亡くなった親に無申告の収入があったら?相続人が行う期限後申告と準確定申告の関係

亡くなった親に無申告の収入があったら?相続人が行う期限後申告と準確定申告の関係

横浜市で無申告の解決サポートと相続税申告サポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「亡くなった父がアパートの家賃収入を何年も申告していなかったようだ」「親の事業の売上が申告されていなかった。相続人の自分が責任を持つのか」「相続税にも影響するのか」――親が亡くなった後、通帳や書類を整理する中で親の無申告に気づいた相続人の方からのご相談です。被相続人(亡くなった方)の納税義務は相続人が引き継ぐため、過去の無申告の年分は相続人が期限後申告をすることになります。一方で、納めた税金は相続税の計算で差し引け、相続放棄という選択もあり、整理の仕方を知っていれば負担を適切な範囲に収められます。

この記事では、被相続人の無申告の年分は相続人が期限後申告すること(納税義務の承継)、準確定申告(死亡年分)と過年分の期限後申告の整理、相続放棄・限定承認との関係、無申告だった所得税・加算税の相続税での債務控除と把握されていなかった財産の相続財産への計上、税務署への対応と相続税申告と並行して進める方法を解説します。本記事は2026年11月6日時点の国税通則法5条・所得税法・相続税法13条・14条・民法に基づいています。死亡年分の申告は「準確定申告とは?」、複数年分の申告の進め方は「複数年分の無申告をまとめて申告するときの順番と注意点」をご覧ください。

被相続人の無申告の年分は相続人が期限後申告する(納税義務の承継)

国税通則法5条は、相続があった場合、相続人は被相続人に課されるべき国税、または被相続人が納付・徴収されるべき国税を納める義務を承継すると定めています。被相続人が生前に申告していなかった所得税・消費税は「課されるべき国税」に当たるため、相続人がその申告と納税を引き継ぎます。

  • 誰が申告するか:相続人全員が、被相続人の各年分の確定申告書(期限後申告)を提出します。様式は準確定申告と同じく、被相続人の氏名・死亡日と「死亡した者の確定申告書付表」を添えて、被相続人の死亡時の住所地の税務署に提出します。相続人が複数いる場合は連署が原則で、各人の相続分に応じて税額を負担します。
  • どの年分か:税務署が税額を決定できる期間は法定申告期限から原則5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)です。2026年11月時点なら、所得税は2021年分以降の5年分が対象です。被相続人がいつから申告していなかったかは、過去の申告書控え・通帳・賃貸契約書・取引先への照会で確認します。
  • 加算税・延滞税:期限後申告には無申告加算税(調査通知前の自主申告なら5%。各税目5,000円未満は不徴収)と延滞税(2026年中は年2.8%、法定申告期限から1年経過後の期間は除算される特例あり)がかかり、これも相続人が負担します。相続人が気づいた時点で速やかに自主申告するほど、負担は小さくなります。
  • 相続人の責任の範囲:相続人は自分の相続分に応じた割合で納税義務を承継します(相続人が複数いる場合、被相続人の国税について各相続人は相続分で按分した額を負担し、遺言で相続分の指定があればそれによります)。相続財産の価額を超えて個人の財産で納める義務が生じるのは単純承認をした場合で、後述の相続放棄・限定承認で限定できます。
  • 住民税・事業税・国保:所得税の期限後申告をすると、被相続人の過年分の住民税・個人事業税が市区町村・県から相続人宛てに通知されます。国民健康保険料の遡及は原則2年です。これらも相続人が承継する債務です。

「親のことだから自分には関係ない」とはならず、「親の無申告を自分の責任で問われる」というわけでもありません。相続人は、親が本来納めるべきだった税金を、相続した財産の中から清算する立場です。この整理で考えると、落ち着いて進められます。

国税不服審判所の公表裁決:亡くなった父の無申告を相続人が期限後申告した事例

平成26年11月7日の裁決は、相続税の申告をしないまま亡くなった父の納付義務を承継した子が、税務署の調査を受けて父の分の期限後申告をし、無申告加算税を課された事案です。子は、相続財産を管理していた親族が財産の明細を示さなかったため、父が期限内に申告できなかったことには正当な理由があると主張しました。

審判所は、こうした事情は相続人どうしの人間関係による主観的な事情にすぎないとして正当な理由を認めず、無申告加算税は承継した税額ごとの計算を見直した一部の取消しにとどまりました。税目は相続税ですが、親が申告すべきだった税金と加算税を相続人が承継して負担する点は、所得税の無申告でも同じです。

出典:国税不服審判所「平成26年11月7日裁決」

準確定申告(死亡年分)と過年分の期限後申告の整理

被相続人の所得税の申告は、死亡した年の分(準確定申告)と、それより前の無申告の年分(期限後申告)の2種類を分けて進めます。

区分対象期限加算税備考
準確定申告死亡した年の1月1日〜死亡日の所得相続開始を知った日の翌日から4か月以内期限内に提出すればなし前年分の申告期限(3月15日)前に死亡した場合、前年分も4か月以内の準確定申告の対象
過年分の期限後申告死亡年より前で申告していなかった年分(原則5年、不正は7年)すでに法定申告期限を過ぎているため、速やかに無申告加算税5%(自主申告)+延滞税年分ごとに申告書を作成。古い年分から順に
消費税基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていた年分準確定申告は4か月以内、過年分は速やかに同上事業収入・テナント収入が1,000万円超の年があれば2年後の年分が対象

進め方の順序は、①被相続人の収入の全体像を把握する(通帳・契約書・取引先・固定資産の確認)、②年分ごとに収入・経費を復元して所得を計算する(古い年分から)、③過年分の期限後申告書と死亡年分の準確定申告書を作成し、まとめて提出・納税する、④相続税の申告に税額を反映する、です。資料の復元の方法は「領収書も帳簿もない無申告の売上・経費の復元」と同じで、被相続人の通帳の入金記録、賃貸借契約書、管理会社の送金明細、取引先への照会で収入を確定し、固定資産税・保険料・修繕費・減価償却などの経費を資料から積み上げます。被相続人本人に確認できない分、資料の網羅性がより重要になります。

親の無申告を相続人が申告する順序

死亡した年の準確定申告と、それより前の年分の期限後申告を、次の順にまとめて進めます。

収入の全体像を把握通帳・契約書・取引先・固定資産を確認し、被相続人の収入の全体像と、無申告だった年分をつかみます。
年分ごとに所得を復元古い年分から、通帳の入金記録や契約書で収入を確定し、資料から経費を積み上げて所得を計算します。
申告書をまとめて提出過年分の期限後申告書と死亡年分の準確定申告書を作り、まとめて提出・納税します。準確定申告は4か月以内です。
相続税の申告に反映確定した本税と、被相続人の責めによる附帯税を債務控除に反映して、相続税を申告します。
相続放棄を判断する3か月以内に、無申告の税額の概算を出しておくことが大切です。
本文の説明を図にまとめたものです。準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

なお、被相続人の過年分は青色申告の承認を受けていなければ白色申告で、承認を受けていても期限後申告では青色申告特別控除は10万円です。不動産所得が事業的規模(5棟10室)でなければ、もともと控除は10万円です。

相続放棄・限定承認との関係

被相続人の無申告の税額が相続財産を上回る可能性がある場合や、他にも多額の債務がある場合は、相続放棄・限定承認を検討します。いずれも、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

選択税金の承継注意点
単純承認(何もしない・財産を処分する)被相続人の国税・地方税の納税義務を相続分に応じて承継する。相続財産を超える部分も相続人の財産から納める3か月以内に放棄・限定承認をしなければ単純承認。被相続人の預金を引き出して使う、不動産を売却するなどの処分をすると、放棄できなくなる(法定単純承認)
相続放棄初めから相続人でなかったことになり、被相続人の税金を含む一切の債務を承継しない。財産も取得しない放棄した人の分は他の相続人(次順位の相続人)が承継する。放棄後に被相続人の財産を処分すると放棄が無効になるおそれ。生命保険金・死亡退職金は放棄しても受け取れる(相続税の非課税枠は使えない)
限定承認相続財産の限度で被相続人の債務(税金を含む)を承継する。相続財産を超える債務は負わない相続人全員で共同して申述する必要がある。被相続人から相続人への資産の時価譲渡があったものとみなされ、被相続人に譲渡所得税が生じる(準確定申告に含める)など手続きが複雑で、実務上の利用は限定的

無申告の税額の見積もりが3か月以内に終わらない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てて期間を延ばすことができます。放棄するか決めるために税額の概算が必要な段階で、税理士に相談してください。期間の判断は相続人ご自身の選択ですが、税額の規模と相続財産の規模を比べる材料は早めに用意できます。

無申告だった所得税・加算税の債務控除と把握されていなかった財産の計上

被相続人の無申告は、相続税の計算にも2つの面で影響します。

  • 債務控除(相続財産から差し引ける):被相続人が納めるべきだった所得税・消費税・住民税・個人事業税は、相続開始時に確定していなくても、被相続人の債務として相続税の課税価格から控除できます(相続税法13条・14条)。期限後申告で確定した本税は債務控除の対象です。附帯税については、被相続人の責めに帰すべき事由による延滞税・加算税(被相続人が申告しなかったことによる無申告加算税、相続開始までの延滞税)は控除できますが、相続開始後に相続人が申告・納付を遅らせたことによる延滞税など、相続人の責めに帰すべき部分は控除できません。
  • 把握されていなかった財産の計上:無申告の収入は、どこかに財産として残っています。申告していなかった家賃や売上が入金された預金口座、現金、貸付金、収入で購入した資産などは、相続開始時点の残高・時価で相続財産に計上します。「申告していない収入があった」ことが分かった時点で、その収入の行き先(口座・現金・使途)を確認することが、相続財産の漏れを防ぐ作業になります。
  • 相続税の申告の要否が変わる:把握されていなかった財産を加えると、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えて相続税の申告が必要になることがあります。逆に、無申告の税金を債務控除すると課税価格が下がります。両方を反映して申告の要否と税額を判定します。
  • 相続税の調査との関係:相続税の調査では、被相続人の過去の収入と相続財産の整合が確認されます。所得税の申告がないのに預金が多い、不動産収入があるのに申告がない、といった状況は把握されやすく、相続税の申告漏れと所得税の無申告の両方が指摘される典型例です。相続税の申告前に所得税の無申告を自主的に整理しておくことで、調査の指摘を受ける前の自主申告として加算税を抑えられます。

相続税の無申告の期間制限や、税務署からの「相続についてのお尋ね」の対応は「相続税の無申告の時効」「相続税の簡易な接触」で解説しています。

税務署への対応と相続税申告と並行して進める方法

被相続人の無申告が分かった後の進め方は、3つの期限(相続放棄3か月・準確定申告4か月・相続税申告10か月)を軸に組みます。

時期(相続開始から)すること
〜1か月被相続人の資料(通帳・契約書・申告書控え・固定資産の通知・取引先の請求書)を集め、収入の全体像と無申告の有無・年分を把握。相続人・相続財産の確認を並行
〜3か月無申告の税額の概算を出し、相続財産と比べて単純承認か放棄かを判断(必要なら期間伸長の申立て)。相続人間で方針を共有
〜4か月準確定申告(死亡年分)と、過年分の期限後申告をまとめて提出・納税。消費税があれば同時に。相続人全員の連署または各人の申告
4〜8か月加算税・住民税・事業税・国保の通知への対応。相続財産の評価、無申告収入の行き先(預金・現金)の確定、債務控除額の確定
〜10か月遺産分割協議、相続税の申告・納税。期限後申告で確定した本税と被相続人の責めによる附帯税を債務控除に反映

税務署からの連絡が先に来た場合(「相続についてのお尋ね」の文書、被相続人の所得税についての問い合わせ)は、文書の種類を確認し、行政指導の段階であれば速やかに自主申告の準備に入ります。回答は申告の内容と整合させる必要があるため、回答前に税理士に相談してください。相続人が複数いて一部の相続人が協力しない場合、各相続人は自分の相続分について単独で申告・納税できます(他の相続人に申告内容を通知する必要があります)。

当事務所では、無申告サポートと相続税申告サポートの両方の経験に基づき、被相続人の過年分の期限後申告・準確定申告・相続税申告を一つの窓口で進めています。相続放棄の判断材料となる税額の概算は、相談の初期段階でお出しします。

「亡くなった親の無申告」に関するよくある質問

A.相続人は被相続人の国税を納める義務を相続分に応じて承継するため、本税だけでなく、期限後申告に伴う無申告加算税・延滞税も相続人が納めます。ただし、これらは相続財産から支払う被相続人の債務という位置づけで、無申告加算税と相続開始までの延滞税は相続税の債務控除の対象になります。相続財産を超える負担を避けたい場合は、3か月以内の相続放棄・限定承認を検討します。

A.税務署が決定できる期間は原則5年なので、まず直近5年分の収入を通帳・契約書・取引先の記録で確認します。被相続人の過去の申告書控えが見つかれば、申告していた年分と内容が分かります。見つからない場合、相続人は被相続人の申告状況を税務署に照会する(申告書等閲覧サービス・納税証明書の交付請求)ことができ、どの年分が無申告かを把握できます。収入の規模や隠蔽の有無によっては7年分が必要になることもあるため、まず5年分の資料収集から始めます。

A.相続財産を処分すると単純承認したものとみなされ、放棄できなくなるのが原則です。ただし、相当額の葬儀費用を被相続人の預金から支払った場合は、社会的に相当な範囲であれば処分に当たらないと判断された裁判例もあります。個別の事情により結論が変わるため、放棄を検討している場合は、これ以上の預金の引き出しや財産の処分を止め、速やかに弁護士・司法書士に相談してください。税額の概算は当事務所で並行してお出しします。

A.相続開始時点で被相続人名義の預金はすべて相続財産で、申告していなかった収入の入金口座も例外ではありません。相続税の調査では被相続人の収入と預金残高の整合が確認されるため、計上しないと相続税の申告漏れとして加算税の対象になります。一方、その収入に係る所得税・住民税の未納分は債務控除で差し引けるため、両方を正しく反映した税額で申告するのが、結果として負担を最小にする方法です。

「亡くなった親に無申告の収入があったら?」まとめ

  • 被相続人の無申告の所得税・消費税は相続人が納税義務を承継し(国税通則法5条)、相続分に応じて期限後申告・納税する。加算税・延滞税も承継するが、自主申告で5%に抑えられる
  • 死亡年分は準確定申告(4か月以内)、それ以前の無申告年分は期限後申告(原則5年、不正は7年)。古い年分から資料を復元して同時に提出する
  • 相続財産を超える負担を避けるなら3か月以内に相続放棄・限定承認。預金の引き出し等の処分は単純承認とみなされるので、判断前に処分を止め、必要なら期間伸長を申し立てる
  • 期限後申告で確定した本税と、被相続人の責めによる無申告加算税・延滞税は相続税の債務控除。無申告収入の行き先の預金・現金は相続財産に計上し、申告の要否を再判定する
  • 3か月(放棄)・4か月(準確定申告)・10か月(相続税)の期限を軸に、資料収集→税額概算→所得税の申告→相続税の申告の順で並行して進める。税務署から先に連絡が来たら回答前に相談する

亡くなった方の無申告と相続税申告は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「親の無申告が何年分あるか、税額がいくらになるか知りたい」「相続放棄を判断するために概算を急いでほしい」「過年分の申告・準確定申告・相続税申告をまとめて任せたい」など、お気軽にご相談ください。無申告サポートと相続税申告サポートの両方を代表税理士が直接担当します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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