設立初年度の消費税|免税の条件(資本金1,000万円未満・特定期間)とインボイス登録の判断

横浜市で会社設立と設立後の税務顧問を行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「会社を設立したら2年間は消費税が免税と聞いたが本当か」「インボイスに登録しないと取引先に迷惑がかかるのか」「登録すると免税のメリットがなくなるのか」――設立1〜2年目の法人や、法人成りを検討中の方から多くいただくご質問です。設立したばかりの法人は、条件を満たせば消費税の納税義務がありませんが、インボイス制度の開始後は「登録すべきか」の判断がこの免税と直接ぶつかるため、設立の時点で整理しておく必要があります。
この記事では、新設法人の消費税の納税義務の判定(資本金1,000万円未満・特定期間の課税売上と給与・特定新規設立法人)、インボイス登録で免税の恩恵がなくなる仕組みと登録すべきかの判断、登録する場合の2割特例の適用可否と簡易課税の届出、法人成りの場合の個人時代の課税売上との関係、設立初年度に出す消費税関連の届出と期限を解説します。本記事は2026年11月6日時点の消費税法に基づいています。
新設法人の納税義務の判定
消費税の納税義務は、原則として2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。設立したばかりの法人には基準期間がないため、原則として設立1期目・2期目は免税事業者です。ただし、次の例外があります。
新設法人には基準期間がないため原則は免税で、次の例外を順に確認します。
- 資本金1,000万円以上の法人(新設法人の特例):事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人は、1期目・2期目とも課税事業者です。設立時の資本金を1,000万円未満にする、増資の時期を2期目の期首より後にする、といった判断が必要です。
- 特定期間の判定(2期目):1期目の最初の6か月間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超え、かつその期間の給与等の支払額も1,000万円を超える場合、2期目は課税事業者になります。どちらか一方が1,000万円以下なら免税のままです。なお、1期目が7か月以下の短い事業年度の場合は特定期間の判定自体がなく、2期目も免税です(設立日から決算日までを7か月以内にする「短期事業年度」の考え方)。
- 特定新規設立法人:資本金が1,000万円未満でも、課税売上高5億円超の法人などがその法人の株式の50%超を直接・間接に保有している場合は、1期目から課税事業者です。親会社の子会社として設立する場合に該当します。
- 3期目以降:1期目の課税売上高(1年未満の場合は年換算)で3期目の納税義務を判定します。1期目に1,000万円を超えていれば、3期目から課税事業者です。
(仮定例)4月1日設立・3月決算で、最初の6か月の売上が1,000万円を超えた場合
資本金300万円で4月1日に設立した3月決算の法人(インボイス未登録、特定新規設立法人に当たらない)が、特定期間(1期目の4月1日〜9月30日)に課税売上高1,200万円、給与等の支払額400万円だったとします。課税売上高は1,000万円を超えていますが、特定期間の判定は給与等の支払額で行うこともでき、どちらで判定するかは任意なので、2期目も免税事業者のままでいられます。
ただし、1期目の1年間の課税売上高が1,000万円を超えれば、それを基準期間とする3期目は課税事業者です。また、途中でインボイス登録をすれば、登録日以後は課税事業者になります。実際の事例ではありません。
出典:国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」
インボイス登録で免税の恩恵がなくなる仕組みと、登録すべきかの判断
適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けると、売上規模や設立からの年数にかかわらず、登録日以後は課税事業者として消費税の申告・納税が必要になります。つまり、設立1期目から登録すれば、1期目・2期目の免税の恩恵は受けられません。登録するかどうかは、次の観点で判断します。
- 取引先が課税事業者(法人・事業者)か、消費者か:取引先が課税事業者の場合、こちらがインボイスを発行できないと、取引先は仕入税額控除を全額受けられず(免税事業者からの仕入れの経過措置で2026年9月までは80%、2026年10月から2028年9月までは70%、その後50%→30%と縮小し2031年9月で終了。令和8年度改正)、その分の負担を理由に取引の見直しや値下げの要請を受けることがあります。取引先が消費者(個人)や免税事業者なら、インボイスを求められることはほぼなく、登録しない選択が合理的です。
- 免税で得られる金額と、取引への影響:免税のメリットは、預かった消費税を納めずに済む分(売上の数%〜10%程度)です。登録しないことで主要な取引先を失う、または売上の大半で値引きを求められるなら、登録して納税したほうが結果的に有利です。
- 登録のタイミング:設立1期目の途中で登録する場合、1期目の末日までに登録申請をすれば、設立日(課税期間の初日)にさかのぼって登録を受けられる特例があります。途中からの登録も可能で、登録日以後の売上が課税対象になります。免税の2年間を使ってから登録する選択肢もあり、その場合は3期目の初日から登録を受けるよう申請します。
2026年11月6日時点では、2023年10月の制度開始から3年が経ち、課税事業者である取引先の多くはインボイスの有無を取引条件として確認しています。BtoBの事業なら登録、BtoCの事業なら免税を優先、というのが基本の整理です。インボイス制度後の調査で確認される点は「インボイス制度後の消費税の税務調査」をご覧ください。
登録する場合の2割特例の適用可否と簡易課税の届出
- 2割特例:免税事業者がインボイス登録を機に課税事業者になった場合に、納付税額を売上の消費税額の2割にできる特例で、2023年10月1日から2026年9月30日の属する課税期間まで適用されます。法人の場合、2026年9月30日を含む事業年度が最後です。たとえば3月決算なら2026年4月〜2027年3月の事業年度まで使えますが、2026年10月1日以後に始まる事業年度には使えません。2026年10月以降に設立した法人は、設立初年度から2割特例の対象外です。なお、2027年・2028年に設けられた3割特例は個人事業者のみが対象で、法人には適用されません(「3割特例とは?」)。
- 簡易課税:基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、売上の消費税額に業種ごとのみなし仕入率(卸売90%、小売80%、製造・建設70%、飲食など60%、サービス業50%、不動産40%)をかけた額を仕入税額とみなす簡易課税を選べます。設立1期目から適用するには、1期目の末日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します(通常の事業者は前年末までの提出が必要ですが、新設法人は1期目に限り期末まで提出できます)。一度選ぶと2年間は継続し、設備投資などで仕入れの消費税が多い年は不利になるため、1期目の設備投資の予定を踏まえて判断します。
- 本則課税で還付を受ける場合:設立初年度に大きな設備投資や仕入れがあり、支払った消費税が預かった消費税を上回る見込みなら、あえて課税事業者を選んで(課税事業者選択届出書を1期目の末日までに提出、またはインボイス登録)本則課税で還付を受ける方法があります。ただし選択後は2年間(その間に調整対象固定資産などの一定の資産を取得した場合は、取得した期の初日から原則3年間)課税事業者を続ける必要があります。
法人成りの場合|個人時代の課税売上との関係
個人事業を法人化(法人成り)した場合、個人時代の課税売上高は法人の基準期間の判定には使われません。個人で課税事業者だった方でも、資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として1期目・2期目は免税事業者です。ただし、個人でインボイス登録をしていた場合、法人は別の事業者なので改めて登録申請が必要で、登録すれば法人も1期目から課税事業者になります。個人側では、法人成り後に事業を廃止する旨の届出(事業廃止届出書)と登録の取消しの手続きを行い、個人としての最後の消費税の申告をします(「法人成りの手続き」)。
取引先に対しては、法人成りで請求書の発行者と登録番号が変わることを事前に案内し、法人の登録番号を伝えます。登録日より前の期間の請求書は免税事業者からの仕入れとして扱われるため、法人の設立日から登録を受けられるよう、設立後すぐに(遅くとも第1期の末日までに「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載して)申請するのが確実です。登録の通知前に交付した請求書は、通知後に登録番号などを書面等で知らせることで補完できます。
設立初年度に出す消費税関連の届出と期限
- 法人設立届出書:設立から2か月以内に税務署へ(県税事務所・市役所にも)。資本金1,000万円以上の場合は「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」も必要ですが、法人設立届出書にその旨を記載すれば省略できます。
- 適格請求書発行事業者の登録申請書:設立日から登録を受けたい場合は1期目の末日までに提出(登録には審査期間があるため早めに)。e-Taxで申請できます。
- 消費税簡易課税制度選択届出書:1期目から適用する場合は1期目の末日まで。2期目以降から適用する場合は、適用したい事業年度の前日まで。
- 消費税課税事業者選択届出書:還付を受けるためにあえて課税事業者になる場合、1期目の末日まで。
- 消費税課税期間特例選択届出書:輸出などで還付が多い事業者が課税期間を1か月・3か月に短縮する場合に提出します。通常は不要です。
当事務所では、設立前の面談で取引先の構成・設備投資の予定・資本金を伺い、免税を優先するか登録するか、簡易課税を使うかを設立の時期と合わせてご提案し、設立後の届出まで対応しています。サービスと料金は会社設立サポートのページ、法人化そのものの損得は「個人事業主の法人化はいくらから?」をご覧ください。
まとめ:免税の2年間は「登録しない」ことが前提。取引先の構成で登録を決め、届出は1期目の期末まで
資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として1期目・2期目が免税で、例外は資本金1,000万円以上、特定期間の課税売上と給与がともに1,000万円超、特定新規設立法人の3つです。インボイス登録をすると登録日から課税事業者になり免税の恩恵はなくなるため、取引先が課税事業者中心なら登録、消費者中心なら免税優先が基本です。2割特例は2026年9月30日を含む事業年度までで、2026年10月以降に設立した法人は対象外、3割特例は個人のみです。簡易課税・課税事業者選択・登録申請は1期目の末日が期限で、法人成りでは個人の課税売上は法人に引き継がれませんが登録は取り直しが必要です。
「設立初年度の消費税」まとめ
- 資本金1,000万円未満の新設法人は原則1期目・2期目免税。例外:期首資本金1,000万円以上、特定期間(1期目の最初の6か月)の課税売上と給与がともに1,000万円超(1期目7か月以下なら判定なし)、特定新規設立法人
- インボイス登録すると登録日から課税事業者。取引先がBtoBなら登録、BtoCなら免税優先。1期目中の申請で設立日にさかのぼって登録可
- 2割特例は2026年9月30日を含む事業年度まで。2026年10月以降設立の法人は対象外。3割特例は個人のみ
- 簡易課税は1期目から使うなら1期目末日までに届出(2年継続)。設備投資で還付を受けるなら課税事業者選択・本則課税
- 法人成り:個人の課税売上は法人の判定に使わず原則免税。登録は法人で取り直し、個人は廃止・取消しの手続き
- 届出:法人設立届(2か月以内)、登録申請・簡易課税・課税事業者選択は1期目末日まで
「設立初年度の消費税」に関するよくある質問
免税事業者も、取引の対価として消費税相当額を含めた金額で請求すること自体は禁止されていません。ただし、インボイス(適格請求書)ではないため、登録番号を記載したり「適格請求書」と誤認させる表示をしたりすることはできません。取引先が課税事業者の場合、免税事業者への支払いは経過措置の範囲(2026年10月からは70%、以後段階的に縮小)でしか仕入税額控除ができないため、消費税相当額の扱いについて取引先と事前に合意しておくことが現実的です。一方的な値引きの強要は独占禁止法・下請法上の問題になり得るため、交渉の記録を残してください。
2期目の判定は、1期目の「最初の6か月間」(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額で行い、両方が1,000万円を超える場合に課税事業者になります。1期目の年間売上が1,000万円を超えても、最初の6か月の売上が1,000万円以下、または給与の支払額が1,000万円以下なら、2期目は免税です。社長一人の会社で役員報酬が年600万円程度なら、給与の要件で免税を維持できることが多いです。なお、1期目の課税売上高(年換算)が1,000万円を超えていれば、3期目からは課税事業者です。
設備投資で支払う消費税が、その期に預かる消費税を大きく上回る場合、課税事業者を選択して本則課税で申告すれば差額の還付を受けられます。たとえば1,100万円(税込)の設備を買い、売上の消費税が50万円なら、約50万円の還付です。ただし、選択すると2年間(高額な資産を取得した場合は、取得した期の初日から原則3年間)は課税事業者を続けて納税する必要があり、その間に預かる消費税の納税額と還付額を比べて判断します。簡易課税は選べません(還付が生じないため)。設備投資の時期を1期目に集中させる、免税期間が終わる3期目に投資する、といった時期の調整も含めて、設立前にご相談ください。
設立初年度の消費税・インボイス登録の判断は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「免税を使うか登録するか決めたい」「法人成りで個人の登録をどう切り替えるか」「設立時の届出を漏れなく出したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内で起業・法人化する方を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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