社会福祉法人に法人税はかかる?収益事業(34業種)の判定と申告が必要になるケース

社会福祉法人に法人税はかかる?収益事業(34業種)の判定と申告が必要になるケース

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「社会福祉法人は法人税がかからないと聞いていたので、申告はしていません」――これは半分正しく、半分は危険な理解です。社会福祉法人は、本業である社会福祉事業には法人税がかかりませんが、法人税法で「収益事業」とされる34業種に当たる事業を継続して行っていれば、その所得には法人税がかかり、申告が必要になります。駐車場の外部貸し、施設の一部のテナント貸し、売店や自動販売機、市町村からの受託事業など、「本業のついで」に始めたものが収益事業に該当していた、というケースは珍しくありません。

この記事では、社会福祉法人の法人税の仕組み、介護・障害福祉・保育などの本業が課税されない根拠、収益事業に該当しやすい事業の具体例、該当した場合の届出・計算・申告の流れを整理します。本記事は2026年11月6日時点の法人税法・同施行令・国税庁の通達および質疑応答事例に基づいています。

社会福祉法人の法人税は「収益事業の所得」にだけかかる

社会福祉法人は、法人税法上「公益法人等」(法人税法第2条第6号・別表第二)に区分されます。公益法人等は、各事業年度の所得のうち「収益事業から生じた所得」に対してのみ法人税が課され、それ以外の所得には課されません(法人税法第4条第1項・第7条)。

ここでいう「収益事業」は、法人の本来の目的かどうかや、利益を目的としているかどうかで判断するものではありません。法人税法第2条第13号と法人税法施行令第5条第1項に列挙された34の業種(物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業)のいずれかに該当し、かつ「継続して、事業場を設けて行われるもの」が収益事業です。その事業に付随して行われる行為も含まれます。

つまり判定の順番は、①34業種のどれかに当たるか、②継続して事業場を設けて行っているか、③施行令や通達で除外されるものに当たらないか、の3段階です。利益が出ているかどうか、金額が大きいかどうかは、該当・非該当の判定には関係ありません。

収益事業かどうかの判定の順番

利益が出ているかどうかや金額の大小は、判定には関係しません。

34業種に当たるか物品販売業・不動産貸付業・駐車場業・請負業など、法人税法施行令に列挙された34業種のいずれかに当たるかを確認します。
継続して事業場を設けているか継続して事業場を設けて行っているかを確認します。一度きりのバザーなどは「継続」に当たりません。
除外規定に当たらないか社会福祉法人が行う医療保健業や、障害者等が従事者の半数以上を占める事業などは、収益事業から除かれます。
収益事業に該当したら開始から2か月以内の収益事業開始届出書の提出、区分経理、所得の計算と申告が必要になります。
本業は非課税でも、駐車場の外部貸しや売店などの「ついでの事業」は判定が必要です。
出典:法人税法第2条第13号、法人税法施行令第5条、法人税法第150条。本文の説明を図にまとめたものです。

介護・障害福祉・保育などの本業はなぜ課税されないのか

社会福祉法人の本業の多くが法人税の対象にならないのには、それぞれ根拠があります。

  • 介護保険サービス・障害福祉サービス=「医療保健業」の除外規定:国税庁は平成12年の通達で、介護保険法に基づく介護サービス事業(福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修を除く)を「医療保健業」に当たるものとして扱っています。障害福祉サービスも、医療保健業または請負業に該当するというのが国税庁の考え方です。ただし、法人税法施行令第5条第1項第29号ロで「社会福祉法人が行う医療保健業」は収益事業から除かれています。特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護、居宅介護支援、障害者支援施設などを社会福祉法人が運営する場合に法人税がかからないのは、この除外規定があるからです。
  • 保育所・学童保育・児童養護施設など=34業種に当たらない:保育や児童福祉の事業は、34業種のどれにも該当しません。なお「技芸教授業」(第30号)は、洋裁・料理・茶道・生花・音楽・書道・自動車操縦など法令で限定列挙された技芸や、学力の教授(学習塾など)に限られます。
  • 障害者等が従事する事業=第2項第2号の除外規定:34業種に当たる事業でも、その事業に従事する者の半数以上が身体障害者・知的障害者・精神障害者・生活保護受給者・65歳以上の者などで、その事業がこれらの方々の生活の保護に寄与している場合は、収益事業に含まれません(法人税法施行令第5条第2項第2号、法人税基本通達15-1-8)。就労継続支援の生産活動(製品の製造・販売、受託作業)が課税されないことが多いのは、この規定によるものです。
  • 実費弁償による受託事業=税務署長の確認:市町村などからの委託事業で、委託の対価が実費弁償の範囲にとどまり、剰余金が生じないことについて事前に税務署長の確認を受けた場合は、請負業であっても収益事業として扱われません(法人税基本通達15-1-28)。

注意したいのは、これらの除外のうち「社会福祉法人が行う医療保健業」の除外は社会福祉法人にだけ適用されるという点です。同じ介護事業をNPO法人や一般社団法人(非営利型)が行う場合は、医療保健業として収益事業に該当し、法人税の申告が必要になります。国税庁の質疑応答事例でも、NPO法人が行う障害福祉サービスは原則として収益事業に該当すると示されています。法人格によって扱いが変わる点は、同じ事業を行っていても見落としやすいところです。

国税不服審判所の公表裁決事例:従事者の半数以上が高齢者でも除外されなかった例

市の施設の指定管理を受託していた特定非営利活動法人が、事業の従事者の半数以上が65歳以上であることから、法人税法施行令第5条第2項第2号により収益事業に当たらないとして更正の請求をした事案があります(令和2年3月5日裁決)。

国税不服審判所は、付随するカルチャー教室や自動販売機の設置手数料も含めて全体を一つの請負業と認めました。そのうえで「生活の保護に寄与している」かは、事業の利益に人件費の総額を加えた金額のうち特定従事者への給与等が相当部分を占めるかで判断するとし、その割合が約40%・約48%と過半に満たないため、除外規定には当たらないとしています。

社会福祉法人も同じ規定の対象です。従事者の人数の割合だけでなく、給与等の支給割合まで確認できる資料を残しておくことが大切です。

出典:国税不服審判所 公表裁決事例(令和2年3月5日裁決)

社会福祉法人で収益事業に該当しやすい8つの事業

実務で「収益事業に該当するのに申告していなかった」という例が多いのは、次のような事業です。

  • 駐車場の外部貸し(駐車場業):施設の駐車場の空きスペースを近隣住民や事業者に月極で貸す、コインパーキング事業者に貸す、といったケースです。利用者・職員のための駐車場を無償で使わせているだけなら該当しませんが、対価を取って外部に貸せば駐車場業(第31号)または不動産貸付業に当たります。
  • 施設の一部や土地の貸付け(不動産貸付業):建物の一部をテナント(コンビニ、クリニック、カフェなど)に貸す、屋上を携帯電話基地局に貸す、職員以外の第三者に住宅を貸す、といったケースです。国・地方公共団体への貸付けなど一部の例外を除き、不動産貸付業(第5号)に該当します。
  • 売店・物品販売(物品販売業):施設内の売店で飲料・日用品・おむつなどを仕入れて販売する場合は物品販売業(第1号)に当たります。利用者だけを対象に実費程度で提供しているものは実態で判断されますが、外部の人も利用できる売店や、仕入値に利益を乗せて販売しているものは該当すると考えてください。
  • 自動販売機:法人が飲料を仕入れて販売しているなら物品販売業、設置業者に場所を貸して手数料を受け取っているなら不動産貸付業として扱われるのが一般的です。「自販機の手数料は少額だから」という理由で非課税になるわけではありません。
  • 会議室・ホールの貸出し(席貸業):地域団体や企業に会議室を有料で貸す場合は席貸業(第14号)に当たります。国・地方公共団体の用に供するための席貸しなどは除外されます。
  • 受託事業(請負業):市町村から地域包括支援センターや相談事業、調査事業、給食事業などを受託している場合は請負業(第10号)に当たります。実費弁償であることについて税務署長の確認を受けていれば除外されますが、確認を受けずに「委託だから非課税」と思い込んでいるケースが目立ちます。
  • 福祉用具の貸与・販売、住宅改修:介護保険の事業であっても、福祉用具貸与は物品貸付業、特定福祉用具販売は物品販売業、住宅改修は請負業として扱われ、「医療保健業」の除外規定の対象外です。社会福祉法人であっても収益事業に該当する可能性が高いので、これらの事業がある法人は個別に確認が必要です。
  • 就労支援の生産活動(製造業・物品販売業):パンや弁当の製造販売、受託作業などは製造業・物品販売業・請負業に当たりますが、前述の「従事する者の半数以上が障害者等」の要件を満たせば除外されます。要件を満たしているかどうかの判定資料(従事者の構成)を残しておくことが重要です。

このほか、研修事業や講座(技芸教授業に該当する内容かどうか)、職員向けの食堂、法人所有の有価証券の運用(金銭貸付業には当たりませんが、受取配当などの扱いに注意)、他法人への事務代行(請負業)なども、内容によっては収益事業になります。

判定で迷いやすい5つのポイント

  • 金額の大小は関係ない:年間数十万円の駐車場収入でも、要件を満たせば収益事業です。小さいから申告不要、という規定はありません。
  • 「継続して事業場を設けて」の意味:一度きりのバザーやチャリティイベントは「継続」に当たりません。一方、年1回でも毎年繰り返していれば継続と見られることがあります。
  • 利用者限定かどうか:施設の利用者だけを対象にした実費程度のサービスは、実態によって収益事業に当たらないと判断される余地がありますが、「利用者向けだから」という理由だけで自動的に除外されるわけではありません。
  • 社会福祉法上の「収益事業」と法人税法上の「収益事業」は別物:定款で「収益事業」と位置づけていなくても、法人税法上は収益事業に当たることがあります。逆に定款上の収益事業が法人税法上は非課税になることもあります。
  • 消費税の判定はさらに別:法人税の収益事業に当たるかどうかと、消費税の課税取引かどうかは別の基準で判断します。たとえば介護保険サービスは法人税では「医療保健業(除外)」、消費税では「非課税」であり、根拠が異なります。

収益事業に該当したら|届出・区分経理・所得計算・みなし寄附金

収益事業に該当する事業がある場合の手続きと計算の流れは次のとおりです。

  • 収益事業開始届出書の提出:収益事業を開始した日から2か月以内に、所轄の税務署長へ提出します(法人税法第150条)。あわせて、都道府県税事務所と市町村にも法人設立・開始の届出が必要です。
  • 区分経理:収益事業の資産・負債・損益を、それ以外の事業と区分して経理します。社会福祉法人会計基準では、事業区分「収益事業」として別の拠点区分で計算書類を作ることになっています。共通する経費(事務職員の人件費、本部の家賃、減価償却費など)は、面積・人員・収入比など合理的な基準で配分し、その基準を書面に残します。
  • 所得の計算:収益事業の収入から、直接かかった費用と配分した共通費を差し引いて所得を計算します。収益事業の資産を非収益事業に使ったときの扱いなど、細かなルールは法人税基本通達15-2-1以下に定められています。
  • みなし寄附金:収益事業から社会福祉事業(非収益事業)へ資金を繰り入れた金額は、寄附金とみなして損金に算入できます。社会福祉法人の限度額は「収益事業の所得の50%」と「年200万円」のいずれか大きい金額です(法人税法第37条第5項、同施行令第73条第1項第3号)。所得が200万円以下であれば、全額を繰り入れることで課税所得をゼロにできます。ただし、事業年度内に実際に繰入れの経理処理をしていることが条件です。
  • 税率と申告期限:公益法人等である社会福祉法人の法人税率は19%で、年800万円以下の所得には15%の軽減税率が適用されます(2026年11月時点)。申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、3月決算なら5月末です。申告期限の延長の特例を受けていても、納付期限は延長されないため見込納付が必要です。
  • 地方税:収益事業を行う社会福祉法人は、法人住民税(法人税割・均等割)と法人事業税の対象になります。収益事業を行わない社会福祉法人は、法人住民税の均等割も非課税です。なお地方税には、収益事業の所得の90%以上を社会福祉事業に充てる場合に課税対象から除く取扱い(地方税法施行令第7条の4など)があり、自治体への申請・確認が必要です。

収益事業がない法人も忘れてはいけない届出

収益事業を行っていない社会福祉法人でも、年間の収入金額(寄附金・補助金・介護報酬などの合計)が8,000万円を超える事業年度は、事業年度終了後4か月以内に損益計算書または収支計算書を所轄税務署へ提出する義務があります。これは申告ではなく書類の提出ですが、忘れている法人が少なくありません。また、収益事業を始めたのに届出を出していなかった場合は、気づいた時点で開始届を提出し、過去の事業年度分は期限後申告で整理します。期限後申告には無申告加算税・延滞税がかかりますが、税務署の調査を受ける前に自主的に申告すれば加算税は軽減されます。

当事務所では、横浜市内の社会福祉法人を中心に、収益事業に該当するかどうかの判定、収益事業開始届・区分経理の整備、みなし寄附金を活用した法人税・地方税の申告、過去分の期限後申告までサポートしています。指導監査で「収益事業の会計が区分されていない」と指摘されたケースの立て直しも対応しています。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。

まとめ:「本業は非課税、ついでの事業は要判定」と覚える

社会福祉法人の法人税は、介護・障害福祉・保育などの本業には原則かかりませんが、駐車場・不動産貸付・売店・受託事業・福祉用具など「ついでの事業」は34業種に当てはめて判定する必要があります。該当すれば、開始届、区分経理、みなし寄附金を使った申告という流れになります。判定に迷う事業がある場合は、金額の大小にかかわらず、一度専門家と一緒に整理しておくことをおすすめします。指導監査で見られる会計面の論点は「社会福祉法人の指導監査とは?」で、決算・会計の全体像は「社会福祉法人の決算・会計の基本」で解説しています。

「社会福祉法人の法人税と収益事業」まとめ

  • 社会福祉法人は公益法人等。法人税がかかるのは法人税法上の「収益事業」(34業種・継続・事業場)の所得だけ
  • 介護保険・障害福祉サービスは医療保健業だが、「社会福祉法人が行う医療保健業」は除外(施行令第5条第1項第29号ロ)。保育は34業種に当たらない
  • 障害者等が従事者の半数以上を占める事業(第2項第2号)、実費弁償の受託事業(税務署長の確認)も除外
  • 該当しやすいのは、駐車場の外部貸し、テナント・基地局の貸付、売店、自動販売機、会議室の貸出し、受託事業、福祉用具貸与・販売・住宅改修
  • 該当したら、2か月以内に開始届→区分経理→所得計算→みなし寄附金(所得の50%か200万円の大きい方)→申告(税率19%・800万円以下15%)
  • 収益事業がなくても、年間収入8,000万円超なら4か月以内に損益計算書等を提出

「社会福祉法人の法人税」に関するよくある質問

A.金額の大小で申告の要否が変わる規定はありません。継続して対価を受け取って外部に貸しているなら駐車場業(または不動産貸付業)に該当し、収益事業開始届の提出と申告が必要です。ただし、駐車場に直接かかる費用(舗装・区画線・固定資産税の按分など)と共通費の配分を差し引くと所得は小さくなり、さらに所得を社会福祉事業に繰り入れれば、みなし寄附金(最低200万円まで)で課税所得をゼロにできる可能性が高いです。「税額がゼロになるから申告不要」ではなく、「申告したうえで税額がゼロになる」という点を区別してください。

A.法人が商品を仕入れて販売しているなら物品販売業、設置業者に場所を提供して手数料を受け取っているなら不動産貸付業として、収益事業に該当するのが原則です。利用者だけを対象に実費程度で提供している売店は実態で判断される余地がありますが、職員や来訪者も利用でき、利益を乗せて販売しているなら該当すると考えてください。売上・仕入・手数料の記録を事業ごとに分けておき、判定に迷う場合は税務署または税理士に確認することをおすすめします。

A.まず、どの事業がいつから収益事業に該当していたかを整理し、収益事業開始届を提出したうえで、該当する事業年度分の期限後申告を行います。過去の年度についても、収入・直接費・共通費の配分を事業年度ごとに集計し、みなし寄附金の適用を検討します(ただし、みなし寄附金は事業年度中に繰入れの経理処理をしていることが要件なので、過去分は適用できないことがあります)。期限後申告には無申告加算税と延滞税がかかりますが、税務署からの指摘を受ける前に自主的に申告すれば無申告加算税は軽減されます。所轄庁の指導監査でも収益事業の区分経理と申告状況は確認される項目なので、早めの整理をおすすめします。

社会福祉法人の法人税・収益事業の判定は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「この収入は収益事業になるのか判定してほしい」「開始届と区分経理を整えたい」「過去分の申告をまとめて整理したい」など、社会福祉法人の会計・税務のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の法人を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

税務・申告に関するご相談を承ります。

「税金のことが分からない」「税務署から連絡が来て不安だ」「申告期限が迫っている」など、
どんなことでも一人で悩まずご相談ください。横浜市密着の岩本隆一税理士事務所が、税務・申告についてサポートします。
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