過去に申告していなかった管理組合はどうする?期限後申告の進め方・加算税・理事会での説明

過去に申告していなかった管理組合はどうする?期限後申告の進め方・加算税・理事会での説明

横浜市でマンション管理組合の税務サポートと無申告の解決サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「理事に就任して決算書を見たら、何年も前から携帯電話基地局の設置料が入っていた。申告していた形跡がない」「外部に貸している駐車場の収入に法人税がかかると知らず、管理会社からも何も言われなかった」――管理組合の理事会が過去の無申告に気づくのは、たいていこうした場面です。気づいた瞬間は動揺しますが、法人税の無申告は手順を踏めば整理できる問題で、自主的に申告するほど負担は小さくなります。大切なのは、誰かの責任を探すことより、何年分を・いくら・いつまでに申告するかを早く固めることです。

この記事では、遡る年分の考え方(賦課権の期間制限)と資料の集め方、期限後申告の手順と無申告加算税・延滞税の見積もり(仮定例)、総会・理事会での説明と決議の進め方、管理会社・前任理事との関係の整理、今後の申告体制について解説します。本記事は2026年11月6日時点の国税通則法・法人税法・地方税法に基づいています。どの収入が収益事業に当たるかは「管理組合に法人税の申告が必要になる収入とは?」、所得の計算は「管理組合の収益事業の所得計算」、届出と申告の手続きは「管理組合が収益事業を始めるときの届出」をご覧ください。

遡る年分の考え方と資料の集め方

税務署が申告のない年分について税額を決定できる期間(賦課権の期間制限)は、法定申告期限から原則5年です(国税通則法70条1項)。偽りその他不正の行為によって税を免れていた場合は7年に延びますが(同条5項)、収益事業に当たることを知らずに申告していなかった管理組合は、通常は5年の範囲で整理することになります。2026年11月時点で3月決算の管理組合であれば、法定申告期限が2021年5月末の2020年度分(2020年4月〜2021年3月)までは2026年5月末で5年を経過して範囲外となり、2021年度分以降の5年分を申告する、という考え方です。地方税(法人事業税・法人県民税・法人市民税)の期間制限も原則5年で、国税と同じ年分を申告します。

5年より前から収入があった場合、それ以前の年分について税務署が決定処分をすることはできません。ただし、収益事業をいつ開始したかは届出書(収益事業開始届出書)に記載するため、開始時期そのものは正確に把握しておきます。無申告の期間制限の考え方は「法人の無申告の時効」でも解説しています。

過去分を申告するまでの流れ

申告していなかった年分は、税務署から調査の連絡が来る前に自分から申告するのが最も負担が小さくなります。

遡る年分を決める税務署が税額を決定できる期間は、法定申告期限から原則5年です。地方税も同じ年分を申告します。
年度ごとの資料を集める収支決算書・契約書・入金記録・費用の資料が管理会社と歴代理事のどこにあるかを一覧にして集めます。
理事会で申告を決める予算の補正や支出する会計を整理します。総会を待つと申告が遅れるため、理事会で決めて事後報告とする方法もあります。
期限後申告と本税の納付開始届を出し、古い年度から順に国・県・市へ申告します。本税は申告書を提出した日が納期限です。
加算税・延滞税を納める無申告加算税・不申告加算金や延滞税は、申告後に税務署・自治体から届く通知に基づいて納付します。
総会で報告し体制を整える結果を総会で報告して議事録に残し、青色申告の承認申請や延長の特例、引き継ぎ資料を整えます。
税務署の「お尋ね」を受けてからの申告も、調査通知の前なら自主的な期限後申告として扱われます。
出典:国税通則法70条(更正決定等の期間制限)。本文の説明を図にまとめたものです。

遡る年分を決めたら、各年度について次の資料を集めます。管理組合は資料が管理会社と歴代理事に分散しているため、最初に「どこに何があるか」を一覧にします。

  • 収支決算書・貸借対照表(各年度):総会資料として保存されています。収益事業に当たる収入が「雑収入」「使用料収入」などどの科目に入っているかを確認します。
  • 契約書・覚書:基地局の建物賃貸借契約、駐車場の外部契約者との契約書、自動販売機・看板の設置契約。開始日・金額・改定の履歴が分かります。
  • 入金記録:通帳、管理会社の月次収支報告。契約書と入金額が一致しているかを確認し、年度ごとの収入を確定します。
  • 費用の資料:管理委託契約書、保険証券、駐車場・屋上の補修工事の請求書。直接費と共通費の配分に使います。配分の考え方は「管理組合の収益事業の所得計算」のとおりです。
  • 規約・議事録:外部貸付を決めた総会・理事会の議事録、管理規約と使用細則。開始時期と組合員優先の条件(駐車場の場合は課税範囲に影響)を確認します。
  • 税務署・自治体からの文書:過去に「お尋ね」や法人番号の通知が来ていないかを確認します。届出だけ出して申告していなかった、という中途半端な状態のこともあります。

期限後申告の手順と加算税・延滞税の見積もり

資料がそろったら、年度ごとに収益事業の所得を計算し、各年度の申告書を作成して提出します。手順は次のとおりです。

  • ①収益事業開始届出書の提出:遅れていても提出します。開始日は実際に収益事業を始めた日を記載します。法人化していない管理組合は、この届出で法人番号が指定されます。
  • ②各年度の所得計算:収入から直接費・共通費の配分額を引きます。過去の年度は青色申告の承認を受けていないため白色申告になり、赤字の年度があっても翌年度に繰り越せません。
  • ③期限後申告書の提出:法人税・地方法人税(税務署)、法人事業税・法人県民税(県税事務所)、法人市民税(市)を年度ごとに提出します。古い年度から順に、まとめて提出するのが一般的です。
  • ④本税の納付:期限後申告の納期限は申告書を提出した日です。提出と同時に本税を納付します。
  • ⑤加算税・延滞税の納付:無申告加算税・不申告加算金は、申告後に税務署・自治体から通知が届いてから納付します。延滞税・延滞金も同様に計算されて通知されます。
  • ⑥青色申告の承認申請・延長の特例の申請:今後の年度に向けて、あわせて提出します。

加算税は、申告するタイミングによって大きく変わります。税務署から調査の連絡(調査通知)が来る前に自分から申告するのが最も負担が小さくなります。税務署からの「お尋ね」の文書は行政指導であって調査通知ではないため、お尋ねを受けてから申告しても自主的な期限後申告として扱われます(「行政指導と税務調査の違い」参照)。

申告のタイミング無申告加算税の割合(法人税・地方法人税)備考
調査通知の前に自主的に期限後申告5%各税目の加算税額が5,000円未満なら課されません。
調査通知の後、決定を予知する前10%(50万円超の部分15%、300万円超の部分25%)2024年1月1日以後に法定申告期限が来る年分の割合。
調査で指摘を受けた後、または税務署の決定15%(50万円超の部分20%、300万円超の部分30%)過去5年以内に無申告加算税等を課されていると10%加重。

地方税の不申告加算金も、自主的な申告なら5%、それ以外は国税とほぼ同じ割合です。延滞税は本税に対して法定納期限の翌日から納付日までの日割りで計算され、2026年中の割合は年2.8%(納期限の翌日から2か月を経過した後は年9.1%)です。延滞税の計算期間から一定期間を除く特例(国税通則法61条)は、期限内申告や期限後申告をした後の修正申告・更正に限られ、期限後申告そのものには適用されません(国税庁 No.9205)。地方税の延滞金も同様で、何年も前の年度ほど延滞税・延滞金は大きくなります。期限後申告の納期限は申告書を提出した日なので、提出日に本税を納付すれば全期間に低い割合(2022〜2025年は年2.4%、2026年は年2.8%)が適用されます。無申告加算税が課されない条件(期限から1か月以内の自主申告など)は、何年も前の年分には使えません(「無申告加算税がかからない条件」参照)。

仮定例で全体の負担感を示します。基地局の設置料が年60万円、経費を引いた所得が年50万円の管理組合が、5年分(2021〜2025年度)をまとめて2026年11月30日に自主的に期限後申告し、同日に本税を納付したケースです(2026年11月6日時点の税率、神奈川県・横浜市の最低区分の均等割で概算。年度ごとの税率の差や端数処理は省略しています)。

項目概算額(5年分)内訳の考え方
本税(法人税・地方法人税・法人事業税等・法人住民税)約93万円1年あたり約18.6万円(うち均等割約7.5万円)×5年
無申告加算税(国税)0円の見込み法人税約7.5万円×5%=約3,750円で5,000円未満のため、この例では課されない
不申告加算金(地方税)約2万〜3万円各年度・各税目5%、少額のものは不徴収
延滞税・延滞金約4.8万円法定納期限の翌日から納付日までの全期間、年2.4〜2.8%(延滞税約2.1万円・延滞金約2.7万円)。古い年度ほど大きく、2021年度分は約1.8万円、2025年度分は1,000円未満のため不徴収
合計約100万〜101万円本税以外の負担は全体の7〜8%程度

この例では、自主的に申告すれば本税以外の上乗せは本税の1割未満に収まります。同じケースで税務署の調査を受けてから申告した場合は、無申告加算税が15%(法人税分で年約1.1万円、5年で約5.6万円)になり、地方税の不申告加算金の割合も上がるため、負担は大きく増えます。申告が遅れるほど、延滞税・延滞金の計算期間も長くなります。所得が大きい管理組合ほどこの差は広がります。

総会・理事会での説明と決議の進め方

期限後申告は管理組合の支出を伴うため、理事会での決定と組合員への説明が必要です。説明は「事実」「金額」「対応」「再発防止」の順にまとめると、組合員の理解が得やすくなります。

  • 事実:いつから、どの収入が収益事業に当たっていたか。法人税の仕組み(管理費・修繕積立金は非課税で、外部からの収入だけが対象)を一言添えます。
  • 金額:遡る年分と本税・加算税・延滞税の見積もり、税理士報酬。上の仮定例のような表にすると伝わりやすくなります。
  • 対応:自主的に期限後申告をすること、申告の時期、支出する会計。
  • 再発防止:今後の申告体制(後述)と、引き継ぎ資料の整備。

決議の内容は規約によりますが、一般的には次の点を整理します。

  • 予算の補正:当年度の予算に税金・加算税・税理士報酬の支出がなければ、理事会または総会で予算の補正(または予備費からの支出)を決めます。規約で理事会に委ねられている範囲を確認します。
  • 支出する会計:税金は管理組合の運営に要する費用として管理費会計から支出するのが原則です。駐車場収入などを修繕積立金会計に積み立てている場合、修繕積立金の使途は規約で限定されているのが通常なので、そこから税金を支出するには規約との整合を確認し、必要なら総会で決議します。
  • 今後の収益事業会計の設置:翌年度から収益事業会計を特別会計として設け、税金の支出もその会計から行う方針を決めておくと、以後の説明が簡単になります。
  • 報告の時期:申告・納付を終えた後の総会で、結果(申告した年分・納付額)を報告し、議事録に残します。

総会の開催を待っていると申告が遅れ、その間に税務署から連絡が来れば加算税の割合が上がる可能性があります。規約上理事会で決定できる範囲であれば理事会で決めて申告を進め、総会には事後報告とする進め方も検討してください。

管理会社・前任理事との関係の整理

「管理会社が教えてくれなかった」「前の理事会が契約したのに」という気持ちは自然ですが、責任の所在は管理委託契約の内容や当時の事実関係によって決まる法律上の問題で、理事会だけで結論を出すことはできません。管理会社の会計業務は管理組合の収支の記録・報告が中心で、税務申告の代理は税理士の業務です。委託契約に税務に関する助言や申告の手配が含まれていたかどうかを確認し、含まれていない場合は、管理会社に責任を求めるのは難しいことが多いと思われます。責任を追及する必要があると判断する場合は、弁護士に相談してください。

実務上は、次の整理を優先するほうが管理組合の利益になります。

  • 資料の提供を依頼する:管理会社には過去の収支報告・契約書・入金記録の提供を、前任理事には当時の経緯の確認を依頼します。協力を得るためにも、責任追及ではなく事実の確認であることを伝えます。
  • 役割分担を決める:今後、収益事業の収入の切り出しと配分表の作成を管理会社が担うのか、税理士が担うのかを委託契約や覚書で明確にします。
  • 記録を残す:判定の根拠、申告した年分、納付額、今後の体制を議事録に残し、次の理事会に引き継ぎます。

今後の申告体制顧問契約は不要・スポットで継続できる

管理組合の収益事業の申告は年1回で、取引の種類も限られます。毎月の顧問契約は必要なく、決算期にスポットで税理士に依頼する形で十分に継続できます。体制として決めておくのは次の点です。

  • 年間スケジュール:期末→決算整理・配分表→総会→申告(延長の特例を受ける場合は見込納付→確定申告)。「管理組合が収益事業を始めるときの届出」の年間の流れを参考にしてください。
  • 担当の明確化:会計担当理事・管理会社・税理士の三者で、収入の切り出し、配分表、申告書作成、納付の担当を決めます。
  • 引き継ぎ資料:届出書・申告書の控え、法人番号、配分表、契約書、担当税理士の連絡先を一式にして理事長の引き継ぎ書類に含めます。
  • 新しい契約のチェック:基地局・看板・自動販売機などの新しい外部契約を結ぶ前に、収益事業の範囲が変わらないかを確認する手順を理事会の運営ルールに入れます。

当事務所では、管理組合の過去分の期限後申告を、無申告サポートとマンション管理組合の税務サポートの両方の経験に基づいて承っています。遡る年分の整理、税額・加算税の見積もり、理事会・総会向けの説明資料の作成、申告・納付までを一括で対応し、その後の毎年の申告はスポットで継続できます。

「過去に申告していなかった管理組合」に関するよくある質問

A.税務署が税額を決定できる期間は法定申告期限から原則5年なので、申告が必要なのは5年分です。偽りその他不正の行為があった場合は7年になりますが、収益事業に当たることを知らずに申告していなかったケースでは通常5年の範囲で整理します。地方税も同じ年分を申告します。収益事業開始届出書には実際の開始日を記載します。

A.できます。収入は通帳の入金記録や相手先(通信事業者・設置業者)への照会で確定でき、費用は残っている年度の資料と配分基準を使って合理的に見積もります。見積もりの根拠(どの資料から、どう計算したか)を申告書の控えと一緒に残しておけば、後から説明できます。資料が足りないことを理由に申告を先延ばしにするほうが不利になります。

A.理事の責任の有無は法律上の判断で、当事務所が結論を示すことはできません。一般に、気づいた時点で速やかに自主申告を行い、負担を最小限に抑えて組合員に説明することが、現理事会にできる最も適切な対応です。自主的な期限後申告なら本税以外の上乗せはわずかで、上の仮定例では全体の5%程度にとどまります。経緯と対応を議事録に残し、再発防止の体制を示すことで、組合員の理解は得やすくなります。

A.お尋ねの文書は行政指導であり、調査通知ではありません。お尋ねに回答して期限後申告をしても、調査通知前の自主的な申告として無申告加算税は5%で済みます。放置して調査に移行すると割合が上がるため、文書が届いたら期限内に回答し、同時に申告の準備を進めてください。回答の内容は申告と整合させる必要があるので、回答前に税理士へ相談することをおすすめします。

「過去に申告していなかった管理組合はどうする?」まとめ

  • 遡る年分は法定申告期限から原則5年(不正があれば7年)。地方税も同じ年分。各年度の決算書・契約書・入金記録・費用資料・議事録を集める
  • 手順は開始届→各年度の所得計算(白色・欠損金の繰越なし)→国・県・市への期限後申告→本税納付→加算税・延滞税の納付→今後の青色申請・延長申請
  • 調査通知前の自主申告なら無申告加算税5%(5,000円未満は不徴収)。延滞税・延滞金は法定納期限の翌日から納付日までの全期間で計算され、古い年度ほど大きい。仮定例(年所得50万円・5年分)では本税約93万円に対し上乗せは約7万〜8万円
  • 理事会・総会では事実→金額→対応→再発防止の順で説明し、予算の補正と支出する会計(原則は管理費会計)を規約に沿って決める
  • 責任の所在は法律判断なので理事会だけで結論を出さず、資料提供と役割分担の明確化を優先。今後は年1回のスポット依頼で継続できる

管理組合の過去分の申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

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執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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