税務調査の全体像と対策ロードマップ

みなさんこんにちは、税理士の岩本隆一です。無申告や税務調査を多く取り扱っている税理士事務所を営んでいます。(いつでもお問い合わせください!!
税務調査。
この言葉を聞いただけで身構えてしまう経営者や個人事業主は多いのではないでしょうか。
「何か悪いことをした覚えはないのに…」 「追徴課税されたらどうしよう…」 「日常業務に支障が出るのでは…」
そんな不安が頭をよぎりますよね。でも、ちょっと待ってください。
税務調査は、適切な準備と対応さえあれば、そこまで恐れるものではありません。
私は税理士として数多くの税務調査に立ち会ってきましたが、多くの場合、普段から適切な経理処理と書類管理を行っていれば、大きな問題に発展することはほとんどないのです。
今回は、税務調査の「何が起こるのか」から「どう備えるべきか」まで、実務家としての私の経験をもとに、シンプルかつ実践的な知識をお伝えします。
税務調査とは何か?本当のところ
税務調査とは、簡単に言えば「申告内容が正しいかを確認する手続き」です。
日本の税制は「申告納税制度」が基本。つまり、皆さん自身が計算して申告する仕組みなので、その正確性を検証するプロセスが必要なんです。
調査と言っても様々なパターンがあります:
- 任意調査:最も一般的な形式で、事前通知があります(実は「任意」と名付けられてはいるものの、拒否すると罰則があるので実質的には任意ではない)
- 強制調査:いわゆる「マルサ」による調査。重大な脱税の疑いがある場合のみ
- 机上調査:書類だけで完結する軽めの調査
- 反面調査:あなたの取引先に対して行われる調査
なぜ自分が調査対象に?選ばれる理由
ランダムで選ばれると思っている人も多いですが、実はそうではありません。
税務署は「KSKシステム」という巨大なデータベースを駆使して、以下のような要素を分析しています:
- 急な業績変動:売上が急増したのに利益が伸びていない
- 業界平均との乖離:同業他社よりも極端に利益率が低い
- 継続的な微妙な赤字:何年も少額の赤字が続いている
- 現金商売:飲食店や小売業など、売上をごまかしやすい業種
- 消費税の還付申告:多額の消費税還付を受けている
- 過去の調査での指摘:前回の調査で問題があった
ちなみに「赤字だから調査は来ない」というのは完全な誤解です。赤字企業も普通に調査対象になります。
税務調査の流れ:何が起こるのか
実際の調査は、通常こんな流れで進みます:
- 事前通知:調査の1〜3週間前に電話がきます
- 調査当日:午前中は概要説明、午後から本格的な書類確認
- 指摘事項の説明:問題点があれば説明されます
- 是認or修正申告の勧奨:問題なければ「是認通知」、あれば修正申告を勧められます
調査は通常1〜3日程度。複雑な案件だとそれ以上かかることもあります。
調査官が狙うポイント:ここを見られる!
調査官は経験則から、問題が見つかりやすいポイントを重点的に見ます:
- 売上関係
- 売上の計上漏れ(特に現金取引)
- 売上計上時期のズレ(決算対策の疑い)
- 経費関係
- 私的経費の混入(接待交際費、旅費交通費)
- 交際費と会議費の区分(間違いやすい!)
- 修繕費と資本的支出の区分(同上!)
- その他
- 在庫の過大評価/過小評価
- 役員給与の不相当な金額
- 電子帳簿保存法への対応状況
ちなみに、最近特に注目されているのが「電子取引データの電子保存義務」です。メールの請求書やWebからダウンロードした領収書は、紙ではなく電子データで保存する必要があります。これ、意外と多くの企業が対応できていません。
税務調査対策:事前にやるべきこと
調査対策は、日常の心がけが9割です:
- 正確な記帳:取引はリアルタイムで、漏れなく記録する
- 証憑書類の整理:請求書や領収書を体系的に整理・保存する
- 電子データの適切な保存:電子帳簿保存法に準拠した保存を徹底する
- グレーゾーンの積極的な確認:判断に迷う処理は事前に税理士に相談する
- 内部統制の確立:経費精算ルールを明確にし、徹底する
調査当日の心構え:これだけは押さえよう
調査当日は、以下のポイントを意識するだけで大きく違います:
- 冷静に、誠実に:感情的にならず、正直に対応する
- 聞かれたことだけに答える:余計な情報は自ら提供しない
- 曖昧なことは「確認します」:不確かなことを即答しない
- 税理士を活用する:専門的な質問は税理士に任せる
- メモを取る:どんな質問があり、何を提出したかを記録する
追徴課税のリスク:ペナルティの種類と対応
調査で問題が見つかると、追加の税金と共にペナルティが課されることも:
- 過少申告加算税:10%(50万円超の部分は15%)
- 無申告加算税:15%(50万円超は20%)
- 重加算税:悪質な場合の重いペナルティ(35〜50%)
- 延滞税:支払いが遅れた場合の利息相当額
ただし、調査の事前通知前に自主的に修正申告すれば、加算税は課されません。調査が始まった後でも、指摘される前に自主的に修正すれば、加算税が軽減されます。
税理士の活用:いつ、どう依頼するか
「顧問税理士がいれば安心」とは限りません。税務調査に強い税理士かどうかが重要です。
税理士の役割:
- 事前の準備サポート
- 当日の立会い・交渉
- 指摘事項への専門的対応
- 修正申告の検討と実行
特に「書面添付制度」を活用している税理士なら、調査自体が回避・縮小される可能性も高まります。
調査の結果に納得できない場合:不服申立ての方法
税務署の判断に納得できない場合、以下の手順で不服を申し立てることができます:
- 再調査の請求:処分から3ヶ月以内に税務署へ
- 審査請求:国税不服審判所への申立て
- 訴訟:裁判所への提訴
ただし、勝訴率は正直に言って低め。確固たる証拠と法的根拠が必要です。
まとめ:税務調査は備えあれば憂いなし
税務調査は決して「運が悪かった」で片付けるものではありません。日頃の正確な記帳と適切な経理処理、そして書類管理が最大の防御策です。
特に最近の傾向として:
- 電子帳簿保存法への対応がますます重要に
- キャッシュレス決済の記録が重視される
- SNSや口コミサイトの情報も調査の参考にされる
税務調査は「対策」より「予防」が重要。日常の正確な処理こそが、調査官の心証を良くし、スムーズな調査につながります。
当事務所ではいつでも税務調査に関するご相談を承っております。事前の対策から調査当日の立会い、修正申告の検討まで、トータルでサポートいたします。「調査の通知が来た」「日頃の経理に不安がある」などございましたら、お気軽にご連絡ください。初回相談は無料です!
「備えあれば憂いなし」。これこそが税務調査との向き合い方です。
参考ページ
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