介護報酬・給付費の入金管理|国保連からの入金と未収金の照合、返戻・過誤調整の仕訳

介護報酬・給付費の入金管理|国保連からの入金と未収金の照合、返戻・過誤調整の仕訳

横浜市で社会福祉法人・介護事業者のサポートを手掛ける、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。

「国保連からの入金が請求した額と合わない」「返戻になった分はどう仕訳すればいいのか」「過誤調整で入金が減ったけれど、帳簿のどこを直せばいいのか」――介護事業所の経理担当の方から、毎月のようにいただくご相談です。介護報酬は、利用者負担(1〜3割)を除いた7〜9割が国民健康保険団体連合会(国保連)を通じて、サービス提供月の約2か月後に入金されます。この「2か月のずれ」と、返戻・保留・過誤という国保連特有の調整があるため、入金ベースで経理をしていると、月次の収益も決算の未収金も正しく把握できなくなります。

この記事では、介護報酬の請求から入金までの流れ、サービス提供月に収益と未収金を計上する会計処理、国保連の通知書と請求データ・会計帳簿を毎月突き合わせる照合の手順、返戻・保留・過誤の違いと仕訳、利用者負担金の未収管理を整理します。本記事は2026年11月6日時点の制度・会計基準に基づいています。

介護報酬の請求から入金までの流れ|2か月サイクルを押さえる

介護保険サービスの対価(介護報酬)は、利用者負担分を事業所が利用者から直接受け取り、残りの保険給付分を事業所が利用者に代わって国保連に請求します(代理受領)。流れは次のとおりです。

介護報酬の請求から入金まで

保険給付分は国保連に請求し、サービス提供月のおおむね2か月後に入金されます。

サービス提供月(例:4月)提供実績を記録し、利用者ごとの実績を確定します。会計では、この月に収益と事業未収金を計上します。
翌月10日までに請求介護給付費請求書・明細書を国保連に伝送します。居宅サービスは給付管理票と内容が突合されます。
国保連の審査(翌月中)受給者台帳や給付管理票と照合され、エラーがあれば返戻・保留になります。
支払決定・入金(翌々月)支払決定額通知書が届き、おおむね請求月の翌月末ごろに入金されます。支払日は所属の国保連で確認します。
未収金の消し込みと照合入金で事業未収金を消し込み、請求額と支払決定額の差を返戻・保留・過誤調整に分けて確認します。
介護報酬は入金した月ではなく、サービスを提供した月の収益として計上します。
本文の説明を図にまとめたものです。支払日は都道府県の国保連ごとに異なるため、年間スケジュールをご確認ください。
  • サービス提供月(例:4月):サービス提供の実績を記録し、利用者ごとの提供票・実績を確定します。
  • 翌月1日〜10日(5月):介護給付費請求書・明細書を国保連に伝送(インターネット請求)で提出します。居宅サービスの場合、居宅介護支援事業所が提出する給付管理票と内容が突合されます。
  • 審査(5月中):国保連が受給者台帳(被保険者番号、認定の有効期間、負担割合など)や給付管理票と照合し、エラーがあれば返戻・保留となります。
  • 支払決定・入金(6月):審査を通った分について支払決定額通知書が届き、おおむね請求月の翌月末ごろ(サービス提供月の翌々月)に入金されます。支払日は都道府県の国保連によって異なるため、所属の国保連の年間スケジュールを確認してください。

請求期限(翌月10日)を過ぎた分や返戻になった分は、翌月以降に「月遅れ請求」ができます。ただし介護報酬の請求権は2年で時効により消滅するとされており(起算日はサービス提供月の翌々月1日)、返戻の放置は回収不能に直結します。なお、障害福祉サービス等の給付費も国保連経由で請求しますが、支払スケジュールは介護保険とは異なります。

収益と未収金の会計処理|入金時ではなくサービス提供月に計上する

介護報酬は、入金があった月ではなく、サービスを提供した月の収益として計上します(発生主義)。社会福祉法人会計基準では「介護保険事業収益」の内訳として、介護報酬収益、利用者負担金収益(公費)、利用者負担金収益(一般)などの科目を使います。株式会社やNPO法人であっても、収益の認識時期は同じ考え方です。

4月分のサービス提供額が総額100万円(利用者負担1割)の場合の仕訳例です。

  • 4月末(サービス提供月):事業未収金(国保連)900,000 / 介護保険事業収益(介護報酬収益)900,000、事業未収金(利用者)100,000 / 介護保険事業収益(利用者負担金収益)100,000
  • 5月(利用者負担分の口座振替):現金預金 100,000 / 事業未収金(利用者)100,000
  • 6月末(国保連からの入金):現金預金 900,000 / 事業未収金(国保連)900,000

事業未収金は、国保連分と利用者分で補助科目を分けておくと、後述の照合が格段にやりやすくなります。入金時に収益を計上する「現金主義」で処理していると、月次の収益が2か月遅れて表示され、決算では直近2か月分の未収金が漏れます。消費税の課税・非課税の区分(介護保険サービスは原則非課税)を正しく判定するうえでも、サービス提供月ベースの集計が前提になります(「社会福祉法人・介護事業の消費税」参照)。

毎月の照合|国保連の通知書・請求データ・会計帳簿を突き合わせる

国保連からは、支払決定の都度、「介護給付費等支払決定額通知書」「支払決定額内訳書」「返戻(保留)一覧表」が届き、過誤申立をした月には「過誤決定通知書」も届きます。これらと請求ソフトのデータ、会計帳簿の事業未収金を、次の順番で毎月照合します。

  • 請求確定額と未収金計上額の一致:請求ソフトで確定した国保連請求額(利用者ごとの保険給付分の合計)と、会計に計上した事業未収金(国保連)の当月発生額を一致させます。ここがずれていると、以降の照合がすべて狂います。
  • 請求額と支払決定額の差額の分解:支払決定額通知書の決定額と請求額との差額を、返戻・保留・過誤調整の3つに分解し、返戻(保留)一覧表・過誤決定通知書の金額と一致することを確認します。
  • 支払決定額と入金額の一致:通常は決定額どおりの金額が振り込まれます。差があれば、国保連に照会します。
  • 利用者負担分の照合:利用者への請求書発行額と口座振替結果・現金収受額を照合し、未収者の一覧を作ります。
  • 未収金残高の明細作成:月末時点の事業未収金残高を、発生月別・相手先別(国保連・利用者・公費)の明細にして、2か月を超えて残っている金額の原因を調べます。

差額の原因として多いのは、返戻・保留・過誤調整のほか、加算の算定漏れや請求漏れ、月遅れ請求分の入金、負担割合証の更新(毎年8月)による利用者負担割合の変更、生活保護受給者など公費負担分の取り扱いです。

返戻・保留・過誤の違いと仕訳

国保連の審査で生じる3つの調整は、性質も会計処理も異なります。

  • 返戻:審査でエラーとなり、その請求(明細書単位)が支払われないものです。原因は、被保険者番号や生年月日の誤り、認定有効期間外のサービス、給付管理票との不一致、支給限度額の超過、加算の算定要件(体制届)との不一致などです。原因を修正して翌月以降に再請求します。会計上は、収益が正しい金額で計上されていれば修正は不要で、事業未収金のまま残して再請求後の入金で消し込みます。請求内容の誤りで金額が変わる場合は、収益を修正します。
  • 保留:居宅介護支援事業所の給付管理票が未提出などの理由で、審査が一定期間保留されるものです。期間内に給付管理票が提出されれば支払われ、提出されなければ返戻になります。居宅介護支援事業所に連絡して提出を促し、会計上は返戻と同様に事業未収金のまま管理します。
  • 過誤:すでに支払われた請求に誤りがあった場合に、保険者(市町村)へ過誤申立を行い、国保連が翌月以降の支払額から調整するものです。「通常過誤」では、申立月の翌月に当該請求の全額が減額され、正しい内容の再請求は翌月以降になるため、一時的に入金が減ります。「同月過誤」では、過誤申立と再請求を同じ月に行い、差額だけが調整されます(保険者が認めている場合)。

過誤調整の仕訳例です。前月に請求して入金済みの加算5万円を取り下げ(当期分)、当月の支払決定額90万円から調整された場合は、取下げ時に「介護保険事業収益 50,000 / 事業未収金(国保連)50,000」として収益を減額し、入金時に「現金預金 850,000 / 事業未収金(国保連)850,000」とします。過誤決定通知書の調整額と帳簿の減額が一致していることを確認してください。少なく請求していた分を追加で請求する場合は、再請求分の収益を追加計上します。前期以前の請求にかかる過誤は、金額の重要性に応じて処理方法を判断します。

利用者負担金の未収と徴収不能の処理

国保連分の未収金は再請求で回収できるのが普通ですが、利用者負担分は回収できなくなるリスクがあります。口座振替の残高不足、入院や死亡による請求先の変更、家族間の支払いの滞りなどが典型です。未収が発生したら、督促の日付と内容を記録し、連帯保証人や家族への連絡、分割払いの合意など、段階を決めて対応します。

決算では、事業未収金のうち回収できない見込みの金額を徴収不能引当金として計上し、回収不能が確定した分は徴収不能額として処理します。社会福祉法人の場合、事業未収金の内容と滞留状況は指導監査でも確認される項目で、「残高の内訳が説明できない」「長期間残っている未収金の回収見込みが不明」といった状態は指摘につながります(「社会福祉法人の指導監査とは?」参照)。

資金繰りへの影響と、当事務所のサポート

介護報酬は約2か月後に入金されるため、開業時や新規事業の立ち上げ時には、少なくとも2〜3か月分の人件費・家賃を賄う運転資金が必要です。国保連の支払スケジュールに基づく入金予定表を作り、返戻・過誤による入金の減少を見込んでおくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。請求債権を早期に資金化するサービスも存在しますが、手数料と契約条件を十分に確認してから判断してください。

当事務所では、横浜市内の介護事業所・社会福祉法人を中心に、請求ソフトと会計ソフトの連携設計、国保連通知書と帳簿の月次照合の仕組みづくり、事業未収金の管理表の作成、決算時の未収金・徴収不能引当金の確認まで対応しています。詳しくは社会福祉法人・介護サポートのページをご覧ください。介護事業所の経理全体のポイントは「介護事業所の経理で押さえておきたい5つのポイント」で解説しています。

まとめ:介護報酬の入金管理は発生主義と月次照合が基本

介護報酬は、サービス提供月に収益と事業未収金を計上し、国保連からの入金(約2か月後)と利用者からの入金で消し込みます。毎月、請求確定額・支払決定額・入金額・未収金残高を突き合わせ、差額を返戻・保留・過誤調整に分解して原因を押さえることが、月次の収益の正確さ、決算の未収金の正確さ、資金繰りの見通しのすべてを支えます。返戻の放置は時効による回収不能に、利用者負担金の滞留は徴収不能につながるため、未収金の明細は毎月更新しましょう。

「介護報酬・給付費の入金管理」まとめ

  • 介護報酬の保険給付分は翌月10日までに国保連へ請求し、おおむね請求月の翌月末ごろ(サービス提供月の翌々月)に入金される
  • 収益は入金時ではなくサービス提供月に計上し、事業未収金は国保連分と利用者分で補助科目を分ける
  • 毎月、請求確定額=未収金計上額、請求額−支払決定額=返戻+保留+過誤調整、支払決定額=入金額を確認する
  • 返戻・保留は事業未収金のまま残して再請求で回収。過誤調整は収益の減額として処理し、過誤決定通知書と一致させる
  • 介護報酬の請求権は2年で時効。返戻の放置は回収不能に直結する
  • 利用者負担金の未収は督促の記録を残し、決算で徴収不能引当金を検討する。未収金の内訳は指導監査でも確認される

「介護報酬の入金管理」に関するよくある質問

A.まず「介護給付費等支払決定額通知書」と「支払決定額内訳書」で決定額を確認し、請求額との差額を、「返戻(保留)一覧表」の返戻・保留分と、「過誤決定通知書」の調整額に分解します。この3つで差額がすべて説明できれば、未収金の残高は正しい状態です。説明できない差額が残る場合は、請求ソフトの請求確定額と会計の計上額が一致しているか(請求漏れ・二重計上がないか)を確認し、それでも合わなければ国保連に照会します。入金額が決定額と違う場合も国保連への照会が必要です。

A.返戻分は、原因を修正したうえで翌月以降の請求期間(1日〜10日)に月遅れ請求として再提出できます。ただし、介護報酬の請求権は2年で時効により消滅するとされているため、返戻を放置すると回収できなくなります。実務上は、返戻一覧表を受け取ったらその月のうちに原因を特定し、翌月の請求で必ず再提出する運用にしておくのが安全です。給付管理票との不一致が原因の場合は、居宅介護支援事業所との調整が必要になるため、早めに連絡しましょう。

A.入金時に収益を計上する方法では、収益がサービス提供月より2か月遅れて表示されるため、月次の収益と人件費などの費用の対応がずれ、事業の採算が正しく読めません。決算では、期末直前2か月分の収益と事業未収金が計上されず、収益・資産が過少になります。社会福祉法人会計基準は発生主義を前提としており、指導監査で指摘される項目です。株式会社やNPO法人でも、法人税・消費税の計算の基礎となる収益の期間帰属が誤ることになります。切り替える場合は、切替時に2か月分の未収金を一括で計上することになるため、その期の数値の見方を事前に整理しておく必要があります。

介護報酬の入金管理・未収金の照合は、横浜の岩本隆一税理士事務所へ。

「国保連の入金と帳簿が合わない」「返戻・過誤の処理の仕方を整えたい」「請求ソフトと会計ソフトを連携させたい」など、介護事業所・社会福祉法人の経理のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。横浜市内の事業所を中心に、代表税理士が直接対応します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。

執筆者紹介

岩本隆一税理士

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto

準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です

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