マイクロ法人の税務調査で確認されやすい点|役員報酬・私的支出・社宅・外注費と準備資料
更新日:2026年11月6日
社長1人、または家族だけで運営する小さな会社(いわゆるマイクロ法人)でも、税務調査の対象になることはあります。調査で確認されやすいのは、役員報酬の決め方、会社のお金と社長個人のお金の区分、外注費の扱いなど、日々の経理の基本です。
この記事では、個人事業から法人成りした方や、1人社長の会社を運営している方に向けて、国税庁の公表資料をもとに確認ポイントと準備資料を整理します。特定の調査事例や当事務所の相談実績を紹介するものではありません。
税務の説明は、2026年11月6日に確認した国税庁の公表資料に基づきます。過去の事業年度を見直す場合は、その年度に適用される制度を確認してください。
マイクロ法人の税務調査で確認されやすい5つのポイント
「マイクロ法人」は法律上の用語ではなく、社長1人などごく小規模な会社を指す呼び方です。会社の規模が小さくても、法人税・消費税・源泉所得税のルールは同じように適用されます。社長が会社の業務も経理も担うため、次の点が確認されやすくなります。
- 役員報酬:定期同額給与の要件を満たしているか、期の途中で金額を変えていないか。
- 私的な支出:社長や家族の個人的な費用を会社の経費にしていないか。
- 役員社宅:社長から受け取る家賃が、税務上の賃貸料相当額を下回っていないか。
- 外注費:継続的に依頼している個人への支払が、実態として給与に当たらないか。
- 法人成り前後の区分:個人事業の売上・経費と会社の売上・経費が正しく分かれているか。
役員報酬は「毎月同額」と「改定の時期」を守る
役員報酬を会社の損金にするには、原則として、毎月同額を支給する定期同額給与など、法人税法で定められた形にする必要があります。定期同額給与の金額を変更(改定)できるのは、原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日までです。役員の職務内容の重大な変更などによる改定(臨時改定事由)や、業績の著しい悪化による減額の改定(業績悪化改定事由)も認められています。
また、これらの形に当てはまる場合でも、不相当に高額な部分は損金になりません。根拠は国税庁「No.5211 役員に対する給与」です。設立初年度の決め方は設立初年度の役員報酬の決め方で解説しています。
事業年度が4月1日~翌年3月31日の会社を例に、定期同額給与の原則的な改定時期を示した図です。
報酬額を決めた株主総会や取締役会の議事録を残しておくと、いつ・いくらに決めたかを説明しやすくなります。
社長個人の支出を会社が負担すると、役員給与として扱われる
会社が役員の個人的な費用を負担した場合、その金額は役員に対する経済的な利益、つまり給与として扱われます。毎月おおむね一定でなければ定期同額給与に当たらず、損金になりません。さらに、給与として源泉徴収が必要になる場合もあります(国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」)。
支出を3つに分けて考えると、整理しやすくなります。
- 取引先との打合せ・接待で、相手や目的を記録したもの
- 業務に使う通信費・ソフト・備品
- 業務のための出張旅費(旅費規程に沿ったもの)
- 家族の食事・旅行・日用品
- 業務と関係のない買い物や趣味の費用
- 個人の税金・社会保険料の本人負担分
- 会社用と個人用で、預金口座とクレジットカードを分ける
- 会議費・交際費の領収書には、相手先・人数・目的をメモする
- 社長が立て替えた経費は、経費精算書で会社から精算する
法人の交際費等には損金算入の上限があり、期末資本金1億円以下などの中小法人は、年800万円の定額控除限度額か接待飲食費の50%かを基準に計算します。1人当たり10,000円以下の飲食費(社内の役員・従業員等だけで行う飲食を除く)は、一定の事項を記載した書類を保存すれば交際費等から除かれます(国税庁「No.5265」)。社長個人の口座や役員貸付金の確認点は、法人の税務調査で社長個人の口座・役員貸付金はどう見られる?をご覧ください。
国税庁が公表した事例:理事長の私的な買い物を仕入高に仮装したケース
国税庁の「令和6年度 査察の概要」では、医療法人が、理事長の私的な高級腕時計の購入代金を診療材料の仕入高に仮装して計上し、法人税を免れていたとして告発された事案が紹介されています。
査察(強制調査)で告発された悪質な事案ですが、役員の個人的な買い物を会社の経費や仕入に紛れ込ませると、税務上大きな問題になることを示しています。社長と会社のお金が混ざりやすい小さな会社ほど、口座やカードを分け、支出ごとに業務との関係を記録しておくことが大切です。
役員社宅は、税務上の賃貸料相当額を受け取る
会社が借りた住宅を社長に社宅として貸す場合、社長から受け取る家賃が税務上の賃貸料相当額より低いと、その差額は社長への給与として扱われます。無償で貸すと、賃貸料相当額の全額が給与になります。
賃貸料相当額は、住宅の床面積などに応じて、固定資産税の課税標準額をもとに計算します。小規模な住宅(法定耐用年数30年以下の建物は床面積132㎡以下、30年超の建物は99㎡以下)は、会社が借り上げた住宅でも、固定資産税の課税標準額と床面積による算式で計算します。小規模な住宅に当たらない住宅を借り上げた場合は、会社が家主に支払う家賃の50%と、所定の算式による額のいずれか多い額が基準です。現金で住宅手当を支給する場合や、社長が自分で契約した住宅の家賃を会社が負担する場合は、社宅の貸与とは認められず、給与として課税されます。詳しくは国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」で確認できます。
継続して依頼している個人への外注費は、実態を確認する
デザイン・動画編集・事務作業などを個人に継続して依頼している場合、契約の名称が「業務委託」でも、時間的な拘束や具体的な指揮監督があるなど実態が雇用に近ければ、給与と判断されることがあります。給与と判断されると、源泉徴収が必要になり、消費税の仕入税額控除も認められません。
判定の考え方は消費税法基本通達1-1-1に示されています。具体的な判定要素は、建設業の税務調査で確認されやすい点の図解でも整理しています。
法人成りした年は、個人と会社の取引を分ける
個人事業から法人成りした年は、個人事業の廃業日までの売上・経費は個人の確定申告に、会社設立後の取引は会社の申告に含めます。設立前に個人で契約した取引先の売上がどちらに入るか、個人名義の口座に入金された会社の売上がないかを確認しておきましょう。
個人から会社へ引き継いだ資産・負債や最後の確定申告の注意点は、法人成りの手続きで解説しています。設立初年度の消費税とインボイス登録は、設立初年度の消費税をご覧ください。
税務調査の前に準備しておきたい資料
- 定款、株主総会・取締役会の議事録(役員報酬の決定・改定)
- 総勘定元帳・仕訳帳、決算書、申告書の控え
- 会社名義の預金通帳・クレジットカードの明細
- 請求書・領収書、経費精算書、旅費規程
- 社宅の賃貸借契約書と、賃貸料相当額の計算資料
- 外注先との契約書・請求書、源泉所得税の納付書の控え
- 法人成りの年の個人の確定申告書の控え
帳簿書類の保存期間は帳簿・領収書は何年保存する?、調査全体の流れと準備は税務調査の事前準備チェックリストも参考にしてください。
誤りに気づいたとき・指摘を受けたとき
私的な支出の計上などの誤りに気づいた場合は、調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をすることで、加算税の扱いが変わることがあります。調査で修正申告を勧められた場合、応じるかどうかは納税者の判断です(国税庁「税務調査手続に関するFAQ」)。法人税を修正すると、法人住民税・事業税にも影響します。法人税を修正するときの地方税もあわせてご覧ください。
まとめ:小さな会社ほど、会社と個人の線引きを記録で示す
- 役員報酬は定期同額給与などの要件に沿って決め、改定は原則として期首から3か月以内に行います。
- 社長個人の費用を会社が負担すると、役員給与として扱われ、損金にならないことがあります。
- 役員社宅は賃貸料相当額を受け取り、外注費は実態が雇用に近くないか確認します。
- 法人成りの年は、個人と会社の売上・経費を分け、議事録・契約書・精算書を残します。
この記事は一般的な情報であり、個別の取引の判定を確定するものではありません。役員報酬の設定や会社と個人の区分に不安がある場合は、議事録・通帳・領収書をそろえて税理士に相談してください。
当事務所の対応内容は、税務調査サポートのご案内をご覧ください。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
税務・申告に関するご相談を承ります。
「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。LINEでのご相談も承ります。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。
お電話でのご相談
045-900-6098
電話受付:平日9〜17時、土日祝・夜間は事前予約
横浜市地域密着・
スピード対応
横浜市全域対応
横浜市全域
鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、港南区、保土ケ谷区、旭区、磯子区、金沢区、港北区、緑区、青葉区、都筑区、戸塚区、栄区、泉区、瀬谷区
※横浜市地域密着で対応しております。資料のやり取りは郵送やデータ共有でも可能です。





