休眠・赤字の法人も申告は必要?法人の無申告と法人住民税の均等割・青色申告の取消し

休眠・赤字の法人も申告は必要?法人の無申告と法人住民税の均等割・青色申告の取消し

横浜市で法人の無申告の解決サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「売上がない会社なので申告していないが、問題あるのか」「赤字なら税金はゼロだから申告は不要では」「市から均等割の通知が来た」「青色申告が取り消されると聞いた」――売上がない・赤字で申告していない法人の代表者や、設立したまま動かしていない休眠会社のオーナーの方からのご相談です。法人は、所得がゼロでも赤字でも毎期の申告義務があり、申告しないと青色申告の承認が取り消され、赤字でも法人住民税の均等割がかかり続け、放置すれば融資・許認可・取引にも影響が出ます。

この記事では、法人は所得がなくても申告が必要な理由と無申告が2期続くと青色申告が取り消される仕組み、法人住民税の均等割(赤字でも発生)と都道府県・市への申告、休眠届(異動届)を出した場合の扱いと均等割の減免の有無、無申告のまま放置した法人の解消手順(期限後申告・みなし解散・解散清算)、融資・許認可・取引への影響と再スタートの進め方を解説します。本記事は2026年11月6日時点の法人税法・地方税法・会社法と横浜市・神奈川県の案内に基づいています。法人の無申告の期間制限は「法人の無申告の時効」、複数期分の申告の進め方は「複数年分の無申告をまとめて申告するときの順番と注意点」をご覧ください。

法人は所得がなくても申告が必要無申告が2期続くと青色申告が取り消される

個人の所得税には「所得が一定額以下なら申告不要」という仕組みがありますが、法人税にはありません。法人税法74条は、内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出しなければならないと定めており、所得がゼロでも赤字でも、売上が1円もなくても、申告書の提出義務があります。赤字の申告をすることで、その赤字(欠損金)を翌期以降10年間繰り越して黒字と相殺できる(青色申告の場合)という実益もあります。

申告をしないことによる最も大きな不利益の一つが、青色申告の承認の取消しです。法人税法127条1項4号により、2事業年度連続して期限内に申告書を提出しなかった場合、2期目の事業年度以後について青色申告の承認が取り消されます。取り消されると次の影響があります。

  • 欠損金の繰越控除ができない:取消し後の事業年度に生じた赤字は翌期以降に繰り越せません。休眠中に赤字(均等割・維持費)が続いても、再開後の黒字と相殺できないことになります。
  • 少額減価償却資産の特例などが使えない:30万円未満の資産の即時償却、各種の税額控除(中小企業投資促進税制など)は青色申告が要件です。
  • 再承認までの期間:取消しの通知を受けた日から1年を経過しないと、青色申告の承認申請はできません。再申請してから承認されるまで、白色申告の期間が続きます。
  • 推計課税:白色申告の法人は、帳簿が不十分な場合に税務署が推計で所得を決定できます。

「休眠だから赤字でもどうせ使わない」と考えがちですが、事業を再開する、別の事業を始める、法人を売却する、といった将来の選択肢を残すためには、青色申告の承認を維持しておく価値があります。青色取消しの詳細は「無申告で青色申告が取り消されるとどうなる?」で解説しています。

法人住民税の均等割赤字でも発生・都道府県と市への申告

法人住民税(法人県民税・法人市民税)には、法人税額に比例する「法人税割」と、所得にかかわらず定額の「均等割」があります。均等割は、事務所・事業所がある限り、赤字でも売上ゼロでも毎年課税されます。

区分横浜市内に本店がある小規模法人(資本金1,000万円以下・従業者50人以下)の均等割備考
法人県民税(神奈川県)年2万円標準税率
法人市民税(横浜市)年5万円+横浜みどり税(均等割額の9%)=54,500円横浜みどり税は期限付きの措置で、2026年11月6日時点で課税中
合計年74,500円事業年度が1年未満なら月割り。他の市区町村に事業所があれば、その市区町村にも均等割

均等割は法人税の申告とは別に、都道府県(県税事務所)と市区町村に申告書を提出して納付します。法人税の申告をしていても、地方税の申告をしていなければ地方税側は無申告です。無申告のまま放置すると、県・市は法人税の申告状況や登記情報から所在を把握して、均等割の申告の催促や決定を行い、不申告加算金(自主申告なら5%)と延滞金が加わります。「市から均等割の通知が来た」というご相談の多くは、この決定通知です。5年分なら本税だけで約37万円、附帯税を含めると40万円前後になります。

休眠届(異動届)を出した場合の扱いと均等割の減免の有無

事業を休止するとき、税務署・県税事務所・市区町村に「異動届出書」で休業(休眠)の届出をすることがあります。この届出の効果と限界を整理します。

  • 法人税の申告義務はなくならない:休業届を出しても、法律上の申告義務は消えません。実務上、所得も取引もまったくない休眠法人について、税務署が申告書の送付や督促を止めることはありますが、申告義務そのものがなくなるわけではなく、青色申告の取消しの要件(2期連続の無申告)にも該当し得ます。休眠中も、所得ゼロの申告書(別表一・別表四・別表五・貸借対照表)を毎期提出しておくのが安全です。
  • 均等割の減免は自治体により異なる:都道府県・市区町村によっては、休業届を出した法人の均等割を免除・減免する運用がありますが、横浜市は法人市民税の均等割の減免対象を公益法人等(収益事業を行わないNPO法人など)に限っており、株式会社・合同会社などの普通法人は休業中でも減免の対象外です(横浜市の案内による。2026年11月6日時点)。休眠会社でも横浜市内に本店登記がある限り、均等割の申告・納付が必要です。所在地が横浜市以外の法人は、その自治体の取扱いを確認してください。
  • 届出の意味:休業届は、税務署・自治体に事業の実態がないことを知らせ、連絡や案内を適切にしてもらうためのものです。「届出を出したから税金も申告も不要」という誤解が、後年の無申告の積み上がりにつながります。
  • 均等割の負担を止める方法:均等割を本当に止めるには、本店を均等割の免除がある自治体に移すのではなく、法人を解散・清算して登記を閉鎖する必要があります(清算結了まで均等割はかかります)。

無申告のまま放置した法人の解消手順(期限後申告・みなし解散・解散清算)

数年分の無申告がある休眠・赤字法人を整理する方法は、「法人を続けるか」「閉じるか」で分かれます。

選択肢手順向いているケース・注意点
①期限後申告をして法人を維持する無申告の事業年度ごとに決算書と法人税・地方税の申告書を作成し、古い年度から提出。本税(主に均等割)・不申告加算金・延滞金を納付。青色申告が取り消されていれば再申請(取消通知から1年経過後)事業を再開する予定がある、法人格を使いたい(許認可・取引先・融資)、設立から時間が経っていて信用がある場合。所得がなければ法人税はゼロで、負担は均等割と附帯税が中心
②解散・清算して閉じる株主総会で解散決議→解散・清算人の登記→債権者保護手続き(官報公告2か月)→解散事業年度の申告→残余財産の確定→清算事業年度の申告→清算結了の登記→税務署・県・市に届出再開の予定がない場合。解散日までの期間と清算期間についても申告が必要で、未申告の過去の年度も清算前に申告する。登記費用(登録免許税約4万円)と官報公告費用(3〜4万円)、司法書士報酬がかかる
③みなし解散を待つ株式会社は最後の登記から12年(一般社団・財団法人は5年)経過すると、法務大臣の公告後2か月以内に「事業を廃止していない旨の届出」をしなければ解散したものとみなされる(会社法472条)。毎年秋に法務局が整理作業を行うみなし解散になっても清算は終わっていないため、清算結了の登記と申告は別に必要。均等割も清算結了まで続く。みなし解散から3年以内なら継続の決議で復活できる。「放置すれば自然に消える」わけではない

①と②のどちらでも、過去の無申告の事業年度の申告は必要です。「閉じるから過去の分は申告しなくてよい」ということはなく、むしろ清算結了の登記後も、県・市は未申告の均等割の決定を行えます。無申告のまま解散登記だけを済ませても、税務上の整理は終わりません。

期限後申告の実務では、各事業年度の決算書を作る必要があります。休眠法人であれば取引は均等割の支払い・銀行手数料・税理士報酬程度なので、通帳があれば比較的短期間で作成できます。設立後に一度も申告していない法人(「無申告のまま法人設立」参照)は、設立時の資本金の入金から順に帳簿を起こします。

国税庁が公表した事例:照会を無視していた無申告法人

国税庁の「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」では、無申告法人に対する事例が紹介されています。税務署は多数の無申告法人に書面照会で事業の稼働状況を尋ねましたが、ある法人は再三の照会に回答しませんでした。店舗への客の出入りやSNSの頻繁な更新から事業の稼働が確認され、実地調査と銀行調査で多額の入出金と利益の隠ぺいが判明し、法人税・消費税で約6千万円が追徴されています。

休眠や赤字の法人でも、税務署からの照会は放置せず実態を回答し、未申告の事業年度は自主的に期限後申告で整理しておくことが大切です。

出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(無申告法人に対する事例)

融資・許認可・取引への影響と再スタートの進め方

無申告の法人が事業を再開しようとすると、次の場面で支障が出ます。

  • 融資:金融機関は直近2〜3期の決算書・申告書と納税証明書(その1:納付すべき税額、その3:未納のないこと)の提出を求めます。無申告では申告書も納税証明書も出せず、日本政策金融公庫の創業融資・事業融資、銀行の融資、補助金の多くが申請できません。
  • 許認可:建設業許可・宅建業免許・古物商・飲食店営業など、申請や更新時に決算書・納税証明書を求められるものがあります。建設業許可は毎期の決算変更届が必要で、無申告だと更新ができません。
  • 取引先:新規取引や与信審査で決算書の提出を求められた際に、提出できなければ取引に進めません。インボイス登録事業者であれば、消費税の申告義務も生じています。
  • 役員の個人信用:法人の税金の滞納は、代表者個人の信用情報には直接載りませんが、第二次納税義務(無償で財産を受け取った場合など)が問われることがあり、法人名義の滞納が差押えに進むと事業用口座が使えなくなります。
  • 消費税:休眠前に課税事業者だった法人、インボイス登録をした法人は、売上がなくても消費税の申告が必要な期があります。登録を取り消す届出を出していなければ、登録事業者として申告義務が続きます。

再スタートの進め方は、①無申告の事業年度を一覧にし、各期の決算書と申告書を作成して期限後申告(法人税・地方税)、②均等割と附帯税を納付(一括が難しければ県・市に分納を相談)、③青色申告の承認が取り消されていれば再申請、④休業届を出していれば事業再開の異動届、⑤インボイス・消費税の登録状況の確認、⑥再開後は毎期の申告を期限内に行う体制(税理士との共有・決算スケジュール)を整える、という順序です。申告を整えてから納税証明書が取れるまでに数週間かかるため、融資や許認可の予定がある場合は逆算して着手します。

無申告の法人を再スタートする手順

休眠・赤字のまま無申告だった法人が事業を再開するときは、次の順に整えます。

無申告の期を申告する無申告の事業年度を一覧にし、各期の決算書と申告書を作って、法人税・地方税の期限後申告をします。
均等割と附帯税を納付均等割と不申告加算金・延滞金などの附帯税を納めます。一括が難しければ、県・市に分納を相談します。
青色申告を再申請する青色申告の承認が取り消されていれば、承認申請を出し直します。取消しの通知から1年を経過してからです。
事業再開の異動届休業(休眠)の届出をしていた場合は、税務署・県税事務所・市区町村に事業を再開する旨の異動届を出します。
インボイス・消費税の確認インボイスの登録状況を確認します。登録が続いていれば、売上がなくても消費税の申告が必要な期があります。
期限内申告の体制づくり再開後は、税理士と決算スケジュールを共有し、毎期の申告を期限内に行う体制を整えます。
申告を整えてから納税証明書が取れるまで数週間かかるため、融資や許認可の予定から逆算して着手します。
本文の説明を図にまとめたものです。

当事務所の無申告サポートでは、休眠・赤字法人の複数期分の期限後申告、地方税の申告、解散・清算の税務(登記は提携の司法書士をご紹介)、再開後の顧問までを一括で対応しています。所得がない期の申告は定型的で、1期あたりの費用は抑えられますので、年数が多くてもまず全体の見積もりをご確認ください。

「休眠・赤字法人の無申告」に関するよくある質問

A.法人税は所得がなければかかりませんが、法人住民税の均等割は毎期かかります。横浜市内に本店がある小規模法人なら、県民税2万円と市民税54,500円(横浜みどり税を含む)で年74,500円が、設立以来の期数分発生しています。加えて、無申告の期間については不申告加算金(自主申告なら5%、少額なら不徴収)と延滞金がかかります。設立以来の全期分の法人税・地方税の申告をして均等割を納付することが解消の手順です。

A.休業届は申告義務を免除するものではないため、2事業年度連続で期限内申告をしなければ、法人税法127条の取消しの要件に該当し得ます。税務署が休眠法人に申告書を送付しないことがあっても、法的な扱いは変わりません。青色申告の承認を維持したい(再開時に欠損金の繰越や特例を使いたい)場合は、休眠中も所得ゼロの申告書を毎期提出してください。

A.申告が必要です。解散・清算の手続きの中で、解散日までの事業年度と清算期間の申告が必要になり、その前の無申告の事業年度も遡って申告します。県・市は清算結了後も未申告の均等割を決定できるため、申告せずに登記だけ閉じても税務上の整理は終わりません。解散登記(登録免許税・官報公告・司法書士報酬)の費用と、過去分の申告・均等割の納付をあわせた総額を見積もってから、閉じるか維持するかを決めてください。

A.消えません。法務大臣の公告から2か月以内に「事業を廃止していない旨の届出」をしないと解散したものとみなされますが、これは「解散」であって「清算結了」ではありません。会社は清算中の法人として存続し、均等割の課税も続き、清算結了の登記と清算事業年度の申告を自ら行う必要があります。事業を続けるなら2か月以内に届出をするか、みなし解散後3年以内に株主総会で継続の決議をして登記します。閉じるなら清算手続きに進みます。いずれにしても過去の無申告分の申告は必要です。

「休眠・赤字の法人も申告は必要?」まとめ

  • 法人は所得ゼロ・赤字・売上なしでも毎期の申告義務がある(法人税法74条)。2期連続で期限内に申告しないと青色申告が取り消され(127条)、欠損金の繰越や特例が使えなくなり、再申請は取消通知から1年後
  • 法人住民税の均等割は赤字でも毎年かかる。横浜市内の小規模法人は県2万円+市54,500円=年74,500円。法人税とは別に県・市へ申告・納付が必要
  • 休業届を出しても申告義務はなくならず、横浜市は普通法人の均等割を減免しない。均等割を止めるには解散・清算結了まで必要
  • 解消の選択肢は、期限後申告で維持する/解散・清算で閉じる/みなし解散。いずれでも過去の無申告分の申告は必要で、みなし解散も清算結了ではない
  • 無申告のままでは納税証明書が取れず、融資・許認可・取引に支障。全期の申告→均等割と附帯税の納付→青色再申請→再開の届出→期限内申告の体制づくりの順で再スタートする

休眠・赤字法人の無申告の解消は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「設立以来の無申告を全部片付けたい」「会社を維持するか閉じるか、費用を比べて決めたい」「融資のために早く納税証明書が取れる状態にしたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の法人を中心に、代表税理士が直接対応します。所得がない期の申告は1期あたりの費用を抑えてご案内しています。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。

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