスク回避戦略
1. 記帳の透明性を確保する
赤レンガ倉庫のように「見た目も中身も美しい」帳簿を心がけることが大切。以下を徹底:
- 現金売上の完全捕捉:POSレジの活用、日次の現金残高管理
- 証憑書類の完備:請求書、領収書、契約書の体系的保管
- 取引の実態に即した記帳:形式ではなく実質で判断
2. グレーゾーンは事前に税理士と相談
経営者の方からよく受ける相談:
- 「これって経費で落ちますか?」
- 「売上の計上時期はいつがいいですか?」
- 「減価償却は一括と分割どちらが得ですか?」
こういった判断は必ず事前に相談を。「後から問題になるなら最初から相談しておけば」というケースが本当に多い。
3. 税務調査への心構え
山下公園を散歩するように、リラックスしつつも準備は万全に。
調査前の準備:
- 過去3年分の帳簿、証憑の整理
- 特殊な取引の説明資料作成
- 調査立会いできる税理士との連携
調査中の対応:
- 誠実な態度で臨む
- 推測や憶測での回答は避ける
- 不明な点は「確認します」と正直に伝える
まとめ:正直な申告が最大の節税
みなとみらいの夜景を眺めながらいつも思うのは、透明性の美しさです。
税務も同じで、小手先のテクニックよりも、正直で透明な申告が結果的に最もコストパフォーマンスが良い。数百万円の罰金リスクを考えれば、税理士報酬なんて安いものです。
特に延滞税は時間が経つほど重くなる「複利の恐怖」があります。年率8.7%なんて、どんな投資商品より確実にマイナスリターンです。
横浜で事業を営む皆さん、税務調査を恐れる必要はありません。ただし、準備と正直さは絶対に必要。困ったときはいつでも相談してください。