複数年分の無申告をまとめて申告するときの順番と注意点|税目ごとの期限・納付計画の立て方

横浜市で無申告の解決サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「3年分、5年分と溜まった無申告をまとめて片付けたいが、どの年から出せばいいのか」「所得税だけでなく消費税・住民税・事業税はどう動くのか」「納付は一括でないとだめなのか」――複数年分の無申告を一度に解消しようとする個人事業主・法人の方からのご相談です。1年分の期限後申告と違い、複数年分をまとめて申告するときは、年分の順序、税目ごとの申告先と連動、加算税・延滞税の見積もり、納付計画の4点を先に設計しておかないと、申告後に想定外の通知が次々と届いて混乱します。
この記事では、年分ごとの整理(賦課権の期間制限・古い年分から順に)と税目ごとの申告先・提出の順序、期限後申告で連動して発生するもの(住民税・個人事業税・国民健康保険料、法人は地方税)、加算税・延滞税の見積もり方と納付計画(納税の猶予・分納の相談)、青色申告・各種特例が使えない年分の注意、申告後に届く通知と対応のスケジュールを解説します。本記事は2026年11月6日時点の国税通則法・所得税法・消費税法・地方税法に基づいています(加算税率・延滞税率は年分により異なるため、本文中の割合は2026年11月6日時点のもの)。資料がない状態からの進め方は「無申告の相談前に資料がない場合の進め方」、売上・経費の復元は「領収書も帳簿もない無申告の売上・経費の復元」をご覧ください。
年分ごとの整理と税目ごとの申告先・提出の順序
最初に「何年分を、どの税目で申告するか」を一覧にします。
申告の準備から、申告後に届く通知への対応までの流れです。
- 遡る年分:税務署が税額を決定できる期間は法定申告期限から原則5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)です。2026年11月時点で所得税なら、2021年分(法定申告期限2022年3月15日)以降の5年分が対象です(「無申告に時効はある?」参照)。意図的な隠蔽がなければ5年分で整理するのが基本ですが、収入の規模や経緯によって7年分が必要になることもあるため、最初の相談で判断します。
- 古い年分から順に作る:所得税は年ごとに独立した計算ですが、①消費税の納税義務は2年前の課税売上高で決まる、②減価償却費は取得年から順に計算が続く、③事業税の判定や国保の計算も年ごとに連動する、という理由で、最も古い年分から順に作成します。提出も古い年分から行うか、全年分をまとめて同日に提出します。
- 税目ごとの申告先:所得税(および復興特別所得税)と消費税は税務署へ年分ごとに申告書を提出します。住民税・個人事業税・国民健康保険料は、所得税の申告書のデータが税務署から市区町村・県税事務所に送られて自動的に計算されるため、原則として別の申告は不要です。法人は、法人税・地方法人税・消費税(税務署)に加えて、法人事業税・法人県民税(県税事務所)、法人市民税(市)の申告書を年度ごとに別に提出します。
- 消費税の判定:各年分について、その2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えていたかを確認し、超えていた年分は消費税の期限後申告も行います。無申告の期間に1,000万円を超えた年があれば、その2年後から消費税の課税事業者です(「無申告の期間の消費税」参照)。
- 開業届・事業開始の届出:所得税の申告と並行して、開業届(遅れていても提出)を出します。法人は設立届が出ていないことは通常ないため、異動届の確認程度です。
| 対象 | 税目 | 申告先 | 連動 |
|---|---|---|---|
| 個人 | 所得税・復興特別所得税 | 税務署(年分ごと) | — |
| 消費税・地方消費税 | 税務署(基準期間の課税売上1,000万円超の年分) | 所得税とは別の申告書 | |
| 住民税・個人事業税・国民健康保険料 | 別途の申告は原則不要 | 所得税の申告データから市区町村・県税事務所が計算し、後日通知 | |
| 法人 | 法人税・地方法人税 | 税務署(事業年度ごと) | — |
| 消費税・地方消費税 | 税務署(該当する事業年度) | 別の申告書 | |
| 法人事業税・特別法人事業税・法人県民税/法人市民税 | 県税事務所/市(事業年度ごとに別途申告) | 法人税の申告とは連動しないため、自ら申告が必要 |
期限後申告で連動して発生するもの住民税・個人事業税・国民健康保険料・法人の地方税
所得税の期限後申告をすると、そのデータが市区町村と県税事務所に送られ、次のものが後から通知されます。申告の本税だけを見て納付計画を立てると、数か月後の通知で資金が足りなくなります。
| 連動して発生するもの | 内容 | 時期・注意点 |
|---|---|---|
| 住民税(市民税・県民税) | 各年分の所得に対して所得割10%+均等割。過年度分がまとめて決定される | 申告の1〜3か月後に市区町村から納税通知。過年度分は一括または数回の納期で通知され、延滞金が付くことがある |
| 個人事業税 | 事業所得が年290万円(事業主控除)を超える年分について、業種別の税率(多くは5%)で課税 | 県税事務所から納税通知。所得税の申告をすれば個人事業税の申告は不要 |
| 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料 | 所得に応じて保険料が再計算され、過年度分が増額(または新たに賦課) | 市区町村から変更通知。遡って賦課できる期間は原則2年(保険料方式の自治体。横浜市は保険料方式)で、それより前の年分は増額されない |
| 介護保険料(65歳以上)・保育料・各種手当の判定 | 所得に基づく判定がやり直され、追加負担や手当の返還が生じることがある | 自治体から個別に通知 |
| 法人の地方税 | 法人事業税・特別法人事業税・法人県民税・法人市民税(法人税割+均等割) | 連動しないため、法人税の申告と同時に自ら申告・納付する。均等割は赤字でも年7万円程度(横浜市内)×年数分 |
法人の場合、地方税の申告を忘れると、法人税の申告をしていても地方税側は無申告のままになります。税務署・県税事務所・市の3か所への提出を年度ごとにチェックリストにしてください。地方税への影響の詳細は「所得税を修正申告したら住民税・国保はどうなる?」で解説しています。
加算税・延滞税の見積もり方と納付計画(納税の猶予・分納の相談)
複数年分の期限後申告では、本税のほかに次の附帯税がかかります。申告前に年分ごとに見積もり、合計の資金計画を立てます。
- 無申告加算税:税務署からの調査通知の前に自主的に申告すれば、各年分の本税の5%です(各税目の加算税額が5,000円未満なら課されません)。調査通知の後、決定を予知する前なら10%(50万円超の部分15%、300万円超の部分25%)、調査で指摘された後なら15%(50万円超20%、300万円超30%)です。複数年分を同時に提出する場合、同時に提出した年分の間で「繰り返しの無申告」としての加重(10%)が適用されることは通常ありませんが、過去に別の機会に無申告加算税・重加算税を課されていた場合は加重の対象になります(「税目別の無申告加算税」参照)。
- 延滞税:各年分の法定納期限の翌日から納付日までの日割りで、2026年中の割合は年2.8%(納期限の翌日から2か月を経過した後は年9.1%)です。延滞税の計算期間から一定期間を除く特例(国税通則法61条)は、期限内申告や期限後申告をした後の修正申告・更正に限られ、期限後申告そのものには適用されません。そのため、古い年分ほど延滞税の計算期間は長くなります(国税庁 No.9205)。期限後申告の納期限は申告書を提出した日なので、提出日に本税を納付すれば、提出日以降の延滞税は生じません。
- 地方税の附帯税:住民税・事業税には延滞金が、法人の地方税には不申告加算金(自主申告なら5%)と延滞金がかかります。
- 消費税:所得税と同様に無申告加算税・延滞税がかかります。消費税は本税が大きくなりやすいため、年分ごとの見積もりが重要です。
納付計画の立て方は次のとおりです。
- 原則は提出日に本税を一括納付:期限後申告の本税の納期限は提出日です。全年分を同日に提出するなら、その日に全年分の本税を納付するのが原則で、納付が遅れた分には年9.1%(2か月経過後)の延滞税がかかります。
- 資金が足りない場合は提出の時期を分ける:古い年分から順に、納付できる年分だけ先に提出・納付し、残りを資金の目途がついた時点で提出する方法があります。ただし、提出が遅れた年分は、その間に税務署から調査通知が来れば加算税の割合が上がるリスクがあります。
- 換価の猶予の申請:一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になる場合、納期限から6か月以内に申請すれば、原則1年以内(やむを得ない事情があればさらに1年)の分割納付が認められることがあります。猶予期間中の延滞税は軽減されます。申請には財産収支状況書などの提出が必要で、猶予額が100万円超・期間3か月超の場合は担保が求められることがあります(「延滞税・利子税と納税の猶予」参照)。
- 住民税・国保の分納:市区町村の納税課・保険年金課に相談すれば、過年度分の分割納付に応じてもらえることが多いです。通知が届いたら放置せず、すぐに相談します。
仮定例:2023年分〜2025年分の3年分の所得税の本税が各40万円(合計120万円)、消費税なし、2026年11月30日に自主的に同日提出・同日納付した場合。無申告加算税は各年分40万円×5%=2万円(合計6万円)です。延滞税は各年分の法定納期限の翌日から納付日までの全期間(年2.4〜2.8%)で計算され、2025年分約0.8万円、2024年分約1.8万円、2023年分約2.8万円(合計約5.3万円)と、古い年分ほど大きくなります。合計約131万円が国税の負担です。その後、住民税3年分(所得による)と国保の増額分(2年分)が別に通知されます。
青色申告・各種特例が使えない年分の注意
期限後申告では、期限内申告を要件とする特例が使えません。年分ごとに次の点を確認します。
| 項目 | 期限後申告での扱い |
|---|---|
| 青色申告特別控除 | 青色申告の承認を受けていない年分は白色申告。承認を受けていた年分でも、期限後申告では65万円・55万円の控除は10万円に下がる |
| 青色申告の承認 | 過去の年分について遡って青色申告の承認を受けることはできない。今後の年分について承認申請を出す(提出した年の翌年分から、または開業年なら2か月以内) |
| 純損失の繰越控除 | 青色申告でない年分の赤字は翌年以降に繰り越せない(変動所得・被災事業用資産の損失を除く) |
| 事業専従者 | 白色申告の事業専従者控除(配偶者86万円・その他50万円)は期限後申告でも適用できる。青色事業専従者給与は届出がなければ使えない |
| 少額減価償却資産の特例(30万円未満) | 青色申告が要件のため、白色の年分は10万円以上の資産は通常の減価償却(一括償却資産20万円未満の3年償却は白色でも可) |
| 消費税の簡易課税・インボイス関係 | 簡易課税は前課税期間末までの届出が要件のため、過去の年分は本則課税で計算する(実額の課税仕入れの集計が必要)。2割特例は適格請求書発行事業者の登録をしていた年分に限られる |
| 住宅ローン控除・医療費控除・ふるさと納税(寄附金控除)など | 期限後申告でも適用できる(住宅ローン控除の初年度も期限後申告で可)。ワンストップ特例を使っていたふるさと納税は、確定申告をすると特例が無効になるため、寄附金控除として申告書に記載する |
白色申告の年分でも、収入と経費を記載した収支内訳書の添付が必要です。帳簿がない場合は、通帳・請求書・領収書から収入と経費を復元して作成します。
申告後に届く通知と対応のスケジュール
複数年分を提出した後、数か月にわたって各所から通知が届きます。あらかじめ予定表にしておくと落ち着いて対応できます。
| 時期(提出後) | 届くもの | 対応 |
|---|---|---|
| 当日 | (提出と同時に本税を納付) | 納付書で金融機関・税務署窓口、またはe-Taxのダイレクト納付・クレジットカード納付 |
| 1〜2か月 | 税務署から無申告加算税・延滞税の賦課決定通知書と納付書 | 計算を確認し、納期限までに納付。金額が見積もりと大きく違えば税理士に確認 |
| 1〜3か月 | 市区町村から住民税の納税通知書(過年度分) | 一括納付か、納税課に分納の相談 |
| 1〜3か月 | 市区町村から国民健康保険料の変更通知(過去2年分の増額) | 納付または分納の相談 |
| 2〜4か月 | 県税事務所から個人事業税の納税通知(該当年分) | 納付 |
| 随時 | 税務署から申告内容についての問い合わせ(お尋ね・来署依頼) | 申告の根拠資料(復元の計算過程)を基に回答。税理士が窓口になる |
| 翌年以降 | 予定納税の通知(前年の所得税が15万円以上の場合)、消費税の中間申告 | 今後は期限内申告を続ける体制に移行 |
法人の場合は、法人税の加算税・延滞税の通知に加え、県・市から地方税の不申告加算金・延滞金の通知が届きます。申告後の資金計画には、これらの通知分を含めておきます。
複数年分の無申告の解消は、資料の復元・年分ごとの計算・各税目の申告書作成・納付計画・通知対応と工程が多く、一人で進めると途中で止まりがちです。当事務所の無申告サポートでは、年分と税目の一覧作成から、申告書の作成・提出、猶予の申請、通知が届いた後の確認まで一括で対応しています。全体の流れは「無申告を解決する5ステップ」もあわせてご覧ください。
「複数年分の無申告のまとめ申告」に関するよくある質問
制度上は年分ごとに独立した申告なので、直近分だけを先に提出することは可能です。ただし、消費税の納税義務や減価償却は過去の年分の数値に依存するため、全年分の計算は先に済ませておく必要があります。また、直近分だけを申告すると、税務署側で過去の年分の無申告が把握され、残りの年分について調査通知や決定の手続きが進む可能性があり、その場合は自主申告より加算税の割合が上がります。資金の都合で提出を分けるなら、古い年分から順に、短い間隔で提出するのが安全です。
申告を先に行うことは可能で、むしろ申告を遅らせるより加算税の面で有利です。納付が遅れた期間には延滞税(納期限の翌日から2か月は年2.8%、その後は年9.1%)がかかります。一時に納付できない事情があれば、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請し、分割納付と延滞税の軽減を受けることを検討してください。住民税・国保についても、通知が届いたらそれぞれの窓口で分納を相談できます。
できません。青色申告の承認は申請した年の翌年分(開業年は開業から2か月以内の申請でその年分)からで、過去の年分に遡って承認を受けることはできません。また、承認を受けていた年分でも、期限後申告では65万円・55万円の控除は10万円になります。過去の年分は白色申告(収支内訳書)で申告し、今後の年分のために青色申告承認申請書を速やかに提出してください。
処理されません。個人の住民税は所得税の申告データが市区町村に送られますが、法人の地方税(法人事業税・法人県民税・法人市民税)は法人が自ら県税事務所と市に申告書を提出する必要があります。法人税の申告書を5期分提出したら、同じ5期分の地方税の申告書も作成・提出・納付します。赤字の期でも均等割(横浜市内なら年7万円程度)は各期にかかります。休眠状態の法人の扱いは「休眠・赤字の法人も申告は必要?」で解説しています。
「複数年分の無申告をまとめて申告するときの順番と注意点」まとめ
- 遡る年分は法定申告期限から原則5年(不正は7年)。消費税の判定・減価償却・国保の連動のため、最も古い年分から順に作成し、所得税・消費税は税務署、法人は地方税を県・市へ別に申告
- 所得税の期限後申告をすると住民税(過年度分一括)・個人事業税・国民健康保険料(遡及2年)が後から通知される。法人の地方税は連動しないので自ら申告(均等割は赤字でも年7万円程度)
- 自主申告なら無申告加算税は各年5%(5,000円未満は不徴収)、延滞税は法定納期限の翌日から納付日までの全期間で計算(古い年分ほど大きい)。本税は提出日に納付、足りなければ提出を古い年分から分けるか、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請
- 過去の年分は白色申告(10万円控除・損失繰越なし・簡易課税不可)。事業専従者控除・医療費控除・住宅ローン控除・寄附金控除は期限後でも可。今後の年分の青色申告承認申請を速やかに提出
- 申告後1〜4か月で加算税・住民税・国保・事業税の通知が順に届く。全部を含めた資金計画を申告前に立て、通知は放置せず分納の相談をする
複数年分の無申告をまとめて解消するなら、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「何年分・どの税目を申告するか一覧にしてほしい」「加算税と住民税・国保まで含めた総額と納付計画を知りたい」「申告から通知の対応まで任せたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内の個人事業主・法人を中心に、代表税理士が直接対応します。匿名でのご相談も可能です。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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