株式会社・NPO・一般社団法人で介護事業を運営する場合の税務|社会福祉法人との違いと注意点

株式会社・NPO・一般社団法人で介護事業を運営する場合の税務|社会福祉法人との違いと注意点

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「NPO法人なら介護事業の法人税はかからないと聞いたが本当か」「一般社団法人の非営利型にすれば税金が有利になるのか」「株式会社で介護事業をしているが、社会福祉法人との税金の差はどれくらいあるのか」――介護事業や障害福祉サービスの運営母体は、社会福祉法人のほか、株式会社・合同会社、NPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人とさまざまです。介護保険の指定は法人格を問わず受けられますが、法人税・住民税・固定資産税などの扱いは法人形態によって大きく異なり、「非営利法人だから税金がかからない」という思い込みが申告漏れにつながるケースも少なくありません。

この記事では、介護事業を運営する4つの法人形態(社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人・株式会社等)について、法人税の課税範囲と税率、地方税・固定資産税、消費税、利益の分配と資金調達、会計基準と報告義務の違いを整理し、形態を選ぶ・切り替える際の考え方をまとめます。本記事は2026年11月6日時点の法令に基づいています。

介護事業を運営できる法人形態と、形態によって運営できないサービス

訪問介護、通所介護、居宅介護支援、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、有料老人ホーム(特定施設)、障害福祉の就労継続支援や共同生活援助などは、法人格があれば原則としてどの法人形態でも指定を受けられます。一方、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は老人福祉法により社会福祉法人や地方公共団体などに限られ、障害者支援施設も同様に設置主体が限定されています。「どのサービスをやりたいか」が、法人形態の選択肢を最初に絞ります。

法人税の違い|「収益事業かどうか」の判定が法人形態で変わる

最も差が出るのが法人税です。ポイントは、介護事業(医療保健業)が法人税のかかる「収益事業」に当たるかどうかが、法人形態によって変わることです。

法人形態別・介護事業の法人税

介護事業(医療保健業)が収益事業に当たるかどうかは、法人形態によって変わります。

1
社会福祉法人:かからない介護保険事業や障害福祉サービスは収益事業から除外されているため、介護事業の利益に法人税はかかりません。
2
NPO法人:かかる収益事業のみ課税ですが、介護事業は医療保健業として収益事業に当たり、除外の規定もないため課税されます。
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非営利型一般社団:かかる収益事業のみ課税ですが、介護事業は医療保健業として課税対象です。要件を欠くと全所得課税に切り替わります。
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株式会社・普通型:全所得株式会社・合同会社・普通型の一般社団法人は、介護事業を含むすべての所得に法人税がかかります。
介護事業の利益に法人税がかからないのは社会福祉法人だけです。
出典:法人税法施行令5条、国税庁 質疑応答事例「NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について」。本文の説明を図にまとめたものです。
  • 社会福祉法人:法人税は収益事業(34業種)から生じた所得にのみ課税されます。介護保険事業や障害福祉サービスは業種としては医療保健業に当たりますが、社会福祉法人が行うものは法人税法施行令で収益事業から除外されているため、介護事業の利益に法人税はかかりません。収益事業(駐車場貸付、物品販売など)がある場合の税率は19%(年800万円以下の部分は15%)で、収益事業の利益を社会福祉事業に使った分はみなし寄附金として一定額(所得の50%または200万円の大きい方)まで損金になります(詳しくは「社会福祉法人に法人税はかかる?」)。
  • NPO法人(特定非営利活動法人):法人税法上は公益法人等とみなされ、収益事業にのみ課税されます。しかし、介護保険事業・障害福祉サービスは医療保健業(または請負業)として収益事業に該当し、社会福祉法人のような除外規定はありません。したがって、NPO法人が行う介護事業の利益には法人税がかかります。税率は普通法人と同じ23.2%(年800万円以下は15%)で、みなし寄附金の制度も使えません(認定NPO法人には別の優遇があります)。
  • 一般社団法人(非営利型):剰余金の分配をしない、解散時の残余財産を国や公益法人等に帰属させる、理事の親族等が3分の1以下といった要件を満たす非営利型は、公益法人等として収益事業のみ課税です。ただしNPO法人と同様、介護事業は医療保健業として課税対象で、税率は23.2%(年800万円以下は15%)です。要件を一つでも欠くと普通法人として全所得課税に切り替わり、その時点までの累積所得に課税される点にも注意が必要です。
  • 一般社団法人(普通型)・株式会社・合同会社:すべての所得に法人税がかかります。税率は23.2%(資本金1億円以下の中小法人は年800万円以下の部分が15%)です。役員報酬は定期同額給与などの要件を満たした分だけが損金になります。

つまり、介護事業の利益について法人税がかからないのは社会福祉法人だけで、NPO法人や非営利型一般社団法人であっても介護事業の利益には法人税がかかります。「非営利だから申告不要」と考えて申告していなかった場合、無申告加算税や延滞税の対象になります。

国税庁の質疑応答事例:NPO法人が行う障害福祉サービス

国税庁の質疑応答事例には、NPO法人が障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを法人本来の目的として行う場合に、法人税の納税義務はないと考えてよいか、という照会が載っています。

回答は「原則として収益事業に該当し、法人税の納税義務がある」というものです。本来の目的の事業かどうかや非営利かどうかでは判断せず、障害福祉サービスは原則として医療保健業に、医療や保健の要素がないサービスでも利用契約に基づいて対価を受けるため請負業に当たるとされています。ただし、実費弁償方式で税務署長の確認を受けた場合や、従事者の半数以上が障害者等でその生活の保護に寄与している場合は、収益事業に含まれないとされています。

出典:国税庁 質疑応答事例「NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について」

法人住民税・事業税・固定資産税などの地方税の違い

  • 法人住民税(均等割):社会福祉法人は、収益事業を行っていなければ均等割が非課税です。NPO法人・一般社団法人・株式会社は原則として均等割(最低でも年7万円程度)がかかります。NPO法人は収益事業を行わない場合に条例で減免を受けられる自治体が多いものの、介護事業は収益事業なので減免の対象外になるのが一般的です。
  • 法人住民税(法人税割)・法人事業税:法人税の課税所得に連動するため、介護事業の利益に法人税がかかるNPO法人・一般社団法人・株式会社には法人税割と事業税がかかります。
  • 固定資産税・不動産取得税:社会福祉法人が社会福祉事業に使う土地・建物は非課税です。株式会社・NPO法人・一般社団法人が介護事業に使う不動産は、同じ用途でも原則として課税されます。施設を自己所有する場合、この差は毎年の固定費として大きく影響します。
  • 登録免許税:社会福祉法人が社会福祉事業用の不動産を取得する際の登記は非課税ですが、他の法人形態では課税されます。

消費税|法人形態で変わらない部分と変わる部分

消費税の非課税の範囲は、法人形態によって変わりません。介護保険の居宅サービス・施設サービス、障害福祉サービスは、株式会社が行っても社会福祉法人が行っても非課税です。逆に、介護保険の対象外の自費サービス(保険外の家事援助、送迎、有料老人ホームの食費など)、特定福祉用具の販売、住宅改修、物品販売などは、どの法人形態でも課税売上になります(区分の詳細は「社会福祉法人・介護事業の消費税」)。

法人形態で変わるのは、補助金などの「特定収入」による仕入税額控除の調整です。この調整は、社会福祉法人・NPO法人・非営利型一般社団法人など消費税法で定められた法人に適用され、株式会社や普通型一般社団法人には適用されません。補助金を多く受ける法人が課税事業者になる場合は、法人形態によって納税額の計算が変わる点を押さえておきましょう。なお、どの法人形態でも、課税事業者かどうかは課税売上高(非課税の介護報酬を除く)で判定し、課税売上割合が低い介護事業では、課税仕入れのうち控除できる税額が限られる点は共通です。

利益の分配・資金調達・事業承継の違い

  • 利益の分配:株式会社・合同会社は株主・社員に配当できます。社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人は剰余金を分配できず、利益は法人内で事業に再投資します。社会福祉法人はさらに、余剰財産(社会福祉充実残額)があれば計画を立てて地域に還元する義務があります(「社会福祉充実残額の計算と社会福祉充実計画」)。
  • 資金調達:株式会社は出資(増資)と融資の両方が使え、事業の売却(M&A)も可能です。社会福祉法人は出資の概念がなく、補助金・融資(独立行政法人福祉医療機構など)・寄附が中心で、施設整備の補助金は社会福祉法人に手厚い傾向があります。NPO法人・一般社団法人は融資と寄附・会費が中心で、金融機関の評価は事業の収益性に左右されます。
  • 寄附の受けやすさ:社会福祉法人への寄附は、寄附者側で特定公益増進法人への寄附として優遇されます。NPO法人は認定NPO法人になれば寄附者の優遇が受けられますが、一般のNPO法人・一般社団法人・株式会社への寄附には同様の優遇はありません。
  • 事業承継・相続:株式会社は株式が相続財産となり、介護事業の業績が良いほど株式の評価額(相続税)が大きくなります。社会福祉法人・NPO法人には持分がないため相続税の問題は生じません。一般社団法人も持分はありませんが、理事の過半数を親族で占めているような法人(特定一般社団法人等)では、理事の死亡時に法人の純資産の一部が相続税の対象になる規定があるため、親族で運営する一般社団法人は注意が必要です。

会計基準・報告義務・監査の違い

  • 社会福祉法人:社会福祉法人会計基準に従い、拠点区分・サービス区分ごとの計算書類を作成し、評議員会・理事会・監事の機関運営を行い、計算書類と現況報告書を所轄庁に届け出て公表します。所轄庁の指導監査(原則3年に1回程度)があり、一定規模以上は会計監査人の監査が義務です(「社会福祉法人の決算・会計の基本」)。
  • NPO法人:NPO法人会計基準(活動計算書・貸借対照表)での作成が推奨され、事業報告書・計算書類を毎年所轄庁に提出し、一般に公開されます。社員(会員)10人以上、社員総会の開催が必要です。
  • 一般社団法人:公益法人会計基準または企業会計の基準で計算書類を作成し、社員総会で承認します。所轄庁への提出義務はなく、貸借対照表の公告が必要です。
  • 株式会社・合同会社:企業会計の基準で計算書類を作成し、株式会社は決算公告が必要です。所轄庁への計算書類の提出義務はありません。

なお、介護保険・障害福祉の指定基準では、法人形態を問わず「事業所ごとに経理を区分し、介護事業の会計とその他の事業の会計を区分する」ことが求められます。株式会社でも、他の事業と介護事業を一つの帳簿に混ぜたままにはできません。

法人形態の選び方・切り替えと、当事務所のサポート

税負担だけを見れば社会福祉法人が最も有利ですが、設立には所轄庁の認可と資産要件、評議員・理事・監事の体制が必要で、利益の分配や事業売却はできません。株式会社は税負担が大きい一方で、設立・資金調達・事業展開・出口(売却)の自由度が高く、小規模から始める場合や多店舗展開を目指す場合に向きます。NPO法人・一般社団法人は「非営利」の信用を得やすい反面、介護事業の税負担は株式会社とほぼ同じで、法人税の優遇は介護事業以外の事業に限られると理解しておくべきです。

既存の法人形態を切り替える場合、株式会社から社会福祉法人への組織変更はできないため、社会福祉法人を新設して事業譲渡する形になります。事業譲渡では指定の取り直し(新規指定)、利用者・職員の契約の引継ぎ、不動産の移転にかかる税金の検討が必要です。NPO法人や一般社団法人から株式会社への組織変更も認められていないため、同様に新法人の設立と事業譲渡で対応します。

当事務所では、横浜市内の介護事業者・障害福祉サービス事業者を中心に、法人形態ごとの税負担のシミュレーション、NPO法人・一般社団法人の収益事業の申告、非営利型の要件の確認、株式会社の介護事業の法人税・消費税申告、社会福祉法人への事業移行の税務検討まで対応しています。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。

まとめ:介護事業の法人税がかからないのは社会福祉法人だけ

介護事業を運営する法人形態の税務上の最大の違いは、介護事業の利益に法人税がかかるかどうかで、かからないのは社会福祉法人のみです。NPO法人・非営利型一般社団法人は「収益事業のみ課税」ではあるものの、介護事業自体が収益事業に当たるため、株式会社と同じ23.2%(年800万円以下は15%)で課税されます。固定資産税・不動産取得税・登録免許税の非課税も社会福祉法人に限られます。消費税の非課税範囲は法人形態で変わらず、特定収入の調整の有無が異なります。法人形態は、税負担だけでなく、やりたいサービス、資金調達、利益の使い方、将来の承継や出口まで含めて選ぶものです。

「法人形態別・介護事業の税務」まとめ

  • 介護保険の指定は法人格を問わないが、特別養護老人ホームなどは社会福祉法人等に限られる
  • 介護事業の利益に法人税がかからないのは社会福祉法人だけ。NPO法人・非営利型一般社団法人の介護事業は医療保健業として課税(23.2%・年800万円以下15%)
  • 株式会社・合同会社・普通型一般社団法人は全所得課税。非営利型は要件を欠くと普通法人に切り替わる
  • 均等割の非課税、固定資産税・不動産取得税・登録免許税の非課税は社会福祉法人の社会福祉事業用に限られる
  • 消費税の非課税範囲は法人形態で同じ。特定収入の調整は社会福祉法人・NPO法人・非営利型一般社団法人に適用され、株式会社には適用されない
  • 配当・出資・事業売却ができるのは株式会社等。社会福祉法人・NPO法人には持分がなく相続税の問題はないが、親族運営の一般社団法人は特定一般社団法人等の規定に注意
  • 法人形態の切り替えは組織変更ではなく新法人の設立+事業譲渡(指定の取り直し)になる

「法人形態別・介護事業の税務」に関するよくある質問

A.必要です。NPO法人は収益事業にのみ法人税がかかりますが、介護保険法に基づく訪問介護・通所介護は医療保健業として収益事業に該当するという国税庁の見解が示されています。社会福祉法人が行う場合の除外規定はNPO法人には適用されません。介護事業の収入と費用を区分した収益事業の損益計算書を作り、事業年度終了後2か月以内に法人税・法人住民税・法人事業税の申告が必要です。収益事業を開始した時点で「収益事業開始届出書」の提出も必要です。これまで申告していなかった場合は、過去分の期限後申告を含めて早めに整理することをおすすめします。

A.かからなくなりません。非営利型一般社団法人は収益事業のみ課税ですが、介護事業は医療保健業として収益事業に当たるため、介護事業の利益には法人税がかかります。非営利型のメリットは、会費や寄附金、介護事業以外の非収益事業の収入に法人税がかからない点にとどまります。むしろ、非営利型の要件(剰余金の不分配、残余財産の帰属先、理事の親族割合3分の1以下など)を維持する負担があり、要件を欠いた時点で普通法人に切り替わり、それまでの累積所得に課税されるリスクもあります。介護事業が収入の大半を占める法人では、非営利型を選ぶ税務上の利点は限定的です。

A.株式会社から社会福祉法人への組織変更は法律上認められていないため、社会福祉法人を新たに設立し、株式会社から事業を譲渡する方法をとります。社会福祉法人の設立には所轄庁の認可が必要で、社会福祉事業を行うための資産(施設を運営する場合は原則として不動産の所有)、評議員・理事・監事の人数要件などを満たす必要があり、認可まで通常1年程度を見込みます。事業譲渡では、介護保険の指定を新法人で取り直し、利用者との契約と職員の雇用を引き継ぎ、不動産を移す場合には株式会社側の譲渡益課税や新法人側の取得にかかる税金を検討します。株式会社に残った資産や株主への対応も含め、税務・法務の両面から計画を立てる必要があります。

介護事業の法人形態と税務のご相談は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「NPO法人の介護事業の申告をしていなかった」「法人形態ごとの税負担を比較したい」「社会福祉法人への移行を検討している」など、介護事業・障害福祉サービスの税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の事業者を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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