医療法人の決算後に必要な届出と期限|事業報告書・決算届・資産総額の変更登記・役員変更

医療法人の決算後に必要な届出と期限|事業報告書・決算届・資産総額の変更登記・役員変更

横浜市で医療法人の設立・税務顧問サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「決算と税務申告は終わったが、県や市に何を出せばいいのか」「登記も必要と聞いたが、毎年なのか」「理事の任期が切れているようだが手続きは」――医療法人の理事長・事務長の方から、決算後の手続きについてこうしたご相談を受けます。医療法人は、税務署への申告に加えて、医療法に基づく所轄庁(横浜市内のみに事務所がある法人は横浜市)への事業報告書等の届出と、法務局への資産総額の変更登記が毎年必要です。税務の期限(2か月)と医療法の期限(3か月)がずれているため、一枚のカレンダーで管理しないと、どちらかが漏れます。

この記事では、事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書の所轄庁への届出(会計年度終了後3か月以内)、資産総額の変更登記(同3か月以内)と登記完了の届出、役員変更・定款変更の手続きと期限、税務申告(法人税・地方税・消費税)とのスケジュール連動、年間カレンダーと忘れたときの対応を解説します。本記事は2026年11月6日時点の医療法・医療法施行令・組合等登記令・法人税法に基づいています。一般の法人の決算スケジュールは「法人の決算スケジュール」で解説しています。

事業報告書等の所轄庁への届出会計年度終了後3か月以内

医療法人は、毎会計年度終了後2か月以内に事業報告書等を作成し(医療法51条)、社員総会(財団は評議員会)の承認を経て、会計年度終了後3か月以内に所轄庁へ届け出る義務があります(医療法52条)。所轄庁は、主たる事務所の所在する都道府県知事ですが、すべての事務所が一つの指定都市の区域内にある医療法人は、その指定都市の長が所轄庁になります。横浜市内の診療所・病院だけを運営する医療法人は、横浜市が提出先です。

決算後3か月以内の4つの手続き

3月決算なら6月30日までに、提出先の異なる次の手続きが重なります。

1
事業報告書等の届出事業報告書・財産目録・決算書・関係事業者との取引報告書などを、社員総会の承認後に所轄庁へ届け出ます。
2
経営情報の報告(MCDB等)病院・診療所を開設する医療法人は、損益や職種別の給与などの経営情報をMCDBなどで都道府県(横浜市所管の法人は横浜市)に報告します。
3
資産総額の変更登記財産目録で確定した資産総額を法務局で変更登記し、完了後に所轄庁へ登記完了届を出します。
4
税務申告(延長の特例)延長の特例を受けていれば、法人税・地方税の申告期限も3か月です。納付は2か月以内に見込納付します。
税理士と司法書士の分担を決めて、毎年の作業予定に入れておくと漏れを防げます。
出典:医療法51条・52条、組合等登記令3条。本文の説明を図にまとめたものです。
届け出る書類内容作成の注意点
事業報告書法人の概要、事業の状況(施設・従業者数・患者数など)、会議の開催状況、役員の状況所轄庁の様式に沿って記載。理事会・社員総会の開催日と議題を記録しておく
財産目録会計年度末の資産・負債の明細と、正味財産(資産総額)ここで確定した「資産総額」が登記の金額になる
貸借対照表・損益計算書医療法人会計基準(または病院会計準則等)に基づく決算書税務申告用の決算書と同じ数値だが、様式・区分が医療法人会計基準に沿っているか確認する
関係事業者との取引の状況に関する報告書理事長やその親族、親族が経営する法人(MS法人など)との取引で一定額以上のものMS法人への業務委託、理事長個人からの不動産賃借などで金額基準を満たすものが対象。横浜市の案内では、該当する取引がある場合に提出
監事の監査報告書監事が業務・財産の状況を監査した結果監事の署名が必要。監事が形式的な存在になっていると、作成が遅れる原因になる
社員総会(評議員会)の議事録の写し決算を承認した議事録所轄庁によって添付の要否が異なる

届出した事業報告書等は、所轄庁で請求があれば閲覧に供されます。また、法人の事務所にも備え置き、社員・債権者からの閲覧請求に応じる必要があります。

これとは別に、2023年8月から、病院・診療所を開設する医療法人は「経営情報」(事業報告書等の情報と、損益計算書の項目別の金額、職種別の給与情報など)を会計年度終了後3か月以内に都道府県へ報告する制度が始まっています。報告は、2025年4月以降、福祉医療機構の「医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)」または書面で行います(横浜市所管の法人は横浜市へ)。事業報告書等の届出と同じ時期に、同じ決算数値から作成するため、一連の作業として段取りします。

資産総額の変更登記会計年度終了後3か月以内と登記完了の届出

医療法人の登記事項には「資産の総額」が含まれ、決算で確定した資産総額(財産目録の正味財産の額)を、毎会計年度末日から3か月以内に法務局で変更登記しなければなりません(組合等登記令3条)。資産総額は毎年変わるため、この登記は毎年必要です。

  • 登記の内容:「資産の総額 金○○円」を新しい金額に変更。登録免許税はかかりません(非課税)。
  • 添付書類:資産総額を証する書面として、財産目録(理事長の証明付き)または貸借対照表。司法書士に依頼する場合は委任状。
  • 登記完了後の届出:登記をしたときは、遅滞なく登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を添えて所轄庁に「登記事項変更登記完了届」を提出します(医療法施行令5条の12)。事業報告書等の届出と同時に提出する法人が多く、所轄庁によっては法人番号の提供で証明書の添付を省略できる運用もあります。
  • 期限を過ぎた場合:登記の怠りは医療法93条に基づく過料(20万円以下)の対象になり得ます。実務上は、気づいた時点で速やかに登記し、所轄庁に届け出ます。数年分まとめて登記する場合は、各年度の財産目録が必要です。

資産総額の登記が漏れていると、金融機関の融資審査や、他の変更登記(理事長の重任など)の際に指摘されて発覚することが多いです。事業報告書等の届出と同じ期限(3か月)なので、同じカレンダーに載せておきます。

(仮定例)資産総額の変更登記を数年していなかった場合

(仮定例)横浜市内で診療所を1か所運営する3月決算の医療法人が、税務申告は毎年期限どおりに行う一方で、資産総額の変更登記を数年間していなかったとします。理事長の重任の登記を司法書士に依頼した際に、登記簿の資産の総額が古い金額のままであることが分かり、各年度の財産目録をそろえて未登記の年度分の変更登記を行い、その後、所轄庁に登記完了の届出をします。

資産総額の変更登記と事業報告書等の届出は、どちらも会計年度終了後3か月以内(3月決算なら6月30日まで)が期限で、延長の特例を受けた税務申告と同じ時期に重なります。税理士と司法書士の分担を決めて、毎年の作業予定に入れておくと漏れを防げます。実際の事例ではありません。

出典:医療法(e-Gov法令検索)第52条、組合等登記令(e-Gov法令検索)第3条

役員変更・定款変更の手続きと期限

手続きいつ必要か内容と期限
役員の改選(重任を含む)理事・監事の任期は2年を超えることができないため、2年ごとに社員総会で選任(重任)が必要選任後、所轄庁に「役員変更届」を提出(横浜市では議事録の写し、就任承諾書、履歴書、印鑑証明書などを添付。医療法施行令5条の13により遅滞なく提出)。理事長が変わらず重任の場合も届出が必要
理事長の変更・重任の登記理事長は登記事項。重任の場合も登記が必要選任(重任)の日から2週間以内に法務局で変更登記。登記後、遅滞なく所轄庁に登記完了届
理事長以外の理事・監事の変更登記事項ではない所轄庁への役員変更届のみ
定款(寄附行為)の変更目的・事業(診療所の開設・廃止・附帯業務の追加)、名称、事務所の所在地、役員の定数、会計年度などの変更原則として所轄庁の認可が必要で、認可後に効力が生じる。事務所の所在地変更など一部は届出で足りる事項がある。認可された内容が登記事項なら2週間以内に登記
診療所の開設・移転・廃止分院の開設や移転、廃止定款変更の認可に加え、医療法に基づく診療所の開設許可・届出(保健所)、保険医療機関の指定(地方厚生局)など別系統の手続きが並行する

役員の任期管理は、医療法人で最も漏れやすい手続きです。設立時の役員の就任日から2年ごとに社員総会で改選し、議事録・就任承諾書を作成し、理事長は登記、全役員は届出、という流れを、設立日を基準にカレンダーに入れておきます。任期が切れたまま放置すると、その間の理事会・社員総会の決議の有効性に疑義が生じるほか、所轄庁からの指導の対象になります。

税務申告とのスケジュール連動

医療法人の税務申告(法人税・地方法人税・法人事業税・法人住民税・消費税)の期限は、他の法人と同じく事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。定款で社員総会を会計年度終了後3か月以内に開催すると定めている医療法人は、申告期限の延長の特例(1か月)を税務署・県・市に申請・届出をして受けることができます(消費税は別途「消費税申告期限延長届出書」の提出が必要です)。延長を受けると、税務申告の期限(3か月)と医療法の届出期限(3か月)がそろい、社員総会で承認した決算書を両方に使えます。

  • 延長の特例を受けていない場合:税務申告は2か月以内なので、社員総会の前に決算を固めて申告するか、社員総会を2か月以内に開催します。多くの医療法人は延長の特例を申請しています。
  • 延長期間には利子税等がかかる:延長を受けた場合、事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日以後の期間について利子税等がかかるため、2か月以内に見込額を納付するのが一般的です。
  • 決算書の整合:税務申告の決算書と、所轄庁へ届け出る貸借対照表・損益計算書・財産目録は同じ数値でなければなりません。税務申告後に医療法人会計基準の様式に組み替える際に数値がずれないよう、同じ元データから作成します。
  • 消費税:社会保険診療報酬は非課税ですが、自由診療・健診・物販・テナント収入が課税売上になり、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の申告が必要です。詳しくは「医療法人の消費税」で解説します。
  • 役員報酬の決定時期:役員報酬は事業年度開始から3か月以内に社員総会で決める必要があり、期中の変更は原則として損金になりません。決算承認の社員総会と同時に翌期の役員報酬を決議する運用が一般的です(「医療法人の理事長・理事の役員報酬と退職金」参照)。

年間カレンダーと忘れたときの対応

3月決算(4月〜3月)で申告期限の延長の特例を受けている医療法人の、決算後の年間カレンダーです。決算月が異なる法人は月をずらしてください。期限が土日祝日に当たる場合は、原則として翌日(翌開庁日)が期限になります。

時期手続き提出先・期限
3月31日会計年度末。実地棚卸(医薬品・診療材料)、現金実査、未収の診療報酬(3月診療分は5月入金)の確定—
4月決算整理、医療法人会計基準の決算書・財産目録・事業報告書・関係事業者との取引報告書の作成、監事監査—
5月理事会で決算案の承認、社員総会の招集。5月31日までに法人税・地方税・消費税の見込納付税務署・県税事務所・市(納付)
6月(上旬〜中旬)社員総会で決算承認、翌期の役員報酬の決定、役員の任期が満了する年は改選議事録作成
6月30日まで①法人税・地方税・消費税の確定申告(延長の特例)②事業報告書等の届出③経営情報の報告(MCDB等)④資産総額の変更登記(法務局)⑤役員改選があれば理事長の重任登記(選任から2週間以内)税務署・県・市/所轄庁(横浜市内のみなら横浜市)/法務局
7月登記完了後、登記事項証明書を添えて所轄庁へ登記完了届。役員変更届(改選があった場合)所轄庁
11月法人税・地方税の中間(予定)納付(前期の法人税額が20万円超の場合)、消費税の中間納付(該当する場合)税務署・県・市
随時定款変更(認可申請)、診療所の開設・廃止、理事長の変更(2週間以内の登記と届出)所轄庁・法務局・保健所・地方厚生局

手続きを忘れていた場合の対応は次のとおりです。

  • 事業報告書等の届出を忘れた:気づいた時点で速やかに提出します。届出義務の違反は医療法上の過料(20万円以下)の対象になり得ますが、実務上はまず所轄庁から提出の催促があります。複数年度分が未提出の場合は、各年度分を作成して提出します。
  • 資産総額の登記を忘れた:各年度の財産目録を用意し、未登記の年度分をまとめて登記します。登記後に所轄庁へ登記完了届を提出します。
  • 役員の任期が切れていた:速やかに社員総会を開いて役員を選任し、理事長の登記(2週間以内)と役員変更届を行います。任期満了後の期間について、所轄庁から経緯の説明を求められることがあります。
  • 税務申告が遅れた:期限後申告として無申告加算税・延滞税の対象になります。遅れた分だけでなく、青色申告の承認取消し(2期連続の期限後申告)のリスクもあるため、最優先で申告します。

当事務所の医療法人設立・税務顧問サポートでは、税務申告に加えて、事業報告書等・財産目録・関係事業者との取引報告書の作成支援と、登記・届出の年間カレンダーの管理をあわせて行っています。登記は提携の司法書士をご紹介します。

「医療法人の決算後の届出」に関するよくある質問

A.契約内容によります。税理士の業務は税務申告で、医療法に基づく事業報告書等の届出は法人自身(理事長)が行う手続きです。当事務所では決算書・財産目録・事業報告書の作成支援を顧問業務に含めていますが、届出書の提出主体は法人になります。登記は司法書士の業務です。「誰がどこまでやるか」を決算前に確認し、年間カレンダーに担当を書き込んでおいてください。

A.資産総額が1円も変わらないことは実務上ほとんどありませんが、仮に同額であれば変更登記の対象になりません。ただし、財産目録で正味財産を確定し、変わっていないことを確認する作業は毎年必要です。金額が変わっていれば、増減の大小にかかわらず3か月以内に登記します。

A.変わります。すべての事務所が一つの指定都市の区域内にある場合に限り指定都市の長が所轄庁になるため、横浜市外(川崎市)に診療所を開設すると、所轄庁は神奈川県知事になります。分院の開設には定款変更の認可が必要で、その申請の過程で所轄庁の移管が行われます。以後の事業報告書等の届出先も神奈川県になるため、カレンダーの提出先を更新してください。

A.横浜市の案内では、報告の対象となる取引がある場合に提出する書類とされています。MS法人がなくても、理事長個人との取引などが対象になることがあります。対象は、理事長・理事・監事やその近親者、これらの人が議決権の過半数を持つ法人などとの間で、一定の金額基準(事業収益・事業費用の総額の10%以上かつ1,000万円以上の取引、総資産の1%以上かつ1,000万円を超える残高になる取引など)を満たす取引です。理事長個人から診療所の建物を借りている、理事長の配偶者が経営する法人に業務委託している、といった場合は該当の有無を確認してください。

「医療法人の決算後に必要な届出と期限」まとめ

  • 事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書・関係事業者との取引報告書・監事監査報告書を、会計年度終了後3か月以内に所轄庁へ届出(横浜市内のみに事務所がある法人は横浜市)。経営情報の報告(MCDB等)も同じ期限
  • 資産総額の変更登記は会計年度末から3か月以内に毎年。登記後は遅滞なく登記事項証明書を添えて所轄庁へ登記完了届
  • 理事・監事の任期は2年。改選(重任)のたびに役員変更届、理事長は2週間以内に登記。定款変更は原則として所轄庁の認可
  • 税務申告は2か月以内だが、申告期限の延長の特例(1か月)で医療法の期限(3か月)とそろえ、社員総会で承認した同じ決算書を両方に使う。納付は2か月以内に見込納付
  • 年間カレンダー(3月決算なら6月30日に申告・届出・登記が集中)に担当者を書き込む。忘れたら速やかに提出・登記し、所轄庁の催促を待たない

医療法人の決算・申告と届出の年間管理は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「決算後の届出と登記を含めて年間スケジュールを整えたい」「事業報告書・財産目録・関係事業者との取引報告書の作成を手伝ってほしい」「役員の任期や登記が漏れていないか確認したい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の医療法人を中心に、代表税理士が直接対応します。登記は提携の司法書士をご紹介します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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