株式会社と合同会社の違い|設立費用・信用・役員の任期・税金で比較、どちらを選ぶ?

横浜市で会社設立と法人化のサポートを行っている、岩本隆一税理士事務所の代表、岩本隆一です。
「株式会社と合同会社、どちらで設立すればいいのか」「合同会社は信用がないと聞くが本当か」「後から株式会社に変えられるのか」――法人化を決めた方が最初に迷うのが、会社の形です。結論からお伝えすると、税金や社会保険の扱いは両者でほぼ同じで、違いが出るのは設立費用、運営のルール、対外的な見え方、将来の資金調達と承継の4点です。それぞれを比べたうえで、ご自身の事業に合うほうを選べば、どちらを選んでも大きな失敗はありません。
この記事では、設立費用・手続きの違い(定款認証・登録免許税・公告)、運営の違い(役員任期・決算公告・意思決定・出資と経営の分離)、税金・社会保険で違いが出る場面、業種・取引先・将来の資金調達・承継から見た選び方、合同会社から株式会社への組織変更の流れと費用を解説します。本記事は2026年11月6日時点の会社法・登録免許税法・公証人手数料令に基づいており、登記申請の代理は司法書士の業務です(当事務所では税務・行政書士の範囲で対応し、登記は司法書士をご紹介します)。設立前に決めることの全体像は「会社設立前に決める7つのこと」をご覧ください。
設立費用・手続きの違い
- 定款の認証:株式会社は公証役場で定款の認証が必要で、手数料は資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円です。2024年12月からは、資本金100万円未満で、発起人が全員自然人かつ3人以下、発起人が設立時の株式をすべて引き受け、取締役会を置かない会社について1万5,000円に引き下げられています。合同会社は定款の認証が不要です。
- 定款の印紙税:紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款にすれば株式会社・合同会社とも不要です。
- 登録免許税:株式会社は資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社は資本金の0.7%(最低6万円)です。横浜市の特定創業支援等事業の証明を受けると、それぞれ半額(7万5,000円・3万円)になります(「横浜市で会社設立費用を抑えるには?」)。
- 合計の目安:電子定款を使った場合、法定費用は株式会社が約17〜20万円(創業支援の軽減で約10万円)、合同会社が約6万円(軽減で約3万円)です。これに司法書士への報酬が加わります。
- 設立までの期間:株式会社は定款認証の予約と認証の分だけ日数がかかり、合同会社のほうが数日早く登記申請に進めます。
運営の違い
- 出資と経営の関係:株式会社は出資者(株主)と経営者(取締役)が分かれており、株主総会で取締役を選びます。一人会社では同一人物ですが、仕組み上は分離しています。合同会社は出資者(社員)が原則として全員経営者(業務執行社員)で、出資と経営が一体です。
- 役員の任期:株式会社の取締役には任期があり(非公開会社では最長10年)、任期ごとに重任の登記(登録免許税1万円)が必要です。合同会社の社員に任期はなく、重任登記も不要です。
- 決算公告:株式会社は毎年の決算公告が義務です(官報なら数万円。実際には行っていない会社も多いものの、義務であることに変わりはありません)。合同会社に決算公告の義務はありません。
- 意思決定と利益配分:株式会社は出資割合(議決権)で意思決定と配当が決まります。合同会社は定款で自由に定められ、出資額と異なる割合で利益を配分することもできます。
- 代表者の肩書:株式会社は「代表取締役」、合同会社は「代表社員」です。名刺や契約書での見え方を気にする方もいます。
- 持分の承継:株式会社の株式は相続で当然に承継されます。合同会社の持分は、社員が死亡すると原則として退社(持分の払戻し)になり、相続人が社員として引き継ぐには定款にその旨の定めが必要です。家族で引き継ぐ予定の合同会社は、設立時に定款に承継の規定を入れておくことが重要です。
(仮定例)一人で経営する合同会社の社員が亡くなった場合
社員が代表社員1人だけの合同会社で、その社員が亡くなったとします。会社法では、社員は死亡によって退社し(607条)、社員が欠けた持分会社は解散します(641条)。この解散は社員の同意で会社を継続できる場合(642条)にも当たらないため、定款に定めがなければ、家族が事業を続けたくても会社は清算に向かい、相続人は持分の払戻しを受ける権利(611条)を引き継ぐことになります。
設立時の定款に「社員が死亡した場合は相続人が持分を承継する」旨を定めておけば(608条)、相続人は持分を承継した時に社員となり、会社をそのまま続けられます。実際の事例ではありません。
出典:会社法(e-Gov法令検索)第607条・第608条・第611条・第641条・第642条
税金はほぼ同じ|違いが出る場面
法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の扱いは、株式会社と合同会社で同じです。役員報酬の損金算入のルール(定期同額給与など)、社会保険の加入義務と保険料、消費税の免税の判定、インボイスの登録も同じです。税金の面で「合同会社だから不利・有利」ということはありません。
税金の扱いは同じで、違いは設立費用・運営・承継に出ます。
違いが出るのは、税金そのものではなく、①決算公告や重任登記などの維持コスト(合同会社のほうが少ない)、②組織変更をする場合の費用、③補助金や許認可で法人形態が条件になる場合(ほとんどの制度はどちらも対象ですが、個別に確認が必要です)の3点です。金融機関の融資や税務調査の扱いも、法人形態による違いはありません。
業種・取引先・将来から見た選び方
- 株式会社が向くケース:大企業や官公庁との取引が多く、対外的な認知度を重視する。将来、出資を受ける(ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家)、株式を使った資金調達や上場を目指す。従業員を多く採用し、「株式会社」の名称が採用に影響する。複数の出資者がいて、出資と経営を分けたい。
- 合同会社が向くケース:一人または家族・少人数で運営し、出資と経営が一致している。設立費用と維持コストを抑えたい。取引先が個人の消費者中心、または法人形態を気にしない業種(IT、コンサルティング、士業周辺、不動産管理、飲食・小売など)。資産管理会社や不動産の保有会社として使う。
- 「合同会社は信用がない」について:合同会社の認知度は上がっており、大手企業にも合同会社は多く存在します。実務上、取引先の与信は法人形態より決算内容・取引実績・代表者で判断されます。ただし、業種や取引先によっては「株式会社でないと」という慣行が残っている場合もあるため、主要な取引先に確認してから決めるのが確実です。
- 承継の予定:子に事業を引き継ぐ予定があれば、株式で承継できる株式会社のほうが手続きが分かりやすく、合同会社なら定款に持分の承継規定を入れます。
合同会社から株式会社への組織変更の流れと費用
合同会社で始めて、取引先の要請や資金調達の必要が出てきたら、株式会社に組織変更できます。会社を解散して作り直すのではなく、同じ法人のまま形態を変える手続きで、法人番号や許認可、契約は原則として引き継がれます。
- 組織変更計画書の作成と総社員の同意:株式会社としての定款、役員、株式の割当てなどを定め、社員全員が同意します。
- 債権者保護手続き:官報に公告し(1か月以上)、知れている債権者には個別に催告します。この期間が必要なため、手続き全体で1か月半〜2か月程度かかります。
- 登記:合同会社の解散登記と株式会社の設立登記を同時に申請します。登録免許税は合同会社の解散分3万円と株式会社の設立分(資本金の0.15%、最低3万円)の合計で、最低6万円です。官報公告の費用(数万円)と司法書士の報酬が別途かかります。
- 変更後の手続き:税務署・県税事務所・市役所への異動届、社会保険・労働保険の名称変更、銀行口座・取引先・許認可の名義変更を行います。
株式会社から合同会社への組織変更も可能ですが、実際には少数です。「まず合同会社で始めて、必要になったら株式会社に」という選択は合理的ですが、組織変更に10万円前後の費用と2か月程度の期間がかかることを踏まえると、設立時点で株式会社が必要になることが見えているなら、最初から株式会社にするほうが手間は少なくなります。
当事務所では、事業の内容・取引先・将来の見通しを伺ったうえで法人形態と資本金・決算月・役員報酬を税務面から整理し、登記は司法書士をご紹介しています。法人化そのものの損得は「個人事業主の法人化はいくらから?」、サービスと料金は会社設立サポートのページをご覧ください。
まとめ:税金は同じ。費用と維持コストなら合同会社、資金調達と承継なら株式会社
株式会社と合同会社は、法人税・消費税・社会保険の扱いが同じで、違いは設立費用(電子定款で株式会社約17〜20万円、合同会社約6万円、横浜市の創業支援で半額)、運営のルール(任期・決算公告・意思決定・持分の承継)、対外的な見え方、将来の資金調達と承継の4点です。一人・家族・少人数で運営し費用を抑えたいなら合同会社、大企業との取引・出資の受け入れ・株式での承継を見込むなら株式会社が向きます。合同会社から株式会社への組織変更は同じ法人のまま可能で、登録免許税6万円〜と2か月程度の期間がかかります。合同会社を選ぶ場合は、持分の承継規定を定款に入れておくことを忘れないでください。
「株式会社と合同会社の違い」まとめ
- 設立費用:株式会社は定款認証(3〜5万円、要件を満たす資本金100万円未満は1.5万円)+登録免許税15万円〜、合同会社は認証不要+登録免許税6万円〜。電子定款で印紙4万円不要、横浜市の創業支援で登録免許税半額
- 運営:株式会社は任期(最長10年・重任登記)と決算公告義務あり、出資と経営が分離。合同会社は任期・公告なし、定款で利益配分を自由に、持分の相続は定款の定めが必要
- 税金・社会保険・融資・税務調査の扱いは同じ。違いは維持コストと組織変更費用、制度の条件
- 株式会社向き:大企業・官公庁取引、出資受け入れ・上場、採用、複数出資者。合同会社向き:一人・家族・少人数、費用重視、消費者向け、資産管理会社
- 合同会社→株式会社の組織変更:総社員の同意、官報公告1か月以上、登録免許税6万円〜+公告費・司法書士報酬、期間2か月程度。法人番号・契約は引き継ぐ
「株式会社と合同会社」に関するよくある質問
資本金の考え方は株式会社・合同会社で同じです。1円から設立できますが、実務上は①設立後3〜6か月分の運転資金を賄える額、②消費税の免税を使うなら1,000万円未満(1,000万円以上だと設立初年度から課税事業者)、③許認可に最低資本金の要件がある業種(建設業500万円、人材派遣2,000万円など)はその額以上、の3点で決めます。登録免許税は資本金の0.7%で計算されるため、資本金が大きいほど設立費用も増えます(株式会社は資本金約2,143万円、合同会社は約857万円を超えると最低額を上回ります)。
一人合同会社で最も注意したいのは、代表社員に万一のことがあった場合です。合同会社の持分は相続で当然には引き継がれず、定款に「社員が死亡した場合はその相続人が持分を承継する」旨の定めがないと、社員がいなくなって会社が解散に向かうことになります。設立時の定款にこの規定を入れておいてください。また、社会保険は一人でも加入義務があること、役員報酬は定期同額給与のルールに従うこと、会社の口座と個人の口座を分けることは株式会社と同じです。
建設業許可、飲食店営業許可、古物商、宅建業など、主な許認可は株式会社・合同会社のどちらでも取得できます。許認可の要件は法人形態ではなく、資本金・経営経験・資格者の配置・営業所の要件などで判断されます。ただし、元請けや取引先によっては株式会社を求める慣行がある業種(大手ゼネコンの下請けなど)もあるため、取引先に確認してから決めてください。許認可の申請は、設立登記が完了してから行うため、設立の時期と許可の取得時期を逆算して計画します。
株式会社か合同会社か、事業に合わせて一緒に整理します。横浜の岩本隆一税理士事務所へ。
「どちらで設立すべきか迷っている」「資本金・決算月・役員報酬も合わせて相談したい」「設立後の届出と経理も任せたい」など、お気軽にご相談ください。横浜市内で起業・法人化する方を中心に、代表税理士が直接対応します。登記は提携の司法書士をご紹介します。ご依頼に関する初回相談・お見積もりは無料です。具体的な調査・検討が必要なご相談は、内容を伺ってご案内します。
執筆者紹介

岩本隆一税理士事務所
代表税理士・行政書士
岩本 隆一Ryuichi Iwamoto
準大手税理士法人で多くの実務を経験後、横浜市西区で独立。「経営者の孤独と本音に寄り添うパートナー」を信条に、代表自らが直接対応します。IT(クラウド会計・LINE)を活用して業務を進めます。土日祝・夜間の対応は事前予約制です。横浜F・マリノスを愛する生粋の横浜っ子です
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