無申告の期間に消費税の申告も必要?基準期間の判定・期限後に簡易課税は選べるか

横浜市で無申告の解消をサポートしている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「無申告を解消したいが、所得税だけ申告すればいいのか」「売上が1,000万円を超えた年があるが、消費税はいつから必要なのか」「今からでも簡易課税は選べるのか」――無申告のご相談で見落とされやすいのが、所得税とは別に必要になる「消費税の申告」です。売上が1,000万円を超えた年があると、その2年後の年分から消費税の課税事業者になり、申告していなければ消費税も無申告の状態です。しかも、期限後に簡易課税を選ぶことはできず、帳簿や請求書がなければ仕入税額控除も受けられないため、所得税より負担が大きくなることがあります。
この記事では、消費税の納税義務の判定(基準期間・特定期間)を無申告の年分に当てはめる手順、期限後に簡易課税を選べない理由と本則課税での計算、インボイス登録していない場合の売上側の扱い、消費税の無申告加算税・延滞税の計算例、今後の選択(登録・簡易課税の届出・3割特例の適用可否)を解説します。本記事は2026年11月6日時点の消費税法に基づいています。インボイス登録済みの方の無申告は「インボイス登録後に無申告だとどうなる?」をご覧ください。
消費税の納税義務の判定を無申告の年分に当てはめる手順
個人事業主が消費税の課税事業者になるのは、原則として次のいずれかに当たる年です。
- 基準期間(2年前の年)の課税売上高が1,000万円を超える:2024年分の納税義務は2022年の課税売上高で判定します。免税事業者だった年の課税売上高は、税込の金額で判定します。
- 特定期間(前年の1月1日〜6月30日)の課税売上高と給与等の支払額がともに1,000万円を超える:この場合は、基準期間が1,000万円以下でも翌年から課税事業者です。
- インボイス発行事業者の登録をした:登録日以後は売上規模にかかわらず課税事業者です。
「課税売上高」は消費税の課税対象になる売上で、住宅の家賃や保険診療などの非課税売上は含みません。無申告の年分が複数ある場合は、最も古い年から順に、各年の課税売上高を集計し、「その年の2年後の年分が課税事業者かどうか」を判定していきます。たとえば2021年の課税売上が900万円、2022年が1,200万円、2023年が1,100万円、2024年が950万円なら、2024年分と2025年分が課税事業者で、2023年分と2026年分は免税です(2022年分以前は、それぞれ2年前の2020年以前の課税売上高で判定します)(インボイス未登録、特定期間の要件に該当しないものとします)。売上の集計は所得税の申告と共通なので、復元した売上をそのまま使います(「領収書も帳簿もない無申告の申告の組み立て方」)。
無申告の年分が複数ある場合は、最も古い年から順に判定します。
期限後に簡易課税を選べない理由と、本則課税での計算
簡易課税は、売上の消費税額に業種ごとのみなし仕入率(卸売90%、小売80%、製造・建設70%、飲食など60%、サービス業50%、不動産40%)をかけた額を仕入税額とみなす方法で、帳簿や請求書がなくても計算できる点で無申告の解消には使いやすい制度です。しかし、簡易課税を使うには「適用を受けようとする年の前年末まで」に簡易課税制度選択届出書を提出している必要があり、期限後にさかのぼって選ぶことはできません。届出を出していない無申告の年分は、原則として本則課税(一般課税)で計算します(インボイス登録をしていて2割特例の要件を満たす年分は、期限後申告でも2割特例を選べます)。
本則課税は「売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税」で計算しますが、仕入税額控除を受けるには、帳簿と請求書等の保存が要件です。2023年9月30日以前の仕入れは区分記載請求書等(3万円未満は帳簿のみで可)、2023年10月1日以後はインボイス(適格請求書)の保存が必要で、免税事業者からの仕入れは経過措置(2026年9月までは80%、2026年10月以降は70%→50%→30%と段階的に縮小。令和8年度改正)の対象です。帳簿も請求書もない場合、仕入税額控除は認められず、売上の消費税をそのまま納めることになります。これが、無申告の消費税が所得税より重くなる最大の理由です。カード明細や通帳の記録、取引先からの再発行で請求書等を可能な限り復元し、控除できる部分を積み上げることが重要です。
インボイス登録していない場合の売上側の扱い
基準期間の判定で課税事業者に当たる年は、インボイスの登録をしていなくても消費税の納税義務があります。「登録していないから消費税は関係ない」というのは誤りで、納税義務と登録は別の話です。売上に消費税を上乗せして請求していなかった場合も、受け取った金額は税込とみなされ、その110分の10(軽減税率対象は108分の8)が消費税額になります。
一方、未登録の事業者は適格請求書を発行できないため、取引先(課税事業者)は仕入税額控除を全額受けられず、経過措置の範囲でしか控除できません。取引先が事業者の場合、今後の取引のためにインボイス登録を検討する必要があります(後述)。
消費税の無申告加算税・延滞税の計算例(仮定例)
2024年分が課税事業者に当たり、2024年の税込売上が1,650万円(すべて標準税率10%)、帳簿も請求書もなく仕入税額控除がゼロの場合、課税標準は1,500万円、消費税額は150万円(国税117万円+地方消費税33万円)です。これに無申告加算税が加わります。
- 税務署の調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合:150万円×5%=7.5万円。
- 調査の事前通知を受けた後、調査前に申告した場合:50万円までの部分10%、50万円超300万円までの部分15%=5万円+15万円=20万円。
- 調査で指摘されてから申告した場合:50万円までの部分15%、50万円超の部分20%=7.5万円+20万円=27.5万円。
さらに、2025年3月31日(2024年分の申告期限)の翌日から納付日までの延滞税がかかります(「延滞税の計算シミュレーション」)。同じ年に、所得税の無申告加算税と延滞税も別途かかります。なお、仕入れの請求書等を復元して税込660万円分の課税仕入れについて控除を受けられれば、消費税額は90万円に下がり、加算税もそれに応じて減ります。無申告加算税の割合の詳細は「無申告加算税はどの税目も一緒?税種別に解説」をご覧ください。
今後の選択|登録・簡易課税の届出・3割特例
無申告の年分を本則課税で申告したうえで、翌年以降の負担を軽くするために、次の選択を検討します。
- 簡易課税制度選択届出書の提出:翌年分から簡易課税を使うには、その年の末日(12月31日)までに届出書を提出します。たとえば2027年分から簡易課税にするなら2026年12月31日までです。みなし仕入率が実際の仕入率より高い業種(サービス業・建設業の労務中心など)では有利になることが多く、帳簿・請求書の負担も軽くなります。ただし、一度選ぶと2年間は継続し、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える年は使えません。
- インボイス発行事業者の登録:取引先が課税事業者で、インボイスの交付を求められる場合は登録を検討します。登録すると売上規模にかかわらず課税事業者になるため、免税に戻れる見込みがある場合は慎重に判断します。
- 3割特例の適用可否:2027年分・2028年分について、個人事業者が納付税額を売上税額の3割にできる特例ですが、インボイス登録をしていなければ免税事業者となる年分(基準期間の課税売上高1,000万円以下で、特定期間の要件などにも該当しない年分)であることが要件です。基準期間の売上が1,000万円を超えている年には使えないため、無申告の原因になった「売上1,000万円超」の年が基準期間に当たる年は対象外です(「3割特例とは?いつまで使える?」)。
- 免税事業者に戻る:基準期間の課税売上高が1,000万円以下になり、インボイス登録をしていなければ、その年は免税事業者です。登録している場合は取消しの届出が必要です。
当事務所では、無申告の年分について所得税と消費税の両方の判定と申告を行い、仕入れの資料の復元による控除の積み上げ、翌年以降の簡易課税・登録の判断までサポートしています。サービスの内容は無申告サポートのページ、相談の進め方は「無申告の相談前に用意する資料と当事務所の進め方」をご覧ください。
まとめ:売上1,000万円超の2年後は消費税も無申告。本則課税で請求書を復元し、翌年の届出を忘れない
無申告の年分は、各年の課税売上高を集計して2年後の年分の納税義務を判定し、課税事業者に当たる年は消費税の申告も必要です。期限後に簡易課税は選べず、原則として本則課税で計算するため、帳簿と請求書等を復元して仕入税額控除を積み上げることが納税額を左右します。インボイス未登録でも納税義務はあり、受け取った金額は税込とみなされます。加算税は調査通知前の自主申告なら5%、通知後は10〜15%、調査後は15〜20%で、延滞税も加わります。申告後は、翌年分からの簡易課税の届出(前年末まで)、登録の要否、3割特例の適用可否を確認して、今後の負担を整えてください。
「無申告の期間の消費税」まとめ
- 納税義務は基準期間(2年前)の課税売上高1,000万円超、特定期間(前年上半期)の課税売上と給与がともに1,000万円超、またはインボイス登録で判定。免税年は税込で判定
- 無申告の年分は古い年から課税売上を集計し、2年後の年分の課税・免税を順に判定する
- 簡易課税は前年末までの届出が必要で、期限後にさかのぼって選べない。無申告年分は原則として本則課税(登録済みで要件を満たす年分は2割特例も可)
- 本則課税の仕入税額控除は帳簿+請求書等の保存が要件。復元できなければ売上の消費税をそのまま納める
- インボイス未登録でも課税事業者なら納税義務あり。受け取った金額は税込とみなす
- 仮定例(課税標準1,500万円・控除なし):消費税150万円、無申告加算税は自主5%=7.5万円、通知後20万円、調査後27.5万円+延滞税
- 今後:翌年分の簡易課税は前年末までに届出、登録の要否を検討、3割特例は登録がなければ免税となる年分(基準期間1,000万円以下など)が対象
「無申告と消費税」に関するよくある質問
必要です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた年の「2年後の年分」だけが課税事業者になり、その年分の消費税の申告・納税が必要です。たとえば2022年だけ1,200万円で、他の年が1,000万円以下なら、2024年分だけが課税事業者です。2024年の売上が少なくても(たとえば800万円でも)、2024年分の消費税は納める必要があります。逆に、2024年の売上が1,000万円を超えていても、2022年が1,000万円以下なら2024年分は免税です(特定期間の要件とインボイス登録がない場合)。判定の基準になる年と、納税する年がずれる点に注意してください。
期限後に簡易課税をさかのぼって選ぶことはできず、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える年分は2割特例も使えないため、本則課税で仕入税額控除を最大限積み上げることが基本です。具体的には、カード明細や通帳から課税仕入れを特定し、取引先に請求書等の再発行を依頼し、2023年9月30日以前の3万円未満の仕入れは帳簿のみで控除できる取り扱いを使い、2023年10月以降の仕入れは少額特例(税込1万円未満の課税仕入れ。基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間の課税売上高5,000万円以下の年分)や免税事業者からの仕入れの経過措置を適用します。それでも納税が難しい場合は、申告後に換価の猶予などの分割納付を税務署に相談します。納税額を理由に申告を先延ばしにすると、加算税と延滞税が増えるだけです。
登録申請自体は可能ですが、登録すると登録日以後は課税事業者として消費税の申告義務が確実に生じるため、過去の無申告を解消しないまま登録すると、無申告の年分が増え続けることになります。順番としては、まず過去の所得税・消費税の無申告を解消し、そのうえで登録と簡易課税の届出を検討するのが適切です。登録後の申告を怠った場合の扱いは「インボイス登録後に無申告だとどうなる?」で解説しています。取引先への説明も含めて、早めにご相談ください。
無申告の消費税の判定・申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「消費税も必要か分からない」「仕入れの請求書がない」「今後の届出をどうすればいいか」など、無申告の解消に関することなら、お気軽にご相談ください。所得税と消費税をまとめて整理します。横浜市内の個人事業主・フリーランスを中心に、代表税理士が直接対応します。秘密厳守・匿名相談可。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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