NFT取引でも無申告だとばれる?|課税タイミングを事例を交えて徹底解説

税理士の岩本隆一です。税務調査のご依頼募集中です。
NFT関連の相談を受けるようになって2年ほど経ちますが、最初に驚いたのは億単位で儲けている人が実際にいるということでした。
実際に相談に来られる方の中には、本当に数億円規模の利益を出している方がいらっしゃいます。そして、そういう方に限って「これって税金どうなるんですか?」と後から相談に来るんですよね。
今日は、NFTをやっている全ての方に知っておいてほしい税務の話を、分かりやすくお伝えしていきます。
NFT取引、税務署はどこまで把握してる?
ブロックチェーンは「透明な帳簿」
よく「暗号資産だから匿名性が高い」なんて言われますが、実はブロックチェーンって超透明なんです。
例えば、あなたがOpenSeaで100万円のNFTを売ったとします。その取引は:
- いつ売れたか
- いくらで売れたか
- どのウォレットからどのウォレットに移ったか
これら全てが永続的に記録されて、誰でも見ることができます。税務署にとっては、従来の現金取引よりもよっぽど追跡しやすいんです。
「バレない」は幻想です
実際のところ、以下のタイミングで税務署に情報が流れる可能性があります:
- 取引所からの情報提供:大手NFTマーケットプレイスは税務署と情報共有
- 銀行口座への入金:暗号資産を円に換金すれば記録が残る
- SNSでの発信:「○○万円で売れた!」なんてツイートも調査の端緒に
- 知人からの通報:意外と多いのがこれ
課税タイミングを具体例で解説
パターン1:NFTクリエイターの場合
事例:イラストレーターのAさんが、自作NFTを月50万円ペースで販売
- 課税タイミング:売却した瞬間
- 所得区分:継続的なら事業所得、単発なら雑所得
- 注意点:ソフトウェア代、素材費などの制作費用は経費計上可能
継続的に販売している場合は事業所得になる可能性が高く、青色申告の特典も受けられます。
パターン2:転売・投資目的の場合
事例:会社員のBさんが、10万円で買ったNFTを500万円で転売
- 課税タイミング:転売した時点
- 所得区分:雑所得
- 税額計算:490万円が課税対象(手数料等を除く)
年収500万円の会社員が490万円の雑所得を得た場合、所得税・住民税合わせて約160万円の追加税負担が発生します。
パターン3:無料配布(エアドロップ)の場合
事例:CさんがDiscordイベントで時価100万円のNFTを無料取得
- 課税タイミング:受け取った時点
- 所得区分:一時所得
- 注意点:一時所得は50万円の特別控除があるが、100万円なら50万円が課税対象
「タダでもらったのに税金?」と思うかもしれませんが、時価で課税されます。
パターン4:ゲームでの獲得
事例:DさんがPlay-to-EarnゲームでNFTアイテムを獲得
- 課税タイミング:獲得した時点
- 所得区分:雑所得
- 実務上の問題:時価算定が困難な場合が多い
ゲーム内アイテムの時価算定は実務上かなり難しく、税理士泣かせの分野です。
億稼いだ人の税金事情(実際の処理事例)
実際に億単位で稼いだ方の税務処理を担当した経験から、よくある問題とその対処法をお伝えします:
問題1:記録が残っていない → スプレッドシートで徹底管理
ある経営者の方は「気がついたら億稼いでた」状態で、取引記録がバラバラでした。OpenSeaの取引履歴だけでは税務申告に使えないため、以下の手順で整理しました:
実際の処理方法:
- OpenSea、Foundation等の全取引履歴をダウンロード
- ウォレットアドレスから全取引をEtherscanで確認
- 日付・NFT名・売買価格・手数料を一覧表に整理
- 円換算レート(取引日のETH/JPYレート)を記録
結果として、2年分で約300件の取引を整理し、正確な所得計算ができました。
問題2:時価算定の困難さ → 類似品の取引価格で算定
無料でもらったNFTが後に高額で取引されているケースでは、「受け取った時点での時価」の算定に苦労しました。
実際の処理方法:
- 同じコレクションの類似NFTの同時期の取引価格を調査
- Floor Price(最低価格)を参考にしつつ、レア度も考慮
- 複数の取引事例から妥当な時価を算定
- 税務署への説明資料として根拠を文書化
問題3:暗号資産との複雑な関係 → 二段階で損益計算
NFT取引はETHで行われるため、暗号資産の損益計算も発生します。
実際の処理例:
- 100万円でETHを購入
- そのETHが150万円に値上がりした時点でNFTを購入
- この時点で暗号資産取引による50万円の利益が発生
- さらにNFTを売却した際の損益を別途計算
この二段階の計算を全取引で行い、最終的に適正な所得金額を算定しました。
無申告がバレたらどうなる?
追徴税額の実例
仮に1億円の所得を無申告だった場合:
- 本来の税額:約4,500万円
- 無申告加算税:本来の税額の15-20%で約675-900万円
- 延滞税:年7.3-14.6%(期間により変動)
- 重加算税:隠蔽があれば本来の税額の35-40%で約1,575-1,800万円
悪質と判断された場合、合計で7,000万円近い負担になる可能性があります。
調査は過去に遡る
税務署は原則5年、悪質な場合は7年まで遡って調査できます。「2021年のNFTバブルで稼いだ分」も、今から調査される可能性があります。
絶対にやってほしい確定申告チェック
私が全てのNFT取引者に「これだけは絶対に」とお願いしているのは、確定申告が必要かどうかの確認です。
会社員の場合
- 雑所得が年間20万円を超える → 確定申告必要
- 一時所得が年間50万円を超える → 確定申告必要
個人事業主・フリーランスの場合
- NFT関連の所得があれば基本的に申告必要
学生・主婦の場合
- 所得が48万円(基礎控除額)を超える → 確定申告必要
「よくわからない」という場合は、まず税理士に相談することをお勧めします。
岩本隆一税理士事務所の強み
NFT税務は新しい分野なので、経験のある税理士はまだ多くありません。
当事務所では:
- 豊富な実務経験:億単位の案件も多数対応
- スピード対応:NFT市場は動きが早いので迅速な判断が必要
- 最新情報の把握:常に税制改正や実務の動向をチェック
もし「自分の取引が申告対象かわからない」「取引記録の整理方法がわからない」という場合は、お気軽にご相談ください。
NFT税務の未来予測
正直なところ、NFT関連の税制は今後も変わっていく可能性が高いです。現在の税制は従来の資産取引を前提としているので、NFTの特性に完全に対応しきれていない部分があります。
ただし、税制が変わるまでは現行法で対応するしかありません。「将来変わるかもしれないから今は申告しない」という選択肢はありえません。
まとめ:早めの対応が吉
NFT取引で利益が出た場合、以下の順序で対応してください:
- 取引記録の整理(日付、金額、取引相手等)
- 確定申告の要否判定
- 必要に応じて税理士への相談
- 期限内の確定申告
「バレないだろう」「少額だから大丈夫」という考えは非常に危険です。デジタル取引は記録が残りやすく、税務署にとって格好の調査対象になりつつあります。
NFTで得た利益は、しっかりと申告して、安心してデジタルアート市場を楽しんでください。
何か不明な点があれば、遠慮なく専門家にご相談を。NFT税務は複雑ですが、適切に対応すれば何も怖くありません。
一緒にNFT時代の税務を乗り切っていきましょう!