税理士を変更する手順|引き継ぎ資料・切り替え時期・前任への伝え方

税理士を変更する手順|引き継ぎ資料・切り替え時期・前任への伝え方

横浜市で個人事業主・小規模法人の税務顧問をお引き受けしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「今の税理士が高齢で引退すると言っている」「連絡しても返事が遅い」「相談しても税金の話しかしてくれない」「相性が合わない」――税理士を変えたいと思っていても、「どのタイミングで変えればいいのか」「前の税理士になんと言えばいいのか」「資料は何を返してもらえばいいのか」が分からず、何年もそのままになっている方は少なくありません。税理士の変更は、手順さえ押さえれば難しいものではなく、変更を税務署に届け出る必要もありません。

この記事では、税理士を変更するのに向いているタイミングと避けたい時期、前任の税理士から受け取る資料のリスト、契約解除の伝え方、新しい税理士側で行う引き継ぎ作業、年の途中から契約する場合にできることを解説します。本記事は2026年11月6日時点の情報に基づいています。

税理士を変更するタイミング|向いている時期と避けたい時期

最も引き継ぎがスムーズなのは、「直前の決算・申告が終わった直後」です。前任の税理士に直前期の申告まで担当してもらい、新しい期の最初から新しい税理士が関与する形にすると、どちらの税理士がどこまで責任を持つかが明確になり、会計データの引き継ぎも期首残高を確認するだけで済みます。

税理士を変更する手順

直前の申告が終わった区切りで切り替えると、引き継ぎがスムーズです。

切り替える時期を決める直前の決算・申告が終わった直後が目安です。決算直前から申告期限までと、確定申告期は避けます。
前任に書面で伝える解約の意思と最終日をメールなどの文面で残し、契約書の解約条項と最終業務の範囲を確認します。
資料の返却を依頼する申告書の控え、帳簿、固定資産台帳、届出書の控え、e-Taxの利用者識別番号などの返却や写しの交付を依頼します。
新しい税理士が引き継ぐ会計データの移行、税務代理権限証書の提出、e-Tax・eLTAXの設定、届出状況と過去の申告内容の確認を行います。
固定資産台帳と届出書の控えは、最優先で受け取りたい資料です。
本文の説明を図にまとめたものです。
  • 個人事業主:3月15日の確定申告が終わった後の3月下旬〜4月が切り替えの目安です。1月から新しい税理士に記帳を任せたい場合は、前年の秋頃から相談を始めると余裕があります。
  • 法人:決算月から2か月後の申告・納税が終わった後、つまり新しい事業年度の最初の1〜2か月が目安です。
  • 避けたい時期:決算月の直前〜申告期限までの間と、確定申告期(2〜3月)です。この時期は前任も新任も繁忙期で、引き継ぎに十分な時間が取れません。従業員がいる場合は、年末調整の時期(11〜12月)も避けたほうが無難です。

ただし、前任の引退や連絡がつかないといった事情で待てない場合は、年の途中でも切り替えられます(後述)。「今の税理士で次の決算まで我慢する」ことが正解とは限りません。

前任の税理士から受け取る資料リスト

帳簿や申告書の控えは、本来お客様ご自身のものです。次のリストをもとに、返却または写しの交付を依頼してください。会計データが前任の事務所の会計ソフトに入っている場合は、仕訳データ(CSVなど)の出力も合わせて依頼します。

  • 過去の申告書の控え:所得税・法人税・消費税・地方税の申告書を、少なくとも過去3年分(できれば5〜7年分)。e-Taxの受信通知(送信結果)も一緒に。
  • 決算書・内訳書:青色申告決算書・収支内訳書、法人の決算書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書。
  • 総勘定元帳・仕訳帳:直近の期の分は必須。会計ソフトのデータがあれば、紙ではなくデータで。
  • 固定資産台帳:減価償却の計算を引き継ぐために必要です。取得日・取得価額・償却方法・期末の帳簿価額が分かるもの。
  • 各種届出書の控え:開業届・法人設立届、青色申告承認申請書、消費税の課税事業者選択届出書・簡易課税制度選択届出書、インボイスの登録通知書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認申請書、減価償却方法の届出書など。消費税の届出は、いつから・いつまで適用されるかが申告に直結するため、特に重要です。
  • e-Taxの利用者識別番号と暗証番号、eLTAXの利用者ID:前任の税理士が代理送信していた場合、お客様ご自身の利用者識別番号(16桁)を前任が管理していることがあります。控えを受け取り、暗証番号が分からなければ税務署で変更の手続きをします。
  • 給与関係の書類:年末調整の計算書、源泉徴収簿、法定調書・給与支払報告書の控え、源泉所得税の納付書の控え。
  • 償却資産申告書の控え:市町村への申告をしている場合。
  • 繰越の明細:繰越欠損金、繰越控除できる損失など、翌年以降に影響する項目の明細。
  • 過去の税務調査の経緯:調査を受けたことがあれば、指摘事項と修正申告の内容。
  • 前任との契約書:解約の条件を確認するために必要です。

契約解除の伝え方と注意点

「言い出しにくい」と感じる方が多いのですが、税理士側は契約の変更に慣れています。次の点を押さえて、簡潔に伝えれば十分です。

  • 書面(メールで可)で伝える:電話だけでなく、解約の意思と最終日を文面で残します。「○月○日をもって顧問契約を終了したい」と期日を明確にします。
  • 契約書の解約条項を確認する:「解約は○か月前までに申し出る」「最低契約期間」などの定めがあれば、それに従います。定めがなければ、直近の申告が終わった時点を区切りにするのが一般的です。
  • 理由は簡潔に:詳細に説明する義務はありません。「事務所の体制の変更に合わせて」「事業の方向性に合わせて相談先を見直すことにした」といった一言で足ります。不満があったとしても、引き継ぎを円滑に進めるためには、感謝の言葉を添えて穏やかに伝えるのが得策です。
  • 最終業務の範囲を決める:直前期の申告までを前任に任せるのか、記帳の途中までで区切るのかを合意します。前任が担当する最後の申告の報酬と、資料の返却日もここで決めておきます。
  • 資料の返却を依頼する:上のリストを添えて、返却または写しの交付をお願いします。会計データの出力形式(CSV・会計ソフトのバックアップファイル)も指定します。

前任の税理士に新しい税理士の名前を伝える必要はありませんが、引き継ぎの連絡を新旧の税理士間で直接行ったほうがスムーズな場合は、お客様の了承のもとで当事務所から前任に連絡することもできます。

新しい税理士側で行う引き継ぎ作業

新しい税理士は、受け取った資料をもとに次の作業を行います。これらは当事務所が行うものなので、お客様側の負担はほとんどありません。

  • 会計データの移行:前任の会計ソフトから仕訳データを取り込み、期首残高(または引き継ぎ時点の残高)を確認します。固定資産台帳の帳簿価額と決算書の金額が一致しているかもここで確認します。freee・マネーフォワード・弥生など今お使いのソフトをそのまま続けることもできます。
  • 税務代理権限証書の提出:税理士が税務代理を行うことを税務署に示す書類で、委任する税目・年分、調査の通知を税理士に行うことへの同意などを記載します。新しい税理士が次の申告や届出の際に改めて提出するもので、前任の証書を取り消す手続きは不要です。
  • e-Tax・eLTAXの設定:代理送信の設定を行い、必要に応じて利用者識別番号の確認や暗証番号の変更を行います。
  • 届出状況の確認:消費税の課税事業者選択・簡易課税の適用期間、青色申告の承認、源泉所得税の納期の特例など、現在の適用状況を確認し、必要な届出があれば期限内に提出します。
  • 過去の申告内容の確認:過去の申告書を見て、繰越欠損金や減価償却の計算、消費税の計算方法に引き継ぐべき事項がないか確認します。気になる点があれば、お客様に確認したうえで対応を検討します。

年の途中から契約する場合にできること

当事務所では、年の途中からのご契約もお受けしています。その場合の進め方は次のとおりです。

  • 前任が途中まで記帳している場合:その時点までの仕訳データと試算表を受け取り、翌月分から当事務所で記帳を続けます。引き継ぎ時点の残高(現預金・売掛金・買掛金など)を通帳や請求書と照合して確定させます。
  • 前任の記帳が止まっている場合:期首からの資料(通帳・請求書・領収書)をお預かりし、当事務所で1年分をまとめて記帳します。資料の集め方は「税理士に確定申告を丸投げするときの資料チェックリスト」をご覧ください。
  • 決算直前の場合:資料の状況を伺ったうえで、期限内の申告に間に合うよう優先順位をつけて進めます。

年の途中の切り替えで注意したいのは、消費税の届出の適用期間と、減価償却の引き継ぎです。前任の計算方法を確認せずに別の方法で続けてしまうと、申告内容に食い違いが生じるため、固定資産台帳と消費税の届出の控えは最優先で受け取ってください。

国税不服審判所の公表裁決事例:昔の簡易課税の届出が効力を持ち続けていた例

駐車場業を営む法人が、平成3年に簡易課税制度選択届出書を出して簡易課税で申告した後、免税事業者の期間を経て、設備投資の消費税の還付を受けるために課税事業者選択届出書を出し、一般課税(本則課税)で還付申告をした事案があります(平成13年11月30日裁決)。

法人は簡易課税制度選択不適用届出書を出していなかったため、国税不服審判所は簡易課税の届出の効力は続いているとして、簡易課税で計算し直した更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を適法と判断しました。

何年も前の届出でも、やめる届出を出すまで効力が続くことがあります。税理士を変更するときは、過去の届出書の控えをすべて引き継ぎ、現在どの届出が有効かを確認しておくことが大切です。

出典:国税不服審判所 公表裁決事例(平成13年11月30日裁決、裁決事例集No.62)

サービスの内容と料金は税務顧問+確定申告のページを、料金の考え方は「税理士の顧問料・確定申告料に何が含まれる?」をご覧ください。

まとめ:区切りは「直前の申告の完了」、資料は固定資産台帳と届出の控えを最優先

税理士の変更は、直前の決算・申告が終わった直後に切り替えるのが最もスムーズで、変更を税務署に届け出る必要はありません。前任からは申告書の控え・決算書・元帳(会計データ)・固定資産台帳・各種届出の控え・e-Taxの利用者識別番号を受け取り、解約は書面で期日を明確にして簡潔に伝えます。新しい税理士側では、会計データの移行、税務代理権限証書の提出、届出状況の確認を行います。年の途中でも切り替えは可能で、引き継ぎ時点の残高を確定させれば問題なく続けられます。

「税理士を変更する手順」まとめ

  • 切り替えの目安は直前の決算・申告の完了直後。決算直前〜申告期限、確定申告期、年末調整期は避ける
  • 前任から受け取る資料:申告書控え(3〜7年分)、決算書・内訳書、元帳・会計データ、固定資産台帳、届出書控え(特に消費税)、e-Tax利用者識別番号、給与関係、繰越明細、調査の経緯
  • 解約は書面で期日を明確に、理由は簡潔に。契約書の解約条項を確認し、最終業務の範囲と資料返却日を決める
  • 新税理士側で会計データ移行、税務代理権限証書の提出、e-Tax設定、届出状況の確認を行う。税務署への「税理士変更届」は不要
  • 年の途中でも切り替え可能。引き継ぎ時点の残高を確定させ、固定資産台帳と消費税の届出は最優先で確認する

「税理士の変更」に関するよくある質問

A.帳簿書類や申告書の控えはお客様のものですので、書面で返却を求めてください。それでも返却されない場合、過去の申告書や届出書は税務署の申告書等閲覧サービスで閲覧(写真撮影も可)でき、個人の方は保有個人情報の開示請求で写しの交付を受けることもできます(法人の申告書等は開示請求の対象外です)。e-Taxで申告していれば、メッセージボックスの受信通知から申告データを確認できる場合があります(格納から約5年間。個人の方はマイナンバーカード等の電子証明書が必要です)。会計データが受け取れない場合は、通帳・請求書・領収書から当事務所で再度記帳します。手間はかかりますが、申告ができなくなるわけではありませんので、資料が返ってこないことを理由に切り替えをあきらめる必要はありません。

A.はい。引き継ぎの際に過去の申告書と決算書を確認し、気になる点があればお伝えします。ただし、当事務所では申告書だけを見て判断することはせず、元になった資料(通帳・請求書・領収書・契約書など)と照らし合わせて確認します。誤りが見つかった場合は、修正申告(納税額が増える場合)や更正の請求(納税額が減る場合)の要否と、加算税・延滞税への影響をご説明したうえで、対応を一緒に決めます。前任の責任を追及することが目的ではなく、これからの申告を正しくすることが目的です。

A.税理士の変更そのものが税務調査の理由になるという根拠はありません。税務調査の対象は、申告内容や業種、過去の申告状況などをもとに選定されるもので、関与税理士が変わったことだけで調査が決まるものではないと考えてよいでしょう。むしろ、変更をきっかけに過去の申告内容を見直し、記帳のルールを整えることは、調査への備えにもなります。税務調査の流れや準備については「税務調査の流れとは?」をご覧ください。

税理士の変更・引き継ぎのご相談は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「今の税理士から切り替えたい」「引き継ぎに何が必要か知りたい」「年の途中だが相談したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・小規模法人の方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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