みなさんこんにちは、税理士の岩本隆一です。無申告や税務調査を多く取り扱っている税理士事務所を営んでいます。(いつでもお問い合わせください!!)
「税務署はブロックチェーンを見ている」説
突然ですが質問です。
「仮想通貨やNFTの売買で得た利益、ちゃんと確定申告していますか?」
「もちろん!」と胸を張って言えない方、この記事を読み進めてください。
ここだけの話、ブロックチェーンの取引はほぼ全てが追跡可能なのに、みんな「バレないでしょ」という謎の自信を持っています。でも今やガチで税務署もブロックチェーン分析してますからね。
というわけで今回は、「あとから税務調査で追徴課税40%ドカーン!」という悲劇を避けるための「仮想通貨・NFT課税タイミング」の話です。
「え?それも課税対象なの?」というやつ
まず超重要な基本知識から。
仮想通貨の利益は「雑所得」です。株の譲渡益とは全然違います。
雑所得=総合課税=最大税率55%(所得税45%+住民税10%+復興税)
株取引=申告分離課税=一律約20%
つまり「年収1000万円超えの会社員が仮想通貨で1000万円儲けたら500万円以上を税金で持っていかれる」という地獄絵図です。
それだけでも十分キツいのに、さらに落とし穴が…。
課税タイミング地獄の5パターン
①日本円に換金したとき(これは分かりやすい)
100万円でBTC買って→300万円で売った→差額200万円が所得
これは誰でも理解できますね。でも…
②仮想通貨同士の交換(ここで9割の人が死亡)
これ、超重要です!!!
ビットコインでイーサを買った時点で課税対象です。「円に戻してないから大丈夫」は完全に間違い。
例:100万円で買ったBTCが300万円まで上がった時点でETHに交換 →その時点で「BTCを売って300万円にして、その300万円でETH買った」とみなされる →200万円の所得が確定する
つまり「BTCからETHに替えただけ」なのに、200万円分の納税義務が発生しています。手元には現金ゼロなのに。
DEX使ってガンガン草コイン取引してた2021年クリプトバブル民、生きてますか…?
③仮想通貨で買い物したとき
これも意外と知られていません。BTC/ETHで商品を買うこと自体が課税イベントです。
例:10万円で買ったETHが30万円になった時点でそのETHでパソコン購入 →20万円の譲渡益として課税される
実用性と税制が真っ向衝突してますね。「暗号資産で決済したら確定申告書も一緒に提出してください」という日本の闇。
④マイニング・ステーキング報酬
これも盲点です。マイニングでBTC掘ったり、ステーキングでリワードもらった時点で、その時価が所得になります。
例:1ETHをステーキングして0.05ETHの報酬獲得(1ETH=30万円の時) →15万円の所得として課税
手元には円が入ってきてないのに、その時点での価値で納税義務が発生します。つまり…
「仮想通貨を掘ったその瞬間から納税の準備をしないと詰む」
というゲームが始まるわけです。
⑤NFT関連の闇
NFTも基本的には同じ考え方ですが、よりカオスです。
- NFT発行して売ったら→売上から経費引いた額が所得
- 持ってたNFT売ったら→売却額-取得額が所得
- NFT同士を交換したら→片方のNFTを時価売却したとみなされる
- ロイヤリティ入ったら→その時点で所得
特にNFTの交換は危険です。「1ETH=6000万円の時代」に、ボードエイプ同士を交換しただけで数千万円の課税イベントが発生した猛者もいるとか。
ハードフォーク・エアドロップの闇
突然「おめでとう!BTCキャッシュあげる!」とハードフォークやエアドロップでタダでもらった通貨も、受け取った時点で課税対象です。
「え、頼んでないのに?」
というツッコミは税務署には通用しません。正確には「市場で売買できるようになった時点」での価値が所得になります。
つまり「何もしてないのに納税義務が発生する」という意味不明な状況が起きます。
「うわ、やばい…」という人のための対処法
ここまでの話を読んで「完全にアウト」と気づいた方向けのアドバイスです。
記録管理が命
- 取引日時
- 取引した通貨名と数量
- 日本円換算額
- 取引所/DEX名
- 手数料
これらを全て記録しておかないと、後から「いくら儲けたか/損したか」が不可能になります。
特に法定通貨(円・ドル)を介さない取引こそ記録が重要です。後から「あれ?このETHはいくらで買ったんだっけ…?」となると詰みます。
税務署は取引所から情報を入手している
「匿名だから大丈夫」は幻想です。国内の取引所は顧客情報を税務署に提供することがあります。海外取引所も国際的な情報交換の枠組みで徐々に情報が共有されています。
「数百万〜数千万円の入出金があるのに申告していない」人は、そろそろ税務署からの「お手紙」を覚悟したほうがいいです。
無申告・過少申告のペナルティがエグい
- 無申告加算税: 納付税額の15%〜20%
- 重加算税: 悪質と判断されたら納付税額の35%〜40%
- 延滞税: 年2.4 %/8.7 %(年ごとに変動あり)
例:本来1000万円納めるべき税金を3年間無申告で悪質と判断された場合
1000万円(本税)+ 400万円(重加算税)+ 約200万円(延滞税)= 1600万円
さらにこれが複数年分…。
DEFIやNFTにも要注意
最近の税務調査では、DEFIやNFTの取引も対象になっています。特にNFTのミントや売買は比較的追跡しやすい取引です。
「メタマスクの秘密鍵を握っているのは自分だけだから」と過信せず、きちんと申告する習慣をつけましょう。
「もう詰んだ」と思ったらどうする?
過去に申告漏れがある場合、修正申告や期限後申告を自主的に行うことで、ペナルティを軽減できる可能性があります。
特に税務調査の「お手紙」が来る前に自主申告すれば、重加算税が課されない可能性も。
逆に言うと「気づいているのに放置」が最悪です。「税務署の取引把握能力は年々向上している」ことを忘れないでください。
妄想「日本の税制がこうだったらな」
- 仮想通貨も株と同じ申告分離課税(一律20%)だったら
- 仮想通貨同士の交換は非課税だったら
- 少額決済(例:10万円以下)は非課税だったら
- 損失の繰越控除が認められたら
…など、他国ではすでに導入されている仕組みもあるのに、日本はまだまだ遅れています。「Web3立国」とか言ってる場合じゃないですよね。
まとめ:自分の身は自分で守る
仮想通貨税制が整備されるまで、私たちに必要なのは「自己防衛」です。
- 全ての取引を記録する
- 課税タイミングを正しく理解する
- 納税資金を確保しておく
- 分からないことは専門家に相談する
特に「円に換金してないから申告不要」という誤解が最大の落とし穴です。
ブロックチェーン上の全取引は追跡可能であり、「時効」などと甘い考えは捨てましょう。税務署が本気を出せば、過去何年分でも追徴課税できます。
「知らなかった」は通用しません。でも「知って対策した」人は安心です。
当事務所では仮想通貨・NFT取引の税務相談を随時受け付けています。特に過去の申告漏れやガチャガチャした取引履歴の整理など、「もうどうしたらいいか分からない」という状況でもサポート可能です。気になることがあれば、お気軽にご相談ください!