建設業の税務調査で確認されやすい点|外注費と給与の区分・工事の計上時期・準備資料
更新日:2026年11月6日
建設業の税務調査では、外注費と給与の区分、工事の売上を計上する時期、現場の実態と帳簿の一致などが確認されやすくなります。いずれも、日々の契約書・請求書・工事台帳がそろっていれば説明しやすい項目です。
この記事では、工務店・建設会社や一人親方に仕事を依頼している事業者の方に向けて、国税庁の通達・公表資料をもとに確認ポイントと準備資料を整理します。特定の調査事例や当事務所の相談実績を紹介するものではありません。計上時期の説明には、わかりやすさのための仮定例を使います。
税務の説明は、2026年11月6日に確認した国税庁等の公表資料に基づきます。過去の年分を見直す場合は、その年分に適用される制度を確認してください。
建設業の税務調査で確認されやすい4つのポイント
建設業は、工事ごとに取引先・外注先・材料が変わり、工期が決算期をまたぐことも珍しくありません。そのため、次の4点について、帳簿と契約書・現場の記録が一致しているかを確認されることがあります。
- 外注費と給与の区分:源泉徴収と消費税の扱いが変わります。
- 工事の売上計上時期:決算日前後に完成・引渡しをした工事の扱い。
- 材料費・外注費の裏付け:発注・納品・請求と、工事台帳・現場の記録との一致。
- 契約書と印紙税:工事請負契約書や注文請書の作成・保存。
業種別の調査統計については、税務調査の業種別リスク|国税庁統計と経理の確認点でまとめています。
外注費か給与かは、契約書の名称ではなく実態で判断する
大工・左官・とび職などへの支払は、請負契約またはこれに準ずる契約に基づく対価であれば事業所得(支払側では外注費)、雇用契約またはこれに準ずる契約に基づく対価であれば給与所得になります。「外注」「請負」という名称の契約書があるかどうかだけでは決まりません。
どちらか明らかでない場合は、次の事項を総合的に勘案して判定します。根拠は国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」です。消費税でも、消費税法基本通達1-1-1で同様の判定要素が示されています。
国税庁の通達で示された判定要素を、どちらに傾きやすい事情かで整理した図です。1つの事情だけで決まるのではなく、全体を総合して判断します。
- 本人の代わりに他人が作業することが認められない
- 作業時間を指定され、時間単位で報酬を計算する
- 作業の具体的な内容・方法について指揮監督を受ける
- 引渡し前の完成品が不可抗力で滅失しても、作業した分の報酬を請求できる
- 材料や用具を支払者から提供されている
- 他人に代わって作業してもらうことができる
- 作業時間の拘束を受けない
- 作業の進め方を自分の判断で決める
- 完成品を引き渡すまで報酬を請求できない
- 材料や用具を自分で用意している
給与と判断された場合に見直しが必要になるもの
- 給与としての源泉徴収・納付(原則、支払った月の翌月10日まで)
- 消費税の仕入税額控除(給与等の支払は課税仕入れに当たらない)
- 状況に応じて、不納付加算税・延滞税など
給与と判断されると、源泉徴収と消費税の両方に影響する
外注費として処理していた支払が給与と判断されると、支払者は給与として源泉徴収をする必要があったことになります。源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します(国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」)。
消費税では、給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れに当たりません。外注費として仕入税額控除をしていた場合は、その控除が認められなくなります。源泉所得税の調査で確認される点は、源泉所得税の税務調査に備えるには?もあわせてご覧ください。
外注として依頼するなら、実態を示す書類をそろえる
- 工事ごとの請負契約書・注文書(請負の範囲、金額、工期)
- 外注先からの請求書(日付・工事名・内容がわかるもの)
- 材料・工具をどちらが負担するかの取決め
- 作業日報や現場ごとの出面(でづら)表など、作業の実態がわかる記録
書類を整えても、実態が雇用に近ければ給与と判断されることがあります。書類を後から作り直すのではなく、実態に合った契約形態と処理を選ぶことが大切です。
免税事業者の一人親方への外注費とインボイス
外注先が適格請求書発行事業者でない場合、仕入税額控除は経過措置の範囲に限られます。令和8年度税制改正による見直し後は、2026年10月1日以後の課税仕入れについて、仕入税額相当額の70%を控除できる期間(2年間)とされています。その後の割合や、経過措置を受けるための帳簿の記載などは、国税庁「インボイス制度開始後の見直し等」で確認してください。
工事の売上は、請求日や入金日ではなく「引渡しの日」で計上する
法人が請け負った工事のうち、目的物の引渡しを要するものは、原則として引渡しの日の属する事業年度の収益になります(法人税基本通達2-1-21の7)。個人事業者も、物の引渡しを要する請負の収入は、原則として目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日の年分の収入です(所得税基本通達36-8(4))。
建設工事の「引渡しの日」は、作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方が使用収益できることとなった日など、工事の種類・性質や契約内容に応じて合理的と認められる日のうち、継続して採用している日によります(同通達2-1-21の8)。
計上時期の考え方を示す仮定例です。3月31日決算の法人が、作業を結了した日を引渡しの日として継続適用している場合。実際の調査事例ではありません。
この工事の売上は、3月期(当期)に計上します。
- 請求書の発行や入金が翌期でも、計上時期は変わりません。
- 期末時点で未完成の工事にかかった材料費・外注費などは、未成工事支出金として翌期以降に繰り越します。
期末の直前に完成した工事の請求が翌期になる、追加工事の精算が遅れる、といった場合に計上漏れが起きやすくなります。決算前に、未請求の完成工事がないか確認しておきましょう。
材料費・外注費は、現場の記録と結びつけて説明できるようにする
材料費や外注費は、どの工事のために、いつ、どれだけ発生したかを説明できることが大切です。請求書があっても、工事台帳や現場の記録と結びつかないと、内容の確認に時間がかかります。
- 工事台帳で、工事ごとに売上・材料費・外注費・労務費を集計する
- 発注書(注文書)・納品書・請求書をそろえ、工事名で紐づける
- 期末に残っている材料は、棚卸の記録を残す
- 現金で支払う場合は領収書を受け取り、現金出納帳に日々記録する
実在しない取引の計上や、事実と異なる請求書の作成は、隠蔽・仮装に当たれば重加算税の対象となり得ます。誤りに気づいた場合は、事実に基づいて修正する方向で相談してください。
工事請負契約書には印紙が必要になる
建設工事の請負に関する契約書は印紙税の第2号文書に当たります。注文請書など、契約の成立を証明する目的で作成する文書も課税文書となる場合があります(国税庁「No.7102 請負に関する契約書」)。
2014年4月1日から2027年3月31日までに作成される建設工事の請負契約書で、記載金額が100万円を超えるものは、税率の軽減措置があります。主な金額は次のとおりです(国税庁「No.7108」)。
- 100万円超200万円以下:200円
- 200万円超300万円以下:500円
- 300万円超500万円以下:1千円
- 500万円超1千万円以下:5千円
- 1千万円超5千万円以下:1万円
印紙の貼り忘れや消印漏れの扱いは、印紙税の税務調査で確認したいことで解説しています。
税務調査の前に準備しておきたい資料
- 総勘定元帳・仕訳帳、決算書、申告書の控え
- 工事台帳、工事ごとの契約書・注文書・注文請書
- 完成・引渡しを確認できる書類(完了報告書、検収書、引渡書など)
- 外注先との契約書・請求書、作業日報・出面表
- 材料の発注書・納品書・請求書、期末の棚卸表
- 給与台帳、源泉徴収簿、源泉所得税の納付書の控え
- 現金出納帳、預金通帳、領収書
帳簿や書類の保存期間は、帳簿・領収書は何年保存する?で確認できます。調査全体の準備は税務調査の事前準備チェックリストも参考にしてください。
調査の連絡を受けたとき・誤りに気づいたとき
事前通知では、原則として調査の開始日時・場所、対象となる税目・期間などが伝えられます。日程の都合がつかない場合は、調整を相談できます。手続の詳細は国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」に掲載されています。
調査の結果、誤りを指摘されて修正申告を勧められた場合、応じるかどうかは納税者の判断です。指摘内容に納得できないときの対応は、税務調査の結果に納得できないときは?で整理しています。申告誤りに自分で気づいた場合は、調査の通知を受ける前に修正申告をすることで、加算税の扱いが変わることがあります。
まとめ:契約・工事台帳・現場の記録をつなげておく
- 外注費か給与かは、契約書の名称ではなく、代替性・拘束・指揮監督・材料や用具の提供などの実態で判断します。
- 給与と判断されると、源泉徴収と消費税の仕入税額控除の両方に影響します。
- 工事の売上は、請求日や入金日ではなく、原則として継続して採用している引渡しの日で計上します(長期大規模工事は工事進行基準)。
- 材料費・外注費は工事台帳と現場の記録で説明できるようにし、工事請負契約書の印紙も確認します。
この記事は一般的な情報であり、個別の取引の判定を確定するものではありません。外注先との契約形態や過去の処理に不安がある場合は、契約書・請求書・工事台帳をそろえて税理士に相談してください。
当事務所の対応内容は、税務調査サポートのご案内をご覧ください。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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