社会福祉法人・介護事業の消費税|非課税の介護サービスと課税収入の区分、特定収入による調整

社会福祉法人・介護事業の消費税|非課税の介護サービスと課税収入の区分、特定収入による調整

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「介護サービスは消費税が非課税だから、うちの法人は消費税と無縁です」――社会福祉法人や介護事業所の経理担当の方からよく聞く言葉ですが、実際に帳簿を拝見すると、課税になる収入が混ざっていたり、補助金を受け取っているのに「特定収入」の調整を知らなかったり、ということがよくあります。介護保険サービスや社会福祉事業そのものは確かに非課税ですが、法人の収入すべてが非課税というわけではありません。

この記事では、社会福祉法人と介護事業(株式会社・NPO法人などが運営する事業所を含む)の消費税について、非課税になる収入と課税になる収入の区分、納税義務とインボイス登録の判断、補助金・寄附金がある場合の「特定収入」による仕入控除税額の調整、課税売上割合の考え方、帳簿の課税区分の付け方を整理します。本記事は2026年11月6日時点の消費税法・同施行令・消費税法基本通達・国税庁タックスアンサーに基づいています。

「介護は非課税」の正しい意味

消費税法第6条と別表第二第7号は、次の取引を非課税と定めています。

  • イ:介護保険法に基づくサービス:居宅サービス(訪問介護・通所介護・短期入所など)、施設サービス(特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護医療院)、地域密着型サービス、居宅介護支援、介護予防サービスなど、介護保険法の規定に基づいて提供される指定サービスです(消費税法施行令第14条の2)。
  • ロ:社会福祉事業・更生保護事業:社会福祉法第2条に定める第一種・第二種社会福祉事業(障害福祉サービス、保育所、児童養護施設、養護老人ホーム、生活困窮者支援など)として行われる資産の譲渡等です(同施行令第14条の3)。

ポイントは3つあります。第一に、非課税かどうかは「サービスの種類」で決まり、運営主体の法人格(社会福祉法人・株式会社・NPO法人)は関係ありません。第二に、保険給付の対象かどうかではなく「介護保険法に基づく指定サービスかどうか」で判断するので、利用者の自己負担分(1〜3割)や、支給限度額を超えて利用者が全額負担する分も、指定サービスである限り非課税です(消費税法基本通達6-7-2)。第三に、「非課税」と「不課税」は別物です。補助金・寄附金・会費・交付金は対価性がないため「不課税」であり、非課税売上とは区別して管理する必要があります(この区別が、後述する特定収入の調整に関係します)。

非課税になる収入・課税になる収入の一覧

実務でよく出てくる収入を、課税区分ごとに整理します。

  • 非課税になるもの:介護保険の指定サービスの報酬(国保連からの入金と利用者負担)、支給限度額超過分の利用者負担、介護保険施設(特養など)の食費・居住費、通所・短期入所の食材料費やおむつ代などの日常生活費、障害福祉サービスの給付費と利用者負担、保育・児童福祉などの社会福祉事業の収入、身体障害者用物品の譲渡・貸付け、グループホームや施設の「住宅の貸付け」に当たる家賃(住宅家賃は別表第二第13号で非課税)。
  • 課税になるもの:利用者の選定による特別な居室・特別な食事、通常の実施地域外の送迎費用、介護保険の対象外の自費サービス(保険外の家事支援・見守り・外出同行など)、日用品・飲料の販売や自動販売機収入、福祉用具の貸与・販売(身体障害者用物品を除く)、住宅改修、有料老人ホーム(特定施設)が提供する食事、就労支援事業の製品販売や受託作業の売上(社会福祉事業として行われるものでも、生産活動の売上は課税)、テナント・駐車場収入、職員向けの給食・物品の提供、市町村などからの受託事業のうち社会福祉事業に当たらないもの、研修やセミナーの受講料。
  • 不課税のもの:補助金・交付金、寄附金、会費、保険金、損害賠償金など、対価性のない収入。

判定で迷いやすいのは、「介護保険の利用者に提供しているが、介護保険法に基づくサービスではないもの」です。保険外サービスは、同じ利用者に同じ職員が提供していても課税です。また「日常生活費」の範囲は、介護保険の運営基準で利用者から徴収できると定められている費用(食材料費、おむつ代、理美容代など)に限られ、それを超えて事業所が独自に設定した料金は課税と考えるのが安全です。

納税義務の判定とインボイス登録の要否

消費税の納税義務は、基準期間(原則として前々事業年度)の「課税売上高」が1,000万円を超えるかどうかで判定します。非課税売上は含めません。介護保険の報酬が数億円あっても、課税売上(自費サービス・物販・テナントなど)が年間1,000万円以下であれば、原則として免税事業者です。逆に、物販やテナント収入、保険外サービスを拡大して課税売上が1,000万円を超えると、翌々年度から課税事業者になります。特定期間(前事業年度の上半期)の課税売上高と給与の両方が1,000万円を超える場合も課税事業者になる点に注意してください。

インボイス(適格請求書発行事業者)の登録については、介護サービスの利用者は消費者であり、インボイスを必要としないため、介護保険サービスだけを行っている法人が登録する必要性は低いといえます。登録を検討する必要があるのは、テナントを事業者に貸している、企業や自治体から課税対象の受託事業を請け負っている、職員向けではなく事業者向けに物品を販売している、といった「相手が仕入税額控除を受けたい事業者」である取引がある場合です。免税事業者が登録して課税事業者になると、売上税額の2割だけを納める2割特例(2026年9月30日の属する課税期間まで)や、その後の3割特例の適用可否が論点になります。詳しくは「3割特例とは?いつまで使える?」で解説しています。

補助金・寄附金がある法人の「特定収入」による調整

社会福祉法人の消費税で最も見落とされやすいのが「特定収入」の調整です(消費税法第60条第4項、国税庁タックスアンサーNo.6495)。

通常の事業者は、課税仕入れにかかった消費税を売上の消費税から控除(仕入税額控除)できます。しかし、国・地方公共団体や公益法人等(社会福祉法人・NPO法人など)が、補助金や寄附金など「対価性のない収入」で課税仕入れをまかなっている場合、その部分の仕入税額を控除すると、消費税を負担していないのに還付を受ける結果になります。そこで、一般課税(本則課税)を適用する公益法人等は、特定収入割合が5%を超える場合に、特定収入でまかなわれた課税仕入れに係る消費税額を仕入控除税額から差し引く調整を行います。

特定収入による調整の判定

補助金や寄附金などで課税仕入れをまかなっている公益法人等に必要な調整です。

一般課税かを確認簡易課税を選択している場合は、特定収入割合にかかわらず調整は不要です。
特定収入を集計する補助金・交付金・寄附金・会費など対価性のない収入のうち、使途が課税仕入れ以外に限定されていないものを集計します。
特定収入割合を計算特定収入の合計額を、税抜課税売上高・免税売上高・非課税売上高・国外売上高・特定収入の合計額で割ります。
5%を超えたら調整特定収入でまかなわれた課税仕入れに係る消費税額を、仕入控除税額から差し引きます。
補助金ごとに交付要綱や実績報告書を保存し、使途を記録しておくことが前提になります。
出典:消費税法第60条第4項、国税庁 No.6495。本文の説明を図にまとめたものです。
  • 特定収入に当たるもの:補助金、交付金、寄附金、会費、負担金、他会計からの繰入金など、対価性のない収入のうち、使途が課税仕入れ以外(人件費や非課税仕入れ)に限定されていないもの。
  • 特定収入に当たらないもの:借入金の収入、出資金、預り金、貸付金の回収、そして交付要綱などで「人件費にのみ充てる」など特定支出(課税仕入れ以外の支出)にのみ使うことが定められている補助金。
  • 特定収入割合:特定収入の合計額÷(税抜課税売上高+免税売上高+非課税売上高+国外売上高+特定収入の合計額)で計算し、5%を超えると調整が必要です。
  • 簡易課税を選択している場合:特定収入割合にかかわらず調整は不要です。

たとえば、施設整備の補助金で建物や設備(課税仕入れ)を取得した年度に一般課税で申告すると、補助金に対応する部分の消費税は控除できません。補助金の交付要綱を確認し、「使途が特定されているか」「課税仕入れに充てられるか」を補助金ごとに記録しておくことが、この調整を正しく行う前提になります。

国税庁の質疑応答事例:補助金の使途を実績報告書で区分した例

国税庁の質疑応答事例「公益法人等における補助金等の使途の特定方法」は、地方公共団体から人件費などの経常経費に充てる補助金を受けている公益法人等の照会です。交付要綱では人件費に充てる部分が明らかでなかったものの、実績報告書には費目別の執行実績が記載されていました。

国税庁は、交付要綱等には実績報告書などの附属書類も含まれるため、実績報告書で使途が明らかにされている金額により、特定収入とそれ以外の収入に区分して差し支えないと回答しています。使途を明らかにする文書がない場合は、使途不特定の特定収入になるとされています。

補助金ごとに、交付要綱や交付決定通知だけでなく実績報告書の控えも保存しておきましょう。

出典:国税庁 質疑応答事例「公益法人等における補助金等の使途の特定方法」

課税売上割合と仕入税額控除の限界

社会福祉法人や介護事業所は非課税売上が大半を占めるため、「課税売上割合」(課税売上÷総売上)が低くなります。課税売上割合が95%未満の場合、課税仕入れの消費税を全額控除することはできず、「個別対応方式」(課税売上対応・非課税売上対応・共通対応に区分し、課税売上対応分と共通対応分×課税売上割合を控除)か「一括比例配分方式」(課税仕入れ全体×課税売上割合を控除)で計算します。介護用のベッドや送迎車両の購入は非課税売上対応の仕入れになるため、消費税を払っても控除できません。

課税売上が5,000万円以下であれば簡易課税を選択でき、課税売上にみなし仕入率(物販は第2種70%、保険外サービス・受託は第5種50%、テナント貸付は第6種40%)を掛けて仕入税額を計算します。特定収入の調整も不要になるため、課税売上の規模が小さい法人では簡易課税が有利になることが多いですが、大きな設備投資を予定している年度は一般課税の方が有利な場合もあります。簡易課税の選択届出は適用を受けたい課税期間の開始前に提出する必要があるので、翌期の投資計画を踏まえて判断します。

帳簿の課税区分の付け方と年1回の見直し

  • 収入科目ごとに課税区分を固定する:介護保険収益・利用者負担金収益は非課税、自費サービス収益・物販収益・テナント収益は課税、補助金・寄附金は不課税、というように会計ソフトの科目設定で区分を決めておきます。同じ科目に課税と非課税が混ざらないよう、科目を分けます。
  • 新しいサービスを始めるときに判定する:保険外サービス、物販、貸付けなどを始める前に、課税か非課税かを確認し、料金表と契約書にも反映します。
  • 支出側も区分する:課税仕入れ(消耗品・委託費・修繕費・設備)と、不課税・非課税の支出(給与・社会保険料・保険料・土地)を分け、一般課税の場合は課税売上対応・非課税売上対応・共通対応の区分も付けます。
  • 補助金ごとに使途を記録する:交付要綱・交付決定通知を保管し、何に使ったか(課税仕入れか人件費か)を補助金単位で記録します。
  • 決算前に1年分を見直す:課税売上高が1,000万円を超えていないか、特定収入割合が5%を超えていないか、簡易課税の選択・不適用の届出が必要かを、決算の2〜3か月前に確認します。

当事務所では、横浜市内の社会福祉法人・介護事業所を中心に、収入ごとの課税区分の整理、納税義務とインボイス登録の判断、特定収入の調整を含む消費税申告、簡易課税と一般課税の有利判定、freeeやマネーフォワードでの課税区分設定までサポートしています。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。介護事業所の経理全般のつまずきは「介護事業所の経理でつまずく5つのポイント」、法人税の収益事業の判定は「社会福祉法人に法人税はかかる?」で解説しています。

まとめ:消費税は「サービスの種類」で区分し、「補助金」で調整する

介護保険サービスと社会福祉事業は非課税ですが、保険外サービス・物販・有料老人ホームの食事・就労支援の製品販売・テナント収入などは課税です。納税義務は課税売上だけで判定し、インボイス登録は取引相手が事業者かどうかで判断します。補助金・寄附金を受けている法人が一般課税で申告する場合は、特定収入割合が5%を超えると仕入控除税額の調整が必要です。年に1度、収入と補助金の一覧を課税区分ごとに見直す習慣をつけておけば、申告漏れも控除の計算誤りも防げます。

「社会福祉法人・介護事業の消費税」まとめ

  • 介護保険の指定サービス(利用者負担・限度額超過分を含む)と社会福祉事業は非課税。法人格は関係ない
  • 保険外サービス、物販・自販機、福祉用具貸与・販売、特別な居室・食事、有料老人ホームの食事、就労支援の製品販売、テナント・駐車場、受託事業などは課税
  • 補助金・寄附金・会費は不課税。非課税とは区別して管理する
  • 納税義務は基準期間の課税売上高1,000万円で判定。インボイス登録は取引相手が事業者かどうかで判断
  • 一般課税の公益法人等は、特定収入割合が5%超なら仕入控除税額の調整が必要。簡易課税なら不要
  • 課税売上割合が低いため、設備投資の消費税は控除できないことが多い。簡易課税との有利判定を毎年行う

「社会福祉法人・介護事業の消費税」に関するよくある質問

A.共同生活援助(グループホーム)の訓練等給付費と利用者負担は、障害福祉サービスとして非課税です。利用者から受け取る家賃は「住宅の貸付け」に当たるため非課税(別表第二第13号)、食材料費や光熱水費などの実費は、運営基準で利用者から受領できると定められた日常生活費に当たる範囲であれば非課税として扱われます。一方、事業所が独自に設定した有料のオプションサービス(外出支援・特別な食事など)は課税です。家賃・食費・日常生活費・オプションを科目で分けて記帳しておくと、判定と申告が楽になります。

A.2つの理由で、控除できないことがほとんどです。第一に、送迎車両は非課税の介護サービスに使う資産なので、個別対応方式では「非課税売上対応」の課税仕入れとなり控除の対象外です。一括比例配分方式でも、課税売上割合が低ければ控除額はわずかです。第二に、一般課税で特定収入割合が5%を超える場合は、補助金でまかなわれた部分の消費税額が仕入控除税額から差し引かれます。「補助金で買ったものの消費税は戻ってくる」という期待は、社会福祉法人ではほぼ成り立たないと考えておいてください。

A.その企業との取引が課税取引(施設の一部の貸付け、受託事業、物品の販売など)であれば、相手は仕入税額控除のために登録番号を求めています。登録しなければ取引を見直されるおそれがある一方、登録すると免税事業者でも課税事業者になり、消費税の申告・納税が必要になります。判断の軸は、①その課税取引の規模と今後の見込み、②登録した場合の納税額(2割特例・3割特例・簡易課税の適用可否)、③登録しない場合に相手が受ける影響(経過措置により相手は一定割合を控除可能)、の3つです。介護保険サービスだけを行っている法人であれば、登録しないという選択も十分に合理的です。

社会福祉法人・介護事業の消費税は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「課税と非課税の区分が合っているか確認したい」「補助金があるときの消費税の申告が分からない」「インボイス登録や簡易課税の判断をしたい」など、社会福祉法人・介護事業の会計・税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の法人・事業所を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
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